会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第2章 株式

第1節 総則
第104条 【株主の責任】

 株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする。
本条は、株主の間接有限責任についての規定である。間接有限責任とは、会社が倒産した場合、株主は出資したお金が戻ってこなくなるだけで、それ以上のお金を支払う必要はないという責任のことである。このように、株主の責任は限定されたものであり、株式会社には投資家の出資を集めやすくなるという長所がある。
第105条 【株主の権利】

 @ 株主は、その有する株式につき次に掲げる権利その他この法律の規定により認められた権利を有する。

 1 剰余金の配当を受ける権利

 2 残余財産の分配を受ける権利

 3 株主総会における議決権

 A 株主に前項第一号及び第二号に掲げる権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。
株主の権利には大きく分けて、以下の表のものがある。
株主の権利
種類 説明 本条第1項
自益権 株主が会社から経済的な利益を受ける権利のこと。 ・第1号
・第2号
共益権 株主が会社の経営に参与する権利のこと。 ・第3号
※共益権には、その他、株主総会決議取消権のような監督是正権もある。

剰余金配当請求権、残余財産分配請求権などの自益権は株主にとって本質的な権利であり、これらを全く与えないとする定款の定めは、無効となる(本条第2項)。
第106条 【共有者による権利の行使】

 株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。
株式を複数者で共有している場合、各自が個別に株主としての権利を行使すると、応対しなければならない会社が混乱することになる。このような場合、株主の権利を行使するには、権利行使者を誰か一人決めて、会社に対してその者の氏名・名称を通知しなければならない。ただし、会社が共有者の各自が個別に株主としての権利を行使することを認める場合は、本条の規定は適用されない。
第107条 【株式の内容についての特別の定め】

 @ 株式会社は、その発行する全部の株式の内容として次に掲げる事項を定めることができる。

 1 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。

 2 当該株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。

 3 当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。

 A 株式会社は、全部の株式の内容として次の各号に掲げる事項を定めるときは、当該各号に定める事項を定款で定めなければならない。

 1 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること 次に掲げる事項

  イ 当該株式を譲渡により取得することについて当該株式会社の承認を要する旨

  ロ 一定の場合においては株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をしたものとみなすときは、その旨及び当該一定の場合

 2 当該株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること 次に掲げる事項

  イ 株主が当該株式会社に対して当該株主の有する株式を取得することを請求することができる旨

  ロ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)を交付するときは、当該社債の種類(第六百八十一条第一号に規定する種類をいう。以下この編において同じ。)及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

  ハ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)を交付するときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法

  ニ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の新株予約権付社債を交付するときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項

  ホ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の株式等(株式、社債及び新株予約権をいう。以下同じ。)以外の財産を交付するときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法

  ヘ 株主が当該株式会社に対して当該株式を取得することを請求することができる期間

 3 当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること 次に掲げる事項

  イ 一定の事由が生じた日に当該株式会社がその株式を取得する旨及びその事由

  ロ 当該株式会社が別に定める日が到来することをもってイの事由とするときは、その旨

  ハ イの事由が生じた日にイの株式の一部を取得することとするときは、その旨及び取得する株式の一部の決定の方法

  ニ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)を交付するときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

  ホ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)を交付するときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法

  ヘ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の新株予約権付社債を交付するときは、当該新株予約権付社債についてのニに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのホに規定する事項

  ト イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の株式等以外の財産を交付するときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
株式会社は、その発行する全部の株式の内容として、次の表の事項を定めることができる。
本条 名前 説明
第1項第1号 譲渡制限株式 株式会社がその発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定めを設けている場合における当該株式をいう(第2条第17号)。
第1項第2号 取得請求権付株式 株式会社がその発行する全部又は一部の株式の内容として株主が当該株式会社に対して当該株式の取得を請求することができる旨の定めを設けている場合における当該株式をいう(第2条第18号)。
第1項第3号 取得条項付株式 株式会社がその発行する全部又は一部の株式の内容として当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件として当該株式を取得することができる旨の定めを設けている場合における当該株式をいう(第2条第19号)。
第108条 【異なる種類の株式】

 @ 株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、委員会設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。

 1 剰余金の配当

 2 残余財産の分配

 3 株主総会において議決権を行使することができる事項

 4 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。

 5 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。

 6 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。

 7 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。

 8 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社(第四百七十八条第六項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするも

