会社法 条文 | 会社法 解説 | ||||||||||||||||||||||||||||
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第2編 株式会社 第2章 株式 第4節 株式会社による自己の株式の取得 |
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第1款 総則 第155条 【自己株式の取得】 株式会社は、次に掲げる場合に限り、当該株式会社の株式を取得することができる。 1 第百七条第二項第三号イの事由が生じた場合 2 第百三十八条第一号ハ又は第二号ハの請求があった場合 3 次条第一項の決議があった場合 4 第百六十六条第一項の規定による請求があった場合 5 第百七十一条第一項の決議があった場合 6 第百七十六条第一項の規定による請求をした場合 7 第百九十二条第一項の規定による請求があった場合 8 第百九十七条第三項各号に掲げる事項を定めた場合 9 第二百三十四条第四項各号に掲げる事項を定めた場合 10 他の会社(外国会社を含む。)の事業の全部を譲り受ける場合において当該他の会社が有する当該株式会社の株式を取得する場合 11 合併後消滅する会社から当該株式会社の株式を承継する場合 12 吸収分割をする会社から当該株式会社の株式を承継する場合 13 前各号に掲げる場合のほか、法務省令で定める場合 |
株式会社は一定の条件を満たせば、自社の株式を買い入れることができる(これを金庫株といい、平成13年の商法改正前までは禁止されていた)。 自己株式の買い入れには条件があり、次の場合に認められている。
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第2款 株主との合意による取得 第1目 総則 第156条 【株式の取得に関する事項の決定】 @ 株式会社が株主との合意により当該株式会社の株式を有償で取得するには、あらかじめ、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。ただし、第三号の期間は、一年を超えることができない。 1 取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数) 2 株式を取得するのと引換えに交付する金銭等(当該株式会社の株式等を除く。以下この款において同じ。)の内容及びその総額 3 株式を取得することができる期間 A 前項の規定は、前条第一号及び第二号並びに第四号から第十三号までに掲げる場合には、適用しない。 |
株式会社が、株主から自己株式を買い取る場合、取得する株式数、株式取得と引き換えに交付する金銭等の内容とその総額、株式取得期間(最長1年間)を、株主総会決議により決めなければならない。これは、会社支配の公正を害するという自己株式の取得による弊害を防止するためである(取締役の不正な目的でないかを検証するためである)。 株主総会は、定時株主総会だけでなく、臨時株主総会であってもよい。 |
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第157条 【取得価格等の決定】 @ 株式会社は、前条第一項の規定による決定に従い株式を取得しようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない。 1 取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び数) 2 株式一株を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法 3 株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の総額 4 株式の譲渡しの申込みの期日 A 取締役会設置会社においては、前項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。 B 第一項の株式の取得の条件は、同項の規定による決定ごとに、均等に定めなければならない。 |
自己株式を取得しようとする会社は、取得株式数、株式一株を取得するのと引き換えに交付する金銭等の内容と数若しくは額又はこれらの算定方法、株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の総額、株式の譲渡しの申込みの期日をその都度決めなければならない。 また、これらの条件はすべての株式について均等でなければならない。これは、株主平等原則(第109条第1項)に抵触しないようにするためである。 ただし、取締役会設置会社は、これらの決定を取締役会の決議によらなければならない。機動性を確保するためである。 |
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第158条 【株主に対する通知等】 @ 株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)に対し、前条第一項各号に掲げる事項を通知しなければならない。 A 公開会社においては、前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。 |
株式会社は、第157条第1項各号の事項を決定した場合、株主全員にその内容を通知しなければならない。ただし、公開会社は多数の株主が存在するため、公告によって行うことができる。 | ||||||||||||||||||||||||||||
