会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第3章 新株予約権

第2節 新株予約権の発行

第1款 募集事項の決定等
第238条 【募集事項の決定】

 @ 株式会社は、その発行する新株予約権を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集新株予約権(当該募集に応じて当該新株予約権の引受けの申込みをした者に対して割り当てる新株予約権をいう。以下この章において同じ。)について次に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)を定めなければならない。

 1 募集新株予約権の内容及び数

 2 募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨

 3 前号に規定する場合以外の場合には、募集新株予約権の払込金額(募集新株予約権一個と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)又はその算定方法

 4 募集新株予約権を割り当てる日(以下この節において「割当日」という。)

 5 募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは、その期日

 6 募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合には、第六百七十六条各号に掲げる事項

 7 前号に規定する場合において、同号の新株予約権付社債に付された募集新株予約権についての第百十八条第一項、第七百七十七条第一項、第七百八十七条第一項又は第八百八条第一項の規定による請求の方法につき別段の定めをするときは、その定め

 A 募集事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。

 B 次に掲げる場合には、取締役は、前項の株主総会において、第一号の条件又は第二号の金額で募集新株予約権を引き受ける者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。

 1 第一項第二号に規定する場合において、金銭の払込みを要しないこととすることが当該者に特に有利な条件であるとき。

 2 第一項第三号に規定する場合において、同号の払込金額が当該者に特に有利な金額であるとき。

 C 種類株式発行会社において、募集新株予約権の目的である株式の種類の全部又は一部が譲渡制限株式であるときは、当該募集新株予約権に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を目的とする募集新株予約権を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。

 D 募集事項は、第一項の募集ごとに、均等に定めなければならない。
本条は、募集新株予約権の発行における募集事項の決定についての規定である。募集新株予約権の発行を行う場合、原則として株主総会の決議によって第1項各号に記載されている募集事項を決めなければならない。ただし、公開会社においては、これらの募集事項を取締役会の決議によって決めることとなる(第240条第1項)。なお、これらの募集事項は募集ごとに均等に決めなければならない。

本条第1項第2号により金銭の払い込みを必要としないということが当該者に特に有利な条件であるとき、本条第1項第3号の払い込み金額が当該者に特に有利な金額であるときは、募集事項を決める株主総会において、取締役には説明義務が課せられている。特定の者に対する有利発行は、その他の者を相対的に害する可能性があるためである。

種類株式発行会社においては、種類株主の利益保護のため、募集新株予約権の目的である株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該新株予約権に関する募集事項の決定には、原則として当該種類の種類株主総会の決議がなければその効力を生じないとしている。
第239条 【募集事項の決定の委任】

 @ 前条第二項及び第四項の規定にかかわらず、株主総会においては、その決議によって、募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に委任することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 その委任に基づいて募集事項の決定をすることができる募集新株予約権の内容及び数の上限

 2 前号の募集新株予約権につき金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨

 3 前号に規定する場合以外の場合には、募集新株予約権の払込金額の下限

 A 次に掲げる場合には、取締役は、前項の株主総会において、第一号の条件又は第二号の金額で募集新株予約権を引き受ける者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。

 1 前項第二号に規定する場合において、金銭の払込みを要しないこととすることが当該者に特に有利な条件であるとき。

 2 前項第三号に規定する場合において、同号の払込金額の下限が当該者に特に有利な金額であるとき。

 B 第一項の決議は、割当日が当該決議の日から一年以内の日である前条第一項の募集についてのみその効力を有する。

 C 種類株式発行会社において、募集新株予約権の目的である株式の種類の全部又は一部が譲渡制限株式であるときは、当該募集新株予約権に関する募集事項の決定の委任は、前条第四項の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
募集新株予約権の発行を行うには、第238条第1項各号の募集事項を株主総会の決議によって決めなければならない。しかし、この決定は、株主総会の決議によって、取締役会非設置会社は取締役に、取締役会設置会社は取締役会に委任することができる。公開会社においては、募集事項の決定機関は取締役会とされているため、このこととの均衡を保ち、資金調達の便宜を図る趣旨である。

委任をするときには、委任を受けた機関の権限濫用を防止するため、本条第1項各号の事項を決めておかなければならない。

また、特定の者に有利な条件・金額で募集新株予約権を発行する場合、取締役にその説明義務が課せられている。

種類株式発行会社においては、種類株主の利益保護のため、募集新株予約権の目的である株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該新株予約権に関する募集事項の決定の委任は、原則として当該種類の種類株主総会の決議がなければその効力を生じないとしている。
第240条 【公開会社における募集事項の決定の特則】

