会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第1章 設立

第9節 募集による設立
第1款 設立時発行株式を引き受ける者の募集

第57条 【設立時発行株式を引き受ける者の募集】


 @ 発起人は、この款の定めるところにより、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする旨を定めることができる。

 A 発起人は、前項の募集をする旨を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。
募集設立を行うには、発起人は、設立時発行株式を引き受ける者を募集する必要がある(第1項)。これは設立方法を発起設立にするか募集設立にするかの分岐点になるため、発起人全員の同意が必要となる(第2項)。

設立時株式引受人の募集は以下のような手順で行う。
条文 内容
第57条
第58条
株主の募集
第59条
第61条
申し込み
第60条
第61条
割り当て
第62条 引き受け
第63条 払い込み
第58条 【設立時募集株式に関する事項の決定】

 @ 発起人は、前条第一項の募集をしようとするときは、その都度、設立時募集株式(同項の募集に応じて設立時発行株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる設立時発行株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 設立時募集株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、その種類及び種類ごとの数。以下この款において同じ。)

 2 設立時募集株式の払込金額(設立時募集株式一株と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この款において同じ。)

 3 設立時募集株式と引換えにする金銭の払込みの期日又はその期間

 4 一定の日までに設立の登記がされない場合において、設立時募集株式の引受けの取消しをすることができることとするときは、その旨及びその一定の日

 A 発起人は、前項各号に掲げる事項を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。

 B 設立時募集株式の払込金額その他の前条第一項の募集の条件は、当該募集(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、種類及び当該募集)ごとに、均等に定めなければならない。
募集設立を行う場合、発起人は、募集する株式の数、払込金額、払込期日または期間、一定の日までに設立の登記がされない場合において設立時募集株式の引受の取り消しをすることができるときはその旨および一定の日を発起人全員の同意により決める必要がある(第1項と第2項)。

また、募集の条件は募集ごとに均等に決めなければならない(第3項)。
第59条 【設立時募集株式の申込み】

 @ 発起人は、第五十七条第一項の募集に応じて設立時募集株式の引受けの申込みをしようとする者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。

 1 定款の認証の年月日及びその認証をした公証人の氏名

 2 第二十七条各号、第二十八条各号、第三十二条第一項各号及び前条第一項各号に掲げる事項

 3 発起人が出資した財産の価額

 4 第六十三条第一項の規定による払込みの取扱いの場所

 5 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

 A 発起人のうち出資の履行をしていないものがある場合には、発起人は、第三十六条第一項に規定する期日後でなければ、前項の規定による通知をすることができない。

 B 第五十七条第一項の募集に応じて設立時募集株式の引受けの申込みをする者は、次に掲げる事項を記載した書面を発起人に交付しなければならない。

 1 申込みをする者の氏名又は名称及び住所

 2 引き受けようとする設立時募集株式の数

 C 前項の申込みをする者は、同項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、発起人の承諾を得て、同項の書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該申込みをした者は、同項の書面を交付したものとみなす。

 D 発起人は、第一項各号に掲げる事項について変更があったときは、直ちに、その旨及び当該変更があった事項を第三項の申込みをした者(以下この款において「申込者」という。)に通知しなければならない。

 E 発起人が申込者に対してする通知又は催告は、第三項第一号の住所(当該申込者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を発起人に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。

 F 前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。
第57条と第58条の規定により、設立時株式引受人の募集をし、それに応じて引受の申し込みをしようとする者がいる場合、次の事項を通知しなければならない。
・定款の認証の年月日
・定款の認証をした公証人の氏名
・定款の絶対的記載事項(第27条各号)
・変態設立事項(第28条各号)
・設立時発行株式に関する事項(第32条第1項各号)
・設立時募集株式に関する事項(第58条第1項各号)
・発起人が出資した財産の価額
・払込みの取扱いの場所
・法務省令で定める事項
※発起人の中に出資の履行をまだしていない者がいる場合、第36条第1項が規定している履行期間が経過した後でなければ、通知をすることはできない(本条第2項)。
※通知事項に変更があった場合は、発起人はすぐにそれを申込者に通知しなければならない(本条第5項)。
※通知を受けた申込希望者が申し込みをする場合、氏名・名称、住所、引き受けようとする設立時募集株式の数を記した書面を、発起人に交付しなければならない(第3項と第4項)。
第60条 【設立時募集株式の割当て】

 @ 発起人は、申込者の中から設立時募集株式の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる設立時募集株式の数を定めなければならない。この場合において、発起人は、当該申込者に割り当てる設立時募集株式の数を、前条第三項第二号の数よりも減少することができる。

 A 発起人は、第五十八条第一項第三号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の初日)の前日までに、申込者に対し、当該申込者に割り当てる設立時募集株式の数を通知しなければならない。
第59条第3項により、設立時発行株式の募集に対して申し込みがなされた場合、発起人は、申込者の中から株式の割り当てを受ける者と割り当てる株式数を決定しなければならない(第1項前半)。この場合、発起人は割り当てる株式数を申込者が申込書に記載した希望引受数よりも少なくすることができる(第1項後半)。

発起人は、払込期日の前日までに、申込者に対して、割り当てる株式数を通知しなければならない(第2項)。この通知には、第59条第6項と第7項の規定が適用される。
第61条 【設立時募集株式の申込み及び割当てに関する特則】

 前二条の規定は、設立時募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合には、適用しない。
設立時募集株式を引き受ける者が、その総数を引き受けるという契約を締結する場合には、あえて申し込みや割り当てといった手続きをする必要はない。そのため、第59条と第60条の規定は適用されない。
第62条 【設立時募集株式の引受け】

 次の各号に掲げる者は、当該各号に定める設立時募集株式の数について設立時募集株式の引受人となる。

 1 申込者 発起人の割り当てた設立時募集株式の数

 2 前条の契約により設立時募集株式の総数を引き受けた者 その者が引き受けた設立時募集株式の数
本条は、募集設立において設立時募集株式の引き受けについて規定している。引き受ける株式の数は、発起人により割り当てられた数や契約によって引き受けた数に連動する。

株式の募集に応じた申込者は、発起人の割り当てた数の株式の引受人となる(第1項)。総数の引き受けを行う契約によって株式の総数を引き受けた者は、その者が引き受けた数の株式の引受人となる(第2項)。

本条の申込者は、以後、引受人と呼ばれる。この引受人は、会社が成立した時に、自動的に株主となる(第102条第2項)。
第63条 【設立時募集株式の払込金額の払込み】