第159条 【譲渡しの申込み】 @ 前条第一項の規定による通知を受けた株主は、その有する株式の譲渡しの申込みをしようとするときは、株式会社に対し、その申込みに係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び数)を明らかにしなければならない。 A 株式会社は、第百五十七条第一項第四号の期日において、前項の株主が申込みをした株式の譲受けを承諾したものとみなす。ただし、同項の株主が申込みをした株式の総数(以下この項において「申込総数」という。)が同条第一項第一号の数(以下この項において「取得総数」という。)を超えるときは、取得総数を申込総数で除して得た数に前項の株主が申込みをした株式の数を乗じて得た数(その数に一に満たない端数がある場合にあっては、これを切り捨てるものとする。)の株式の譲受けを承諾したものとみなす。 |
自己株式を取得しようとする株式会社が、第158条の通知を株主に対して行った場合、保有株式を譲渡したい株主は譲渡の申し込みをしなければならない。この場合、株主は申し込みに係る株式数を明らかにしなければならない。 そして、会社は、第157条第1項第4号の期日において、株式の譲受を承諾したものとみなされる。 もし、株主からの申し込み総数が、取得予定の総数を超えた場合は、按分配分した数について譲受が承認されたものとみなされる。例えば、取得予定数が100万株、申し込み総数が200万株だった場合において、ある株主が10万株申し込んだとする。この場合、(100万株÷200万株)×10万株で、5万株について譲り受けが承認される。 |
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第2目 特定の株主からの取得 第160条 【特定の株主からの取得】 @ 株式会社は、第百五十六条第一項各号に掲げる事項の決定に併せて、同項の株主総会の決議によって、第百五十八条第一項の規定による通知を特定の株主に対して行う旨を定めることができる。 A 株式会社は、前項の規定による決定をしようとするときは、法務省令で定める時までに、株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)に対し、次項の規定による請求をすることができる旨を通知しなければならない。 B 前項の株主は、第一項の特定の株主に自己をも加えたものを同項の株主総会の議案とすることを、法務省令で定める時までに、請求することができる。 C 第一項の特定の株主は、第百五十六条第一項の株主総会において議決権を行使することができない。ただし、第一項の特定の株主以外の株主の全部が当該株主総会において議決権を行使することができない場合は、この限りでない。 D 第一項の特定の株主を定めた場合における第百五十八条第一項の規定の適用については、同項中「株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)」とあるのは、「第百六十条第一項の特定の株主」とする。 |
自己株式を取得しようとする株式会社は、株主総会で、第156条第1項各号の事項の決定に併せて、特定の株主のみからの自己株式取得を決議することができる(第1項)。この決議は特別決議である(第309条第2項第2号)。 この場合、当該特定の株主以外の株主は、自己の保有する株式も併せて買い取るよう請求することができる(第3項)。これを売主追加請求権という。なお、株主の売主追加請求権行使の機会を確保するため、会社は売主追加請求権を行使できる旨を当該特定の株主以外の株主に対して通知しなければならない(第2項)。 |
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第161条 【市場価格のある株式の取得の特則】 前条第二項及び第三項の規定は、取得する株式が市場価格のある株式である場合において、当該株式一株を取得するのと引換えに交付する金銭等の額が当該株式一株の市場価格として法務省令で定める方法により算定されるものを超えないときは、適用しない。 |
株式会社が特定の株主からのみ、自己株式を取得する場合には、他の株主には原則として売主追加請求権が認められている(第160条第3項)。 しかし、株式を市場価格以下で特定の株主から取得する場合には、他の株主には売主追加請求権は認められていない。市場価格以下で自己株式を取得する場合には、特定の株主を優遇しているとは必ずしもいえないためである。 |
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第162条 【相続人等からの取得の特則】 第百六十条第二項及び第三項の規定は、株式会社が株主の相続人その他の一般承継人からその相続その他の一般承継により取得した当該株式会社の株式を取得する場合には、適用しない。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。 1 株式会社が公開会社である場合 2 当該相続人その他の一般承継人が株主総会又は種類株主総会において当該株式について議決権を行使した場合 |