 9 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること。

 A 株式会社は、次の各号に掲げる事項について内容の異なる二以上の種類の株式を発行する場合には、当該各号に定める事項及び発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。

 1 剰余金の配当 当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法、剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容

 2 残余財産の分配 当該種類の株主に交付する残余財産の価額の決定の方法、当該残余財産の種類その他残余財産の分配に関する取扱いの内容

 3 株主総会において議決権を行使することができる事項 次に掲げる事項

  イ 株主総会において議決権を行使することができる事項

  ロ 当該種類の株式につき議決権の行使の条件を定めるときは、その条件

 4 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること 当該種類の株式についての前条第二項第一号に定める事項

 5 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること 次に掲げる事項

  イ 当該種類の株式についての前条第二項第二号に定める事項

  ロ 当該種類の株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは、当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法

 6 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること 次に掲げる事項

  イ 当該種類の株式についての前条第二項第三号に定める事項

  ロ 当該種類の株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは、当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法

 7 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること 次に掲げる事項

  イ 第百七十一条第一項第一号に規定する取得対価の価額の決定の方法

  ロ 当該株主総会の決議をすることができるか否かについての条件を定めるときは、その条件

 8 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの 次に掲げる事項

  イ 当該種類株主総会の決議があることを必要とする事項

  ロ 当該種類株主総会の決議を必要とする条件を定めるときは、その条件

 9 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること 次に掲げる事項

  イ 当該種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること及び選任する取締役又は監査役の数

  ロ イの定めにより選任することができる取締役又は監査役の全部又は一部を他の種類株主と共同して選任することとするときは、当該他の種類株主の有する株式の種類及び共同して選任する取締役又は監査役の数

  ハ イ又はロに掲げる事項を変更する条件があるときは、その条件及びその条件が成就した場合における変更後のイ又はロに掲げる事項

  ニ イからハまでに掲げるもののほか、法務省令で定める事項

 B 前項の規定にかかわらず、同項各号に定める事項(剰余金の配当について内容の異なる種類の種類株主が配当を受けることができる額その他法務省令で定める事項に限る。)の全部又は一部については、当該種類の株式を初めて発行する時までに、株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)の決議によって定める旨を定款で定めることができる。この場合においては、その内容の要綱を定款で定めなければならない。
種類株式(数種の株式)とは、一定の事項について権利内容の異なる複数の種類の株式のことである。

基本的に、株式とはすべて同一内容であることが原則である。しかし、お金を出す投資家のニーズは多様なため、権利内容の異なる株式を発行し、資金調達をしなければならないこともある。本条により、会社は複数の種類の株式を発行することができる。

本条では、以下の9つの事項について種類株式の発行を認めている。
条文 内容
第1項第1号 剰余金の配当
第1項第2号 残余財産の分配
第1項第3号 議決権制限株式
第1項第4号 譲渡制限種類株式
第1項第5号 取得請求権付種類株式
第1項第6号 取得条項付種類株式
第1項第7号 全部取得条項付種類株式
第1項第8号 拒否権付種類株式
第1項第9号 選解任種類株式
※選解任種類株式は、委員会設置会社と公開会社においては発行することはできない。
第109条 【株主の平等】

 @ 株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。

 A 前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第百五条第一項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。

 B 前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の株主が有する株式を同項の権利に関する事項について内容の異なる種類の株式とみなして、この編及び第五編の規定を適用する。
第1項は、会社は株主としての資格に基づく法律関係について、株主が持っている株式の内容に応じて平等に取り扱わなければならないという、株主平等原則についての規定である。これは従来から、株式会社における基本原則と考えられていたが、会社法制定に伴いはじめて明文化されたものである。

株主平等原則には例外がある。非公開会社においては、剰余金の配当、残余財産の分配、株主総会における議決権について、株主ごとに異なる取り扱いを行う旨を定款で定めることができる(本条第2項)。この他に、種類株式(第108条)、単元未満株式(第188条、第189条)なども株主平等原則の例外といえる。

また、株主平等原則は株式会社の基本的な原則であり、強行法規的な面がある。そのため、これに反する定款の規定、株主総会決議、取締役会決議などは無効になると考えられている。
第110条 【定款の変更の手続の特則】

 定款を変更してその発行する全部の株式の内容として第百七条第一項第三号に掲げる事項についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとする場合(株式会社が種類株式発行会社である場合を除く。)には、株主全員の同意を得なければならない。
定款の変更は、通常は株主総会決議だけによって行う(第466条)。しかし、取得条項付株式(第107条第1項第3号)に関する定款変更は、株主総会決議に加えて、株主全員の同意が必要である。

