会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第4章 機関

第1節 株主総会及び種類株主総会

第1款 株主総会
第295条 【株主総会の権限】

 @ 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。

 A 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。

 B この法律の規定により株主総会の決議を必要とする事項について、取締役、執行役、取締役会その他の株主総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しない。
株主総会とは、株主の総意によって会社の意思決定をする必要的機関である。株主総会は、株式会社の所有者である株主によって構成される決議機関であるため、本来的には会社に関する全ての事項について決定できる。そのため、取締役会非設置会社においては、株主総会は万能の機関とされている(第1項)。

しかし、取締役会設置会社は比較的大規模な企業が多く、あらゆる事項について株主総会の決議で決めるとなれば、会社経営の迅速性が損なわれることとなる。そのため、取締役会設置会社の株主総会は、会社法で規定されている事項と定款で定めた事項に限って、決議をすることができる機関とされている(第2項)。取締役会非設置会社と比べて、決議できる事項が限定されている。言い換えると、取締役会設置会社の株主総会は、権限の一部を取締役会に委譲していることとなる。
第296条 【株主総会の招集】

 @ 定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。

 A 株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。

 B 株主総会は、次条第四項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。
株主総会は毎年一回必ず開催しなければならない(第1項)。この開催が義務付けられている株主総会のことを、定時株主総会という。

また、定時株主総会以外にも、必要があればいつでも何度でも開催することができる(第2項)。これを、臨時株主総会という。

株主総会は原則として取締役が招集する(第3項)。ただし、第297条第4項の規定の場合は除く。
第297条 【株主による招集の請求】

 @ 総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。

 A 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。

 B 第一項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項の総株主の議決権の数に算入しない。

 C 次に掲げる場合には、第一項の規定による請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる。

 1 第一項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合

 2 第一項の規定による請求があった日から八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合
株主総会は原則として取締役が招集しなければならないが(第296条第3項)、取締役の怠慢などにより、招集が行われない場合もあり得る。このような場合、株主は取締役に対して株主総会の招集を請求することができる(第1項)。もし、取締役が応じない場合は、株主自らが株主総会を招集することができる(第4項)。ただし、この場合は、株主に資格制限が設けられており、6ヶ月以上前から3%以上の議決権を保有している必要がある(ただし、定款により条件を緩和することができる)。これは、株主による開催請求の濫用を防ぐためである。
第298条 【株主総会の招集の決定】

 @ 取締役(前条第四項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第三百二条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 株主総会の日時及び場所

 2 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項

 3 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨

 4 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨

 5 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

 A 取締役は、株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。次条から第三百二条までにおいて同じ。)の数が千人以上である場合には、前項第三号に掲げる事項を定めなければならない。ただし、当該株式会社が金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社であって法務省令で定めるものである場合は、この限りでない。

 B 取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株主総会において決議をすることができる事項」とあるのは、「前項第二号に掲げる事項」とする。

 C 取締役会設置会社においては、前条第四項の規定により株主が株主総会を招集するときを除き、第一項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。
株主総会を招集する場合は以下の事項を決めなければならない。

・株主総会の日時と場所
・株主総会の目的である事項があるときは、その事項
・書面投票を認めるときは、その旨
・電子投票を認めるときは、その旨
・法務省令で定める事項

なお、株主が1000人以上である場合、第2項但し書きの場合以外には、書面投票を認める義務がある。株主が多数いる場合は、その中に必然的に出席できない者も相当数いることが予想されるため、書面投票を認める必要性が強いためである。
第299条 【株主総会の招集の通知】

 @ 株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。

 A 次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。

 1 前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合

 2 株式会社が取締役会設置会社である場合

 B 取締役は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該取締役は、同項の書面による通知を発したものとみなす。

