会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第2章 株式

第6節 単元株式数

第1款 総則
第188条 【単元株式数】

 @ 株式会社は、その発行する株式について、一定の数の株式をもって株主が株主総会又は種類株主総会において一個の議決権を行使することができる一単元の株式とする旨を定款で定めることができる。

 A 前項の一定の数は、法務省令で定める数を超えることはできない。

 B 種類株式発行会社においては、単元株式数は、株式の種類ごとに定めなければならない。
株式会社は、株主総会の決議で、単元株制度を採ることができる。単元株制度とは、株式を一定数まとめたものを一単元とし、株主の議決権を一単元につき一個とする制度のことである。

この単元株制度においては、一単元を超える株式を有する株主のみに株主総会の議決権が認められる。逆に、一単元未満の株式しかもっていない株主には議決権が認められない(第189条第1項)。例えば、一単元が1000株の場合、800株しか持っていない株主には議決権が認められないということである。

これにより、会社は株主総会にかかる株主管理コストを軽減することができる。

ただし、一単元の数を大きく設定すると、大株主しか議決権を有さなくなり、その他の株主の議決権を不当に制限することになるため、法務省令で定める数を超えて一単元の数を決めることはできない。
第189条 【単元未満株式についての権利の制限等】

 @ 単元株式数に満たない数の株式(以下「単元未満株式」という。)を有する株主(以下「単元未満株主」という。)は、その有する単元未満株式について、株主総会及び種類株主総会において議決権を行使することができない。

 A 株式会社は、単元未満株主が当該単元未満株式について次に掲げる権利以外の権利の全部又は一部を行使することができない旨を定款で定めることができる。

 1 第百七十一条第一項第一号に規定する取得対価の交付を受ける権利

 2 株式会社による取得条項付株式の取得と引換えに金銭等の交付を受ける権利

 3 第百八十五条に規定する株式無償割当てを受ける権利

 4 第百九十二条第一項の規定により単元未満株式を買い取ることを請求する権利

 5 残余財産の分配を受ける権利

 6 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める権利

 B 株券発行会社は、単元未満株式に係る株券を発行しないことができる旨を定款で定めることができる。
株式会社が単元株制度を採っている場合、単元未満株主には議決権が認められない。しかし、単元未満の株式とはいえ、正当な株主であることには変わりなく、株主提案権(第303条)などの議決権の存在を前提とする権利を除いて、株主としての他の権利は原則的にすべて認められている。ただし、会社は本条第2項各号の権利以外の権利の全部または一部を行使することができないよう定款で定めることができる。
第190条 【理由の開示】

 単元株式数を定める場合には、取締役は、当該単元株式数を定める定款の変更を目的とする株主総会において、当該単元株式数を定めることを必要とする理由を説明しなければならない。
単元株制度を採る場合は株主総会の決議が必要である。また、取締役は、なぜ単元株制度を採るのかの説明をしなければならない。

単元株制度は、株主に不測の損害を与える可能性があるため、株主の理解を得る必要があるためである。
第191条 【定款変更手続の特則】

 株式会社は、次のいずれにも該当する場合には、第四百六十六条の規定にかかわらず、株主総会の決議によらないで、単元株式数(種類株式発行会社にあっては、各種類の株式の単元株式数。以下この条において同じ。)を増加し、又は単元株式数についての定款の定めを設ける定款の変更をすることができる。

 1 株式の分割と同時に単元株式数を増加し、又は単元株式数についての定款の定めを設けるものであること。

 2 イに掲げる数がロに掲げる数を下回るものでないこと。

  イ 当該定款の変更後において各株主がそれぞれ有する株式の数を単元株式数で除して得た数

  ロ 当該定款の変更前において各株主がそれぞれ有する株式の数(単元株式数を定めている場合にあっては、当該株式の数を単元株式数で除して得た数)
定款変更には、原則として株主総会の決議が必要である。しかし、株式分割と同時に単元株制度を導入し、または単元株式数を増加させる場合であり、かつ、当該定款の変更後において各株主がそれぞれ有する株式の数を単元株式数で除して得た数が当該定款の変更前において各株主がそれぞれ有する株式の数(単元株式数を定めている場合にあっては、当該株式の数を単元株式数で除して得た数)を下回らない場合は、株主総会の決議によらず、単元株制度の導入または単元株式数を増加する定款変更を行うことができる。

この場合、手続きの迅速性が必要であり、既存株主を害する可能性も低いためである。