会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第3章 新株予約権

第6節 新株予約権無償割当て
第277条 【新株予約権無償割当て】

 株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、ある種類の種類株主)に対して新たに払込みをさせないで当該株式会社の新株予約権の割当て(以下この節において「新株予約権無償割当て」という。)をすることができる。
新株予約権無償割当てとは、株主または種類株主に対して、無償で新株の割当て(または自己新株予約権の交付)をすることである。これは、敵対的買収防衛策の一つであるポイズン・ピルへの活用が想定されている。

通常の新株予約権の発行手続きであっても、株主割当て(第241条)により無償で新株予約権を発行することは可能であるが、手続き(第242条・第243条・第245条第1項第1号)が必要となる。

しかし、本条の新株予約権無償割当てであれば、発行決議さえあれば、そこで定められた効力発生日に株主は新株予約権者となるため、手続きが簡単である。

以下も参照。
第2節 新株予約権の発行 第1款 募集事項の決定等 第238条〜第241条
第2節 新株予約権の発行 第2款 募集新株予約権の割当て 第242条〜第245条
第278条 【新株予約権無償割当てに関する事項の決定】

 @ 株式会社は、新株予約権無償割当てをしようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 株主に割り当てる新株予約権の内容及び数又はその算定方法

 2 前号の新株予約権が新株予約権付社債に付されたものであるときは、当該新株予約権付社債についての社債の種類及び各社債の金額の合計額又はその算定方法

 3 当該新株予約権無償割当てがその効力を生ずる日

 4 株式会社が種類株式発行会社である場合には、当該新株予約権無償割当てを受ける株主の有する株式の種類

 A 前項第一号及び第二号に掲げる事項についての定めは、当該株式会社以外の株主(種類株式発行会社にあっては、同項第四号の種類の種類株主)の有する株式(種類株式発行会社にあっては、同項第四号の種類の株式)の数に応じて同項第一号の新株予約権及び同項第二号の社債を割り当てることを内容とするものでなければならない。

 B 第一項各号に掲げる事項の決定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
会社が新株予約権無償割当てを行う場合、第1項各号の事項を株主総会の決議によって決めなければならない。ただし、新株予約権無償割当ては既存株主に不測の損害を与えることはないため、取締役会設置会社においては取締役会の決議によって決めることができるし、定款に別の定めをしている場合はそれに従うこともできる。
第279条 【新株予約権無償割当ての効力の発生等】

 @ 前条第一項第一号の新株予約権の割当てを受けた株主は、同項第三号の日に、同項第一号の新株予約権の新株予約権者(同項第二号に規定する場合にあっては、同項第一号の新株予約権の新株予約権者及び同項第二号の社債の社債権者)となる。

 A 株式会社は、前条第一項第一号の新株予約権についての第二百三十六条第一項第四号の期間の初日の二週間前までに、株主(種類株式発行会社にあっては、前条第一項第四号の種類の種類株主)及びその登録株式質権者に対し、当該株主が割当てを受けた新株予約権の内容及び数(前条第一項第二号に規定する場合にあっては、当該株主が割当てを受けた社債の種類及び各社債の金額の合計額を含む。)を通知しなければならない。
新株予約権無償割当てを受けた株主は、効力発生日(第278条第1項第3号)に当該新株予約権の新株予約権者となる(第1項)。通常の募集新株予約権の株主割当ての場合は、第242条・第243条・第245条第1項第1号の手続きを経た後に効力が発生するが、新株予約権無償割当ての場合は手続きが簡略化されている。

効力発生日が到来すると、会社は株主と登録新株予約権質権者に対して、当該株主が割当てを受けた新株予約権の数を通知しなければならない(第2項)。