 C 前二項の通知には、前条第一項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
株主総会を招集する場合、取締役は原則として総会当日の二週間前までに招集通知を発送しなければならない(第1項)。二週間という期間には例外があり、非公開会社の場合は一週間前までに通知を発送すればよい(書面投票、電子投票を認めた場合は、原則通り二週間前までとなる)。非公開会社の場合は、所有と経営が分離していない場合が多く、株主は会社の状況を熟知しているのが通常であるため、議決権行使のための準備期間が短くなっている。

また、取締役会非設置会社の場合で、一週間を下回る期間を定款で定めた場合は、その期間内に通知を発送すればよい。

招集通知は原則として書面のほか、口頭でも行うことができる。ただし、書面投票または電子投票を認めた場合、当該会社が取締役会設置会社である場合には、必ず書面で通知しなければならない(第2項)。

株主の同意があれば、招集通知は電子メールなどの電磁的方法により行うことも可能である(第3項)。

招集通知に記載しなければならない事項は第298条第1項各号である。
第300条 【招集手続の省略】

 前条の規定にかかわらず、株主総会は、株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。ただし、第二百九十八条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合は、この限りでない。
株主全員が同意していれば、第299条が規定する招集手続きを省略することができる。ただし、書面投票(第298条第1項第3号)または電子投票(第298条第1項第4号)を認めた場合は、省略することはできない。

本条は、小規模な会社で、招集通知を発送したりする必要性があまりない会社のための条文である。
第301条 【株主総会参考書類及び議決権行使書面の交付等】

 @ 取締役は、第二百九十八条第一項第三号に掲げる事項を定めた場合には、第二百九十九条第一項の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(以下この款において「株主総会参考書類」という。)及び株主が議決権を行使するための書面(以下この款において「議決権行使書面」という。)を交付しなければならない。

 A 取締役は、第二百九十九条第三項の承諾をした株主に対し同項の電磁的方法による通知を発するときは、前項の規定による株主総会参考書類及び議決権行使書面の交付に代えて、これらの書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、株主の請求があったときは、これらの書類を当該株主に交付しなければならない。
株主総会を招集する場合、取締役は原則として株主に対して招集通知を発送しなければならない(第299条第1項)。そして、取締役は、書面投票(第298条第1項第3号)を認めた場合、招集通知に株主総会参考書類と議決権行使書面を添付しなければならない(本条第1項)。

名前 説明
株主総会参考書類 議決権の行使に参考となるような事項を記載した書類のことで、株主総会を欠席する者にとっては重要な情報源となる。
議決権行使書面 株主総会を欠席する者が、議決権を行使するための書面のことで、議決権の行使を行う場合必要不可欠なものである。


電子メールなどの電磁的方法による株主総会の招集通知を株主が承諾した場合(第299条第3項)には、株主総会参考書類と議決権行使書面を電磁的方法に代えることが可能である(本条第2項)。ただし、この場合であっても、株主から請求があったときは、書面を交付しなければならない。
第302条 【株主総会参考書類及び議決権行使書面の交付等 その2】

 @ 取締役は、第二百九十八条第一項第四号に掲げる事項を定めた場合には、第二百九十九条第一項の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、株主総会参考書類を交付しなければならない。

 A 取締役は、第二百九十九条第三項の承諾をした株主に対し同項の電磁的方法による通知を発するときは、前項の規定による株主総会参考書類の交付に代えて、当該株主総会参考書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、株主の請求があったときは、株主総会参考書類を当該株主に交付しなければならない。

 B 取締役は、第一項に規定する場合には、第二百九十九条第三項の承諾をした株主に対する同項の電磁的方法による通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、議決権行使書面に記載すべき事項を当該電磁的方法により提供しなければならない。

 C 取締役は、第一項に規定する場合において、第二百九十九条第三項の承諾をしていない株主から株主総会の日の一週間前までに議決権行使書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供の請求があったときは、法務省令で定めるところにより、直ちに、当該株主に対し、当該事項を電磁的方法により提供しなければならない。
株主総会を招集する場合、取締役は原則として株主に対して招集通知を発送しなければならない(第299条第1項)。そして、取締役は、電子投票(第298条第1項第4号)を認めた場合、招集通知に株主参考書類を添付しなければならない(本条第1項)。

