会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第2章 株式

第8節 募集株式の発行等

第5款 募集株式の発行等をやめることの請求
第210条 【募集株式の発行や自己株式の処分をやめることの請求】

 次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、第百九十九条第一項の募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をやめることを請求することができる。

 1 当該株式の発行又は自己株式の処分が法令又は定款に違反する場合

 2 当該株式の発行又は自己株式の処分が著しく不公正な方法により行われる場合
本条は、募集株式の発行等の差し止めについての規定である。

株主総会で募集株式の発行等を決定する場合は別として、公開会社では募集株式の発行等は取締役会の決議事項(第201条第1項)とされている。非公開会社においても取締役会(取締役会非設置会社は取締役)が決定する場合もある(第200条第1項から第3項、第309条第2項第5号)。そのため、募集株式の発行等は、取締役会の権限濫用により、株主が不測の損害を被る可能性がありえる。

会社法は株主の利益保護のため、不公正な募集株式の発行等に対する特別の救済手段として、株主が募集株式の発行等の差し止めを求めることができるとしている。差し止めを求める場合、当該株式の発行又は自己株式の処分が法令又は定款に違反する場合(第1号)、当該株式の発行又は自己株式の処分が著しく不公正な方法により行われる場合(第2号)について認められている。

第2号の著しく不公正な方法というのは、判例では、募集株式の発行等の主要な目的が資金調達にあるか否かによって判断すべきとされている(東京地決平元7・25)。