取得条項付株式は一定の事由が生じれば、会社が強制的に株式を買い取るものであり、その発行は既存株主に重大な影響を与えるためである。
第111条 【定款の変更の手続の特則 その2】

 @ 種類株式発行会社がある種類の株式の発行後に定款を変更して当該種類の株式の内容として第百八条第一項第六号に掲げる事項についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとするときは、当該種類の株式を有する株主全員の同意を得なければならない。

 A 種類株式発行会社がある種類の株式の内容として第百八条第一項第四号又は第七号に掲げる事項についての定款の定めを設ける場合には、当該定款の変更は、次に掲げる種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会。以下この条において同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。

 1 当該種類の株式の種類株主

 2 第百八条第二項第五号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得請求権付株式の種類株主

 3 第百八条第二項第六号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得条項付株式の種類株主
定款の変更は、株主総会決議だけで行うのが原則である(第466条)。しかし、種類株式発行会社がある種類の株式発行後に、定款を変更して当該種類の株式の内容として、会社による株式の強制取得に関する事項(第108条第1項第6号)を定めようとする場合は、株主総会決議に加えて、株主全員の同意が必要である(第1項)。

また、種類株式発行会社が譲渡制限種類株式(第108条第1項第4号)の発行を認める定款変更を行う場合、全部取得条項付種類株式(第108条第1項第7号)の発行を認める定款変更を行う場合には、通常の株主総会決議に加えて、当該種類株式に関する種類株主によって構成される種類株主総会の議決を得なければならない(第2項)。
第112条 【取締役の選任等に関する種類株式の定款の定めの廃止の特則】

 @ 第百八条第二項第九号に掲げる事項(取締役に関するものに限る。)についての定款の定めは、この法律又は定款で定めた取締役の員数を欠いた場合において、そのために当該員数に足りる数の取締役を選任することができないときは、廃止されたものとみなす。

 A 前項の規定は、第百八条第二項第九号に掲げる事項(監査役に関するものに限る。)についての定款の定めについて準用する。
取締役・監査役が何らかの理由により欠け、法律や定款で定めた員数を下回った場合、そのために当該員数に足りる数の取締役を選任することができないときは、選解任種類株式(第108条第1項第9号)に関する定款の規定があったとしても、その規定は廃止されたものとみなされる。取締役・監査役の欠員補充ができないということは、会社運営がうまくいっていない状態であり、選解任種類株式に関する定款の規定によって事態の是正にさらに制約を課すのは妥当ではないためである。
第113条 【発行可能株式総数】

 @ 株式会社は、定款を変更して発行可能株式総数についての定めを廃止することができない。

 A 定款を変更して発行可能株式総数を減少するときは、変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数を下ることができない。

 B 定款を変更して発行可能株式総数を増加する場合には、変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数の四倍を超えることができない。ただし、株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。

 C 新株予約権(第二百三十六条第一項第四号の期間の初日が到来していないものを除く。)の新株予約権者が第二百八十二条の規定により取得することとなる株式の数は、発行可能株式総数から発行済株式(自己株式(株式会社が有する自己の株式をいう。以下同じ。)を除く。)の総数を控除して得た数を超えてはならない。
本条は発行可能株式総数についての規定である。これは、株式会社が発行することができる株式の総数のことで、会社成立時までに必ず定款に記載しなければならない事項であり(第37条第1項、第98条)、この事項は削除することができない(本条第1項)。授権資本制度の外枠を維持するためである。

発行可能株式総数の変更については以下を参照。
発行可能株式総数の変更
定款を変更して 条文 説明
削除する場合 本条第1項 削除することはできない。
増加させる場合 本条第2項 変更後の発行可能株式総数は、発行済み株式総数の4倍を超えることができない
減少させる場合 本条第3項 変更後の発行可能株式総数は、発行済み株式総数を下回ることができない(非公開会社については、このような制限はない)
第114条 【発行可能種類株式総数】

 @ 定款を変更してある種類の株式の発行可能種類株式総数を減少するときは、変更後の当該種類の株式の発行可能種類株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における当該種類の発行済株式の総数を下ることができない。

 A ある種類の株式についての次に掲げる数の合計数は、当該種類の株式の発行可能種類株式総数から当該種類の発行済株式(自己株式を除く。)の総数を控除して得た数を超えてはならない。