電子メールなどの電磁的方法による株主総会の招集通知を株主が承諾した場合(第299条第3項)には、株主総会参考書類を電磁的方法に代えることが可能である(本条第2項)。ただし、この場合であっても、株主から請求があったときは、書面を交付しなければならない。

また、電磁的方法による株主総会の招集通知を承諾した株主に対しては、株主総会参考書類に加えて、議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供しなければならない(本条第3項)。

電磁的方法による株主総会の招集通知を承諾していない株主が、株主総会の一週間前までに議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供するよう請求してきたときは、すぐに電磁的方法により提供しなければならない(第4項)。
第303条 【株主提案権】

 @ 株主は、取締役に対し、一定の事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。次項において同じ。)を株主総会の目的とすることを請求することができる。

 A 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権又は三百個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。この場合において、その請求は、株主総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までにしなければならない。

 B 公開会社でない取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。

 C 第二項の一定の事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項の総株主の議決権の数に算入しない。
本条から第305条までは、株主提案権についての規定である。これは、株主が自ら株主総会を招集しなくても、会社が株主総会を招集したときを利用して、一定の事項を株主総会の目的とすることを求めたり、提案したりする権利のことである。株主の意思が会社経営に反映されるようにするための規定である。

株主提案権には、議題提案権、議案の要領の通知請求権、議案提出権などがある。

本条は、議題提案権について規定している(第1項)。議題提案権とは、一定の事項を株主総会の議題とすることを請求する権利のことである。取締役会設置会社においては、議題提案権の行使に資格制限が設けられており、原則として1%以上の議決権または300個以上の議決権を6ヶ月以上保有している必要がある(第2項)。これは、議題提案権の濫用がなされないようにするための規定である。ただし、公開会社ではない取締役会設置会社においては、6ヶ月という保有期間要件は不要とされている(第3項)。また、これらの資格制限は定款で緩和することも可能である。
第304条 【株主提案権 その2】

 株主は、株主総会において、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。次条第一項において同じ。)につき議案を提出することができる。ただし、当該議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主(当該議案について議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合は、この限りでない。
本条は、議案提出権についての規定である。これは、株主が、株主総会においてその目的である事項について議案を提出できる権利のことである。

例えば、議題が取締役選任についてだったとすると、「A氏を取締役に選任すること」が議案となる。

この議案は、法令や定款に違反する内容などであれば提出することができない。
第305条 【株主提案権 その3】

 @ 株主は、取締役に対し、株主総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、株主総会の目的である事項につき当該株主が提出しようとする議案の要領を株主に通知すること(第二百九十九条第二項又は第三項の通知をする場合にあっては、その通知に記載し、又は記録すること)を請求することができる。ただし、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権又は三百個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、当該請求をすることができる。

 A 公開会社でない取締役会設置会社における前項ただし書の規定の適用については、同項ただし書中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。

 B 第一項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項ただし書の総株主の議決権の数に算入しない。

 C 前三項の規定は、第一項の議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主(当該議案について議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合には、適用しない。
本条は、議案の要領の通知請求権についての規定である。これは、株主総会の目的である事項について、株主が提出しようとする議案の要領について、会社が招集通知を書面または電磁的方法で行う場合には記載・記録することを、そうでない場合には株主に通知することを請求する権利のことである(第1項)。

取締役会設置会社においては、議案の要領の通知請求権の行使には資格制限が設けられており、原則として1%以上の議決権または300個以上の議決権を6ヶ月以上保有している必要がある。ただし、公開会社ではない取締役会設置会社においては、6ヶ月という保有期間要件は不要とされている(第3項)。また、これらの資格制限は定款で緩和することも可能である。
第306条 【株主総会の招集手続等に関する検査役の選任】

