会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第4章 機関

第1節 株主総会及び種類株主総会

第2款 種類株主総会
第321条 【種類株主総会の権限】

 種類株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
第321条から第325条までは、種類株主総会についての規定である。種類株主総会とは、数種の株式が発行されている場合、ある種類の株主によって構成される株主総会のことである。

会社が数種の株式を発行した場合、異なる種類の株式間で各種の権利調整が必要となる場合がある。この調整を行う場として、種類株主総会が設けられている。

このように、種類株主総会はあくまで権利調整のための場であるため、万能の権限を持っているわけではなく、会社法と定款で定められている事項に限り決議することができる。
第322条 【ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会】

 @ 種類株式発行会社が次に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該行為は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会。以下この条において同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。

 1 次に掲げる事項についての定款の変更(第百十一条第一項又は第二項に規定するものを除く。)

  イ 株式の種類の追加

  ロ 株式の内容の変更

  ハ 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加

 2 株式の併合又は株式の分割

 3 第百八十五条に規定する株式無償割当て

 4 当該株式会社の株式を引き受ける者の募集(第二百二条第一項各号に掲げる事項を定めるものに限る。)

 5 当該株式会社の新株予約権を引き受ける者の募集(第二百四十一条第一項各号に掲げる事項を定めるものに限る。)

 6 第二百七十七条に規定する新株予約権無償割当て

 7 合併

 8 吸収分割

 9 吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部の承継

 10 新設分割

 11 株式交換

 12 株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得

 13 株式移転

 A 種類株式発行会社は、ある種類の株式の内容として、前項の規定による種類株主総会の決議を要しない旨を定款で定めることができる。

 B 第一項の規定は、前項の規定による定款の定めがある種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会については、適用しない。ただし、第一項第一号に規定する定款の変更(単元株式数についてのものを除く。)を行う場合は、この限りでない。

 C ある種類の株式の発行後に定款を変更して当該種類の株式について第二項の規定による定款の定めを設けようとするときは、当該種類の種類株主全員の同意を得なければならない。
種類株式発行会社が第1項各号の行為をする場合、特定の種類株式の種類株主に損害を及ぼす危険性があるときは、当該行為はその種類株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない(第1項)。種類株主の利益を保護するための規定である。

種類株式発行会社は、ある種類株式について種類株主総会の決議を必要としない旨を定款で定めることができる(第2項)。定めがある場合、単元株式数についての定款変更と、第1項第2号から第13号の行為について、種類株主総会の決議は不要である(第3項)。ただし、この定款の定めを設けるには、当該種類の種類株主全員の同意が必要である(第4項)。
第323条 【種類株主総会の決議を必要とする旨の定めがある場合】

 種類株式発行会社において、ある種類の株式の内容として、株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、第四百七十八条第六項に規定する清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項について、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とする旨の定めがあるときは、当該事項は、その定款の定めに従い、株主総会、取締役会又は清算人会の決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
本条は、拒否権付種類株式(第108条第1項第8号、いわゆる黄金株のこと。)を発行する会社の種類株主総会についての規定である。

拒否権付種類株式の内容に関する事項について決するには、通常の株主総会決議の他に、当該拒否権付種類株式の株主によって構成される種類株主総会の決議を得なければならない(本条)。

敵対的買収が行われそうな場合であっても、本条の規定によって買収を阻止することができる。

ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主がいない場合は、種類株主総会の決議は不要である(本条但し書き)。
第324条 【種類株主総会の決議】

 @ 種類株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、その種類の株式の総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。

 A 前項の規定にかかわらず、次に掲げる種類株主総会の決議は、当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。

 1 第百十一条第二項の種類株主総会(ある種類の株式の内容として第百八条第一項第七号に掲げる事項についての定款の定めを設ける場合に限る。)

 2 第百九十九条第四項及び第二百条第四項の種類株主総会

 3 第二百三十八条第四項及び第二百三十九条第四項の種類株主総会

 4 第三百二十二条第一項の種類株主総会

 5 第三百四十七条第二項の規定により読み替えて適用する第三百三十九条第一項の種類株主総会

 6 第七百九十五条第四項の種類株主総会

 B 前二項の規定にかかわらず、次に掲げる種類株主総会の決議は、当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。

 1 第百十一条第二項の種類株主総会(ある種類の株式の内容として第百八条第一項第四号に掲げる事項についての定款の定めを設ける場合に限る。)

 2 第七百八十三条第三項及び第八百四条第三項の種類株主総会
本条は種類株主総会の議決方法についての規定である。以下の種類がある。

種類 条文 説明 定足数 決議要件
普通決議 第324条第1項 特別の要件が法律または定款で定められていない場合の決議のことである。 議決権を行使できる種類株主の議決権の過半数を有する種類株主が出席すること 出席した当該種類株主の議決権の過半数
特別決議 第324条第2項 普通決議よりも決議要件が加重されており、重要事項の決議に用いられる。 議決権を行使できる種類株主の議決権の過半数を有する種類株主が出席すること 出席した当該種類株主の議決権の3分の2以上の多数
特殊決議 第324条第3項 特別決議よりもさらに加重されている決議のことである。 規定なし 議決権を行使できる種類株主の半数以上であり、かつ、当該種類株主の議決権の3分の2以上
※特別決議の定足数は、定款で3分の1まで減少させることができる。また、特別決議の決議要件は、定款で3分の2よりも引き上げることや、その他の要件を定めることも可能である。
※特殊決議の定足数と決議要件は、定款で引き上げることができる。
第325条 【株主総会に関する規定の準用】

 前款(第二百九十五条第一項及び第二項、第二百九十六条第一項及び第二項並びに第三百九条を除く。)の規定は、種類株主総会について準用する。この場合において、第二百九十七条第一項中「総株主」とあるのは「総株主(ある種類の株式の株主に限る。以下この款(第三百八条第一項を除く。)において同じ。)」と、「株主は」とあるのは「株主(ある種類の株式の株主に限る。以下この款(第三百十八条第四項及び第三百十九条第三項を除く。)において同じ。)は」と読み替えるものとする。
本条は、通常の株主総会の規定を種類株主総会に準用するための規定である。本条により、種類株主総会のほとんどの手続きは、通常の株主総会の手続きと同じようになる。