 1 取得請求権付株式(第百七条第二項第二号ヘの期間の初日が到来していないものを除く。)の株主(当該株式会社を除く。)が第百六十七条第二項の規定により取得することとなる同項第四号に規定する他の株式の数

 2 取得条項付株式の株主(当該株式会社を除く。)が第百七十条第二項の規定により取得することとなる同項第四号に規定する他の株式の数

 3 新株予約権(第二百三十六条第一項第四号の期間の初日が到来していないものを除く。)の新株予約権者が第二百八十二条の規定により取得することとなる株式の数
発行可能種類株式総数とは、株式会社が発行することができる種類株式の総数のことで、発行可能株式総数と同様、授権資本制度の外枠として機能する。定款を変更して、発行可能種類株式総数を減少させることは可能であるが、変更後の発行可能種類株式総数は、発行済み種類株式総数を下回ることはできない(第1項)。
第115条 【議決権制限株式の発行数】

 種類株式発行会社が公開会社である場合において、株主総会において議決権を行使することができる事項について制限のある種類の株式(以下この条において「議決権制限株式」という。)の数が発行済株式の総数の二分の一を超えるに至ったときは、株式会社は、直ちに、議決権制限株式の数を発行済株式の総数の二分の一以下にするための必要な措置をとらなければならない。
公開会社では、議決権制限株式(第108条第1項第3号)の総数は、発行済み株式総数の二分の一を超えてはならない。議決権制限株式が発行済み株式総数に占める割合が高くなりすぎると、少ない株式しか保有していない者が実質的に会社を支配することになり、会社支配の状況として好ましくないためである。
第116条 【反対株主の株式買取請求】

 @ 次の各号に掲げる場合には、反対株主は、株式会社に対し、自己の有する当該各号に定める株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。

 1 その発行する全部の株式の内容として第百七条第一項第一号に掲げる事項についての定めを設ける定款の変更をする場合 全部の株式

 2 ある種類の株式の内容として第百八条第一項第四号又は第七号に掲げる事項についての定めを設ける定款の変更をする場合 第百十一条第二項各号に規定する株式

 3 次に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式(第三百二十二条第二項の規定による定款の定めがあるものに限る。)を有する種類株主に損害を及ぼすおそれがあるとき 当該種類の株式

  イ 株式の併合又は株式の分割

  ロ 第百八十五条に規定する株式無償割当て

  ハ 単元株式数についての定款の変更

  ニ 当該株式会社の株式を引き受ける者の募集(第二百二条第一項各号に掲げる事項を定めるものに限る。)

  ホ 当該株式会社の新株予約権を引き受ける者の募集(第二百四十一条第一項各号に掲げる事項を定めるものに限る。)

  ヘ 第二百七十七条に規定する新株予約権無償割当て

 A 前項に規定する「反対株主」とは、次の各号に掲げる場合における当該各号に定める株主をいう。

 1 前項各号の行為をするために株主総会(種類株主総会を含む。)の決議を要する場合 次に掲げる株主

  イ 当該株主総会に先立って当該行為に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該行為に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)

  ロ 当該株主総会において議決権を行使することができない株主

 2 前号に規定する場合以外の場合 すべての株主

 B 第一項各号の行為をしようとする株式会社は、当該行為が効力を生ずる日(以下この条及び次条において「効力発生日」という。)の二十日前までに、同項各号に定める株式の株主に対し、当該行為をする旨を通知しなければならない。

 C 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。

 D 第一項の規定による請求(以下この節において「株式買取請求」という。)は、効力発生日の二十日前の日から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。

 E 株式買取請求をした株主は、株式会社の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる。

 F 株式会社が第一項各号の行為を中止したときは、株式買取請求は、その効力を失う。
株式会社において会社の経営や株主の権利に重大な影響を与える重要事項が導入された場合、それに反対した株主はそのような決定を行った会社の株主の地位には留まりたくないと考えることもありえる。このような場合、株主は会社に対して自分が保有している株式を買い取ってもらうことができる。
第117条 【株式の価格の決定等】

 @ 株式買取請求があった場合において、株式の価格の決定について、株主と株式会社との間に協議が調ったときは、株式会社は、効力発生日から六十日以内にその支払をしなければならない。

 A 株式の価格の決定について、効力発生日から三十日以内に協議が調わないときは、株主又は株式会社は、その期間の満了の日後三十日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。

