会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第1章 設立

第9節 募集による設立

第6款 定款の変更
第95条 【発起人による定款の変更の禁止】

 第五十七条第一項の募集をする場合には、発起人は、第五十八条第一項第三号の期日又は同号の期間の初日のうち最も早い日以後は、第三十三条第九項並びに第三十七条第一項及び第二項の規定にかかわらず、定款の変更をすることができない。
設立時発行株式の募集(第57条第1項)を行う場合、発起人は払い込み金額の払い込み期日または期間の経過後は定款を変更することができない。引受人は通知記載事項(第59条第1項)を前提にして払い込みをするためである。
第96条 【創立総会における定款の変更】

 第三十条第二項の規定にかかわらず、創立総会においては、その決議によって、定款の変更をすることができる。
第30条第2項は、公証人の認証を受けた定款は、会社成立前において変更することができないという規定である。しかし、創立総会の決議があれば、会社成立前であっても、定款を変更することができる。
第97条 【設立時発行株式の引受けの取消し】

 創立総会において、第二十八条各号に掲げる事項を変更する定款の変更の決議をした場合には、当該創立総会においてその変更に反対した設立時株主は、当該決議後二週間以内に限り、その設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消すことができる。
創立総会において、変態設立事項(第28条各号)に関する定款の変更を決議した場合、変更に反対した設立時株主は、設立時発行株式の引き受けについての意思表示を取り消すことができる。変態設立事項は、会社財産や会社の利害関係人に不測の損害を与える可能性があるため、この規定に関する定款の変更に反対した設立時株主はその地位から降りることができるようにしている。
第98条 【創立総会の決議による発行可能株式総数の定め】

 第五十七条第一項の募集をする場合において、発行可能株式総数を定款で定めていないときは、株式会社の成立の時までに、創立総会の決議によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。
設立時発行株式の募集を行う場合(第98条)、募集時点においては発行可能株式総数を定款で決める必要はない。これは引受人の見込みが立たない場合もあるので、柔軟な対応ができるようにするためである。

しかし、会社の成立までには、創立総会の決議により定款に発行可能株式総数を定めなければならない。
第99条 【定款の変更の手続の特則】

 設立しようとする会社が種類株式発行会社である場合において、次の各号に掲げるときは、当該各号の種類の設立時発行株式の設立時種類株主全員の同意を得なければならない。

 1 ある種類の株式の内容として第百八条第一項第六号に掲げる事項についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとするとき。

 2 ある種類の株式について第三百二十二条第二項の規定による定款の定めを設けようとするとき。
設立予定の会社が種類株式発行会社であるとき、取得条項付種類株式(第108条第1項第6号)の発行に関する定款変更を行う場合(本条第1号)、第322条第2項の事項につき種類株主総会の開催を不要とする定款変更を行う場合(本条第2号)には、当該設立時種類株主全員の同意を得なければならない。これらの事項は当該設立時株主に与える影響が大きいためである。
第100条 【定款の変更の手続の特則 その2】

 @ 設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合において、定款を変更してある種類の株式の内容として第百八条第一項第四号又は第七号に掲げる事項についての定款の定めを設けるときは、当該定款の変更は、次に掲げる設立時種類株主を構成員とする種類創立総会(当該設立時種類株主に係る設立時発行株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の設立時発行株式の種類別に区分された設立時種類株主を構成員とする各種類創立総会。以下この条において同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類創立総会において議決権を行使することができる設立時種類株主が存しない場合は、この限りでない。

 1 当該種類の設立時発行株式の設立時種類株主

 2 第百八条第二項第五号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得請求権付株式の設立時種類株主

 3 第百八条第二項第六号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得条項付株式の設立時種類株主

 A 前項に規定する種類創立総会において当該定款の変更に反対した設立時種類株主は、当該種類創立総会の決議後二週間以内に限り、その設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消すことができる。
設立予定の会社が種類株式発行会社であるとき、譲渡制限付種類株式(第108条第1項第4号)の発行を認める定款変更を行う場合、または、全部取得条項付種類株式(第108条第1項第7号)の発行を認める定款変更を認める場合には、通常の創立総会の決議に加えて、当該種類株式に関する設立時種類株主によって構成される種類創立総会の議決を得なければならない(本条第1項)。

この定款変更に反対した設立時株主は、設立時発行株式の引き受けに係る意思表示を取り消すことができる(第2項)。この取り消しは、当該種類創立総会の決議後2週間以内にしなければならない。
第101条 【定款の変更の手続の特則 その3】

 @ 設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合において、次に掲げる事項についての定款の変更をすることにより、ある種類の設立時発行株式の設立時種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該定款の変更は、当該種類の設立時発行株式の設立時種類株主を構成員とする種類創立総会(当該設立時種類株主に係る設立時発行株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の設立時発行株式の種類別に区分された設立時種類株主を構成員とする各種類創立総会)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類創立総会において議決権を行使することができる設立時種類株主が存しない場合は、この限りでない。

 1 株式の種類の追加

 2 株式の内容の変更

 3 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数(株式会社が発行することができる一の種類の株式の総数をいう。以下同じ。)の増加

 A 前項の規定は、単元株式数についての定款の変更であって、当該定款の変更について第三百二十二条第二項の規定による定款の定めがある場合における当該種類の設立時発行株式の設立時種類株主を構成員とする種類創立総会については、適用しない。
設立予定の会社が種類株式発行会社であるとき、株式の種類の追加、株式の内容の変更、発行可能株式総数または発行可能種類株式総数を増加させる定款変更を行う場合、それがある種類の設立時発行株式の設立時種類株主に損害を与える可能性があるときは、通常の創立総会の決議に加えて、当該種類株式に関する設立時種類株主によって構成される種類創立総会の議決を得なければならない(第1項)。

ただし、単元株式数についての定款変更を行うとき、第322条第1項の規定につき種類株主総会の開催を不要とする定款の規定がある場合(第322条第2項)には、当該種類創立総会の決議は不要である(第2項)。