 @ 株式会社又は総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。

 A 公開会社である取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株主総会において決議をすることができる事項」とあるのは「第二百九十八条第一項第二号に掲げる事項」と、「有する」とあるのは「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とし、公開会社でない取締役会設置会社における同項の規定の適用については、同項中「株主総会において決議をすることができる事項」とあるのは、「第二百九十八条第一項第二号に掲げる事項」とする。

 B 前二項の規定による検査役の選任の申立てがあった場合には、裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、検査役を選任しなければならない。

 C 裁判所は、前項の検査役を選任した場合には、株式会社が当該検査役に対して支払う報酬の額を定めることができる。

 D 第三項の検査役は、必要な調査を行い、当該調査の結果を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(法務省令で定めるものに限る。)を裁判所に提供して報告をしなければならない。

 E 裁判所は、前項の報告について、その内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するため必要があると認めるときは、第三項の検査役に対し、更に前項の報告を求めることができる。

 F 第三項の検査役は、第五項の報告をしたときは、株式会社(検査役の選任の申立てをした者が当該株式会社でない場合にあっては、当該株式会社及びその者)に対し、同項の書面の写しを交付し、又は同項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供しなければならない。
本条は、総会検査役制度についての規定である。これは、株主総会の混乱が予想される場合などにおいて、株主総会の招集手続と決議方法の公正を調査し、決議の成否についての証拠を保全するための制度である。

会社または株主は、株主総会の招集手続および決議の方法を調査させるために、株主総会の前に、裁判所に対して検査役の選任を申し立てることができる(第1項)。申し立てについて、公開会社である取締役会設置会社においては資格制限が設けられており、原則として1%以上の議決権を6ヶ月以上保有していなければならない(定款で緩和することができる)。そして、選任された検査役(第3項)は調査を行い、結果を裁判所に報告しなければならない。

第307条 【裁判所による株主総会招集等の決定】

 @ 裁判所は、前条第五項の報告があった場合において、必要があると認めるときは、取締役に対し、次に掲げる措置の全部又は一部を命じなければならない。

 1 一定の期間内に株主総会を招集すること。

 2 前条第五項の調査の結果を株主に通知すること。

 A 裁判所が前項第一号に掲げる措置を命じた場合には、取締役は、前条第五項の報告の内容を同号の株主総会において開示しなければならない。

 B 前項に規定する場合には、取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)は、前条第五項の報告の内容を調査し、その結果を第一項第一号の株主総会に報告しなければならない。
第306条の規定により、総会検査役が選任され、調査結果を裁判所に報告した場合、裁判所は必要があると認めたときは、取締役に対して株主総会を招集するよう命じなければならない。そして、この株主総会によって、前の株主総会の手続き不備を是正していくことになる。この株主総会において、取締役は検査役の調査報告の内容を開示し、また、検査役の調査報告の内容を自身で調査し結果を報告しなければならない。
第308条 【議決権の数】

 @ 株主(株式会社がその総株主の議決権の四分の一以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主を除く。)は、株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の株式につき一個の議決権を有する。