株式会社が特定の株主からのみ、自己株式を取得する場合には、他の株主には原則として売主追加請求権が認められている(第160条第3項)。 しかし、非公開会社が株式相続人等から株式を取得する場合には、売主追加請求権は認められていない。これは、もし、相続等によって会社にとって好ましくない者が株主となった場合のことなどを想定して、認められていない。 もっとも、公開会社の場合には、株式譲渡は自由であるため、売主追加請求権は認められている(本条第1号)。また、非公開会社でも、相続人等が承継した株式について、株主総会において議決権を行使した場合にも、売主追加請求権が認められている(本条第2号)。 |
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第163条 【子会社からの株式の取得】 株式会社がその子会社の有する当該株式会社の株式を取得する場合における第百五十六条第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)」とする。この場合においては、第百五十七条から第百六十条までの規定は、適用しない。 |
本条は、株式会社がその子会社から自己株式を取得する場合の特則についての規定である。 株式会社が株主から自己株式を取得するには(第155条第3号)、取得株式数など第156条第1項に規定されている事項を記載しなければならない。 しかし、株式会社がその子会社から自己株式を取得する場合には、この定めは、取締役会設置会社においては、取締役会の決議によることが原則となる。この場合、第157条から第160条までの規定は適用されない。子会社からの自己株式の取得は企業グループの整理を意味し、スピードが要求されるため、手続きが簡略化されている。 |
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第164条 【特定の株主からの取得に関する定款の定め】 @ 株式会社は、株式(種類株式発行会社にあっては、ある種類の株式。次項において同じ。)の取得について第百六十条第一項の規定による決定をするときは同条第二項及び第三項の規定を適用しない旨を定款で定めることができる。 A 株式の発行後に定款を変更して当該株式について前項の規定による定款の定めを設け、又は当該定めについての定款の変更(同項の定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとするときは、当該株式を有する株主全員の同意を得なければならない。 |
自己株式を取得しようとする株式会社は、株主総会において、第156条第1項各号の事項の決定に併せて、特定の株主のみからの自己株式取得を決議することができる(第160条第1項)。この場合、当該特定の株主以外の株主は、自己の保有する株式も併せて買い取るよう請求することができるのが原則である(第160条第3項)。 しかし、会社は、定款によって売主追加請求権を排除することができる(本条第1項)。これは、自己株式の取得手続きを煩雑にし、迅速性を害するためである。 ただし、株式発行後に売主追加請求権を排除したのでは、株主に不測の損害が生じる可能性があるため、株式発行後の売主追加請求権排除の定款変更は株主全員の同意が必要である(本条第2項)。 |
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第3目 市場取引等による株式の取得 第165条 【市場取引等による株式の取得】 @ 第百五十七条から第百六十条までの規定は、株式会社が市場において行う取引又は金融商品取引法第二十七条の二第六項 に規定する公開買付けの方法(以下この条において「市場取引等」という。)により当該株式会社の株式を取得する場合には、適用しない。 A 取締役会設置会社は、市場取引等により当該株式会社の株式を取得することを取締役会の決議によって定めることができる旨を定款で定めることができる。 B 前項の規定による定款の定めを設けた場合における第百五十六条第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(第百六十五条第一項に規定する場合にあっては、株主総会又は取締役会)」とする。 |
株式会社が自己株式を取得するときにおいて、市場取引または株式公開買付(いわゆるTOBのことで、金融商品取引法第27条の2第6項)によって取得する場合には、第157条から第160条までの規定は適用されない。これは、市場取引・株式公開買付による自己株式の取得にはスピードが要求されるためである。 また、同様の理由から、取締役会設置会社は、定款の定めにより、市場取引・株式公開買付によって自己株式を取得しようとする場合には、取得についての授権決議を取締役会において行うことが認められている。つまり、定款にこの旨の定めを置いた取締役会設置会社は、取締役会決議だけで、市場取引・株式公開買付による自己株式の取得が可能となる。 |
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第3款 取得請求権付株式及び取得条項付株式の取得 第1目 取得請求権付株式の取得の請求 第166条 【取得の請求】 @ 取得請求権付株式の株主は、株式会社に対して、当該株主の有する取得請求権付株式を取得することを請求することができる。ただし、当該取得請求権付株式を取得するのと引換えに第百七条第二項第二号ロからホまでに規定する財産を交付する場合において、これらの財産の帳簿価額が当該請求の日における第四百六十一条第二項の分配可能額を超えているときは、この限りでない。 A 前項の規定による請求は、その請求に係る取得請求権付株式の数(種類株式発行会社にあっては、取得請求権付株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。 B 株券発行会社の株主がその有する取得請求権付株式について第一項の規定による請求をしようとするときは、当該取得請求権付株式に係る株券を株券発行会社に提出しなければならない。ただし、当該取得請求権付株式に係る株券が発行されていない場合は、この限りでない。 |
