会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第3章 新株予約権

第7節 新株予約権の行使

第1款 総則
第280条 【新株予約権の行使】

 @ 新株予約権の行使は、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。

 1 その行使に係る新株予約権の内容及び数

 2 新株予約権を行使する日

 A 証券発行新株予約権を行使しようとするときは、当該証券発行新株予約権の新株予約権者は、当該証券発行新株予約権に係る新株予約権証券を株式会社に提出しなければならない。ただし、当該新株予約権証券が発行されていないときは、この限りでない。

 B 証券発行新株予約権付社債に付された新株予約権を行使しようとする場合には、当該新株予約権の新株予約権者は、当該新株予約権を付した新株予約権付社債に係る新株予約権付社債券を株式会社に提示しなければならない。この場合において、当該株式会社は、当該新株予約権付社債券に当該証券発行新株予約権付社債に付された新株予約権が消滅した旨を記載しなければならない。

 C 前項の規定にかかわらず、証券発行新株予約権付社債に付された新株予約権を行使しようとする場合において、当該新株予約権の行使により当該証券発行新株予約権付社債についての社債が消滅するときは、当該新株予約権の新株予約権者は、当該新株予約権を付した新株予約権付社債に係る新株予約権付社債券を株式会社に提出しなければならない。

 D 第三項の規定にかかわらず、証券発行新株予約権付社債についての社債の償還後に当該証券発行新株予約権付社債に付された新株予約権を行使しようとする場合には、当該新株予約権の新株予約権者は、当該新株予約権を付した新株予約権付社債に係る新株予約権付社債券を株式会社に提出しなければならない。

 E 株式会社は、自己新株予約権を行使することができない。
新株予約権者は、当該新株予約権を行使し、株式の交付を受けることができる。その場合、新株予約権者は、新株予約権の内容と数、行使日を明らかにしなければならない(第1項)。また、証券発行新株予約権等については、第2項から第5項の要件が課せられる。

自己新株予約権について、会社はこれを行使することができない(第6項)。これは、自己株式の取得と同様の弊害を招く危険性があるためである。自己株式の取得の弊害については、以下を参照。

第4節 株式会社による自己の株式の取得 第2款 株主との合意による取得
 第156条〜第165条
第281条 【新株予約権の行使に際しての払込み】

 @ 金銭を新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、新株予約権者は、前条第一項第二号の日に、株式会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、その行使に係る新株予約権についての第二百三十六条第一項第二号の価額の全額を払い込まなければならない。

 A 金銭以外の財産を新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、新株予約権者は、前条第一項第二号の日に、その行使に係る新株予約権についての第二百三十六条第一項第三号の財産を給付しなければならない。この場合において、当該財産の価額が同項第二号の価額に足りないときは、前項の払込みの取扱いの場所においてその差額に相当する金銭を払い込まなければならない。

 B 新株予約権者は、第一項の規定による払込み又は前項の規定による給付をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができない。
株式会社では、株主は間接有限責任しか負わない(第104条)。会社債権者の担保となるのは、会社財産である。会社債権者が不測の損害を被らないように、新株予約権を行使する場合、会社財産が充実するように新株予約権者の出資が確実に履行される必要がある。

会社法では、新株予約権者に対して、新株予約権行使日(第280条第1項第2号)に払込金全額の払い込み、現物出資の全部給付を行うことを要求している(本条第1項、第2項)。また、現物出資財産の価額が、第236条第1項第2号の価額に足りない場合、その差額を払い込む必要がある(第2項)。

また、新株予約権者は、出資の履行債務と、会社に対して持っている債権とを相殺することはできない(第3項)。これは、新株予約権の発行によって資金調達をする場合、現金を必要としている場合が通常であるためである。現金を確保しようとする趣旨の条文である。
第282条 【株主となる時期】

 新株予約権を行使した新株予約権者は、当該新株予約権を行使した日に、当該新株予約権の目的である株式の株主となる。
新株予約権を行使した新株予約権者は、行使日に株主となる。

例えば、ストック・オプションとして新株予約権を保有している場合、株価を考慮していつ権利行使するか検討する必要がある。
第283条 【一に満たない端数の処理】

 新株予約権を行使した場合において、当該新株予約権の新株予約権者に交付する株式の数に一株に満たない端数があるときは、株式会社は、当該新株予約権者に対し、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額にその端数を乗じて得た額に相当する金銭を交付しなければならない。ただし、第二百三十六条第一項第九号に掲げる事項についての定めがある場合は、この限りでない。

 1 当該株式が市場価格のある株式である場合 当該株式一株の市場価格として法務省令で定める方法により算定される額

 2 前号に掲げる場合以外の場合 一株当たり純資産額
新株予約権を行使した場合、新株予約権者に交付される株式が、一株に満たない端数となることがある。この端数部分は株式を発行することができない。

会社法では、この端数部分については金銭で清算することとしている。具体的には以下のような計算によって清算する。

・市場価格のある株式(本条第1号):金額=市場価格×端数
・市場価格のない株式(本条第2号):金額=一株当たり純資産額×端数