会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第2章 株式

第8節 募集株式の発行等

第4款 出資の履行等
第208条 【出資の履行】

 @ 募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者を除く。)は、第百九十九条第一項第四号の期日又は同号の期間内に、株式会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの募集株式の払込金額の全額を払い込まなければならない。

 A 募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者に限る。)は、第百九十九条第一項第四号の期日又は同号の期間内に、それぞれの募集株式の払込金額の全額に相当する現物出資財産を給付しなければならない。

 B 募集株式の引受人は、第一項の規定による払込み又は前項の規定による給付(以下この款において「出資の履行」という。)をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができない。

 C 出資の履行をすることにより募集株式の株主となる権利の譲渡は、株式会社に対抗することができない。

 D 募集株式の引受人は、出資の履行をしないときは、当該出資の履行をすることにより募集株式の株主となる権利を失う。
株式会社では、株主は間接有限責任しか負わず(第104条)、会社債権者の担保となるのは会社財産だけであるため、その充実のため、募集株式の引受人に対して、期日(第199条第1項第4号)までに払い込み金全額の払い込み、現物出資の全部給付を行うことを要求している(第1項と第2項)。

この期日または期間内払い込みをしない場合、引受人は株主となる権利を失う(第5項)。これは、発起設立の場合(第36条第3項)とは違い、特別な手続きは必要ない。

募集株式の引受人は、出資の履行債務と会社に対して持っている債権とを相殺することはできない。募集株式の発行によって資金調達する場合、現金が必要であるのが通常であるため、これを確保しようという趣旨である。これは資本維持の原則の制度上の表れである。

株主となることのできる権利を権利株といい、これは仮に譲渡したとしてもその譲渡を会社に主張することはできない(第4項)。株式発行前に、権利株が移転すると、権利株の保有者を確定することが困難となり、株式発行事務が滞るためである。ただし、会社に主張することはできないだけであって、当事者間では有効な行為である。
第209条 【株主となる時期】

 募集株式の引受人は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める日に、出資の履行をした募集株式の株主となる。

 1 第百九十九条第一項第四号の期日を定めた場合 当該期日

 2 第百九十九条第一項第四号の期間を定めた場合 出資の履行をした日
募集株式の引受人は、会社が出資の履行期日を決めた場合(第199条第1項第4号)、その期日に株主となる。他方、払い込み金額の払い込み期日、現物出資財産の給付期日を決めていない場合、出資の履行をした日に株主となる。