会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第2章 株式

第5節 株式の併合等

第3款 株式無償割当て
第185条 【株式無償割当て】

 株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、ある種類の種類株主)に対して新たに払込みをさせないで当該株式会社の株式の割当て(以下この款において「株式無償割当て」という。)をすることができる。
株式会社は株式の無償割当てをすることができる。株式の無償割当てとは、株主または種類株主に対して、無償で新株の割当てをすることである(または自己株式の交付)。

株式の無償割当てには、株式数を増加させて株式の市場価格を下げることにより、株式を購入しやすくするというメリットがある。そのため、実質的には株式の分割と同様の制度といえる。
第186条 【株式無償割当てに関する事項の決定】

 @ 株式会社は、株式無償割当てをしようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 株主に割り当てる株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法

 2 当該株式無償割当てがその効力を生ずる日

 3 株式会社が種類株式発行会社である場合には、当該株式無償割当てを受ける株主の有する株式の種類

 A 前項第一号に掲げる事項についての定めは、当該株式会社以外の株主(種類株式発行会社にあっては、同項第三号の種類の種類株主)の有する株式(種類株式発行会社にあっては、同項第三号の種類の株式)の数に応じて同項第一号の株式を割り当てることを内容とするものでなければならない。

 B 第一項各号に掲げる事項の決定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
株式会社が株式の無償割当てを行う場合、割り当てる株式の数(またはその数の算定方法)、効力発生日、株式会社が種類株式発行会社である場合には、当該株式無償割当てを受ける株主の有する株式の種類をその都度株主総会の決議によって決めなければならない。

また、株式の分割と同様、株式の無償割当ては既存株主に不測の損害を与えることがないため、取締役設置会社においては、株主総会に代わって取締役会の決議によって決めることができる。ただし、定款に別の定めがある場合はそれに従う。
第187条 【株式無償割当ての効力の発生等】

 @ 前条第一項第一号の株式の割当てを受けた株主は、同項第二号の日に、同項第一号の株式の株主となる。

 A 株式会社は、前条第一項第二号の日後遅滞なく、株主(種類株式発行会社にあっては、同項第三号の種類の種類株主)及びその登録株式質権者に対し、当該株主が割当てを受けた株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を通知しなければならない。
株式の無償割当てを受けた株主は、効力発生日に当該株式の株主となる。

通常の募集株式の株主割当ての場合は、会社の通知、株主の申し込み、会社による割当てといった一連の手続き(第203条、第204条、第206条)を経て効力が発生するため、株式の無償割当ては大幅に簡略化されているといえる。

効力発生日が到来した場合、会社は株主およびその登録株式質権者に対して、当該株主が割当てを受けた株式数を通知しなければならない。