会社法 条文 | 会社法 解説 | |||||||||
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第2編 株式会社 第2章 株式 第9節 株券 第1款 総則 |
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第214条 【株券を発行する旨の定款の定め】 株式会社は、その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨を定款で定めることができる。 |
株券は、株式会社において社員の地位である株式を表章する様式の有価証券である。 会社法では、原則として、会社は株券を発行しないものとしている(旧商法では株券の発行が原則であった)。しかし、本条の規定にあるように、定款において株券の発行を定めた場合は、例外的に、株券を発行することができる。
株券の不発行が原則となった理由は、上場企業においては株式取引はオンライン上で行われるため株券を発行する必要性が乏しくなったためである。また、中小企業では株式が取引の対象となることが少ないため株券の必要性があまりないためである。 |
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第215条 【株券の発行】 @ 株券発行会社は、株式を発行した日以後遅滞なく、当該株式に係る株券を発行しなければならない。 A 株券発行会社は、株式の併合をしたときは、第百八十条第二項第二号の日以後遅滞なく、併合した株式に係る株券を発行しなければならない。 B 株券発行会社は、株式の分割をしたときは、第百八十三条第二項第二号の日以後遅滞なく、分割した株式に係る株券(既に発行されているものを除く。)を発行しなければならない。 C 前三項の規定にかかわらず、公開会社でない株券発行会社は、株主から請求がある時までは、これらの規定の株券を発行しないことができる。 |
株券発行会社は、原則として株式発行日以後すぐに株券を発行しなければならない(第1項)。ただし、非公開会社においては株主の請求があるまでは株券を発行しなくてもよい(第4項)。非公開会社は同族企業などのように株式の流通が乏しいため、発行義務が緩和されている。 第214条の規定にあるように、株券発行会社ではない会社は株券を発行する必要はない。 |
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第216条 【株券の記載事項】 株券には、次に掲げる事項及びその番号を記載し、株券発行会社の代表取締役(委員会設置会社にあっては、代表執行役)がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。 1 株券発行会社の商号 2 当該株券に係る株式の数 3 譲渡による当該株券に係る株式の取得について株式会社の承認を要することを定めたときは、その旨 4 種類株式発行会社にあっては、当該株券に係る株式の種類及びその内容 |
株券には、会社の商号、株式数、譲渡制限株式の場合はその旨、種類株式発行会社の場合は株式の種類とその内容を記載しなければならない。そして、これに代表取締役が署名または記名押印しなければならない。 なお、これらの事項の記載が一部なかった場合であっても、本質的事項が完全に記載されていれば株券は有効であると考えられている。これを株券のゆるやかな要式証券性という。 |
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第217条 【株券不所持の申出】 @ 株券発行会社の株主は、当該株券発行会社に対し、当該株主の有する株式に係る株券の所持を希望しない旨を申し出ることができる。 A 前項の規定による申出は、その申出に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。この場合において、当該株式に係る株券が発行されているときは、当該株主は、当該株券を株券発行会社に提出しなければならない。 B 第一項の規定による申出を受けた株券発行会社は、遅滞なく、前項前段の株式に係る株券を発行しない旨を株主名簿に記載し、又は記録しなければならない。 C 株券発行会社は、前項の規定による記載又は記録をしたときは、第二項前段の株式に係る株券を発行することができない。 D 第二項後段の規定により提出された株券は、第三項の規定による記載又は記録をした時において、無効となる。 E 第一項の規定による申出をした株主は、いつでも、株券発行会社に対し、第二項前段の株式に係る株券を発行することを請求することができる。この場合において、第二項後段の規定により提出された株券があるときは、株券の発行に要する費用は、当該株主の負担とする。 |
本条は、株券不所持制度についての規定である。これは、株券発行会社の株式であっても株券を発行せず、株券が必要となった場合にだけ株券を発行する制度のことである。株券はなくしたときに、第三者が善意取得することも考えられるため、この危険性を排除したいと考える株主の便宜を図る趣旨である。 この株券不所持制度の適用を受けるためには、株主が会社に申し出た上で、会社が株券を発行しないということを株主名簿に記載しなければならない。すでに発行された株券については、株主名簿に記載された時点で無効となる。そして、株券不所持を申し出た株主は、いつでも会社に対して株券の発行を請求することができる。 |
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第218条 【株券を発行する旨の定款の定めの廃止】 @ 株券発行会社は、その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしようとするときは、当該定款の変更の効力が生ずる日の二週間前までに、次に掲げる事項を公告し、かつ、株主及び登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければならない。 1 その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する旨 2 定款の変更がその効力を生ずる日 3 前号の日において当該株式会社の株券は無効となる旨 A 株券発行会社の株式に係る株券は、前項第二号の日に無効となる。 B 第一項の規定にかかわらず、株式の全部について株券を発行していない株券発行会社がその株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしようとする場合には、同項第二号の日の二週間前までに、株主及び登録株式質権者に対し、同項第一号及び第二号に掲げる事項を通知すれば足りる。 C 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。 D 第一項に規定する場合には、株式の質権者(登録株式質権者を除く。)は、同項第二号の日の前日までに、株券発行会社に対し、第百四十八条各号に掲げる事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる。 |
株券発行会社が株券発行をやめる場合、株券発行を廃止する旨、定款変更の効力発生日、効力発生日に株券無効となる旨を、効力発生日の二週間前までに公告しなければならない。また、これと同時に、株主と登録株式質権者には、これらの事項を通知しなければならない。 ただし、株式の全部についてまだ株券を発行していない会社は、株券発行を廃止する旨、定款変更の効力発生日の事項を株主と登録株式質権者に通知しなければならない。この通知は、公告に代えることもできる。 そして、定款変更の効力発生日に株券は無効となる。 |