 B 前条第六項の規定にかかわらず、前項に規定する場合において、効力発生日から六十日以内に同項の申立てがないときは、その期間の満了後は、株主は、いつでも、株式買取請求を撤回することができる。

 C 株式会社は、裁判所の決定した価格に対する第一項の期間の満了の日後の年六分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。

 D 株式買取請求に係る株式の買取りは、当該株式の代金の支払の時に、その効力を生ずる。

 E 株券発行会社(その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めがある株式会社をいう。以下同じ。)は、株券が発行されている株式について株式買取請求があったときは、株券と引換えに、その株式買取請求に係る株式の代金を支払わなければならない。
株式を会社に買い取ってもらう場合、まず買取価格を決めなければならない。第116条の規定により、反対株主が株式の買取請求をした場合、買取価格について株主と会社との間で協議を行う。この協議により買取価格が決まった場合は、会社は効力発生日から60日以内にその支払いをしなければならない(第1項)。

協議がうまくいかなかった場合は、株主と会社は、裁判所に買取価格の決定を申し立てることができる(第2項)。なお、株式買取請求権は撤回できないのが原則であるが(第116条第6項)、効力発生日から60日以内に裁判所に対して申し立てがない場合、その期間の満了後は、株主は、いつでも、株式買取請求を撤回することができる(第3項)。買取価格が決定しないのでは、株式の買取は事実上不可能だからである。買取の効力は、会社が代金を支払ったときに生じる。ただし、株券発行会社においては、代金の支払いは株券と引き換えに行わなければならない(第6項)。株券発行会社では、株券が株式そのものとして扱われるためである。
第118条 【新株予約権買取請求】

 @ 次の各号に掲げる定款の変更をする場合には、当該各号に定める新株予約権の新株予約権者は、株式会社に対し、自己の有する新株予約権を公正な価格で買い取ることを請求することができる。

 1 その発行する全部の株式の内容として第百七条第一項第一号に掲げる事項についての定めを設ける定款の変更 全部の新株予約権

 2 ある種類の株式の内容として第百八条第一項第四号又は第七号に掲げる事項についての定款の定めを設ける定款の変更 当該種類の株式を目的とする新株予約権

 A 新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者は、前項の規定による請求(以下この節において「新株予約権買取請求」という。)をするときは、併せて、新株予約権付社債についての社債を買い取ることを請求しなければならない。ただし、当該新株予約権付社債に付された新株予約権について別段の定めがある場合は、この限りでない。

 B 第一項各号に掲げる定款の変更をしようとする株式会社は、当該定款の変更が効力を生ずる日(以下この条及び次条において「定款変更日」という。)の二十日前までに、同項各号に定める新株予約権の新株予約権者に対し、当該定款の変更を行う旨を通知しなければならない。

 C 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。

 D 新株予約権買取請求は、定款変更日の二十日前の日から定款変更日の前日までの間に、その新株予約権買取請求に係る新株予約権の内容及び数を明らかにしてしなければならない。

 E 新株予約権買取請求をした新株予約権者は、株式会社の承諾を得た場合に限り、その新株予約権買取請求を撤回することができる。

 F 株式会社が第一項各号に掲げる定款の変更を中止したときは、新株予約権買取請求は、その効力を失う。
本条は、株式の内容に関する新株予約権買取請求権についての規定である。新株予約権の目的である株式の内容に一定の変更が加えられる場合には、当該新株予約権を行使したときに交付される株式の内容は、新株予約権者が想定していたものとは異なるものとなってしまい、新株予約権者が不測の損害を被る可能性がある。そのため、このような定款変更に反対の株主は、会社に対して自己が保有する新株予約権を買い取ってもらい、新株予約権者としての地位から降りることができる。

本条においては、譲渡制限株式(第107条第1項第1号)、譲渡制限種類株式(第108条第1項第4号)、全部取得条項付種類株式(第108条第7号)の導入について反対の新株予約権者の買取請求が認められている。
第119条 【新株予約権の価格の決定等】

 @ 新株予約権買取請求があった場合において、新株予約権(当該新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合において、当該新株予約権付社債についての社債の買取りの請求があったときは、当該社債を含む。以下この条において同じ。)の価格の決定について、新株予約権者と株式会社との間に協議が調ったときは、株式会社は、定款変更日から六十日以内にその支払をしなければならない。

