会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第1章 設立

第9節 募集による設立

第2款 創立総会等
第65条 【創立総会の招集】

 @ 第五十七条第一項の募集をする場合には、発起人は、第五十八条第一項第三号の期日又は同号の期間の末日のうち最も遅い日以後、遅滞なく、設立時株主(第五十条第一項又は第百二条第二項の規定により株式会社の株主となる者をいう。以下同じ。)の総会(以下「創立総会」という。)を招集しなければならない。

 A 発起人は、前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、いつでも、創立総会を招集することができる。
募集設立を行う場合、発起人は創立総会を招集しなければならない(第1項)。この創立総会とは、設立時株主による議決機関で(会社成立後の株主総会に相当)、払込期日または期間の経過後、すぐに招集しなければならない。

また、創立総会は発起人が必要があると認める場合にも開催可能であり、この場合は時期的な制限はない(第2項)。
第66条 【創立総会の権限】

 創立総会は、この節に規定する事項及び株式会社の設立の廃止、創立総会の終結その他株式会社の設立に関する事項に限り、決議をすることができる。
創立総会で決議できることは以下である。
・会社法第2編第1章第9節で規定する事項
・会社の設立の廃止
・創立総会の終結
・その他株式会社の設立に関する事項
※これらの中には必ず決議しなければならない必要的決議事項も含まれている(第88条)
※創立総会では一定事項の報告も行われる(第93条第2項)
第67条 【創立総会の招集の決定】

 @ 発起人は、創立総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 創立総会の日時及び場所

 2 創立総会の目的である事項

 3 創立総会に出席しない設立時株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨

 4 創立総会に出席しない設立時株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨

 5 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

 A 発起人は、設立時株主(創立総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない設立時株主を除く。次条から第七十一条までにおいて同じ。)の数が千人以上である場合には、前項第三号に掲げる事項を定めなければならない。
発起人は、創立総会を招集する場合、次の事項を決めなければならない。
・創立総会の日時
・創立総会の場所
・創立総会の目的である事項
・書面投票を認めるときはその旨
・電子投票を認めるときはその旨
・法務省令で定める事項


設立時株主が1000人以上いる場合、書面での投票を認めなければならない(第1項第3号、第2項)。これは設立時株主が多数いる場合、その中に出席できない者も多数いると予想されるためである。
第68条 【創立総会の招集の通知】

 @ 創立総会を招集するには、発起人は、創立総会の日の二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合にあっては、一週間(当該設立しようとする株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、設立時株主に対してその通知を発しなければならない。

 A 次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。

 1 前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合

 2 設立しようとする株式会社が取締役会設置会社である場合

 B 発起人は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、設立時株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該発起人は、同項の書面による通知を発したものとみなす。

 C 前二項の通知には、前条第一項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

 D 発起人が設立時株主に対してする通知又は催告は、第二十七条第五号又は第五十九条第三項第一号の住所(当該設立時株主が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を発起人に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。

 E 前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。

 F 前二項の規定は、第一項の通知に際して設立時株主に書面を交付し、又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供する場合について準用する。この場合において、前項中「到達したもの」とあるのは、「当該書面の交付又は当該事項の電磁的方法による提供があったもの」と読み替えるものとする。
創立総会の招集は、原則として発起人は総会当日の二週間前までに招集通知を発送しなければならない(第1項)。ただし、この期間には例外があり、設立予定の会社が非公開会社である場合は、一週間前までに通知を発送すればよい(第1項ただし書き)。この場合でも、書面投票(第67条第1項第3号)または電子投票(第67条第1項第4号)を認めた場合には、二週間前までに通知を発送しなければならない。また、設立予定の会社が取締役会非設置会社で、一週間を下回る期間を定款で定めた場合は、その期間内に通知を発送すればよい。

招集通知は原則として書面の他、口頭でも行うことができる。しかし、書面投票または電子投票を認めた場合、設立予定の会社が取締役会設置会社である場合は、必ず書面でしなければならない(第2項)。

設立時株主の同意があれば、電磁的方法で通知を発送することができる(第3項)。

招集通知には、以下の事項を記載しなければならない。
・創立総会の日時
・創立総会の場所
・創立総会の目的である事項
・書面投票を認めるときはその旨
・電子投票を認めるときはその旨
・法務省令で定める事項