 A 前項の規定にかかわらず、株式会社は、自己株式については、議決権を有しない。
本条は、株主総会においての議決権についての規定である。

原則として、株主は一株につき一個の議決権が与えられる(第1項)。これを、一株一議決権の原則といい、株主平等原則の骨格となる。

ただし、一株一議決権の原則には、以下の例外がある。

名前 内容
その1 単元未満株式 単元株制度を採用している会社の場合、一単元につき一個の議決権が与えられる(本条第1項)。単元未満株式には議決権は与えられない。
その2 相互保有株式 例えば、A社がB社の株式を議決権ベースで25%以上保有していたとする。この場合、B社がA社の株式を保有していても、B社はA社の株主総会で議決権を行使することはできない(第1項)。これはつまり、子会社が親会社の株主総会で議決権を行使することを禁止するための規定である。
その3 自己株式 会社が保有している自己株式については、議決権を行使することはできない。これが認められると、経営陣の自己保身など、会社の支配の公正が歪められる危険性があるからである。
その4 議決権制限株式 議決権制限株式(第108条第1項第3号)は、制限された事項について議決権を行使できない。ただし、種類株主総会は別であり、これは株主総会とは異なるため、議決権制限株式の株主でも種類株主総会では議決権を行使できる。
その5 取締役・監査役の選解任種類株式 取締役・監査役の選解任種類株式(第108条第1項第9号)がある場合、取締役・監査役の選解任は株主総会では行われず、種類株主総会で行われる。
その6 特別利害関係を有する株主が有する株式 会社が自己株式を取得する一定の場合、自己株式取得を承認する株主総会決議においては、取得の相手方となる株主は議決権を行使できない(第140条第3項、第160条第4項、第175条第2項)。
その7 基準日後に発行された株式 第124条は基準日制度について規定している。この基準日以後に発行された株式については、株主総会で議決権は認められない。株主総会の事務処理上の便宜のためである。ただし、会社が認めている場合は行使できる(第124条第4項)。
第309条 【株主総会の決議】

 @ 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。

 A 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。

 1 第百四十条第二項及び第五項の株主総会

 2 第百五十六条第一項の株主総会(第百六十条第一項の特定の株主を定める場合に限る。)

 3 第百七十一条第一項及び第百七十五条第一項の株主総会

 4 第百八十条第二項の株主総会

 5 第百九十九条第二項、第二百条第一項、第二百二条第三項第四号及び第二百四条第二項の株主総会

 6 第二百三十八条第二項、第二百三十九条第一項、第二百四十一条第三項第四号及び第二百四十三条第二項の株主総会

 7 第三百三十九条第一項の株主総会(第三百四十二条第三項から第五項までの規定により選任された取締役を解任する場合又は監査役を解任する場合に限る。)

 8 第四百二十五条第一項の株主総会

 9 第四百四十七条第一項の株主総会(次のいずれにも該当する場合を除く。)

  イ 定時株主総会において第四百四十七条第一項各号に掲げる事項を定めること。

  ロ 第四百四十七条第一項第一号の額がイの定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。

 10 第四百五十四条第四項の株主総会(配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して同項第一号に規定する金銭分配請求権を与えないこととする場合に限る。)

 11 第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会

 12 第五編の規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会

 B 前二項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会(種類株式発行会社の株主総会を除く。)の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。

 1 その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款の変更を行う株主総会

 2 第七百八十三条第一項の株主総会(合併により消滅する株式会社又は株式交換をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等(同条第三項に規定する譲渡制限株式等をいう。次号において同じ。)である場合における当該株主総会に限る。)

 3 第八百四条第一項の株主総会(合併又は株式移転をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合における当該株主総会に限る。)

 C 前三項の規定にかかわらず、第百九条第二項の規定による定款の定めについての定款の変更(当該定款の定めを廃止するものを除く。)を行う株主総会の決議は、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、総株主の議決権の四分の三(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。

 D 取締役会設置会社においては、株主総会は、第二百九十八条第一項第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。ただし、第三百十六条第一項若しくは第二項に規定する者の選任又は第三百九十八条第二項の会計監査人の出席を求めることについては、この限りでない。
株主総会の議決方法には以下の方法がある。