 A 新株予約権の価格の決定について、定款変更日から三十日以内に協議が調わないときは、新株予約権者又は株式会社は、その期間の満了の日後三十日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。

 B 前条第六項の規定にかかわらず、前項に規定する場合において、定款変更日から六十日以内に同項の申立てがないときは、その期間の満了後は、新株予約権者は、いつでも、新株予約権買取請求を撤回することができる。

 C 株式会社は、裁判所の決定した価格に対する第一項の期間の満了の日後の年六分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。

 D 新株予約権買取請求に係る新株予約権の買取りは、当該新株予約権の代金の支払の時に、その効力を生ずる。

 E 株式会社は、新株予約権証券が発行されている新株予約権について新株予約権買取請求があったときは、新株予約権証券と引換えに、その新株予約権買取請求に係る新株予約権の代金を支払わなければならない。

 F 株式会社は、第二百四十九条第二号に規定する新株予約権付社債券が発行されている新株予約権付社債に付された新株予約権について新株予約権買取請求があったときは、その新株予約権付社債券と引換えに、その新株予約権買取請求に係る新株予約権の代金を支払わなければならない。
新株予約権を会社に買い取ってもらう場合は買取価格を決定する必要がある。第118条の規定により新株予約権者が新株予約権の買取を請求した場合、まず、新株予約権の買取価格について株主と会社との間で協議を行う。そして、協議により買取価格が決定した場合、会社は効力発生日から60日以内にその支払いをする必要がある(第1項)。

協議がうまくいかなかった場合、新株予約権者と会社は、裁判所に買取価格の決定を申し立てることができる(第2項)。なお、新株予約権買取請求権は撤回できないのが原則であるが(第118条第6項)、効力発生日から60日以内に裁判所に対して申し立てがない場合、その期間の満了後は、新株予約権者は、いつでも、新株予約権買取請求を撤回することができる(第3項)。買取価格が決定しないのでは、新株予約権の買取は事実上不可能だからである。

買取の効力は、会社が代金を支払ったときに生じる。ただし、新株予約権証券が発行されている会社においては、代金の支払いは新株予約権証券と引き換えに行わなければならない(第6項)。新株予約権発行会社では、新株予約権証券が新株予約権そのものとして扱われるためである。
第120条 【株主の権利の行使に関する利益の供与】

 @ 株式会社は、何人に対しても、株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与(当該株式会社又はその子会社の計算においてするものに限る。以下この条において同じ。)をしてはならない。

 A 株式会社が特定の株主に対して無償で財産上の利益の供与をしたときは、当該株式会社は、株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与をしたものと推定する。株式会社が特定の株主に対して有償で財産上の利益の供与をした場合において、当該株式会社又はその子会社の受けた利益が当該財産上の利益に比して著しく少ないときも、同様とする。

 B 株式会社が第一項の規定に違反して財産上の利益の供与をしたときは、当該利益の供与を受けた者は、これを当該株式会社又はその子会社に返還しなければならない。この場合において、当該利益の供与を受けた者は、当該株式会社又はその子会社に対して当該利益と引換えに給付をしたものがあるときは、その返還を受けることができる。

 C 株式会社が第一項の規定に違反して財産上の利益の供与をしたときは、当該利益の供与をすることに関与した取締役(委員会設置会社にあっては、執行役を含む。以下この項において同じ。)として法務省令で定める者は、当該株式会社に対して、連帯して、供与した利益の価額に相当する額を支払う義務を負う。ただし、その者(当該利益の供与をした取締役を除く。)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。

 D 前項の義務は、総株主の同意がなければ、免除することができない。
会社は、株主の権利の行使に関して、会社または子会社の名義で財産上の利益を供与してはならない(第1項)。例えば、株主総会で質問を控えてもらうかわりに、特定の株主に金銭供与をすることなどは禁じられている。

もし、第1項の規定に違反し、会社から財産上の利益供与を受けた者は、これを返還しなければならないまた、利益供与を受けた者が、当該利益を引き換えに会社に対して何かを給付していた場合は、その返還を受けることができる(第3項)。

また、利益を供与した取締役は、会社に対して、連帯して供与した利益の価額に相当する額を支払う責任を負う。この責任は過失責任であり、その取締役が注意を怠らなかったことを証明した場合は、責任を負う必要はない(第4項)。また、総株主の同意があった場合には、責任を免除される(第5項)。

なお、利益の供与を受けた者、利益を供与した取締役は、刑罰を科される(第970条)。