会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第1章 設立

第9節 募集による設立

第4款 設立時取締役等の選任及び解任
第88条 【設立時取締役等の選任】

 第五十七条第一項の募集をする場合には、設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人の選任は、創立総会の決議によって行わなければならない。
発起設立の場合と比較したのが以下の表である。

種類 条文 説明
発起設立 第40条第1項 発起人のみによって、設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役、設立時会計監査人を選任することができる。
募集設立 第88条(本条) 創立総会の決議によって、設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役、設立時会計監査人を選任することができる。
第89条 【累積投票による設立時取締役の選任】

 @ 創立総会の目的である事項が二人以上の設立時取締役の選任である場合には、設立時株主(設立時取締役の選任について議決権を行使することができる設立時株主に限る。以下この条において同じ。)は、定款に別段の定めがあるときを除き、発起人に対し、第三項から第五項までに規定するところにより設立時取締役を選任すべきことを請求することができる。

 A 前項の規定による請求は、同項の創立総会の日の五日前までにしなければならない。

 B 第七十二条第一項の規定にかかわらず、第一項の規定による請求があった場合には、設立時取締役の選任の決議については、設立時株主は、その引き受けた設立時発行株式一株(単元株式数を定款で定めている場合にあっては、一単元の設立時発行株式)につき、当該創立総会において選任する設立時取締役の数と同数の議決権を有する。この場合においては、設立時株主は、一人のみに投票し、又は二人以上に投票して、その議決権を行使することができる。

 C 前項の場合には、投票の最多数を得た者から順次設立時取締役に選任されたものとする。

 D 前二項に定めるもののほか、第一項の規定による請求があった場合における設立時取締役の選任に関し必要な事項は、法務省令で定める。
本条は、創立総会での設立時取締役の選任における累積投票制度についての規定である。

二人以上の設立時取締役を同時に選任する場合、通常は一人ずつ別々に選任するため、その全部が多数派設立時株主から選ばれることになる。この場合、少数派設立時株主は、設立時発行株式引き受け数に応じた取締役のポストの割り当てを受けることができない可能性がある。そして、このような事態を是正するために、本条の累積投票制度がある。

同じ創立総会で二人以上の設立時取締役を選任する場合、その設立時取締役全員を一括で選任することになる。例えば、三人を選任するなら、一人につき一回で合計三回の選任決議を行うのではなく、三人について同時に決議を行う。この場合、各設立時株主には、一株につき選任される設立時取締役の数と同数の議決権を認める。例えば、三人を選任するなら、一株について三票が与えられることとなる。そして、各設立時株主は、この議決権を全部一人に集中して投票したり、数人に分散して投票したりすることができる(第3項)。そして、投票の結果、最多得票を得た者から順番に、設立時取締役に選任されていく(第4項)。

ただし、この累積投票制度は、設立時株主からの請求があった場合に限り認められており(第1項)、この請求は創立総会の日の5日前までに行う必要がある(第2項)。

累積投票制度によって、少数派であっても、議決権を特定の者に集中することによって、自らの推す候補を当選される可能性が高くなる。
第90条 【種類創立総会の決議による設立時取締役等の選任】

 @ 第八十八条の規定にかかわらず、株式会社の設立に際して第百八条第一項第九号に掲げる事項(取締役に関するものに限る。)についての定めがある種類の株式を発行する場合には、設立時取締役は、同条第二項第九号に定める事項についての定款の定めの例に従い、当該種類の設立時発行株式の設立時種類株主を構成員とする種類創立総会の決議によって選任しなければならない。

 A 前項の規定は、株式会社の設立に際して第百八条第一項第九号に掲げる事項(監査役に関するものに限る。)についての定めがある種類の株式を発行する場合について準用する。
募集設立においては、創立総会によって設立時役員等を選任するのが原則である(第88条)。しかし、設立しようとする会社が選解任種類株式発行会社である場合には、当該選解任種類株式を引き受けた設立時種類株主のみによって構成される種類創立総会によって当該設立時取締役・設立時監査役を選任することになる。
第91条 【設立時取締役等の解任】

 第八十八条の規定により選任された設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人は、株式会社の成立の時までの間、創立総会の決議によって解任することができる。
発起設立の場合と比較したのが以下の表である。

種類 条文 説明
発起設立 第42条 発起人のみによって、設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役、設立時会計監査人を解任することができる。
募集設立 第91条(本条) 創立総会の決議によって、設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役、設立時会計監査人を解任することができる。
第92条 【設立時取締役等の解任 その2】

 @ 第九十条第一項の規定により選任された設立時取締役は、株式会社の成立の時までの間、その選任に係る種類の設立時発行株式の設立時種類株主を構成員とする種類創立総会の決議によって解任することができる。

 A 前項の規定にかかわらず、第四十一条第一項の規定により又は種類創立総会若しくは種類株主総会において選任された取締役を株主総会の決議によって解任することができる旨の定款の定めがある場合には、第九十条第一項の規定により選任された設立時取締役は、株式会社の成立の時までの間、創立総会の決議によって解任することができる。

 B 前二項の規定は、第九十条第二項において準用する同条第一項の規定により選任された設立時監査役について準用する。
第90条第1項により、種類創立総会で選任した設立時取締役・設立時監査役を解任するには、原則として種類創立総会の決議による必要がある(第1項)。ただし、定款に、「第41条第1項、種類創立総会、種類株主総会によって選任された設立時取締役・設立時監査役であっても、通常の株主総会によって解任することができる」旨の規定がある場合には、第90条第1項により種類創立総会によって選任された設立時取締役・設立時監査役であっても、通常の創立総会によって解任することができる(第2項)。