会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第1章 設立

第9節 募集による設立

第7款 設立手続等の特則等
第102条 【設立手続等の特則】

 @ 設立時募集株式の引受人は、発起人が定めた時間内は、いつでも、第三十一条第二項各号に掲げる請求をすることができる。ただし、同項第二号又は第四号に掲げる請求をするには、発起人の定めた費用を支払わなければならない。

 A 設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立の時に、第六十三条第一項の規定による払込みを行った設立時発行株式の株主となる。

 B 民法第九十三条ただし書及び第九十四条第一項の規定は、設立時募集株式の引受けの申込み及び割当て並びに第六十一条の契約に係る意思表示については、適用しない。

 C 設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立後又は創立総会若しくは種類創立総会においてその議決権を行使した後は、錯誤を理由として設立時発行株式の引受けの無効を主張し、又は詐欺若しくは強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができない。
会社設立中は、発起人のみが定款の閲覧等を請求することができるのが原則である(第31条第2項)。しかし、募集設立の場合には、設立時募集株式引受人も定款の閲覧等を請求することができる(本条第1項)。

設立時募集株式引受人は、払い込み金額の払い込み(第63条第1項)を行った後、株式会社成立の時に、当該設立時発行株式の株主となる(本条第2項)。払い込んだ時に、株主となるわけではない。

設立時募集株式の引き受けの申し込み・割り当て、設立時募集株式の総株引き受け(第61条)についての意思表示は、民法第93条ただし書き(心裡留保)、第94条第1項(虚偽表示)は適用されない(本条第3項)。

設立時募集株式引受人は、株式会社成立後、または創立総会・種類創立総会のいてその議決権を行使した後は、設立時発行株式の引き受けについて錯誤無効(民法第95条)を主張したり、詐欺・強迫による取り消し(民法第96条第1項)を行うことはできない(本条第4項)。

民法については、以下を参照。
第2節 意思表示 第93条〜第98条の2
第103条 【発起人の責任等】

 @ 第五十七条第一項の募集をした場合における第五十二条第二項の規定の適用については、同項中「次に」とあるのは、「第一号に」とする。

 A 第五十七条第一項の募集をした場合において、当該募集の広告その他当該募集に関する書面又は電磁的記録に自己の氏名又は名称及び株式会社の設立を賛助する旨を記載し、又は記録することを承諾した者(発起人を除く。)は、発起人とみなして、前節及び前項の規定を適用する。
現物出資財産等の会社成立時の価額が、定款に記載・記録された価額に著しく不足する場合、発起人と設立時取締役は連帯してその不足額を填補する責任を負う(第52条第1項)。発起人等に不足額を填補させることにより、会社財産を確保するとともに、現物出資が必ず履行されることを担保する趣旨の条文であり、無過失責任である(発起設立の場合は、第52条第2項第2号の規定にあるように、発起人等が価額が不足したことについて過失がなかったことを証明すれば免責される。しかし、募集設立の場合は、本条第1項により適用が排除されており、無過失責任となる。)。

募集設立の場合、発起人以外の者で、募集の広告等に自己の氏名・名称・株式会社の設立を賛助する旨を掲載することを承諾した者を、擬似発起人という。例えば、政財界等の有力者に会社設立の後ろ盾になってもらうような場合のことである。この擬似発起人は、発起人と同様の責任を負う(本条第2項)。これは擬似発起人を信頼して、募集に応じた引受人を保護するための規定である。