招集通知は、第二十七条第五号又は第五十九条第三項第一号の住所にあてて発送すれば足り(第5項)、通常到達すべきであった時に設立時株主のもとに到達したものとみなされる(第6項)。
第69条 【招集手続の省略】

 前条の規定にかかわらず、創立総会は、設立時株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。ただし、第六十七条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合は、この限りでない。
設立予定の会社が小規模な会社である場合、発起人と設立時株主がほとんど同じであるようなこともある。このような場合、設立時株主が全員同意していれば、第68条の招集手続きを省略することができる。

ただし、書面投票または電子投票を認めた場合には、招集手続きを省略することはできない。
第70条 【創立総会参考書類及び議決権行使書面の交付等】

 @ 発起人は、第六十七条第一項第三号に掲げる事項を定めた場合には、第六十八条第一項の通知に際して、法務省令で定めるところにより、設立時株主に対し、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(以下この款において「創立総会参考書類」という。)及び設立時株主が議決権を行使するための書面(以下この款において「議決権行使書面」という。)を交付しなければならない。

 A 発起人は、第六十八条第三項の承諾をした設立時株主に対し同項の電磁的方法による通知を発するときは、前項の規定による創立総会参考書類及び議決権行使書面の交付に代えて、これらの書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、設立時株主の請求があったときは、これらの書類を当該設立時株主に交付しなければならない。
創立総会を招集するとき、発起人は原則として設立時株主に招集通知を発送しなければならない(第68条第1項)。そして、発起人は、書面投票(第67条第1項第3号)を認めた場合、招集通知に創立総会参考書類と議決権行使書面を添付しなければならない(本条第1項)。

名前 内容
創立総会参考書類 総会での情報収集ができない欠席者のための、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類
議決権行使書面 欠席者が議決権を行使するための書面


電子メールなどの電磁的方法による総会の招集通知を設立時株主が認めた場合(第68条第3項)、創立総会参考書類と議決権行使書面は電子メールの添付ファイルなどによって提供することが可能である(本条第2項)。しかし、設立時株主から請求があった場合は、書面を交付する必要がある(本条第2項但し書き)。
第71条 【創立総会参考書類及び議決権行使書面の交付等 その2】

 @ 発起人は、第六十七条第一項第四号に掲げる事項を定めた場合には、第六十八条第一項の通知に際して、法務省令で定めるところにより、設立時株主に対し、創立総会参考書類を交付しなければならない。

 A 発起人は、第六十八条第三項の承諾をした設立時株主に対し同項の電磁的方法による通知を発するときは、前項の規定による創立総会参考書類の交付に代えて、当該創立総会参考書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、設立時株主の請求があったときは、創立総会参考書類を当該設立時株主に交付しなければならない。

 B 発起人は、第一項に規定する場合には、第六十八条第三項の承諾をした設立時株主に対する同項の電磁的方法による通知に際して、法務省令で定めるところにより、設立時株主に対し、議決権行使書面に記載すべき事項を当該電磁的方法により提供しなければならない。

 C 発起人は、第一項に規定する場合において、第六十八条第三項の承諾をしていない設立時株主から創立総会の日の一週間前までに議決権行使書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供の請求があったときは、法務省令で定めるところにより、直ちに、当該設立時株主に対し、当該事項を電磁的方法により提供しなければならない。
創立総会を招集するとき、発起人は原則として設立時株主に招集通知を発送しなければならない(第68条第1項)。そして、発起人は、電子投票(第67条第1項第4号)を認めた場合、招集通知に創立総会参考書類と議決権行使書面を添付しなければならない(本条第1項)。

電子メールなどの電磁的方法による総会の招集通知を設立時株主が認めた場合(第68条第3項)、創立総会参考書類は電子メールの添付ファイルなどによって提供することが可能である(本条第2項)。しかし、設立時株主から請求があった場合は、書面を交付する必要がある(本条第2項但し書き)。

電磁的方法による総会の招集通知を認めた設立時株主に対しては、創立総会参考書類に加えて、議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法によって提供する必要がある(第3項)。ただ、電磁的方法による総会の招集通知を認めていない設立時株主が、議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法で提供してほしい旨の請求をした場合、すぐに電磁的方法による提供を行わなくてはならない(第4項)。
第72条 【議決権の数】

