会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第2章 株式

第8節 募集株式の発行等

第2款 募集株式の割当て
第203条 【募集株式の申込み】

 @ 株式会社は、第百九十九条第一項の募集に応じて募集株式の引受けの申込みをしようとする者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。

 1 株式会社の商号

 2 募集事項

 3 金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所

 4 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

 A 第百九十九条第一項の募集に応じて募集株式の引受けの申込みをする者は、次に掲げる事項を記載した書面を株式会社に交付しなければならない。

 1 申込みをする者の氏名又は名称及び住所

 2 引き受けようとする募集株式の数

 B 前項の申込みをする者は、同項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て、同項の書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該申込みをした者は、同項の書面を交付したものとみなす。

 C 第一項の規定は、株式会社が同項各号に掲げる事項を記載した金融商品取引法第二条第十項に規定する目論見書を第一項の申込みをしようとする者に対して交付している場合その他募集株式の引受けの申込みをしようとする者の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には、適用しない。

 D 株式会社は、第一項各号に掲げる事項について変更があったときは、直ちに、その旨及び当該変更があった事項を第二項の申込みをした者(以下この款において「申込者」という。)に通知しなければならない。

 E 株式会社が申込者に対してする通知又は催告は、第二項第一号の住所(当該申込者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。

 F 前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。
会社は、募集株式の株主割当に応じて引受けの申し込みをしようとする者に対して、以下のことを通知しなければならない(ただし、金融商品取引法に基づく目論見書を申し込み希望者に交付している場合等には通知は不要とされている)。

・株式会社の商号
・募集事項
・金銭の払い込みをすべきときは、払い込みの取り扱い場所
・その他法務省令で定める事項

申込希望者が会社から通知を受けた場合、氏名・名称・住所・引き受ける募集株式数を記した書面を会社に交付しなければならない。この場合、電磁的方法によって行うこともできる。そして、この書面を交付した場合、申込希望者は申込者と呼ばれることとなる。

募集株式の割り当て手続きには会社から申込者に対して通知や催告をしなければならない場合がある。その場合、会社は通知や催告を本条第2項第1号の住所に宛てて発送すればよく、通常到達すべきであった時に申込者のもとに到達したものとみなされる。例えば、申込者の居所がわからなくなったとしても、会社は申込者を探しあてたりするような責任を負う必要はない。
第204条 【募集株式の割当て】

 @ 株式会社は、申込者の中から募集株式の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる募集株式の数を定めなければならない。この場合において、株式会社は、当該申込者に割り当てる募集株式の数を、前条第二項第二号の数よりも減少することができる。

 A 募集株式が譲渡制限株式である場合には、前項の規定による決定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。

 B 株式会社は、第百九十九条第一項第四号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の初日)の前日までに、申込者に対し、当該申込者に割り当てる募集株式の数を通知しなければならない。

 C 第二百二条の規定により株主に株式の割当てを受ける権利を与えた場合において、株主が同条第一項第二号の期日までに前条第二項の申込みをしないときは、当該株主は、募集株式の割当てを受ける権利を失う。
第203条第2項により募集株式の株主割当てに対して申し込みがされた場合、会社は申込者の中から募集株式の割当てを受ける者を決めなければならない。そして、その者に割り当てる株式数も決めなければならない。この場合、会社は割り当てる株式数を申込者が申込書に記載した希望引受数よりも減らすことができる。なお、募集株式が譲渡制限株式である場合、割り当てる株式数の決定は、定款に別の定めがない限り、株主総会の決議(取締役会非設置会社)か取締役会決議(取締役会設置会社)によらなければならない。

会社は払い込み期日(または払い込み期間の初日)の前日までに、申込者に対して、割り当てる募集株式数を通知しなければならない。

なお、申し込み希望者が引き受けの申し込み期日までに申し込みをしない場合には、募集株式の割り当てを受ける権利を失う。
第205条 【募集株式の申込み及び割当てに関する特則】

 前二条の規定は、募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合には、適用しない。
総株引受け(募集株式のすべてを一体的に引受ける契約をすること)の場合、第203条と第204条が規定する手続きは不要である。すべての株式を一体的に引き受けるため、申し込みや割当てなどの手続きを行う必要性がないためである。
第206条 【募集株式の引受け】

 次の各号に掲げる者は、当該各号に定める募集株式の数について募集株式の引受人となる。

 1 申込者 株式会社の割り当てた募集株式の数

 2 前条の契約により募集株式の総数を引き受けた者 その者が引き受けた募集株式の数
本条は、募集株式の引受けに関する規定である。引き受ける株式の数は会社により割り当てられた数や契約によって引き受けた数に連動する。

具体的には、株式の募集に応じた申込者は、会社の割り当てた数の株式の引受人となる。また、総株引受けの場合には、その者が引き受けた数の株式の引受人となる。