会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第3章 新株予約権

第5節 株式会社による自己の新株予約権の取得

第1款 募集事項の定めに基づく新株予約権の取得
第273条 【取得する日の決定】

 @ 取得条項付新株予約権(第二百三十六条第一項第七号イに掲げる事項についての定めがある新株予約権をいう。以下この章において同じ。)の内容として同号ロに掲げる事項についての定めがある場合には、株式会社は、同号ロの日を株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって定めなければならない。ただし、当該取得条項付新株予約権の内容として別段の定めがある場合は、この限りでない。

 A 第二百三十六条第一項第七号ロの日を定めたときは、株式会社は、取得条項付新株予約権の新株予約権者(同号ハに掲げる事項についての定めがある場合にあっては、次条第一項の規定により決定した取得条項付新株予約権の新株予約権者)及びその登録新株予約権質権者に対し、当該日の二週間前までに、当該日を通知しなければならない。

 B 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
取得の条件を、会社が別に定める日の到来(第236条第1項第7号ロ)とする取得条項付新株予約権を発行した会社は、当該日を、取締役会(取締役会設置会社)または株主総会(取締役会非設置会社)の決議によって決めなければならない(第1項)。

会社は当該日を決めた場合、取得条項付新株予約権の新株予約権者とその登録新株予約権質権者に、当該日の二週間前までに当該日を通知しなければならない(第2項)。ただし、この通知は公告によって行うこともできる(第3項)。
第274条 【取得する新株予約権の決定等】

 @ 株式会社は、新株予約権の内容として第二百三十六条第一項第七号ハに掲げる事項についての定めがある場合において、取得条項付新株予約権を取得しようとするときは、その取得する取得条項付新株予約権を決定しなければならない。

 A 前項の取得条項付新株予約権は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって定めなければならない。ただし、当該取得条項付新株予約権の内容として別段の定めがある場合は、この限りでない。

 B 第一項の規定による決定をしたときは、株式会社は、同項の規定により決定した取得条項付新株予約権の新株予約権者及びその登録新株予約権質権者に対し、直ちに、当該取得条項付新株予約権を取得する旨を通知しなければならない。

 C 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
取得事由が生じた場合にその一部の新株予約権を取得する取得条項付新株予約権(第236条第1項第7号ハ)を発行した会社は、取得条項付新株予約権を取得しようとするときは、その取得する取得条項付新株予約権を決めなければならない(第1項)。

第1項については、取締役会(取締役会設置会社)または株主総会(取締役会非設置会社)の決議によって決めなければならない(第2項)。

そして、取得する新株予約権を決めた場合、取得条項付新株予約権の新株予約権者とその登録新株予約権質権者に対して、当該取得条項付新株予約権を取得するということを通知しなければならない。ただし、この通知は公告によって行うこともできる。
第275条 【効力の発生等】

 @ 株式会社は、第二百三十六条第一項第七号イの事由が生じた日(同号ハに掲げる事項についての定めがある場合にあっては、第一号に掲げる日又は第二号に掲げる日のいずれか遅い日。次項及び第三項において同じ。)に、取得条項付新株予約権(同条第一項第七号ハに掲げる事項についての定めがある場合にあっては、前条第一項の規定により決定したもの。次項及び第三項において同じ。)を取得する。

 1 第二百三十六条第一項第七号イの事由が生じた日

 2 前条第三項の規定による通知の日又は同条第四項の公告の日から二週間を経過した日

 A 前項の規定により株式会社が取得する取得条項付新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合には、株式会社は、第二百三十六条第一項第七号イの事由が生じた日に、当該新株予約権付社債についての社債を取得する。

 B 次の各号に掲げる場合には、取得条項付新株予約権の新株予約権者(当該株式会社を除く。)は、第二百三十六条第一項第七号イの事由が生じた日に、同号に定める事項についての定めに従い、当該各号に定める者となる。

 1 第二百三十六条第一項第七号ニに掲げる事項についての定めがある場合 同号ニの株式の株主

 2 第二百三十六条第一項第七号ホに掲げる事項についての定めがある場合 同号ホの社債の社債権者

 3 第二百三十六条第一項第七号ヘに掲げる事項についての定めがある場合 同号ヘの他の新株予約権の新株予約権者

 4 第二百三十六条第一項第七号トに掲げる事項についての定めがある場合 同号トの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者

 C 株式会社は、第二百三十六条第一項第七号イの事由が生じた後、遅滞なく、取得条項付新株予約権の新株予約権者及びその登録新株予約権質権者(同号ハに掲げる事項についての定めがある場合にあっては、前条第一項の規定により決定した取得条項付新株予約権の新株予約権者及びその登録新株予約権質権者)に対し、当該事由が生じた旨を通知しなければならない。ただし、第二百七十三条第二項の規定による通知又は同条第三項の公告をしたときは、この限りでない。

 D 前項本文の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
取得条項付新株予約権を発行した会社は、取得事由(第236条第1項第7号イ)が生じた日に当該新株予約権を取得する(第1項)。そのため、当該新株予約権の買取価格は、買取を請求した日の価格を基準とすることとなる。

他方、会社は、取得条項付新株予約権を取得する時の対価として、会社の株式、社債、他の新株予約権、新株予約権付社債を交付することができる(第236条第1項第7号ニ〜ト)。自己新株予約権取得の対価として、これらの者を交付された株主は、取得事由が生じた日に、株主、社債権者、新株予約権者などになる(第3項)。

会社は、取得条項付新株予約権の取得事由が生じた場合、取得条項付新株予約権の新株予約権者とその登録新株予約権質権者に対して、その旨を通知しなければならない(第4項)。ただし、この通知は公告によって行うこともできる(第5項)。ただし、第273条第2項の規定による通知または公告をしたときは、本条第4項と第5項の通知または公告をする必要はない。この場合、取得条項付新株予約権の新株予約権者とその登録新株予約権質権者は、当然、取得事由が生じたことを知っているためである。