種類 条文 説明 定足数 決議要件
普通決議 第309条第1項 特別の要件が法律または定款で定められていない場合の決議のことである。 議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席すること 出席した当該株主の議決権の過半数
特別決議 第309条第2項 普通決議よりも決議要件が加重されており、重要事項の決議に用いられる。 議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席すること 出席した当該株主の議決権の3分の2以上の多数
特殊決議 第309条第3項 特別決議よりもさらに加重されている決議のことである。公開会社が非公開会社に定款変更する場合の決議である。 規定なし 議決権を行使できる株主の半数以上であり、かつ、当該株主の議決権の3分の2以上
第309条第4項 特別決議よりもさらに加重されている決議のことである。非公開会社において剰余金配当・残余財産分配等につき株主ごとに異なる取り扱いをする規定を置く場合の決議である。 総株主の半数以上であり、かつ、総株主の議決権の4分の3以上
※普通決議の定足数は、定款で排除するこもでき、多くの会社では定足数を完全になくしている。
※特別決議の定足数は、定款で3分の1まで減少させることができる。また、特別決議の決議要件は、定款で3分の2よりも引き上げることや、その他の要件を定めることも可能である。
※特殊決議の定足数と決議要件は、定款で引き上げることができる。
第310条 【議決権の代理行使】

 @ 株主は、代理人によってその議決権を行使することができる。この場合においては、当該株主又は代理人は、代理権を証明する書面を株式会社に提出しなければならない。

 A 前項の代理権の授与は、株主総会ごとにしなければならない。

 B 第一項の株主又は代理人は、代理権を証明する書面の提出に代えて、政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該株主又は代理人は、当該書面を提出したものとみなす。

 C 株主が第二百九十九条第三項の承諾をした者である場合には、株式会社は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。

 D 株式会社は、株主総会に出席することができる代理人の数を制限することができる。

 E 株式会社は、株主総会の日から三箇月間、代理権を証明する書面及び第三項の電磁的方法により提供された事項が記録された電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。

 F 株主(前項の株主総会において決議をした事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。次条第四項及び第三百十二条第五項において同じ。)は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。

 1 代理権を証明する書面の閲覧又は謄写の請求

 2 前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
株主総会に出席できない株主は、代理人により議決権を行使することができる。この場合、株主または代理人は、代理権を証明する書面を会社に提出しなければならない(第1項)。この代理権の授与は、永続的に与えることは認められておらず、株主総会ごとに代理権の授与が行われなければならない(第2項)。

第1項の書面は、会社の承諾を得れば電磁的方法により提出することもできる(第3項)。また、第299条第3項の電磁的方法による招集通知を株主が承諾した場合は、第3項の電磁的方法による提出を会社は拒んではならない(第4項)。

第1項の書面または第3項の電磁的記録は、株主総会の日から3ヶ月間本店に備え置かなければならない(第6項)。そして、株主はこれを閲覧・謄写するための請求をすることができる(第7項)。

会社は、株主総会に出席できる代理人の人数を制限することができる(第5項)。これは、総会屋対策のための規定である。
第311条 【書面による議決権の行使】

 @ 書面による議決権の行使は、議決権行使書面に必要な事項を記載し、法務省令で定める時までに当該記載をした議決権行使書面を株式会社に提出して行う。

 A 前項の規定により書面によって行使した議決権の数は、出席した株主の議決権の数に算入する。

 B 株式会社は、株主総会の日から三箇月間、第一項の規定により提出された議決権行使書面をその本店に備え置かなければならない。

 C 株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、第一項の規定により提出された議決権行使書面の閲覧又は謄写の請求をすることができる。
株主総会において、会社が認めた場合、株主数が1000以上である場合には、株主は書面により議決権を行使することができる(第298条第1項第3号と第2項)。

書面により議決権を行使するには、会社が送付された議決権行使書面に必要事項を記載し、これを会社に提出して行う(本条第1項)。そして、書面により行使された議決権の数は、出席した株主の議決権の数に算入される(本条第2項)。

会社に提出された議決権行使書面は株主総会の日から3ヶ月間、本店に備え置かなければならない(本条第3項)。また、株主は議決権行使書面の閲覧・謄写を請求することができる(本条第4項)。
第312条 【電磁的方法による議決権の行使】

 @ 電磁的方法による議決権の行使は、政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て、法務省令で定める時までに議決権行使書面に記載すべき事項を、電磁的方法により当該株式会社に提供して行う。

