会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第1章 設立

第8節 発起人等の責任
第52条 【出資された財産等の価額が不足する場合の責任】

 @ 株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が当該現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額(定款の変更があった場合にあっては、変更後の価額)に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、当該株式会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負う。

 A 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、発起人(第二十八条第一号の財産を給付した者又は同条第二号の財産の譲渡人を除く。第二号において同じ。)及び設立時取締役は、現物出資財産等について同項の義務を負わない。

 1 第二十八条第一号又は第二号に掲げる事項について第三十三条第二項の検査役の調査を経た場合

 2 当該発起人又は設立時取締役がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合

 B 第一項に規定する場合には、第三十三条第十項第三号に規定する証明をした者(以下この項において「証明者」という。)は、第一項の義務を負う者と連帯して、同項の不足額を支払う義務を負う。ただし、当該証明者が当該証明をするについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
現物出資財産等の会社成立時の価額が、定款に記載・記録された価額よりも著しく不足するとき場合には、発起人と設立時取締役は連帯してその不足額を補う責任を負うということである(第1項)。

ただし、現物出資財産等について検査役の調査を受けたとき(第2項第1号)、現物出資財産等の不足について無過失を証明したとき(第2項第2号)は、発起人と設立時取締役は責任を負わない(募集設立の場合、第103条第1項により不足額填補責任は無過失責任とされているため、第2項第2号の免責はない)。

現物出資財産等の証明や鑑定をした者も、発起人・設立時取締役と同様の不足額填補責任を負う(第3項)。ただし、この者が無過失を証明したときは、責任を負わない(第3項但し書き)。
第53条 【発起人等の損害賠償責任】

 @ 発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、株式会社の設立についてその任務を怠ったときは、当該株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 A 発起人、設立時取締役又は設立時監査役がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
第1項は、発起人、設立時取締役、設立時監査役は、その任務懈怠について、成立後の会社に対して責任を負うということである。

第2項は、発起人、設立時取締役、設立時監査役がその職務を行うについて悪意または重過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負うということである。
第54条 【発起人等の連帯責任】

 発起人、設立時取締役又は設立時監査役が株式会社又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、他の発起人、設立時取締役又は設立時監査役も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。
複数の発起人等が第53条の規定により、損害賠償責任を負う場合、賠償債務は連帯債務となる。
第55条 【責任の免除】

 第五十二条第一項の規定により発起人又は設立時取締役の負う義務及び第五十三条第一項の規定により発起人、設立時取締役又は設立時監査役の負う責任は、総株主の同意がなければ、免除することができない。
発起人等が、不足額填補責任(第52条第1項)、任務懈怠責任(第53条第1項)を追う場合でも、総株主の同意があればこれらを免除することができる。

責任を軽減する余地を残すことで、取締役等が設立業務について必要以上に萎縮しないようにしている。
第56条 【株式会社不成立の場合の責任】

 株式会社が成立しなかったときは、発起人は、連帯して、株式会社の設立に関してした行為についてその責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担する。
本条は会社の設立を途中で挫折し、設立登記をするまでに至らなかった場合についての規定である。このような場合、発起人は設立に関してした行為や設立費用について連帯責任を負う。

本条の発起人の責任は、会社不成立の場合であり、設立無効の場合は含まない。