 @ 設立時株主(成立後の株式会社がその総株主の議決権の四分の一以上を有することその他の事由を通じて成立後の株式会社がその経営を実質的に支配することが可能となる関係にあるものとして法務省令で定める設立時株主を除く。)は、創立総会において、その引き受けた設立時発行株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の設立時発行株式につき一個の議決権を有する。

 A 設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合において、株主総会において議決権を行使することができる事項について制限がある種類の設立時発行株式を発行するときは、創立総会において、設立時株主は、株主総会において議決権を行使することができる事項に相当する事項に限り、当該設立時発行株式について議決権を行使することができる。

 B 前項の規定にかかわらず、株式会社の設立の廃止については、設立時株主は、その引き受けた設立時発行株式について議決権を行使することができる。
設立時株主には、原則として設立時発行株式一株につき一個の議決権が与えられる(第1項)。ただし、議決権制限種類株式発行会社(第108条第1項第3号)である場合、設立時株主は、株主総会で議決権を行使することができる事項に相当する事項に限って、議決権を行使することができる(第2項)。

ただし、会社の設立の廃止に関しては、極めて重要な事項であるため、議決権制限種類株式によって議決権を制限されている設立時株主であっても、議決権を行使することができる(第3項)。
第73条 【創立総会の決議】

 @ 創立総会の決議は、当該創立総会において議決権を行使することができる設立時株主の議決権の過半数であって、出席した当該設立時株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行う。

 A 前項の規定にかかわらず、その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款の変更を行う場合(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合を除く。)には、当該定款の変更についての創立総会の決議は、当該創立総会において議決権を行使することができる設立時株主の半数以上であって、当該設立時株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行わなければならない。

 B 定款を変更してその発行する全部の株式の内容として第百七条第一項第三号に掲げる事項についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとする場合(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合を除く。)には、設立時株主全員の同意を得なければならない。

 C 創立総会は、第六十七条第一項第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。ただし、定款の変更又は株式会社の設立の廃止については、この限りでない。
本条をまとめると以下の表のようになる。
内容
創立総会の決議方法 当該創立総会において議決権の行使が可能な設立時株主の議決権の過半数かつ、出席した設立時株主の議決権の三分の二以上の多数決によって行われる(第1項)。
例外1 株式譲渡制限会社へ移行するための定款の変更を行う場合、当該創立総会において議決権の行使が可能な設立時株主の半数以上であって、当該設立時株主の議決権の三分の二以上に当たる多数決によって行われる(第2項)。
例外2 発行する全部を取得条項付株式(第107条第1項第3号)とする定款変更を行うには、設立時株主全員の同意を得なければならない(第3項)。
※創立総会では、第67条第1項第2号によって定められた総会の目的である事項以外の事項については議決することができない。ただし、定款の変更、株式会社の設立の廃止については議決可能である(第4項)。
第74条 【議決権の代理行使】

 @ 設立時株主は、代理人によってその議決権を行使することができる。この場合においては、当該設立時株主又は代理人は、代理権を証明する書面を発起人に提出しなければならない。

 A 前項の代理権の授与は、創立総会ごとにしなければならない。

 B 第一項の設立時株主又は代理人は、代理権を証明する書面の提出に代えて、政令で定めるところにより、発起人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該設立時株主又は代理人は、当該書面を提出したものとみなす。

 C 設立時株主が第六十八条第三項の承諾をした者である場合には、発起人は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。

 D 発起人は、創立総会に出席することができる代理人の数を制限することができる。

 E 発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社。次条第三項及び第七十六条第四項において同じ。)は、創立総会の日から三箇月間、代理権を証明する書面及び第三項の電磁的方法により提供された事項が記録された電磁的記録を発起人が定めた場所(株式会社の成立後にあっては、その本店。次条第三項及び第七十六条第四項において同じ。)に備え置かなければならない。

 F 設立時株主(株式会社の成立後にあっては、その株主。次条第四項及び第七十六条第五項において同じ。)は、発起人が定めた時間(株式会社の成立後にあっては、その営業時間。次条第四項及び第七十六条第五項において同じ。)内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。