 @ 設立時募集株式の引受人は、第五十八条第一項第三号の期日又は同号の期間内に、発起人が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの設立時募集株式の払込金額の全額の払込みを行わなければならない。

 A 前項の規定による払込みをすることにより設立時発行株式の株主となる権利の譲渡は、成立後の株式会社に対抗することができない。

 B 設立時募集株式の引受人は、第一項の規定による払込みをしないときは、当該払込みをすることにより設立時募集株式の株主となる権利を失う。
株式会社の株主は、間接有限責任しか負わないため(第104条)、会社債権者の担保となるのは会社財産だけとなる。そのため、引受人に対して、払込期日または期間(第58条第1項第3号)内に払込金全額の払い込みをしなければならないとしている(第1項)。この期日・期間内に払い込みがない場合は、引受人は株主になる権利を失う(第3項)。また、権利株は、譲渡したとしてもその譲渡を会社に主張することはできない(第2項)。
第64条 【払込金の保管証明】

 @ 第五十七条第一項の募集をした場合には、発起人は、第三十四条第一項及び前条第一項の規定による払込みの取扱いをした銀行等に対し、これらの規定により払い込まれた金額に相当する金銭の保管に関する証明書の交付を請求することができる。

 A 前項の証明書を交付した銀行等は、当該証明書の記載が事実と異なること又は第三十四条第一項若しくは前条第一項の規定により払い込まれた金銭の返還に関する制限があることをもって成立後の株式会社に対抗することができない。
第57条第1項により、設立時発行株式の引き受けを募集した場合、発起人は、発起人や引受人が払い込みを行った金融機関に対し、払込保管証明書の発行を請求することができる(第1項)。

払込保管証明書を発行した金融機関は、証明書の記載が事実と違っていたとしても、これを成立後の株式会社に主張することはできない(第2項)。これは、金融機関が預合(第965条)に加担することを防ぐためである。

また、見せ金の場合、金融機関がそれを知っていたり重過失があった場合には、第2項と同様の取り扱いをする。
第2款 創立総会等

第65条 【創立総会の招集】


 @ 第五十七条第一項の募集をする場合には、発起人は、第五十八条第一項第三号の期日又は同号の期間の末日のうち最も遅い日以後、遅滞なく、設立時株主(第五十条第一項又は第百二条第二項の規定により株式会社の株主となる者をいう。以下同じ。)の総会(以下「創立総会」という。)を招集しなければならない。

 A 発起人は、前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、いつでも、創立総会を招集することができる。
募集設立を行う場合、発起人は創立総会を招集しなければならない(第1項)。この創立総会とは、設立時株主による議決機関で(会社成立後の株主総会に相当)、払込期日または期間の経過後、すぐに招集しなければならない。

また、創立総会は発起人が必要があると認める場合にも開催可能であり、この場合は時期的な制限はない(第2項)。
第66条 【創立総会の権限】

 創立総会は、この節に規定する事項及び株式会社の設立の廃止、創立総会の終結その他株式会社の設立に関する事項に限り、決議をすることができる。
創立総会で決議できることは以下である。
・会社法第2編第1章第9節で規定する事項
・会社の設立の廃止
・創立総会の終結
・その他株式会社の設立に関する事項
※これらの中には必ず決議しなければならない必要的決議事項も含まれている(第88条)
※創立総会では一定事項の報告も行われる(第93条第2項)
第67条 【創立総会の招集の決定】

 @ 発起人は、創立総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 創立総会の日時及び場所

 2 創立総会の目的である事項

 3 創立総会に出席しない設立時株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨

 4 創立総会に出席しない設立時株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨

 5 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

 A 発起人は、設立時株主(創立総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない設立時株主を除く。次条から第七十一条までにおいて同じ。)の数が千人以上である場合には、前項第三号に掲げる事項を定めなければならない。
発起人は、創立総会を招集する場合、次の事項を決めなければならない。
・創立総会の日時
・創立総会の場所
・創立総会の目的である事項
・書面投票を認めるときはその旨
・電子投票を認めるときはその旨
・法務省令で定める事項


設立時株主が1000人以上いる場合、書面での投票を認めなければならない(第1項第3号、第2項)。これは設立時株主が多数いる場合、その中に出席できない者も多数いると予想されるためである。
第68条 【創立総会の招集の通知】

 @ 創立総会を招集するには、発起人は、創立総会の日の二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合にあっては、一週間(当該設立しようとする株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、設立時株主に対してその通知を発しなければならない。

 A 次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。

 1 前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合

 2 設立しようとする株式会社が取締役会設置会社である場合

 B 発起人は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、設立時株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該発起人は、同項の書面による通知を発したものとみなす。

 C 前二項の通知には、前条第一項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

 D 発起人が設立時株主に対してする通知又は催告は、第二十七条第五号又は第五十九条第三項第一号の住所(当該設立時株主が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を発起人に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。

 E 前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。

 F 前二項の規定は、第一項の通知に際して設立時株主に書面を交付し、又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供する場合について準用する。この場合において、前項中「到達したもの」とあるのは、「当該書面の交付又は当該事項の電磁的方法による提供があったもの」と読み替えるものとする。
創立総会の招集は、原則として発起人は総会当日の二週間前までに招集通知を発送しなければならない(第1項)。ただし、この期間には例外があり、設立予定の会社が非公開会社である場合は、一週間前までに通知を発送すればよい(第1項ただし書き)。この場合でも、書面投票(第67条第1項第3号)または電子投票(第67条第1項第4号)を認めた場合には、二週間前までに通知を発送しなければならない。また、設立予定の会社が取締役会非設置会社で、一週間を下回る期間を定款で定めた場合は、その期間内に通知を発送すればよい。

招集通知は原則として書面の他、口頭でも行うことができる。しかし、書面投票または電子投票を認めた場合、設立予定の会社が取締役会設置会社である場合は、必ず書面でしなければならない(第2項)。

設立時株主の同意があれば、電磁的方法で通知を発送することができる(第3項)。

招集通知には、以下の事項を記載しなければならない。
・創立総会の日時
・創立総会の場所
・創立総会の目的である事項
・書面投票を認めるときはその旨
・電子投票を認めるときはその旨
・法務省令で定める事項

招集通知は、第二十七条第五号又は第五十九条第三項第一号の住所にあてて発送すれば足り(第5項)、通常到達すべきであった時に設立時株主のもとに到達したものとみなされる(第6項)。
第69条 【招集手続の省略】

