会社法 条文 | 会社法 解説 | ||||||
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第2編 株式会社 第2章 株式 第3節 株式の譲渡等 第3款 株式の質入れ |
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第146条 【株式の質入れ】 @ 株主は、その有する株式に質権を設定することができる。 A 株券発行会社の株式の質入れは、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。 |
株主は株式に質権を設定することができる(第1項)。質権設定について、会社法では以下の二つについて認めている。
質権については、民法の以下を参照。 第1節 総則 第342条〜第351条 第2節 動産質 第352条〜第355条 第3節 不動産質 第356条〜第361条 第4節 権利質 第362条〜第368条 |
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第147条 【株式の質入れの対抗要件】 @ 株式の質入れは、その質権者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない。 A 前項の規定にかかわらず、株券発行会社の株式の質権者は、継続して当該株式に係る株券を占有しなければ、その質権をもって株券発行会社その他の第三者に対抗することができない。 B 民法第三百六十四条の規定は、株式については、適用しない。 |
保有する株式に質権設定をしたとしても、次のような対抗要件を備えなければ、第三者に対しては質権設定を主張することはできない。 株券不発行会社の株式に質権設定がされている場合、質権者の氏名・名称および住所の株主名簿への記載・記録がされていること(第1項)。 株券発行会社の株式に質権設定がされている場合、株券が継続保有されていること(第2項)。 |
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第148条 【株主名簿の記載等】 株式に質権を設定した者は、株式会社に対し、次に掲げる事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる。 1 質権者の氏名又は名称及び住所 2 質権の目的である株式 |
株式に質権設定をした株主は、会社に対して質権者の氏名・名称および住所、質権の目的である株式を株主名簿に記載・記録するよう請求することができる。 登録質においては、株主名簿への記載・記録が第三者対抗要件であるため、重要である。 |
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第149条 【株主名簿の記載事項を記載した書面の交付等】 @ 前条各号に掲げる事項が株主名簿に記載され、又は記録された質権者(以下「登録株式質権者」という。)は、株式会社に対し、当該登録株式質権者についての株主名簿に記載され、若しくは記録された同条各号に掲げる事項を記載した書面の交付又は当該事項を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。 A 前項の書面には、株式会社の代表取締役(委員会設置会社にあっては、代表執行役。次項において同じ。)が署名し、又は記名押印しなければならない。 B 第一項の電磁的記録には、株式会社の代表取締役が法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。 C 前三項の規定は、株券発行会社については、適用しない。 |
質権者の氏名・名称および住所、質権の目的である株式が株主名簿に記載された質権者は、株式会社に対して、株主名簿に記載・記録された第148条各号に掲げる事項を記載した書面等の交付を請求することができる。これは、登録株式質権者であることの証明等に用いるためである。 ただし、本条の規定は株券発行会社については適用されない。株券発行会社の株式に質権設定する場合、質権設定者は質権者に対して株券を交付しなければならないため(第146条第2項)、登録株式質権者としての地位の証明は、株券の占有によって可能であるためである。 |
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第150条 【登録株式質権者に対する通知等】 @ 株式会社が登録株式質権者に対してする通知又は催告は、株主名簿に記載し、又は記録した当該登録株式質権者の住所(当該登録株式質権者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。 A 前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。 |
会社は、登録株式質権者に対して通知や催告をしなければならない場合がある、そのようなとき、会社は通知や催告を株主名簿に記載・記録した住所に宛てて発送すればよく(第1項)、それが通常到達すべきであった時に登録株式質権者のもとに到達したものとみなされる(第2項)。 | ||||||