取得請求権付の株主は、会社に対して当該株式の買取を請求することができる(第1項)。ただし、当該株式の買取の対価として交付される財産の帳簿価額が、その請求日における分配可能額(第461条第1項と第2項)を超えているときは、この請求は認められていない(第1項但し書き)。 自己株式の取得は資本の空洞化を招く危険性があるため、会社財産に余裕のある場合にしか認められていない。 |
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第167条 【効力の発生】 @ 株式会社は、前条第一項の規定による請求の日に、その請求に係る取得請求権付株式を取得する。 A 次の各号に掲げる場合には、前条第一項の規定による請求をした株主は、その請求の日に、第百七条第二項第二号(種類株式発行会社にあっては、第百八条第二項第五号)に定める事項についての定めに従い、当該各号に定める者となる。 1 第百七条第二項第二号ロに掲げる事項についての定めがある場合 同号ロの社債の社債権者 2 第百七条第二項第二号ハに掲げる事項についての定めがある場合 同号ハの新株予約権の新株予約権者 3 第百七条第二項第二号ニに掲げる事項についての定めがある場合 同号ニの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者 4 第百八条第二項第五号ロに掲げる事項についての定めがある場合 同号ロの他の株式の株主 B 前項第四号に掲げる場合において、同号に規定する他の株式の数に一株に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。この場合においては、株式会社は、定款に別段の定めがある場合を除き、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額にその端数を乗じて得た額に相当する金銭を前条第一項の規定による請求をした株主に対して交付しなければならない。 1 当該株式が市場価格のある株式である場合 当該株式一株の市場価格として法務省令で定める方法により算定される額 2 前号に掲げる場合以外の場合 一株当たり純資産額 C 前項の規定は、当該株式会社の社債及び新株予約権について端数がある場合について準用する。この場合において、同項第二号中「一株当たり純資産額」とあるのは、「法務省令で定める額」と読み替えるものとする。 |
取得請求権付株式の株主は、会社に対して当該株式の買い取り請求をすることができる(第166条第1項)。会社は、この請求日に当該株式を取得する(第1項)。当該株式の買い取り価格は、買取請求日の価格を基準とすることになる。 会社は、取得請求権付株式を買い取る際の対価として、その会社の社債、新株予約権、新株予約権付社債、他の株式を交付することができる(第107条第2項第2号ロ〜ニ、第108条第2項第5号ロ)。自己株式取得の対価としてこれらを交付された株主は、買取請求日に、社債権者、新株予約権者などになる。 |
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第2目 取得条項付株式の取得 第168条 【取得する日の決定】 @ 第百七条第二項第三号ロに掲げる事項についての定めがある場合には、株式会社は、同号ロの日を株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって定めなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。 A 第百七条第二項第三号ロの日を定めたときは、株式会社は、取得条項付株式の株主(同号ハに掲げる事項についての定めがある場合にあっては、次条第一項の規定により決定した取得条項付株式の株主)及びその登録株式質権者に対し、当該日の二週間前までに、当該日を通知しなければならない。 B 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。 |
取得条件を、会社が別に決めた日の到来(第107条第2項第3号ロ)とする取得条項付株式を発行した会社は、当該日を取締役会非設置会社においては株主総会、取締役会設置会社においては取締役会の決議によって決めなければならない。ただし、定款において別の決まりがある場合はそれに従う。 会社は、当該日を決めた場合には、取得条項付株式の株主とその登録株式質権者に当該日を通知しなければならない。ただし、取得条項付株式の株主が多数いる場合は、事務処理上の手間がかかるため、通知を公告に代えることができる。 |