 前条の規定にかかわらず、創立総会は、設立時株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。ただし、第六十七条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合は、この限りでない。
設立予定の会社が小規模な会社である場合、発起人と設立時株主がほとんど同じであるようなこともある。このような場合、設立時株主が全員同意していれば、第68条の招集手続きを省略することができる。

ただし、書面投票または電子投票を認めた場合には、招集手続きを省略することはできない。
第70条 【創立総会参考書類及び議決権行使書面の交付等】

 @ 発起人は、第六十七条第一項第三号に掲げる事項を定めた場合には、第六十八条第一項の通知に際して、法務省令で定めるところにより、設立時株主に対し、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(以下この款において「創立総会参考書類」という。)及び設立時株主が議決権を行使するための書面(以下この款において「議決権行使書面」という。)を交付しなければならない。

 A 発起人は、第六十八条第三項の承諾をした設立時株主に対し同項の電磁的方法による通知を発するときは、前項の規定による創立総会参考書類及び議決権行使書面の交付に代えて、これらの書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、設立時株主の請求があったときは、これらの書類を当該設立時株主に交付しなければならない。
創立総会を招集するとき、発起人は原則として設立時株主に招集通知を発送しなければならない(第68条第1項)。そして、発起人は、書面投票(第67条第1項第3号)を認めた場合、招集通知に創立総会参考書類と議決権行使書面を添付しなければならない(本条第1項)。

名前 内容
創立総会参考書類 総会での情報収集ができない欠席者のための、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類
議決権行使書面 欠席者が議決権を行使するための書面


電子メールなどの電磁的方法による総会の招集通知を設立時株主が認めた場合(第68条第3項)、創立総会参考書類と議決権行使書面は電子メールの添付ファイルなどによって提供することが可能である(本条第2項)。しかし、設立時株主から請求があった場合は、書面を交付する必要がある(本条第2項但し書き)。
第71条 【創立総会参考書類及び議決権行使書面の交付等 その2】

 @ 発起人は、第六十七条第一項第四号に掲げる事項を定めた場合には、第六十八条第一項の通知に際して、法務省令で定めるところにより、設立時株主に対し、創立総会参考書類を交付しなければならない。

 A 発起人は、第六十八条第三項の承諾をした設立時株主に対し同項の電磁的方法による通知を発するときは、前項の規定による創立総会参考書類の交付に代えて、当該創立総会参考書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、設立時株主の請求があったときは、創立総会参考書類を当該設立時株主に交付しなければならない。

 B 発起人は、第一項に規定する場合には、第六十八条第三項の承諾をした設立時株主に対する同項の電磁的方法による通知に際して、法務省令で定めるところにより、設立時株主に対し、議決権行使書面に記載すべき事項を当該電磁的方法により提供しなければならない。

 C 発起人は、第一項に規定する場合において、第六十八条第三項の承諾をしていない設立時株主から創立総会の日の一週間前までに議決権行使書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供の請求があったときは、法務省令で定めるところにより、直ちに、当該設立時株主に対し、当該事項を電磁的方法により提供しなければならない。
創立総会を招集するとき、発起人は原則として設立時株主に招集通知を発送しなければならない(第68条第1項)。そして、発起人は、電子投票(第67条第1項第4号)を認めた場合、招集通知に創立総会参考書類と議決権行使書面を添付しなければならない(本条第1項)。

電子メールなどの電磁的方法による総会の招集通知を設立時株主が認めた場合(第68条第3項)、創立総会参考書類は電子メールの添付ファイルなどによって提供することが可能である(本条第2項)。しかし、設立時株主から請求があった場合は、書面を交付する必要がある(本条第2項但し書き)。

電磁的方法による総会の招集通知を認めた設立時株主に対しては、創立総会参考書類に加えて、議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法によって提供する必要がある(第3項)。ただ、電磁的方法による総会の招集通知を認めていない設立時株主が、議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法で提供してほしい旨の請求をした場合、すぐに電磁的方法による提供を行わなくてはならない(第4項)。
第72条 【議決権の数】

 @ 設立時株主(成立後の株式会社がその総株主の議決権の四分の一以上を有することその他の事由を通じて成立後の株式会社がその経営を実質的に支配することが可能となる関係にあるものとして法務省令で定める設立時株主を除く。)は、創立総会において、その引き受けた設立時発行株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の設立時発行株式につき一個の議決権を有する。

 A 設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合において、株主総会において議決権を行使することができる事項について制限がある種類の設立時発行株式を発行するときは、創立総会において、設立時株主は、株主総会において議決権を行使することができる事項に相当する事項に限り、当該設立時発行株式について議決権を行使することができる。

 B 前項の規定にかかわらず、株式会社の設立の廃止については、設立時株主は、その引き受けた設立時発行株式について議決権を行使することができる。
設立時株主には、原則として設立時発行株式一株につき一個の議決権が与えられる(第1項)。ただし、議決権制限種類株式発行会社(第108条第1項第3号)である場合、設立時株主は、株主総会で議決権を行使することができる事項に相当する事項に限って、議決権を行使することができる(第2項)。

ただし、会社の設立の廃止に関しては、極めて重要な事項であるため、議決権制限種類株式によって議決権を制限されている設立時株主であっても、議決権を行使することができる(第3項)。
第73条 【創立総会の決議】

 @ 創立総会の決議は、当該創立総会において議決権を行使することができる設立時株主の議決権の過半数であって、出席した当該設立時株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行う。

 A 前項の規定にかかわらず、その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款の変更を行う場合(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合を除く。)には、当該定款の変更についての創立総会の決議は、当該創立総会において議決権を行使することができる設立時株主の半数以上であって、当該設立時株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行わなければならない。

 B 定款を変更してその発行する全部の株式の内容として第百七条第一項第三号に掲げる事項についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとする場合(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合を除く。)には、設立時株主全員の同意を得なければならない。

 C 創立総会は、第六十七条第一項第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。ただし、定款の変更又は株式会社の設立の廃止については、この限りでない。
本条をまとめると以下の表のようになる。
内容
創立総会の決議方法 当該創立総会において議決権の行使が可能な設立時株主の議決権の過半数かつ、出席した設立時株主の議決権の三分の二以上の多数決によって行われる(第1項)。
例外1 株式譲渡制限会社へ移行するための定款の変更を行う場合、当該創立総会において議決権の行使が可能な設立時株主の半数以上であって、当該設立時株主の議決権の三分の二以上に当たる多数決によって行われる(第2項)。
例外2 発行する全部を取得条項付株式(第107条第1項第3号)とする定款変更を行うには、設立時株主全員の同意を得なければならない(第3項)。
※創立総会では、第67条第1項第2号によって定められた総会の目的である事項以外の事項については議決することができない。ただし、定款の変更、株式会社の設立の廃止については議決可能である(第4項)。
第74条 【議決権の代理行使】