 1 代理権を証明する書面の閲覧又は謄写の請求

 2 前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
創立総会に出席できない設立時株主は、代理人によりその議決権を行使することができる。この場合、当該設立時株主または代理人は、代理権を証明する書面を発起人に提出(発起人の承諾を得れば、電磁的方法も可)しなければならない(第1項)。この代理権は、永続的なものではなく、総会ごとに個別的に授権されなければならない(第2項)。

また、いわゆる総会屋などの対策のために、発起人は創立総会に出席できる代理人の人数を制限することができる(第5項)。
第75条 【書面による議決権の行使】

 @ 書面による議決権の行使は、議決権行使書面に必要な事項を記載し、法務省令で定める時までに当該議決権行使書面を発起人に提出して行う。

 A 前項の規定により書面によって行使した議決権の数は、出席した設立時株主の議決権の数に算入する。

 B 発起人は、創立総会の日から三箇月間、第一項の規定により提出された議決権行使書面を発起人が定めた場所に備え置かなければならない。

 C 設立時株主は、発起人が定めた時間内は、いつでも、第一項の規定により提出された議決権行使書面の閲覧又は謄写の請求をすることができる。
創立総会において、発起人が認めた場合、または設立時株主が1000人以上である場合は、設立時株主は書面により議決権を行使することができる(第67条第1項第3号、第67条第2項)。これは設立時株主の利便性のためである。

書面により議決権を行使する場合、発起人から送付された議決権行使書面に必要事項を記載し、それを発起人に提出して行う(第1項)。

書面による議決権の数は、出席した設立時株主の議決権の数に加える(第2項)。

発起人に提出された議決権行使書面の記録は、創立総会の日から3ヶ月間、発起人が定めた場所に備え置かなければならない(第3項)。会社成立後においては、会社の本店となる(第74条第6項)。

設立時株主は、この議決権行使書面の閲覧や謄写を請求することができる(第4項)。
第76条 【電磁的方法による議決権の行使】

 @ 電磁的方法による議決権の行使は、政令で定めるところにより、発起人の承諾を得て、法務省令で定める時までに議決権行使書面に記載すべき事項を、電磁的方法により当該発起人に提供して行う。

 A 設立時株主が第六十八条第三項の承諾をした者である場合には、発起人は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。

 B 第一項の規定により電磁的方法によって行使した議決権の数は、出席した設立時株主の議決権の数に算入する。

 C 発起人は、創立総会の日から三箇月間、第一項の規定により提供された事項を記録した電磁的記録を発起人が定めた場所に備え置かなければならない。

 D 設立時株主は、発起人が定めた時間内は、いつでも、前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求をすることができる。
創立総会において、発起人が認めた場合、設立時株主はネットや電子メールなどの電磁的方法により議決権を行使することができる(第67条第1項第4号)。これは、設立時株主に対して、常に創立総会への出席を求めるのは、現在において不便なことであるためである。

電磁的方法により議決権を行使する場合、発起人の承諾を得た上で議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法により発起人に提出して行う(第1項)。設立時株主が第68条第3項の規定により電磁的方法による創立総会の招集通知を承諾した場合、発起人はこの承諾を拒否することはできない(第2項)。

電磁的方法により行使された議決権の数は、出席した設立時株主の議決権の数に加えられる(第3項)。

発起人に提出された電子投票の記録は、創立総会の日から3ヶ月間、発起人が定めた場所に備え置かなければならない(第4項)。

設立時株主は、この電子投票記録の閲覧や謄写を請求することができる(第5項)。
第77条 【議決権の不統一行使】

 @ 設立時株主は、その有する議決権を統一しないで行使することができる。この場合においては、創立総会の日の三日前までに、発起人に対してその旨及びその理由を通知しなければならない。

 A 発起人は、前項の設立時株主が他人のために設立時発行株式を引き受けた者でないときは、当該設立時株主が同項の規定によりその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができる。
創立総会において、二個以上の議決権を持っている設立時株主には、議決権の不統一行使が認められている(第1項)。例えば議決権が三個ある場合、二個の議決権を賛成、一個の議決権を反対とすることができる。これにより、設立時株主が他人のために設立時株式を引き受けていた場合などにおいて、その他人の分の意向を反映させることができる。

