会社法 条文 会社法 解説
第1編 総則

第3章 会社の使用人等

第1節 会社の使用人
本節については、商法の以下の条文も参照。
第20条〜第26条
第10条 【支配人】

 会社(外国会社を含む。以下この編において同じ。)は、支配人を選任し、その本店又は支店において、その事業を行わせることができる。
会社の支配人とは、支社長や支店長などのことである。
第11条 【支配人の代理権】

 @ 支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。

 A 支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。

 B 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
@は、会社の支配人は包括代理権を持っているということである。Aは、会社の支配人は選解任権を持っているということである。つまり、支配人は担当している事業所に関する事項であれば、会社の事業の一切の行為を代理できるということである。この支配人の権限に制限を加えた場合、それを知らない第三者には制限を加えたということを主張することはできない。
第12条 【支配人の競業の禁止】

 @ 支配人は、会社の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。

 1 自ら営業を行うこと。

 2 自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。

 3 他の会社又は商人(会社を除く。第二十四条において同じ。)の使用人となること。

 4 他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。

 A 支配人が前項の規定に違反して同項第二号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定する。
本条は会社の支配人が会社から許可を受けなければできないことが規定されている。
支配人の競業避止義務
第12条1項 禁止事項
第1号 自ら営業を行うこと。
第2号 自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。
第3号 他の会社又は商人(会社を除く。第二十四条において同じ。)の使用人となること。
第4号 他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
※上記のことがらは、会社の許諾がなければしてはいけないことである。逆に言えば、許諾さえあればしてもよいということである。
※第2号の同じ種類の営業をした場合、支配人や第三者が得た利益額は反証がない限り、会社が受けた損害額とされる。
第13条 【表見支配人】

 会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該本店又は支店の事業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。
実際には支配人ではないが、支社長とか支店長といった名称がついている者のことを、表見支配人という。取引の相手方が表見支配人を真の支配人だと考えた場合、表見支配人には支配人としての代理権があるものとみなす(ただし、相手方が支配人ではないことを知っていた場合は除く)。
第14条 【ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人】

 @ 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。

 A 前項に規定する使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
「ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人」とは、一定の事項についてある程度の包括代理権を与えられた使用人のことで、会社で言えば部長や課長クラスのことである。このような使用人については、委任を受けた事項に関しては、裁判上の行為を除いて、一切の行為をなす代理権を持つ。この代理権に制限を加えた場合、善意の第三者には制限を加えたことを主張することはできない。

条文 具体例 裁判上の行為 裁判外の行為
第11条 支社長、支店長
第14条 部長、課長 ×
第15条 【物品の販売等を目的とする店舗の使用人】

 物品の販売等(販売、賃貸その他これらに類する行為をいう。以下この条において同じ。)を目的とする店舗の使用人は、その店舗に在る物品の販売等をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。
物品の販売や賃貸等を目的とする店舗の使用人は、店舗内の物品の販売等に関する権限があるものとみなされる。しかし、相手方がその使用人に販売権限などがないとわかっていた場合は別である。