会社法 条文 会社法 解説
第1編 総則

第4章 事業の譲渡をした場合の競業の禁止等
本章は商法の以下の条文と同じ趣旨である。
第11条〜第18条
第21条 【譲渡会社の競業の禁止】

 @ 事業を譲渡した会社(以下この章において「譲渡会社」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(東京都の特別区の存する区域及び地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区。以下この項において同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない。

 A 譲渡会社が同一の事業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その事業を譲渡した日から三十年の期間内に限り、その効力を有する。

 B 前二項の規定にかかわらず、譲渡会社は、不正の競争の目的をもって同一の事業を行ってはならない。
本条は商法の第16条と同じような趣旨である。商法では条文中に営業と書かれているが、会社法では事業と呼ばれている。

事業譲渡とは、一定の事業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産の移転を目的とする債権契約のことである。事業を譲渡した会社に対しては本条の競業避止義務が課される。
第22条 【譲渡会社の商号を使用した譲受会社の責任等】

 @ 事業を譲り受けた会社(以下この章において「譲受会社」という。)が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負う。

 A 前項の規定は、事業を譲り受けた後、遅滞なく、譲受会社がその本店の所在地において譲渡会社の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には、適用しない。事業を譲り受けた後、遅滞なく、譲受会社及び譲渡会社から第三者に対しその旨の通知をした場合において、その通知を受けた第三者についても、同様とする。

 B 譲受会社が第一項の規定により譲渡会社の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡会社の責任は、事業を譲渡した日後二年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。

 C 第一項に規定する場合において、譲渡会社の事業によって生じた債権について、譲受会社にした弁済は、弁済者が善意でかつ重大な過失がないときは、その効力を有する。
本条は商法の第17条と同じ趣旨である。


第22条 条文 説明
第1項 譲受会社が商号を引き続いて使用した場合は、譲受会社も譲渡会社の事業によって生じた債務の弁済責任を負う これを不真正連帯債務という。譲渡会社と譲受会社の両方が債務の弁済責任を負う。)。商号を引き続いて使用する場合、事業上の債権者は譲受会社に対して請求できるものと信じることが多いため、外観に対する信頼を保護したものである。
第2項 第1項の場合、すぐに、「債務の弁済責任を負わない」という登記をした場合は、責任を負わなくてもよい。また、登記をしなくても、譲渡会社と譲受会社の両者から第三者に対して、「債務の弁済責任を負わない」という通知をすれば、通知を受けた第三者に対する債務については責任を負わなくてよい。 登記をしてもよいし、通知でもよい。
第3項 譲受会社が債務の弁済責任を負う場合、弁済の請求や請求の予告をしなければ、債権者の譲渡会社への請求権は事業を譲渡した日から2年で消滅する。 いつまでも譲渡人の責任を存続させておく必要はないためである。
第4項 譲渡会社が行った事業から生じた債権について、その債務者が譲受会社に対して弁済をしたとき、善意で重過失がなかった場合は、債務者の債務は消滅する。 これは、第1項から第3項までは譲渡会社の債務についてであるが、第4項は譲渡会社が持っていた債権についてである。
第23条 【譲受会社による債務の引受け】

 @ 譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用しない場合においても、譲渡会社の事業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲渡会社の債権者は、その譲受会社に対して弁済の請求をすることができる。

 A 譲受会社が前項の規定により譲渡会社の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡会社の責任は、同項の広告があった日後二年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。
本条は商法第18条と同じ趣旨である。商号を引き続き使用しなかった場合についての規定である。

譲受会社が譲渡会社の債務を引き受けると広告した場合、譲渡会社の債権者は譲受会社に弁済を請求することができる(本条第1項)。第2項は、第22条第3項と同じである。譲受会社が債務を引き受ける場合、債権者の譲渡会社への請求権は、弁済の請求や請求の予告をしなければ、2年で消滅する。
第24条 【商人との間での事業の譲渡又は譲受け】

 @ 会社が商人に対してその事業を譲渡した場合には、当該会社を商法第十六条第一項に規定する譲渡人とみなして、同法第十七条及び第十八条の規定を適用する。

 A 会社が商人の営業を譲り受けた場合には、当該商人を譲渡会社とみなして、前二条の規定を適用する。
本条は、事業譲渡が、会社から商人(または商人から会社)にされた場合についての規定である。会社から商人にされた場合、会社は商法第17条と第18条の適用を受ける。商人から会社の場合、商人は会社法第22条と第23条の適用を受ける。どの条文も、営業と事業、商人と会社という文字が違うだけである。