 @ 設立時株主は、代理人によってその議決権を行使することができる。この場合においては、当該設立時株主又は代理人は、代理権を証明する書面を発起人に提出しなければならない。

 A 前項の代理権の授与は、創立総会ごとにしなければならない。

 B 第一項の設立時株主又は代理人は、代理権を証明する書面の提出に代えて、政令で定めるところにより、発起人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該設立時株主又は代理人は、当該書面を提出したものとみなす。

 C 設立時株主が第六十八条第三項の承諾をした者である場合には、発起人は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。

 D 発起人は、創立総会に出席することができる代理人の数を制限することができる。

 E 発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社。次条第三項及び第七十六条第四項において同じ。)は、創立総会の日から三箇月間、代理権を証明する書面及び第三項の電磁的方法により提供された事項が記録された電磁的記録を発起人が定めた場所(株式会社の成立後にあっては、その本店。次条第三項及び第七十六条第四項において同じ。)に備え置かなければならない。

 F 設立時株主(株式会社の成立後にあっては、その株主。次条第四項及び第七十六条第五項において同じ。)は、発起人が定めた時間(株式会社の成立後にあっては、その営業時間。次条第四項及び第七十六条第五項において同じ。)内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。

 1 代理権を証明する書面の閲覧又は謄写の請求

 2 前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
創立総会に出席できない設立時株主は、代理人によりその議決権を行使することができる。この場合、当該設立時株主または代理人は、代理権を証明する書面を発起人に提出(発起人の承諾を得れば、電磁的方法も可)しなければならない(第1項)。この代理権は、永続的なものではなく、総会ごとに個別的に授権されなければならない(第2項)。

また、いわゆる総会屋などの対策のために、発起人は創立総会に出席できる代理人の人数を制限することができる(第5項)。
第75条 【書面による議決権の行使】

 @ 書面による議決権の行使は、議決権行使書面に必要な事項を記載し、法務省令で定める時までに当該議決権行使書面を発起人に提出して行う。

 A 前項の規定により書面によって行使した議決権の数は、出席した設立時株主の議決権の数に算入する。

 B 発起人は、創立総会の日から三箇月間、第一項の規定により提出された議決権行使書面を発起人が定めた場所に備え置かなければならない。

 C 設立時株主は、発起人が定めた時間内は、いつでも、第一項の規定により提出された議決権行使書面の閲覧又は謄写の請求をすることができる。
創立総会において、発起人が認めた場合、または設立時株主が1000人以上である場合は、設立時株主は書面により議決権を行使することができる(第67条第1項第3号、第67条第2項)。これは設立時株主の利便性のためである。

書面により議決権を行使する場合、発起人から送付された議決権行使書面に必要事項を記載し、それを発起人に提出して行う(第1項)。

書面による議決権の数は、出席した設立時株主の議決権の数に加える(第2項)。

発起人に提出された議決権行使書面の記録は、創立総会の日から3ヶ月間、発起人が定めた場所に備え置かなければならない(第3項)。会社成立後においては、会社の本店となる(第74条第6項)。

設立時株主は、この議決権行使書面の閲覧や謄写を請求することができる(第4項)。
第76条 【電磁的方法による議決権の行使】

 @ 電磁的方法による議決権の行使は、政令で定めるところにより、発起人の承諾を得て、法務省令で定める時までに議決権行使書面に記載すべき事項を、電磁的方法により当該発起人に提供して行う。

 A 設立時株主が第六十八条第三項の承諾をした者である場合には、発起人は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。

 B 第一項の規定により電磁的方法によって行使した議決権の数は、出席した設立時株主の議決権の数に算入する。

 C 発起人は、創立総会の日から三箇月間、第一項の規定により提供された事項を記録した電磁的記録を発起人が定めた場所に備え置かなければならない。

 D 設立時株主は、発起人が定めた時間内は、いつでも、前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求をすることができる。
創立総会において、発起人が認めた場合、設立時株主はネットや電子メールなどの電磁的方法により議決権を行使することができる(第67条第1項第4号)。これは、設立時株主に対して、常に創立総会への出席を求めるのは、現在において不便なことであるためである。

電磁的方法により議決権を行使する場合、発起人の承諾を得た上で議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法により発起人に提出して行う(第1項)。設立時株主が第68条第3項の規定により電磁的方法による創立総会の招集通知を承諾した場合、発起人はこの承諾を拒否することはできない(第2項)。

電磁的方法により行使された議決権の数は、出席した設立時株主の議決権の数に加えられる(第3項)。

発起人に提出された電子投票の記録は、創立総会の日から3ヶ月間、発起人が定めた場所に備え置かなければならない(第4項)。

設立時株主は、この電子投票記録の閲覧や謄写を請求することができる(第5項)。
第77条 【議決権の不統一行使】

 @ 設立時株主は、その有する議決権を統一しないで行使することができる。この場合においては、創立総会の日の三日前までに、発起人に対してその旨及びその理由を通知しなければならない。

 A 発起人は、前項の設立時株主が他人のために設立時発行株式を引き受けた者でないときは、当該設立時株主が同項の規定によりその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができる。
創立総会において、二個以上の議決権を持っている設立時株主には、議決権の不統一行使が認められている(第1項)。例えば議決権が三個ある場合、二個の議決権を賛成、一個の議決権を反対とすることができる。これにより、設立時株主が他人のために設立時株式を引き受けていた場合などにおいて、その他人の分の意向を反映させることができる。

しかし、他人のために設立時株式を引き受けたなどの理由がある場合以外には、この不統一行使を認める必要性があまりないため、発起人は不統一行使を拒否することができる(第2項)。

なお、不統一行使をする場合は、創立総会の三日前までに、発起人に対してその旨およびその理由を通知しなければならない(第1項)。
第78条 【発起人の説明義務】

 発起人は、創立総会において、設立時株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が創立総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより設立時株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでない。
創立総会において、発起人は、設立時株主から特定の事項について説明を求められた場合、これについて説明しなければならない。ただし、その事項が創立総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることによって設立時株主の共同の利益を著しく害する場合、その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、説明を拒否することができる。

説明義務違反は罰則が科される可能性がある(第976条第9号)。
第79条 【議長の権限】

 @ 創立総会の議長は、当該創立総会の秩序を維持し、議事を整理する。

 A 創立総会の議長は、その命令に従わない者その他当該創立総会の秩序を乱す者を退場させることができる。
創立総会の議長の権限と責任は創立総会の秩序維持と議事整理である(第1項)。会社法において、創立総会の議事方法などは規定されていないため、議長は定款や慣習に従って行っていくことになる。