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第169条 【取得する株式の決定等】 @ 株式会社は、第百七条第二項第三号ハに掲げる事項についての定めがある場合において、取得条項付株式を取得しようとするときは、その取得する取得条項付株式を決定しなければならない。 A 前項の取得条項付株式は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって定めなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。 B 第一項の規定による決定をしたときは、株式会社は、同項の規定により決定した取得条項付株式の株主及びその登録株式質権者に対し、直ちに、当該取得条項付株式を取得する旨を通知しなければならない。 C 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。 |
取得事由が生じた場合に、その一部の株式を取得する取得条項付株式(第107条第2項第3号ハ)を発行した会社は、取得条項付株式を取得しようとするときは、どの株式を取得するのかを決めなければならない。この決定は、取締役会非設置会社においては株主総会、取締役会設置会社においては取締役会の決議によって決めなければならない。 会社は、取得する株式を決定した場合、取得条項付株式の株主とその登録株式質権者に、当該取得条項付株式を取得するということを通知しなければならない。ただし、取得条項付株式の株主が多数いる場合は、事務処理上の手間がかかるため、通知を公告に代えることができる。 |
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第170条 【効力の発生等】 @ 株式会社は、第百七条第二項第三号イの事由が生じた日(同号ハに掲げる事項についての定めがある場合にあっては、第一号に掲げる日又は第二号に掲げる日のいずれか遅い日。次項及び第五項において同じ。)に、取得条項付株式(同条第二項第三号ハに掲げる事項についての定めがある場合にあっては、前条第一項の規定により決定したもの。次項において同じ。)を取得する。 1 第百七条第二項第三号イの事由が生じた日 2 前条第三項の規定による通知の日又は同条第四項の公告の日から二週間を経過した日 A 次の各号に掲げる場合には、取得条項付株式の株主(当該株式会社を除く。)は、第百七条第二項第三号イの事由が生じた日に、同号(種類株式発行会社にあっては、第百八条第二項第六号)に定める事項についての定めに従い、当該各号に定める者となる。 1 第百七条第二項第三号ニに掲げる事項についての定めがある場合 同号ニの社債の社債権者 2 第百七条第二項第三号ホに掲げる事項についての定めがある場合 同号ホの新株予約権の新株予約権者 3 第百七条第二項第三号ヘに掲げる事項についての定めがある場合 同号ヘの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者 4 第百八条第二項第六号ロに掲げる事項についての定めがある場合 同号ロの他の株式の株主 B 株式会社は、第百七条第二項第三号イの事由が生じた後、遅滞なく、取得条項付株式の株主及びその登録株式質権者(同号ハに掲げる事項についての定めがある場合にあっては、前条第一項の規定により決定した取得条項付株式の株主及びその登録株式質権者)に対し、当該事由が生じた旨を通知しなければならない。ただし、第百六十八条第二項の規定による通知又は同条第三項の公告をしたときは、この限りでない。 C 前項本文の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。 D 前各項の規定は、取得条項付株式を取得するのと引換えに第百七条第二項第三号ニからトまでに規定する財産を交付する場合において、これらの財産の帳簿価額が同号イの事由が生じた日における第四百六十一条第二項の分配可能額を超えているときは、適用しない。 |
取得事由(第107条第2項第3号イ)が生じた場合、その一部の株式を取得する取得条項付株式(第107条第2項第3号ハ)を発行した会社は、当該取得事由が生じた日に当該株式を取得する。つまり、当該株式の買取価格は、当該取得事由が生じた日の価格を基準とすることになる。会社は、取得条項付株式を取得する際の対価として、その会社の社債、新株予約権、新株予約権付社債、他の株式を交付することができる(第107条第2項第3号ニ〜ヘ、第108条第2項第6号ロ)。そして、自己株式取得の対価として、これらのものを交付された株主は、取得事由が生じた日に、社債権者、新株予約権者などになる。 会社は、取得条項付株式の取得事由が生じた場合、取得条項付株式の株主とその登録株式質権者に対して、その旨を通知しなければならない。ただし、取得条項付株式の株主が多数いる場合は、事務処理上の手間がかかるため、通知を公告に代えることができる。 また、取得条件を、会社が別に決めた日の到来(第107条第2項第3号ロ)とする取得条項付株式を発行した場合、当該日の通知(第168条第2項)または公告(第168条第3項)を行った場合には、この通知または公告を省略することができる。 取得条項付株式の取得の対価として交付される財産の帳簿価額が、取得事由発生日における分配可能額を超えているときは、会社は取得条項付株式を取得することができない。 |