しかし、他人のために設立時株式を引き受けたなどの理由がある場合以外には、この不統一行使を認める必要性があまりないため、発起人は不統一行使を拒否することができる(第2項)。

なお、不統一行使をする場合は、創立総会の三日前までに、発起人に対してその旨およびその理由を通知しなければならない(第1項)。
第78条 【発起人の説明義務】

 発起人は、創立総会において、設立時株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が創立総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより設立時株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでない。
創立総会において、発起人は、設立時株主から特定の事項について説明を求められた場合、これについて説明しなければならない。ただし、その事項が創立総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることによって設立時株主の共同の利益を著しく害する場合、その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、説明を拒否することができる。

説明義務違反は罰則が科される可能性がある(第976条第9号)。
第79条 【議長の権限】

 @ 創立総会の議長は、当該創立総会の秩序を維持し、議事を整理する。

 A 創立総会の議長は、その命令に従わない者その他当該創立総会の秩序を乱す者を退場させることができる。
創立総会の議長の権限と責任は創立総会の秩序維持と議事整理である(第1項)。会社法において、創立総会の議事方法などは規定されていないため、議長は定款や慣習に従って行っていくことになる。

議長は、創立総会の秩序を乱す者を、退場させることができる(第2項)。この退場命令に従わない者は、不退去罪(刑法第130条後段)に問われる可能性がある。
第80条 【延期又は続行の決議】

 創立総会においてその延期又は続行について決議があった場合には、第六十七条及び第六十八条の規定は、適用しない。
創立総会において、延期または続行の決議があった場合、総会の日時等(第67条)、招集通知記載事項(第68条)に矛盾が生じる。このような場合、本条により、延期または続行の決議が優先されることになる。
第81条 【議事録】

 @ 創立総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。

 A 発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社。次条第二項において同じ。)は、創立総会の日から十年間、前項の議事録を発起人が定めた場所(株式会社の成立後にあっては、その本店。同条第二項において同じ。)に備え置かなければならない。

 B 設立時株主(株式会社の成立後にあっては、その株主及び債権者。次条第三項において同じ。)は、発起人が定めた時間(株式会社の成立後にあっては、その営業時間。同項において同じ。)内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。

 1 第一項の議事録が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求

 2 第一項の議事録が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

 C 株式会社の成立後において、当該株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、第一項の議事録について前項各号に掲げる請求をすることができる。
創立総会するときは、議事録を作成しなければならない(第1項)。この議事録は、創立総会の日から10年間、発起人が定めた場所に備え置かなければならない(第2項)。ただし、会社成立後は、会社の本店となる。

設立時株主は、議事録の閲覧や謄写を請求することができる(第3項)。株式会社の成立後は、当該株式会社の親会社の社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得た上で、議事録の閲覧や謄写を請求することができる(第4項)。
第82条 【創立総会の決議の省略】

 @ 発起人が創立総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき設立時株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の創立総会の決議があったものとみなす。

 A 発起人は、前項の規定により創立総会の決議があったものとみなされた日から十年間、同項の書面又は電磁的記録を発起人が定めた場所に備え置かなければならない。

 B 設立時株主は、発起人が定めた時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。

 1 前項の書面の閲覧又は謄写の請求

 2 前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

 C 株式会社の成立後において、当該株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、第二項の書面又は電磁的記録について前項各号に掲げる請求をすることができる。
創立総会は、発起人から提案があった事項について、設立時株主の意見の集約を行う機関である。設立時株主全員が同意している場合には、決議を行う必要性は少ないといえる。

そこで、発起人から提案があった事項について、設立時株主全員が書面または電磁的記録(電子メールなど)によって同意した場合、創立総会の決議は省略される(第1項)。この場合、設立時株主が提出した書面または電磁的記録は、創立総会の日から10年間、発起人が定めた場所に備え置かなければならない(第2項)。

設立時株主は、当該書面または電磁的記録の閲覧や謄写を請求することができる(第3項)。

株式会社の成立後においては、当該株式会社の親会社の社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得た上で、書面または電磁的記録について閲覧や謄写を請求をすることができる(第4項)。
第83条 【創立総会への報告の省略】

