会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第1章 設立

第2節 定款の作成
第26条 【定款の作成】

 @ 株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。

 A 前項の定款は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
定款とは、会社の組織や活動を定める根本原則のことである。株式会社を設立する場合、必ず定款を作成しなければならない。また、この定款に発起人全員の署名または記名押印が必要である(本条第1項)。また、定款は書面ではなく電磁的記録によって作成することもできる(本条第2項)。

この定款は、公証人による認証を受けなければ効力が発生しない(第30条)。
第27条 【定款の記載又は記録事項 その1】

 株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

 1 目的

 2 商号

 3 本店の所在地

 4 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額

 5 発起人の氏名又は名称及び住所
定款の記載事項には大きく分けて以下の種類がある。

種類 説明
絶対的記載事項 記載・記録を欠けば定款が無効になる。
相対的記載事項 記載・記録が欠けても定款は無効とはならない。しかし、記載・記録をしないと効力が発生しない。
任意的記載事項 記載・記録が欠けても定款は無効とはならなず、かつ、定款外で定めても当事者を拘束する。


本条は、絶対的記載事項についての規定である。本条で規定されている事項は定款に必ず記載しなければならない。
第28条 【定款の記載又は記録事項 その2】

 株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第二十六条第一項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。

 1 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数。第三十二条第一項第一号において同じ。)

 2 株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称

 3 株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称

 4 株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)
本条は、相対的記載事項の変態設立事項についての規定である。

本条の第1号から第4号までの内容は、発起人によって権限が濫用される可能性が高く、また、設立中の会社の財産的基盤が脅かされる危険性があるため、第26条第1項の定款に記載・記録しなければ効力が生じないものとされている。
第29条 【定款の記載又は記録事項 その3】

 第二十七条各号及び前条各号に掲げる事項のほか、株式会社の定款には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及びその他の事項でこの法律の規定に違反しないものを記載し、又は記録することができる。
本条は、変態設立事項以外の相対的記載事項と任意的記載事項についての規定である。
第30条 【定款の認証】

 @ 第二十六条第一項の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない。

 A 前項の公証人の認証を受けた定款は、株式会社の成立前は、第三十三条第七項若しくは第九項又は第三十七条第一項若しくは第二項の規定による場合を除き、これを変更することができない。
第26条第1項の定款は、公証人の認証を受けなければ効力が発生しない。また、認証を受けた定款の内容は、会社が成立するまで原則として変更できない。
第31条 【定款の備置き及び閲覧等】

 @ 発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)は、定款を発起人が定めた場所(株式会社の成立後にあっては、その本店及び支店)に備え置かなければならない。

 A 発起人(株式会社の成立後にあっては、その株主及び債権者)は、発起人が定めた時間(株式会社の成立後にあっては、その営業時間)内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)の定めた費用を支払わなければならない。

 1 定款が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧の請求

 2 前号の書面の謄本又は抄本の交付の請求

 3 定款が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求

 4 前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求

 B 株式会社の成立後において、当該株式会社の親会社社員(親会社の株主その他の社員をいう。以下同じ。)がその権利を行使するため必要があるときは、当該親会社社員は、裁判所の許可を得て、当該株式会社の定款について前項各号に掲げる請求をすることができる。ただし、同項第二号又は第四号に掲げる請求をするには、当該株式会社の定めた費用を支払わなければならない。

 C 定款が電磁的記録をもって作成されている場合であって、支店における第二項第三号及び第四号に掲げる請求に応じることを可能とするための措置として法務省令で定めるものをとっている株式会社についての第一項の規定の適用については、同項中「本店及び支店」とあるのは、「本店」とする。
本条をまとめると以下のようになる。

第31条 株式会社成立前 株式会社成立後
第1項 定款を発起人が定めた場所に備え置かなければならない。 定款を本店と支店に備え置かなければならない。
第2項 発起人は、発起人が定めた時間内であれば、いつでも、次の請求をすることができる。

1、定款の閲覧
2、定款の謄本または抄本の交付

※謄本または抄本の交付については、発起人が定めた費用を支払わなければならない。
※定款が書面ではなく電磁的記録により作成されている場合は、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものとなる。
株主と債権者は、発起人が定めた時間内であれば、いつでも、次の請求をすることができる。

1、定款の閲覧
2、定款の謄本または抄本の交付

※謄本または抄本の交付については、発起人が定めた費用を支払わなければならない。
※定款が書面ではなく電磁的記録により作成されている場合は、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものとなる。この場合は本店でのみ適用される。
第3項 当該株式会社の親会社社員(親会社の株主その他の社員)は、権利を行使するために必要なときは、裁判所の許可を得て、第2項の請求をすることができる(定款の謄本または抄本の交付を請求する場合は、費用を支払わなければならない)。