 A 株主が第二百九十九条第三項の承諾をした者である場合には、株式会社は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。

 B 第一項の規定により電磁的方法によって行使した議決権の数は、出席した株主の議決権の数に算入する。

 C 株式会社は、株主総会の日から三箇月間、第一項の規定により提供された事項を記録した電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。

 D 株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求をすることができる。
株主総会において、会社が認めた場合、株主はネットや電子メールなどの電磁的方法により議決権を行使することができる(第298条第1項第4号)。この電子投票制度は株主の便宜のために設けられている。この方法で議決権を行使するには、会社の承諾を得た上で、議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的な方法により会社に提出して行うことになる(第1項)。

第1項の承諾は、電磁的方法による株主総会の招集通知を株主が承諾した場合(第299条第3項)、会社は正当な理由がなければ拒否することはできない(第2項)。

電磁的方法により行使された議決権の数は、出席した株主の議決権の数に算入される(第3項)。

会社に提出された電磁的方法による議決権の記録は、株主総会の日から3ヶ月か、本店に備え置かなければならない(第4項)。株主はこの記録の閲覧・謄写を請求することができる(第5項)。
第313条 【議決権の不統一行使】

 @ 株主は、その有する議決権を統一しないで行使することができる。

 A 取締役会設置会社においては、前項の株主は、株主総会の日の三日前までに、取締役会設置会社に対してその有する議決権を統一しないで行使する旨及びその理由を通知しなければならない。

 B 株式会社は、第一項の株主が他人のために株式を有する者でないときは、当該株主が同項の規定によりその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができる。
2個以上の議決権を持っている株主は、議決権の不統一行使をすることができる。不統一行使とは、例えば、5個の議決権を持っていた場合、3個分を賛成、2個分を反対として、行使する場合などのことである。この不統一行使を行う株主は、株主総会の三日前までに、不統一行使をするということとその理由を会社に通知しなければならない。

この不統一行使は奇妙な行使方法に思えるが、他人のために株式を保有している場合などもあるため、許容されている。

しかし、他人のために株式を保有している場合ではないとき、会社は不統一行使を拒否することができる(第3項)。
第314条 【取締役等の説明義務】

 取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでない。
株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合、取締役・会計参与・監査役・執行役はこれについて説明する義務を負う。

取締役等と会社は委任関係に立つため(第330条)、取締役等は会社の所有者である株主に対しても業務の報告をなすべきだからである(民法第645条参照)。

ただし、特定の事項というのが、株主総会の目的である事項に関しないものである場合、説明をすることにより株主の共同の利害を著しく害したりするのであれば、説明を拒否することができる。

また、説明義務違反は株主総会決議取り消しの訴えの原因となり(第831条第1項第1号)、罰則が科される可能性もある(第976条第9号)。
第315条 【議長の権限】

 @ 株主総会の議長は、当該株主総会の秩序を維持し、議事を整理する。

 A 株主総会の議長は、その命令に従わない者その他当該株主総会の秩序を乱す者を退場させることができる。
株主総会の議長(通常は定款で定められる。定めがない場合は、株主総会で選任される。)は、株主総会の秩序維持と議事整理の権限・責任を有する(第1項)。会社法においては、株主総会の議事方法は具体的に規定されていない。そのため、議長は、定款または慣習に従って行っていくことになる。

また、議長は株主総会の秩序を乱す者を退場させることができる(第2項)。この退場の命令に従わない者は、刑法第130条の不退去罪に問われる可能性がある。
第316条 【株主総会に提出された資料等の調査】

 @ 株主総会においては、その決議によって、取締役、会計参与、監査役、監査役会及び会計監査人が当該株主総会に提出し、又は提供した資料を調査する者を選任することができる。

 A 第二百九十七条の規定により招集された株主総会においては、その決議によって、株式会社の業務及び財産の状況を調査する者を選任することができる。
株主総会において、取締役等が資料を提出した場合、これを調査する者を選任し、調査をしてもらうことができる(第1項)。これにより、資料の正確性を担保することができる。