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第4款 全部取得条項付種類株式の取得 第171条 【全部取得条項付種類株式の取得に関する決定】 @ 全部取得条項付種類株式(第百八条第一項第七号に掲げる事項についての定めがある種類の株式をいう。以下この款において同じ。)を発行した種類株式発行会社は、株主総会の決議によって、全部取得条項付種類株式の全部を取得することができる。この場合においては、当該株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。 1 全部取得条項付種類株式を取得するのと引換えに金銭等を交付するときは、当該金銭等(以下この条において「取得対価」という。)についての次に掲げる事項 イ 当該取得対価が当該株式会社の株式であるときは、当該株式の種類及び種類ごとの数又はその数の算定方法 ロ 当該取得対価が当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法 ハ 当該取得対価が当該株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法 ニ 当該取得対価が当該株式会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項 ホ 当該取得対価が当該株式会社の株式等以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法 2 前号に規定する場合には、全部取得条項付種類株式の株主に対する取得対価の割当てに関する事項 3 株式会社が全部取得条項付種類株式を取得する日(以下この款において「取得日」という。) A 前項第二号に掲げる事項についての定めは、株主(当該株式会社を除く。)の有する全部取得条項付種類株式の数に応じて取得対価を割り当てることを内容とするものでなければならない。 B 取締役は、第一項の株主総会において、全部取得条項付種類株式の全部を取得することを必要とする理由を説明しなければならない。 |
全部取得条項付種類株式(第108条第1項第7号)を発行した種類株式発行会社は、株主総会の決議によって、全部取得条項付種類株式の全部を取得することができる。この場合、取得対価の内容に関する事項、取得対価の割り当てに関する事項、会社が株式を取得する日を株主総会の決議によって決めなければならない。 この株主総会において、取締役は、全部取得条項付種類株式の全部を取得する必要性についての説明義務が課される。これは、全部取得条項付種類株式の取得は会社の経営や財産に大きな影響を与える場合があるため、株主の理解を得る必要があるからである。 |
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第172条 【裁判所に対する価格の決定の申立て】 @ 前条第一項各号に掲げる事項を定めた場合には、次に掲げる株主は、同項の株主総会の日から二十日以内に、裁判所に対し、株式会社による全部取得条項付種類株式の取得の価格の決定の申立てをすることができる。 1 当該株主総会に先立って当該株式会社による全部取得条項付種類株式の取得に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該取得に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。) 2 当該株主総会において議決権を行使することができない株主 A 株式会社は、裁判所の決定した価格に対する取得日後の年六分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。 |
第171条各号(取得対価の内容に関する事項、取得対価の割り当てに関する事項、会社が株式を取得する日)を決めた場合、全部取得条項付種類株式の取得に反対の株主と議決権を行使することができない株主は、裁判所に対して会社による取得価格の決定の申し立てをすることができる。この申し立ては、株主総会の日から20日以内にしなければならない。裁判所によって、取得価格の適正の担保を図るためである。 | ||||||||||||||||||||||||||||
第173条 【効力の発生】 @ 株式会社は、取得日に、全部取得条項付種類株式の全部を取得する。 A 次の各号に掲げる場合には、当該株式会社以外の全部取得条項付種類株式の株主は、取得日に、第百七十一条第一項の株主総会の決議による定めに従い、当該各号に定める者となる。 1 第百七十一条第一項第一号イに掲げる事項についての定めがある場合 同号イの株式の株主 2 第百七十一条第一項第一号ロに掲げる事項についての定めがある場合 同号ロの社債の社債権者 3 第百七十一条第一項第一号ハに掲げる事項についての定めがある場合 同号ハの新株予約権の新株予約権者 4 第百七十一条第一項第一号ニに掲げる事項についての定めがある場合 同号ニの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者 |
全部取得条項付種類株式を取得しようとする種類株式発行会社は、株主総会で決めた取得日に、全部取得条項付種類株式を取得する。そのため、当該株式の買取価格は、当該取得日の価格を基準とすることになる。 種類株式発行会社は、全部取得条項付種類株式を取得する時の対価として、会社の株式、社債、新株予約権、新株予約権付社債を交付することができる(第171条)。そして、これらのものを交付された株主は、取得事由が生じた日に、社債権者、新株予約権者などになる。 |
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第5款 相続人等に対する売渡しの請求 第174条 【相続人等に対する売渡しの請求に関する定款の定め】 株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の株式(譲渡制限株式に限る。)を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができる。 |