議長は、創立総会の秩序を乱す者を、退場させることができる(第2項)。この退場命令に従わない者は、不退去罪(刑法第130条後段)に問われる可能性がある。
第80条 【延期又は続行の決議】

 創立総会においてその延期又は続行について決議があった場合には、第六十七条及び第六十八条の規定は、適用しない。
創立総会において、延期または続行の決議があった場合、総会の日時等(第67条)、招集通知記載事項(第68条)に矛盾が生じる。このような場合、本条により、延期または続行の決議が優先されることになる。
第81条 【議事録】

 @ 創立総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。

 A 発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社。次条第二項において同じ。)は、創立総会の日から十年間、前項の議事録を発起人が定めた場所(株式会社の成立後にあっては、その本店。同条第二項において同じ。)に備え置かなければならない。

 B 設立時株主(株式会社の成立後にあっては、その株主及び債権者。次条第三項において同じ。)は、発起人が定めた時間(株式会社の成立後にあっては、その営業時間。同項において同じ。)内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。

 1 第一項の議事録が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求

 2 第一項の議事録が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

 C 株式会社の成立後において、当該株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、第一項の議事録について前項各号に掲げる請求をすることができる。
創立総会するときは、議事録を作成しなければならない(第1項)。この議事録は、創立総会の日から10年間、発起人が定めた場所に備え置かなければならない(第2項)。ただし、会社成立後は、会社の本店となる。

設立時株主は、議事録の閲覧や謄写を請求することができる(第3項)。株式会社の成立後は、当該株式会社の親会社の社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得た上で、議事録の閲覧や謄写を請求することができる(第4項)。
第82条 【創立総会の決議の省略】

 @ 発起人が創立総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき設立時株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の創立総会の決議があったものとみなす。

 A 発起人は、前項の規定により創立総会の決議があったものとみなされた日から十年間、同項の書面又は電磁的記録を発起人が定めた場所に備え置かなければならない。

 B 設立時株主は、発起人が定めた時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。

 1 前項の書面の閲覧又は謄写の請求

 2 前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

 C 株式会社の成立後において、当該株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、第二項の書面又は電磁的記録について前項各号に掲げる請求をすることができる。
創立総会は、発起人から提案があった事項について、設立時株主の意見の集約を行う機関である。設立時株主全員が同意している場合には、決議を行う必要性は少ないといえる。

そこで、発起人から提案があった事項について、設立時株主全員が書面または電磁的記録(電子メールなど)によって同意した場合、創立総会の決議は省略される(第1項)。この場合、設立時株主が提出した書面または電磁的記録は、創立総会の日から10年間、発起人が定めた場所に備え置かなければならない(第2項)。

設立時株主は、当該書面または電磁的記録の閲覧や謄写を請求することができる(第3項)。

株式会社の成立後においては、当該株式会社の親会社の社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得た上で、書面または電磁的記録について閲覧や謄写を請求をすることができる(第4項)。
第83条 【創立総会への報告の省略】

 発起人が設立時株主の全員に対して創立総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を創立総会に報告することを要しないことにつき設立時株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の創立総会への報告があったものとみなす。
創立総会においては、決議事項の他に、発起人が設立時株主に対して報告しなければならない事項も存在する(第87条等)。しかし、これについて設立時株主が十分な情報を得ている場合、創立総会で報告する必要性は低い。そこで、発起人が設立時株主の全員に、報告事項を通知した場合、設立時株主の全員が書面または電磁的記録により報告の省略について同意したときは、当該事項の報告が省略される。

なお、この報告事項については、決議事項の省略の場合(第82条第1項)とは異なり、報告事項の省略の同意に関する書面または電磁的記録の備え置きは義務付けられていない。
第84条 【種類株主総会の決議を必要とする旨の定めがある場合】

 設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合において、その設立に際して発行するある種類の株式の内容として、株主総会において決議すべき事項について、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とする旨の定めがあるときは、当該事項は、その定款の定めの例に従い、創立総会の決議のほか、当該種類の設立時発行株式の設立時種類株主(ある種類の設立時発行株式の設立時株主をいう。以下この節において同じ。)を構成員とする種類創立総会(ある種類の設立時発行株式の設立時種類株主の総会をいう。以下同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類創立総会において議決権を行使することができる設立時種類株主が存しない場合は、この限りでない。
本条は拒否権付種類株式(第108条第1項第8号)を発行する会社における種類創立総会についての規定である。拒否権付種類株式とはいわゆる黄金株のことである。

拒否権付種類株式の内容に関する事項について決定するには、通常の株主総会決議の他に、当該拒否権付種類株式の株主によって構成される種類株主総会の決議を得る必要がある。そして、これに対応する形で、拒否権付種類株式の内容に関する事項を設立段階で決するには、通常の創立総会決議の他に、当該拒否権付種類株式の設立時種類株主によって構成される種類創立総会の決議を得る必要がある。

ただし、当該種類創立総会において決議を行使することができる設立時種類株主がいない場合は、種類創立総会の決議は不要である。
第85条 【種類創立総会の招集及び決議】

 @ 前条、第九十条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)、第九十二条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)、第百条第一項又は第百一条第一項の規定により種類創立総会の決議をする場合には、発起人は、種類創立総会を招集しなければならない。

 A 種類創立総会の決議は、当該種類創立総会において議決権を行使することができる設立時種類株主の議決権の過半数であって、出席した当該設立時種類株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行う。

 B 前項の規定にかかわらず、第百条第一項の決議は、同項に規定する種類創立総会において議決権を行使することができる設立時種類株主の半数以上であって、当該設立時種類株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行わなければならない。
通常の創立総会と同じように、種類創立総会の開催には発起人による招集が必要である(第1項)。

種類創立総会の決議は、議決権の行使が可能な設立時種類株主の過半数かつ、出席した設立時種類株主の議決権の3分の2以上の多数決によって行われる(第2項)。

ただし、譲渡制限種類株式(第108条第1項第4号)または全部取得条項付種類株式(第108条第1項第7号)を発行するための定款変更を行う場合の決議(第100条第1項)においては、当該創立総会において議決権の行使が可能な設立時種類株主の過半数かつ、出席した設立時種類株主の議決権の3分の2以上の多数決によって行われる(第3項)。
第86条 【創立総会に関する規定の準用】