株主により招集された株主総会(第297条)においては、株式会社の業務と財産の状況を調査する者を選任し、調査してもらうことができる。第297条の規定により株主総会が招集されるということは、会社に何らかの変調が生じている可能性が高いためである。
第317条 【延期又は続行の決議】

 株主総会においてその延期又は続行について決議があった場合には、第二百九十八条及び第二百九十九条の規定は、適用しない。
第298条と第299条は、株主総会の日時等についての規定である。株主総会の延期または続行の決議があった場合、当初の予定とは矛盾することになるが、このようなときは本条の規定により延期または続行の決議が優先されることとなる。
第318条 【議事録】

 @ 株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。

 A 株式会社は、株主総会の日から十年間、前項の議事録をその本店に備え置かなければならない。

 B 株式会社は、株主総会の日から五年間、第一項の議事録の写しをその支店に備え置かなければならない。ただし、当該議事録が電磁的記録をもって作成されている場合であって、支店における次項第二号に掲げる請求に応じることを可能とするための措置として法務省令で定めるものをとっているときは、この限りでない。

 C 株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。

 1 第一項の議事録が書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧又は謄写の請求

 2 第一項の議事録が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

 D 株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、第一項の議事録について前項各号に掲げる請求をすることができる。
株主総会を開催する場合、議事録を作成しなければならない(第1項)。これは、株主総会の議事内容を正確に記録しておくためである。

この議事録は原本を株主総会の日から10年間本店に、コピーを5年間支店に備え置かなければならない(第2項、第3項)。株主と債権者は、議事録の閲覧や謄写を請求することができる。また、親会社の社員は、裁判所の許可を得た上で同様のことをすることができる。
第319条 【株主総会の決議の省略】

 @ 取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。

 A 株式会社は、前項の規定により株主総会の決議があったものとみなされた日から十年間、同項の書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。

 B 株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。

 1 前項の書面の閲覧又は謄写の請求

 2 前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

 C 株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、第二項の書面又は電磁的記録について前項各号に掲げる請求をすることができる。

 D 第一項の規定により定時株主総会の目的である事項のすべてについての提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされた場合には、その時に当該定時株主総会が終結したものとみなす。
株主総会は、取締役または株主から提案があった事項について、株主の意見の集約を行う機関である。

そのため、株主全員が提案のあった事項について同意している場合、決議を行う必要性は乏しいといえる。

そこで、提案があった事項について、株主全員が書面または電磁的記録によって同意した場合、株主総会の決議は省略される(第1項)。これにより、定時株主総会の目的である事項の全てについての提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされた場合、その時に当該定時株主総会が終結したものとみなされる(第5項)。これらの規定により、株主総会運営の負担が軽減されることになる。

また、株主が提出した書面または電磁的記録は、株主総会決議があったものとみなされた日から10年間、本店に備え置かなければならない(第2項)。株主は、これらの閲覧や謄写を請求することができる(第3項)。また、親会社の社員は裁判所の許可を得た上で同様のことを請求することができる。
第320条 【株主総会への報告の省略】

 取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を株主総会に報告することを要しないことにつき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の株主総会への報告があったものとみなす。
株主総会においては、決議事項の他に、取締役が株主に対して報告しなければならない事項もある(第307条第3項)。しかし、この事項について株主が十分な情報を持っている場合などは、それを株主総会で報告する必要性はあまりないことになる。

取締役が株主全員に報告事項を通知した場合において、株主全員が書面または電磁的記録により報告の省略を同意したときには、当該事項の報告が株主総会であったものとみなし、省略される。

これにより、株主総会運営の負担が軽減される。

また、報告事項は決議事項ほど重要性が高くないため、第319条の決議事項の省略の場合とは異なり、同意の書面または電磁的記録の備え置きは義務付けられていない。