 @ 第二百三十八条第三項各号に掲げる場合を除き、公開会社における同条第二項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない。

 A 公開会社は、前項の規定により読み替えて適用する第二百三十八条第二項の取締役会の決議によって募集事項を定めた場合には、割当日の二週間前までに、株主に対し、当該募集事項を通知しなければならない。

 B 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。

 C 第二項の規定は、株式会社が募集事項について割当日の二週間前までに金融商品取引法第四条第一項から第三項までの届出をしている場合その他の株主の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には、適用しない。
本条は、公開会社が募集新株予約権を発行する場合の特則について規定している。

募集新株予約権の発行を行う場合、原則的には、株主総会の決議によって募集事項を決めなければならない(第238条第2項、第309条第2項第5号)。しかし、公開会社においては、第238条第3号各号の有利発行の場合を除いて、募集事項の決定は取締役会の決議によって行われる(本条第1項)。これは、公開会社の募集新株予約権の発行は通常大規模であるため、手続きの迅速性を確保するためである。

そして、募集事項を決めた場合、当該募集事項を株主に通知しなければならない(本条第2項)。この通知は、公告によって行うこともできる(本条第3項)。ただし、金融商品取引法第4条第1項または第2項の届出をしている場合、その他の株主の保護に欠ける危険性がないものとして法務省令で定める場合には、通知または公告は不要である(本条第4項)。
第241条 【株主に新株予約権の割当てを受ける権利を与える場合】

 @ 株式会社は、第二百三十八条第一項の募集において、株主に新株予約権の割当てを受ける権利を与えることができる。この場合においては、募集事項のほか、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 株主に対し、次条第二項の申込みをすることにより当該株式会社の募集新株予約権(種類株式発行会社にあっては、その目的である株式の種類が当該株主の有する種類の株式と同一の種類のもの)の割当てを受ける権利を与える旨

 2 前号の募集新株予約権の引受けの申込みの期日

 A 前項の場合には、同項第一号の株主(当該株式会社を除く。)は、その有する株式の数に応じて募集新株予約権の割当てを受ける権利を有する。ただし、当該株主が割当てを受ける募集新株予約権の数に一に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。

 B 第一項各号に掲げる事項を定める場合には、募集事項及び同項各号に掲げる事項は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める方法によって定めなければならない。

 1 当該募集事項及び第一項各号に掲げる事項を取締役の決定によって定めることができる旨の定款の定めがある場合(株式会社が取締役会設置会社である場合を除く。) 取締役の決定

 2 当該募集事項及び第一項各号に掲げる事項を取締役会の決議によって定めることができる旨の定款の定めがある場合(次号に掲げる場合を除く。) 取締役会の決議

 3 株式会社が公開会社である場合 取締役会の決議

 4 前三号に掲げる場合以外の場合 株主総会の決議

 C 株式会社は、第一項各号に掲げる事項を定めた場合には、同項第二号の期日の二週間前までに、同項第一号の株主(当該株式会社を除く。)に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない

 1 募集事項

 2 当該株主が割当てを受ける募集新株予約権の内容及び数

 3 第一項第二号の期日

 D 第二百三十八条第二項から第四項まで及び前二条の規定は、第一項から第三項までの規定により株主に新株予約権の割当てを受ける権利を与える場合には、適用しない。
本条は、募集新株予約権の株主割当についての規定である。

株主割当とは、募集新株予約権の募集において、会社が株主に新株予約権の割当てを受ける権利を与えることである。株主割当を行うには、募集事項の他に、株主に対して、第242条第2項の申込みをすることにより当該株式会社の募集新株予約権の割当てを受ける権利を与える旨、募集新株予約権の引受けの申し込みの期日を決めなければならない。

株主割当は、株主が有する株式数に応じて行われる。そのため、どの株主にとっても有利や不利な面がないため、有利発行に関する第238条第2項から第4項までと第239条と第240条の規定は適用されない。

会社は、本条第1項各号の事項を決めた場合、割当て対象の株主に対して、募集事項、株主が割当てを受ける募集新株予約権の数、引受け申し込み期日を通知しなければならない。