第151条 【株式の質入れの効果】 株式会社が次に掲げる行為をした場合には、株式を目的とする質権は、当該行為によって当該株式の株主が受けることのできる金銭等(金銭その他の財産をいう。以下同じ。)について存在する。 1 第百六十七条第一項の規定による取得請求権付株式の取得 2 第百七十条第一項の規定による取得条項付株式の取 3 第百七十三条第一項の規定による第百七十一条第一項に規定する全部取得条項付種類株式の取得 4 株式の併合 5 株式の分割 6 第百八十五条に規定する株式無償割当て 7 第二百七十七条に規定する新株予約権無償割当て 8 剰余金の配当 9 残余財産の分配 10 組織変更 11 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。) 12 株式交換 13 株式移転 14 株式の取得(第一号から第三号までに掲げる行為を除く。) |
本条は株式質の物上代位権についての規定である。質権には、物上代位権という派生的権利が認められている。質権の目的物の価値が他のものに変形した場合、その変形したものに対して質権の効力が及ぶという権利である。これについは、民法の以下を参照。 第1節 総則 第342条〜第351条 第1節 総則 第303条〜第305条 質権者は、本条各号が定める事由が生じた場合、その行為によって株主が受けることのできる金銭等について質権の効力を及ぼすことができる。 |
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第152条 【株式の質入れの効果 その2】 @ 株式会社(株券発行会社を除く。以下この条において同じ。)は、前条第一号から第三号までに掲げる行為をした場合(これらの行為に際して当該株式会社が株式を交付する場合に限る。)又は同条第六号に掲げる行為をした場合において、同条の質権の質権者が登録株式質権者(第二百十八条第五項の規定による請求により第百四十八条各号に掲げる事項が株主名簿に記載され、又は記録されたものを除く。以下この款において同じ。)であるときは、前条の株主が受けることができる株式について、その質権者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければならない。 A 株式会社は、株式の併合をした場合において、前条の質権の質権者が登録株式質権者であるときは、併合した株式について、その質権者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければならない。 B 株式会社は、株式の分割をした場合において、前条の質権の質権者が登録株式質権者であるときは、分割した株式について、その質権者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければならない。 |
株券不発行会社の株式に、登録質の方法により質権設定をした場合、会社が取得請求権付株式の取得、取得条項付株式の取得、全部取得条項付種類株式の取得、株式無償割り当てを行ったときには、質権設定者(株主)が受けることができる株式について、質権者の氏名・名称および住所を株主名簿に記載・記録しなければならない(第1項)。 また、株券不発行会社の株式に、登録質の方法により質権設定をした場合、会社が株式の併合または株式の分割を行ったときには、併合・分割した株式について、質権者の氏名・名称および住所を株主名簿に記載・記録しなければならない(第2項、第3項)。 |
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第153条 【株式の質入れの効果 その3】 @ 株券発行会社は、前条第一項に規定する場合には、第百五十一条の株主が受ける株式に係る株券を登録株式質権者に引き渡さなければならない。 A 株券発行会社は、前条第二項に規定する場合には、併合した株式に係る株券を登録株式質権者に引き渡さなければならない。 B 株券発行会社は、前条第三項に規定する場合には、分割した株式について新たに発行する株券を登録株式質権者に引き渡さなければならない。 |
株券発行会社の株式に登録質の方法によって質権設定した場合、会社が取得請求権付株式の取得、取得条項付株式の取得、全部取得条項付種類株式の取得、株式無償割り当てを行ったときには、質権設定者(株主)が受けることができる株券を登録株式質権者に引き渡さなければならない(第1項)。 また、株券発行会社の株式に、登録質の方法により質権設定をした場合、会社が株式の併合または株式の分割を行ったときには、併合・分割した株券を登録株式質権者に引き渡さなければならない(第2項)。 株券発行会社の株式の質入は、当該株式の株券を交付しなければ効力が生じないためである。 |
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第154条 【株式の質入れの効果 その4】 @ 登録株式質権者は、第百五十一条の金銭等(金銭に限る。)を受領し、他の債権者に先立って自己の債権の弁済に充てることができる。 A 前項の債権の弁済期が到来していないときは、登録株式質権者は、株式会社に同項に規定する金銭等に相当する金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。 |
本条は、物上代位権の優先弁済的効力についての規定である。債権者は、債務者の財産に担保物権を設定しておけば、その財産から他の債務者に優先して債権を回収することができる。 株式質の場合、登録株式質権者は第151条各号の事由が生じ、質権設定者(株主)がその対価として金銭を受領した場合、他の債権者に優先して自己の債権の弁済に充てることができる(第1項)。 ただし、この場合、債権の弁済期が到来していない場合には当該金銭を充当することはできない。しかし、この金銭をそのままにしておけば、他の債権者に対して弁済されてしまう危険があるため、登録質権者はこの金銭を供託させることができる(第2項)。そして、質権はこの供託金に存在することになる。 |