 発起人が設立時株主の全員に対して創立総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を創立総会に報告することを要しないことにつき設立時株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の創立総会への報告があったものとみなす。
創立総会においては、決議事項の他に、発起人が設立時株主に対して報告しなければならない事項も存在する(第87条等)。しかし、これについて設立時株主が十分な情報を得ている場合、創立総会で報告する必要性は低い。そこで、発起人が設立時株主の全員に、報告事項を通知した場合、設立時株主の全員が書面または電磁的記録により報告の省略について同意したときは、当該事項の報告が省略される。

なお、この報告事項については、決議事項の省略の場合(第82条第1項)とは異なり、報告事項の省略の同意に関する書面または電磁的記録の備え置きは義務付けられていない。
第84条 【種類株主総会の決議を必要とする旨の定めがある場合】

 設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合において、その設立に際して発行するある種類の株式の内容として、株主総会において決議すべき事項について、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とする旨の定めがあるときは、当該事項は、その定款の定めの例に従い、創立総会の決議のほか、当該種類の設立時発行株式の設立時種類株主(ある種類の設立時発行株式の設立時株主をいう。以下この節において同じ。)を構成員とする種類創立総会(ある種類の設立時発行株式の設立時種類株主の総会をいう。以下同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類創立総会において議決権を行使することができる設立時種類株主が存しない場合は、この限りでない。
本条は拒否権付種類株式(第108条第1項第8号)を発行する会社における種類創立総会についての規定である。拒否権付種類株式とはいわゆる黄金株のことである。

拒否権付種類株式の内容に関する事項について決定するには、通常の株主総会決議の他に、当該拒否権付種類株式の株主によって構成される種類株主総会の決議を得る必要がある。そして、これに対応する形で、拒否権付種類株式の内容に関する事項を設立段階で決するには、通常の創立総会決議の他に、当該拒否権付種類株式の設立時種類株主によって構成される種類創立総会の決議を得る必要がある。

ただし、当該種類創立総会において決議を行使することができる設立時種類株主がいない場合は、種類創立総会の決議は不要である。
第85条 【種類創立総会の招集及び決議】

 @ 前条、第九十条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)、第九十二条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)、第百条第一項又は第百一条第一項の規定により種類創立総会の決議をする場合には、発起人は、種類創立総会を招集しなければならない。

 A 種類創立総会の決議は、当該種類創立総会において議決権を行使することができる設立時種類株主の議決権の過半数であって、出席した当該設立時種類株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行う。

 B 前項の規定にかかわらず、第百条第一項の決議は、同項に規定する種類創立総会において議決権を行使することができる設立時種類株主の半数以上であって、当該設立時種類株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行わなければならない。
通常の創立総会と同じように、種類創立総会の開催には発起人による招集が必要である(第1項)。

種類創立総会の決議は、議決権の行使が可能な設立時種類株主の過半数かつ、出席した設立時種類株主の議決権の3分の2以上の多数決によって行われる(第2項)。

ただし、譲渡制限種類株式(第108条第1項第4号)または全部取得条項付種類株式(第108条第1項第7号)を発行するための定款変更を行う場合の決議(第100条第1項)においては、当該創立総会において議決権の行使が可能な設立時種類株主の過半数かつ、出席した設立時種類株主の議決権の3分の2以上の多数決によって行われる(第3項)。
第86条 【創立総会に関する規定の準用】

 第六十七条から第七十一条まで、第七十二条第一項及び第七十四条から第八十二条までの規定は、種類創立総会について準用する。この場合において、第六十七条第一項第三号及び第四号並びに第二項、第六十八条第一項及び第三項、第六十九条から第七十一条まで、第七十二条第一項、第七十四条第一項、第三項及び第四項、第七十五条第二項、第七十六条第二項及び第三項、第七十七条、第七十八条本文並びに第八十二条第一項中「設立時株主」とあるのは、「設立時種類株主(ある種類の設立時発行株式の設立時株主をいう。)」と読み替えるものとする。
本条は、創立総会に関する規定を種類創立総会に準用するための規定である。条文中の「設立時株主」は、「設立時種類株主」に読み替える。