会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第1章 設立

第9節 募集による設立

第5款 設立時取締役等による調査
第93条 【設立時取締役等による調査】

 @ 設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査役設置会社である場合にあっては、設立時取締役及び設立時監査役。以下この条において同じ。)は、その選任後遅滞なく、次に掲げる事項を調査しなければならない。

 1 第三十三条第十項第一号又は第二号に掲げる場合における現物出資財産等(同号に掲げる場合にあっては、同号の有価証券に限る。)について定款に記載され、又は記録された価額が相当であること。

 2 第三十三条第十項第三号に規定する証明が相当であること。

 3 発起人による出資の履行及び第六十三条第一項の規定による払込みが完了していること。

 4 前三号に掲げる事項のほか、株式会社の設立の手続が法令又は定款に違反していないこと。

 A 設立時取締役は、前項の規定による調査の結果を創立総会に報告しなければならない。

 B 設立時取締役は、創立総会において、設立時株主から第一項の規定による調査に関する事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。
本条は、募集設立においての設立時取締役等の調査についての規定である。

第33条は変態設立事項についての規定である。変態設立事項は検査役の調査が必要であるが、例外的に現物出資と財産引き受けについては、(1)対象となる財産の価額が500万円を超えない場合、(2)対象となる財産が市場価格のある有価証券の場合(定款記載の価額がその市場価格を超えない場合に限る)、(3)現物出資・財産引き受けが相当であることについて、弁護士・弁護士法人・公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人の証明を受けた場合(不動産の場合、不動産鑑定士の評価も必要である)には、検査役の調査は不要とされている。

このように、調査が不要とされている場合であっても、全く調査しないというのは妥当ではないため、設立時取締役等は、(1)と(2)の事項における定款に記載・記録された価額が相当であるか、(3)の証明が相当であるかについて調査しなければならない(第1項第1号と第2号)。

また、出資の履行が完了しているか、会社の設立手続きが法令または定款に違反していないかを調査する必要がある(第1項第3号と第4号)。

そして、これらの調査結果について、設立時取締役は創立総会で報告しなければならない(第2項)。また、創立総会において設立時株主から調査についての説明を求められた場合は、必要な説明もしなければならない(第3項)。
第94条 【設立時取締役等が発起人である場合の特則】

 @ 設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査役設置会社である場合にあっては、設立時取締役及び設立時監査役)の全部又は一部が発起人である場合には、創立総会においては、その決議によって、前条第一項各号に掲げる事項を調査する者を選任することができる。

 A 前項の規定により選任された者は、必要な調査を行い、当該調査の結果を創立総会に報告しなければならない。
第93条の設立時取締役がしなければならない調査は、発起人が設立時取締役に含まれている場合、自分が行ったことを自分で調査することになり、調査の公正が害される可能性がある。

このような場合、創立総会において、調査の代行者を選任することができる(第1項)。選任された代行者は、必要な調査を行い、調査結果を創立総会に報告しなければならない(第2項)。