 第六十七条から第七十一条まで、第七十二条第一項及び第七十四条から第八十二条までの規定は、種類創立総会について準用する。この場合において、第六十七条第一項第三号及び第四号並びに第二項、第六十八条第一項及び第三項、第六十九条から第七十一条まで、第七十二条第一項、第七十四条第一項、第三項及び第四項、第七十五条第二項、第七十六条第二項及び第三項、第七十七条、第七十八条本文並びに第八十二条第一項中「設立時株主」とあるのは、「設立時種類株主(ある種類の設立時発行株式の設立時株主をいう。)」と読み替えるものとする。
本条は、創立総会に関する規定を種類創立総会に準用するための規定である。条文中の「設立時株主」は、「設立時種類株主」に読み替える。
第3款 設立に関する事項の報告

第87条 【設立に関する事項の報告】


 @ 発起人は、株式会社の設立に関する事項を創立総会に報告しなければならない。

 A 発起人は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録を創立総会に提出し、又は提供しなければならない。

 1 定款に第二十八条各号に掲げる事項(第三十三条第十項各号に掲げる場合における当該各号に定める事項を除く。)の定めがある場合 第三十三条第二項の検査役の同条第四項の報告の内容

 2 第三十三条第十項第三号に掲げる場合 同号に規定する証明の内容
創立総会において、発起人は会社の設立経過について報告する義務を負う(第1項)。設立時株主にとって、会社の設立経過は重要事項だからである。

定款に変態設立事項(第28条)を定めている場合、検査役の調査の報告内容を記載・記録した書面または電磁的記録を創立総会に提出・提供しなければならない(第2項第1号)。また、第33条第10項第3号に基づき、現物出資・財産引き受けが相当であることについて、弁護士・弁護士法人・公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人の証明を受けた場合には、その証明内容を記載・記録した書面または電磁的記録を創立総会に提出・提供しなければならない(第2項第2号)。
第4款 設立時取締役等の選任及び解任

第88条 【設立時取締役等の選任】

 第五十七条第一項の募集をする場合には、設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人の選任は、創立総会の決議によって行わなければならない。
発起設立の場合と比較したのが以下の表である。

種類 条文 説明
発起設立 第40条第1項 発起人のみによって、設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役、設立時会計監査人を選任することができる。
募集設立 第88条(本条) 創立総会の決議によって、設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役、設立時会計監査人を選任することができる。
第89条 【累積投票による設立時取締役の選任】

 @ 創立総会の目的である事項が二人以上の設立時取締役の選任である場合には、設立時株主(設立時取締役の選任について議決権を行使することができる設立時株主に限る。以下この条において同じ。)は、定款に別段の定めがあるときを除き、発起人に対し、第三項から第五項までに規定するところにより設立時取締役を選任すべきことを請求することができる。

 A 前項の規定による請求は、同項の創立総会の日の五日前までにしなければならない。

 B 第七十二条第一項の規定にかかわらず、第一項の規定による請求があった場合には、設立時取締役の選任の決議については、設立時株主は、その引き受けた設立時発行株式一株(単元株式数を定款で定めている場合にあっては、一単元の設立時発行株式)につき、当該創立総会において選任する設立時取締役の数と同数の議決権を有する。この場合においては、設立時株主は、一人のみに投票し、又は二人以上に投票して、その議決権を行使することができる。

 C 前項の場合には、投票の最多数を得た者から順次設立時取締役に選任されたものとする。

 D 前二項に定めるもののほか、第一項の規定による請求があった場合における設立時取締役の選任に関し必要な事項は、法務省令で定める。
本条は、創立総会での設立時取締役の選任における累積投票制度についての規定である。

二人以上の設立時取締役を同時に選任する場合、通常は一人ずつ別々に選任するため、その全部が多数派設立時株主から選ばれることになる。この場合、少数派設立時株主は、設立時発行株式引き受け数に応じた取締役のポストの割り当てを受けることができない可能性がある。そして、このような事態を是正するために、本条の累積投票制度がある。

同じ創立総会で二人以上の設立時取締役を選任する場合、その設立時取締役全員を一括で選任することになる。例えば、三人を選任するなら、一人につき一回で合計三回の選任決議を行うのではなく、三人について同時に決議を行う。この場合、各設立時株主には、一株につき選任される設立時取締役の数と同数の議決権を認める。例えば、三人を選任するなら、一株について三票が与えられることとなる。そして、各設立時株主は、この議決権を全部一人に集中して投票したり、数人に分散して投票したりすることができる(第3項)。そして、投票の結果、最多得票を得た者から順番に、設立時取締役に選任されていく(第4項)。

ただし、この累積投票制度は、設立時株主からの請求があった場合に限り認められており(第1項)、この請求は創立総会の日の5日前までに行う必要がある(第2項)。

累積投票制度によって、少数派であっても、議決権を特定の者に集中することによって、自らの推す候補を当選される可能性が高くなる。
第90条 【種類創立総会の決議による設立時取締役等の選任】

 @ 第八十八条の規定にかかわらず、株式会社の設立に際して第百八条第一項第九号に掲げる事項(取締役に関するものに限る。)についての定めがある種類の株式を発行する場合には、設立時取締役は、同条第二項第九号に定める事項についての定款の定めの例に従い、当該種類の設立時発行株式の設立時種類株主を構成員とする種類創立総会の決議によって選任しなければならない。

 A 前項の規定は、株式会社の設立に際して第百八条第一項第九号に掲げる事項(監査役に関するものに限る。)についての定めがある種類の株式を発行する場合について準用する。
募集設立においては、創立総会によって設立時役員等を選任するのが原則である(第88条)。しかし、設立しようとする会社が選解任種類株式発行会社である場合には、当該選解任種類株式を引き受けた設立時種類株主のみによって構成される種類創立総会によって当該設立時取締役・設立時監査役を選任することになる。
第91条 【設立時取締役等の解任】

 第八十八条の規定により選任された設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人は、株式会社の成立の時までの間、創立総会の決議によって解任することができる。
発起設立の場合と比較したのが以下の表である。

種類 条文 説明
発起設立 第42条 発起人のみによって、設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役、設立時会計監査人を解任することができる。
募集設立 第91条(本条) 創立総会の決議によって、設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役、設立時会計監査人を解任することができる。
第92条 【設立時取締役等の解任 その2】

 @ 第九十条第一項の規定により選任された設立時取締役は、株式会社の成立の時までの間、その選任に係る種類の設立時発行株式の設立時種類株主を構成員とする種類創立総会の決議によって解任することができる。