会社は、相続等により譲渡制限株式を取得した者に対して、当該株式を会社に売り渡すよう請求できる旨を定款で定めることができる。これは、相続等によって会社にとって好ましくない者が株主となった場合などについて想定したものである。 | ||||||||||||||||||||||||||||
第175条 【売渡しの請求の決定】 @ 株式会社は、前条の規定による定款の定めがある場合において、次条第一項の規定による請求をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。 1 次条第一項の規定による請求をする株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数) 2 前号の株式を有する者の氏名又は名称 A 前項第二号の者は、同項の株主総会において議決権を行使することができない。ただし、同号の者以外の株主の全部が当該株主総会において議決権を行使することができない場合は、この限りでない。 |
第174条の請求をする場合、会社は請求する株式数、当該株式を有する者の氏名・名称を株主総会の決議によってその都度決めなければならない。この場合、取締役会設置会社であっても取締役会決議で当該事項を決めることはできず、株主総会決議で決めなければならない点に注意する必要がある。 | ||||||||||||||||||||||||||||
第176条 【売渡しの請求】 @ 株式会社は、前条第一項各号に掲げる事項を定めたときは、同項第二号の者に対し、同項第一号の株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる。ただし、当該株式会社が相続その他の一般承継があったことを知った日から一年を経過したときは、この限りでない。 A 前項の規定による請求は、その請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。 B 株式会社は、いつでも、第一項の規定による請求を撤回することができる。 |
会社は、第175条第1項各号の事項を定めたときは、第175条第1項第2号の者に対して、当該株式の売り渡しを請求することができる。ただし、この請求は、会社が相続等があったことを知った日から1年以内にしなければならない。これは一種の消滅時効であり、当該株式の所有者の地位を早期確定する趣旨である。 また、会社はこの請求をいつでも撤回することができる。撤回を認めても、当該株式の所有者に不都合が生じることはないからである。 |
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第177条 【売買価格の決定】 @ 前条第一項の規定による請求があった場合には、第百七十五条第一項第一号の株式の売買価格は、株式会社と同項第二号の者との協議によって定める。 A 株式会社又は第百七十五条第一項第二号の者は、前条第一項の規定による請求があった日から二十日以内に、裁判所に対し、売買価格の決定の申立てをすることができる。 B 裁判所は、前項の決定をするには、前条第一項の規定による請求の時における株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならない。 C 第一項の規定にかかわらず、第二項の期間内に同項の申立てがあったときは、当該申立てにより裁判所が定めた額をもって第百七十五条第一項第一号の株式の売買価格とする。 D 第二項の期間内に同項の申立てがないとき(当該期間内に第一項の協議が調った場合を除く。)は、前条第一項の規定による請求は、その効力を失う。 |
本条は、譲渡制限株式を相続等によって取得した者に対する株式売渡請求の売買価格決定方法についての規定である。 譲渡制限株式を相続等によって取得した者に対する株式買取請求を行った場合、その売買価格は会社と当該株式の所有者との協議によって決めるのが原則である。 この協議がうまくいかなかったとき、会社と当該株式の所有者は、裁判所に売買価格の決定を請求することができる。そして、裁判所が決めた価格が売買価格となる。 また、協議がうまくいかず、裁判所にも請求をしなかったときは、会社が行った売り渡し請求は効力を失うことになる。 |
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第6款 株式の消却 第178条 【自己株式の消却】 @ 株式会社は、自己株式を消却することができる。この場合においては、消却する自己株式の数(種類株式発行会社にあっては、自己株式の種類及び種類ごとの数)を定めなければならない。 A 取締役会設置会社においては、前項後段の規定による決定は、取締役会の決議によらなければならない。 |
会社は、保有している自己株式を消却させることができる。 旧商法では、株式消却の方法として以下のような方法があった。 ・資本減少の方法として行う場合 ・定款の定めに基づき株主に配当すべき利益をもってなす場合 ・償還株式の場合 ・取締役会決議による自己株式の消却の場合 以上の4つがあったが、会社法では自己株式の取得および消却という方法に統一されている。 |
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第179条 削除 |