 A 前項の規定にかかわらず、第四十一条第一項の規定により又は種類創立総会若しくは種類株主総会において選任された取締役を株主総会の決議によって解任することができる旨の定款の定めがある場合には、第九十条第一項の規定により選任された設立時取締役は、株式会社の成立の時までの間、創立総会の決議によって解任することができる。

 B 前二項の規定は、第九十条第二項において準用する同条第一項の規定により選任された設立時監査役について準用する。
第90条第1項により、種類創立総会で選任した設立時取締役・設立時監査役を解任するには、原則として種類創立総会の決議による必要がある(第1項)。ただし、定款に、「第41条第1項、種類創立総会、種類株主総会によって選任された設立時取締役・設立時監査役であっても、通常の株主総会によって解任することができる」旨の規定がある場合には、第90条第1項により種類創立総会によって選任された設立時取締役・設立時監査役であっても、通常の創立総会によって解任することができる(第2項)。
第5款 設立時取締役等による調査

第93条 【設立時取締役等による調査】


 @ 設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査役設置会社である場合にあっては、設立時取締役及び設立時監査役。以下この条において同じ。)は、その選任後遅滞なく、次に掲げる事項を調査しなければならない。

 1 第三十三条第十項第一号又は第二号に掲げる場合における現物出資財産等(同号に掲げる場合にあっては、同号の有価証券に限る。)について定款に記載され、又は記録された価額が相当であること。

 2 第三十三条第十項第三号に規定する証明が相当であること。

 3 発起人による出資の履行及び第六十三条第一項の規定による払込みが完了していること。

 4 前三号に掲げる事項のほか、株式会社の設立の手続が法令又は定款に違反していないこと。

 A 設立時取締役は、前項の規定による調査の結果を創立総会に報告しなければならない。

 B 設立時取締役は、創立総会において、設立時株主から第一項の規定による調査に関する事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。
本条は、募集設立においての設立時取締役等の調査についての規定である。

第33条は変態設立事項についての規定である。変態設立事項は検査役の調査が必要であるが、例外的に現物出資と財産引き受けについては、(1)対象となる財産の価額が500万円を超えない場合、(2)対象となる財産が市場価格のある有価証券の場合(定款記載の価額がその市場価格を超えない場合に限る)、(3)現物出資・財産引き受けが相当であることについて、弁護士・弁護士法人・公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人の証明を受けた場合(不動産の場合、不動産鑑定士の評価も必要である)には、検査役の調査は不要とされている。

このように、調査が不要とされている場合であっても、全く調査しないというのは妥当ではないため、設立時取締役等は、(1)と(2)の事項における定款に記載・記録された価額が相当であるか、(3)の証明が相当であるかについて調査しなければならない(第1項第1号と第2号)。

また、出資の履行が完了しているか、会社の設立手続きが法令または定款に違反していないかを調査する必要がある(第1項第3号と第4号)。

そして、これらの調査結果について、設立時取締役は創立総会で報告しなければならない(第2項)。また、創立総会において設立時株主から調査についての説明を求められた場合は、必要な説明もしなければならない(第3項)。
第94条 【設立時取締役等が発起人である場合の特則】

 @ 設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査役設置会社である場合にあっては、設立時取締役及び設立時監査役)の全部又は一部が発起人である場合には、創立総会においては、その決議によって、前条第一項各号に掲げる事項を調査する者を選任することができる。

 A 前項の規定により選任された者は、必要な調査を行い、当該調査の結果を創立総会に報告しなければならない。
第93条の設立時取締役がしなければならない調査は、発起人が設立時取締役に含まれている場合、自分が行ったことを自分で調査することになり、調査の公正が害される可能性がある。

このような場合、創立総会において、調査の代行者を選任することができる(第1項)。選任された代行者は、必要な調査を行い、調査結果を創立総会に報告しなければならない(第2項)。
第6款 定款の変更

第95条 【発起人による定款の変更の禁止】

 第五十七条第一項の募集をする場合には、発起人は、第五十八条第一項第三号の期日又は同号の期間の初日のうち最も早い日以後は、第三十三条第九項並びに第三十七条第一項及び第二項の規定にかかわらず、定款の変更をすることができない。
設立時発行株式の募集(第57条第1項)を行う場合、発起人は払い込み金額の払い込み期日または期間の経過後は定款を変更することができない。引受人は通知記載事項(第59条第1項)を前提にして払い込みをするためである。
第96条 【創立総会における定款の変更】

 第三十条第二項の規定にかかわらず、創立総会においては、その決議によって、定款の変更をすることができる。
第30条第2項は、公証人の認証を受けた定款は、会社成立前において変更することができないという規定である。しかし、創立総会の決議があれば、会社成立前であっても、定款を変更することができる。
第97条 【設立時発行株式の引受けの取消し】

 創立総会において、第二十八条各号に掲げる事項を変更する定款の変更の決議をした場合には、当該創立総会においてその変更に反対した設立時株主は、当該決議後二週間以内に限り、その設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消すことができる。
創立総会において、変態設立事項(第28条各号)に関する定款の変更を決議した場合、変更に反対した設立時株主は、設立時発行株式の引き受けについての意思表示を取り消すことができる。変態設立事項は、会社財産や会社の利害関係人に不測の損害を与える可能性があるため、この規定に関する定款の変更に反対した設立時株主はその地位から降りることができるようにしている。
第98条 【創立総会の決議による発行可能株式総数の定め】

 第五十七条第一項の募集をする場合において、発行可能株式総数を定款で定めていないときは、株式会社の成立の時までに、創立総会の決議によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。
設立時発行株式の募集を行う場合(第98条)、募集時点においては発行可能株式総数を定款で決める必要はない。これは引受人の見込みが立たない場合もあるので、柔軟な対応ができるようにするためである。

しかし、会社の成立までには、創立総会の決議により定款に発行可能株式総数を定めなければならない。
第99条 【定款の変更の手続の特則】

 設立しようとする会社が種類株式発行会社である場合において、次の各号に掲げるときは、当該各号の種類の設立時発行株式の設立時種類株主全員の同意を得なければならない。

 1 ある種類の株式の内容として第百八条第一項第六号に掲げる事項についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとするとき。

 2 ある種類の株式について第三百二十二条第二項の規定による定款の定めを設けようとするとき。
設立予定の会社が種類株式発行会社であるとき、取得条項付種類株式(第108条第1項第6号)の発行に関する定款変更を行う場合(本条第1号)、第322条第2項の事項につき種類株主総会の開催を不要とする定款変更を行う場合(本条第2号)には、当該設立時種類株主全員の同意を得なければならない。これらの事項は当該設立時株主に与える影響が大きいためである。
第100条 【定款の変更の手続の特則 その2】

 @ 設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合において、定款を変更してある種類の株式の内容として第百八条第一項第四号又は第七号に掲げる事項についての定款の定めを設けるときは、当該定款の変更は、次に掲げる設立時種類株主を構成員とする種類創立総会(当該設立時種類株主に係る設立時発行株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の設立時発行株式の種類別に区分された設立時種類株主を構成員とする各種類創立総会。以下この条において同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類創立総会において議決権を行使することができる設立時種類株主が存しない場合は、この限りでない。

 1 当該種類の設立時発行株式の設立時種類株主

 2 第百八条第二項第五号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得請求権付株式の設立時種類株主

 3 第百八条第二項第六号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得条項付株式の設立時種類株主

 A 前項に規定する種類創立総会において当該定款の変更に反対した設立時種類株主は、当該種類創立総会の決議後二週間以内に限り、その設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消すことができる。
設立予定の会社が種類株式発行会社であるとき、譲渡制限付種類株式(第108条第1項第4号)の発行を認める定款変更を行う場合、または、全部取得条項付種類株式(第108条第1項第7号)の発行を認める定款変更を認める場合には、通常の創立総会の決議に加えて、当該種類株式に関する設立時種類株主によって構成される種類創立総会の議決を得なければならない(本条第1項)。

この定款変更に反対した設立時株主は、設立時発行株式の引き受けに係る意思表示を取り消すことができる(第2項)。この取り消しは、当該種類創立総会の決議後2週間以内にしなければならない。
第101条 【定款の変更の手続の特則 その3】

 @ 設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合において、次に掲げる事項についての定款の変更をすることにより、ある種類の設立時発行株式の設立時種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該定款の変更は、当該種類の設立時発行株式の設立時種類株主を構成員とする種類創立総会(当該設立時種類株主に係る設立時発行株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の設立時発行株式の種類別に区分された設立時種類株主を構成員とする各種類創立総会)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類創立総会において議決権を行使することができる設立時種類株主が存しない場合は、この限りでない。

 1 株式の種類の追加

 2 株式の内容の変更

 3 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数(株式会社が発行することができる一の種類の株式の総数をいう。以下同じ。)の増加

 A 前項の規定は、単元株式数についての定款の変更であって、当該定款の変更について第三百二十二条第二項の規定による定款の定めがある場合における当該種類の設立時発行株式の設立時種類株主を構成員とする種類創立総会については、適用しない。
設立予定の会社が種類株式発行会社であるとき、株式の種類の追加、株式の内容の変更、発行可能株式総数または発行可能種類株式総数を増加させる定款変更を行う場合、それがある種類の設立時発行株式の設立時種類株主に損害を与える可能性があるときは、通常の創立総会の決議に加えて、当該種類株式に関する設立時種類株主によって構成される種類創立総会の議決を得なければならない(第1項)。

ただし、単元株式数についての定款変更を行うとき、第322条第1項の規定につき種類株主総会の開催を不要とする定款の規定がある場合(第322条第2項)には、当該種類創立総会の決議は不要である(第2項)。
第7款 設立手続等の特則等

第102条 【設立手続等の特則】


 @ 設立時募集株式の引受人は、発起人が定めた時間内は、いつでも、第三十一条第二項各号に掲げる請求をすることができる。ただし、同項第二号又は第四号に掲げる請求をするには、発起人の定めた費用を支払わなければならない。

 A 設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立の時に、第六十三条第一項の規定による払込みを行った設立時発行株式の株主となる。

 B 民法第九十三条ただし書及び第九十四条第一項の規定は、設立時募集株式の引受けの申込み及び割当て並びに第六十一条の契約に係る意思表示については、適用しない。

 C 設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立後又は創立総会若しくは種類創立総会においてその議決権を行使した後は、錯誤を理由として設立時発行株式の引受けの無効を主張し、又は詐欺若しくは強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができない。
会社設立中は、発起人のみが定款の閲覧等を請求することができるのが原則である(第31条第2項)。しかし、募集設立の場合には、設立時募集株式引受人も定款の閲覧等を請求することができる(本条第1項)。

設立時募集株式引受人は、払い込み金額の払い込み(第63条第1項)を行った後、株式会社成立の時に、当該設立時発行株式の株主となる(本条第2項)。払い込んだ時に、株主となるわけではない。

設立時募集株式の引き受けの申し込み・割り当て、設立時募集株式の総株引き受け(第61条)についての意思表示は、民法第93条ただし書き(心裡留保)、第94条第1項(虚偽表示)は適用されない(本条第3項)。

設立時募集株式引受人は、株式会社成立後、または創立総会・種類創立総会のいてその議決権を行使した後は、設立時発行株式の引き受けについて錯誤無効(民法第95条)を主張したり、詐欺・強迫による取り消し(民法第96条第1項)を行うことはできない(本条第4項)。

民法については、以下を参照。
第2節 意思表示 第93条〜第98条の2
第103条 【発起人の責任等】

 @ 第五十七条第一項の募集をした場合における第五十二条第二項の規定の適用については、同項中「次に」とあるのは、「第一号に」とする。

 A 第五十七条第一項の募集をした場合において、当該募集の広告その他当該募集に関する書面又は電磁的記録に自己の氏名又は名称及び株式会社の設立を賛助する旨を記載し、又は記録することを承諾した者(発起人を除く。)は、発起人とみなして、前節及び前項の規定を適用する。
現物出資財産等の会社成立時の価額が、定款に記載・記録された価額に著しく不足する場合、発起人と設立時取締役は連帯してその不足額を填補する責任を負う(第52条第1項)。発起人等に不足額を填補させることにより、会社財産を確保するとともに、現物出資が必ず履行されることを担保する趣旨の条文であり、無過失責任である(発起設立の場合は、第52条第2項第2号の規定にあるように、発起人等が価額が不足したことについて過失がなかったことを証明すれば免責される。しかし、募集設立の場合は、本条第1項により適用が排除されており、無過失責任となる。)。

募集設立の場合、発起人以外の者で、募集の広告等に自己の氏名・名称・株式会社の設立を賛助する旨を掲載することを承諾した者を、擬似発起人という。例えば、政財界等の有力者に会社設立の後ろ盾になってもらうような場合のことである。この擬似発起人は、発起人と同様の責任を負う(本条第2項)。これは擬似発起人を信頼して、募集に応じた引受人を保護するための規定である。