会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第4章 機関

第10節 委員会及び執行役

第1款 委員の選定、執行役の選任等
第400条 【委員の選定等】

 @ 各委員会は、委員三人以上で組織する。

 A 各委員会の委員は、取締役の中から、取締役会の決議によって選定する。

 B 各委員会の委員の過半数は、社外取締役でなければならない。

 C 監査委員会の委員(以下「監査委員」という。)は、委員会設置会社若しくはその子会社の執行役若しくは業務執行取締役又は委員会設置会社の子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは支配人その他の使用人を兼ねることができない。
指名委員会、監査委員会、報酬委員会を置く株式会社を、委員会設置会社という(第2条第12号)。

委員会設置会社は、アメリカ型の機関制度の日本版であり、日本の伝統的な機関制度とは根本的に異なるものである。この制度は、執行役による迅速な意思決定と業務執行機関と監督機関の明確な分離を確保することにより、会社が持続的に発展していくことを目指している。

委員会設置会社は、指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3つを置かなければならない。これらの委員会は、取締役の中から取締役会の決議によって選定された3人以上の委員によって組織される。そして、各委員会の委員の過半数は社外取締役である必要がある。なお、監査委員会の委員(監査役と同様の権限・責任を持つ)は、委員会設置会社・その子会社の執行役・業務執行取締役、子会社の会計参与・支配人その他の使用人を兼ねることができない。
第401条 【委員の解職等】

 @ 各委員会の委員は、いつでも、取締役会の決議によって解職することができる。

 A 前条第一項に規定する各委員会の委員の員数(定款で四人以上の員数を定めたときは、その員数)が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した委員は、新たに選定された委員(次項の一時委員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお委員としての権利義務を有する。

 B 前項に規定する場合において、裁判所は、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、一時委員の職務を行うべき者を選任することができる。

 C 裁判所は、前項の一時委員の職務を行うべき者を選任した場合には、委員会設置会社がその者に対して支払う報酬の額を定めることができる。
各委員会の委員は、いつでも取締役会の決議により解職することができる。これは、取締役会の監督機能を実行化するためである。委員を解任したことにより、委員の数が委員会の最低構成員数である3人を下回った場合、新たな委員が就任するまで、解職された委員は委員としての権利義務を有する。

また、解職により委員が欠けてしまった場合、定款で定めた委員の員数を下回った場合、裁判所は必要があると認めるときは、利害関係人の申し立てにより、一時委員の職務を行うべき者を選任することができる。
第402条 【執行役の選任等】

 @ 委員会設置会社には、一人又は二人以上の執行役を置かなければならない。

 A 執行役は、取締役会の決議によって選任する。

 B 委員会設置会社と執行役との関係は、委任に関する規定に従う。

 C 第三百三十一条第一項の規定は、執行役について準用する。

 D 株式会社は、執行役が株主でなければならない旨を定款で定めることができない。ただし、公開会社でない委員会設置会社については、この限りでない。

 E 執行役は、取締役を兼ねることができる。

 F 執行役の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結後最初に招集される取締役会の終結の時までとする。ただし、定款によって、その任期を短縮することを妨げない。

 G 前項の規定にかかわらず、委員会設置会社が委員会を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、執行役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。
委員会設置会社には、執行役を置かなければならない。この執行役とは、委員会設置会社において業務執行を行う機関のことである。執行役の選任は、取締役会の決議によって行う。

執行役の選任においては、欠格事由がある。具体的には、法人、成年被後見人、被保佐人、外国の法令上これらと同様に取り扱われている者、会社法・中間法人法・金融商品取引法・民事再生法・倒産法の一定の規定に違反して刑に処せられてから2年以上経過していない者、会社法・中間法人法・金融商品取引法・民事再生法・倒産法の一定の規定に違反して禁固以上の刑に処せられ、かつ、執行が猶予されていない場合であり執行が終わっていない者は、執行役になることができない(本条第4項、第331条第1項)。

会社は定款において執行役の資格を制限することができる。例えば、外資系企業の買収に備えて、執行役は日本人に限るなどとすることができる。ただし、執行役は株主に限るとすることはできない(本条第5項)。非公開会社においては、本条第5項の制限はない。

また、会社の人材不足などを考慮し、執行約は取締役を兼任することができる(本条第6項)。

委員会設置会社と執行役の関係は、民法第643条以下の委任に関する規定に従う(本条第3項)。つまり、執行役には善管注意義務が課されることになる。

執行役の任期は原則として1年である。ただし、再任されることは可能であり、回数制限はない。また、この任期は定款で短縮することが可能である。
第403条 【執行役の解任等】

 @ 執行役は、いつでも、取締役会の決議によって解任することができる。

 A 前項の規定により解任された執行役は、その解任について正当な理由がある場合を除き、委員会設置会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。

 B 第四百一条第二項から第四項までの規定は、執行役が欠けた場合又は定款で定めた執行役の員数が欠けた場合について準用する。
執行役はいつでも取締役会の決議により解任することができる。これは、取締役会の監督機能を実行化するためである。

執行役を解任したことにより、執行役が欠けた場合、定款で定めた員数を下回った場合、新たな執行役が就任するまで、解任された執行役は執行役としての権利義務を持つ。

また、解任により執行役が欠けてしまった場合、定款で定めた執行役の員数を下回った場合、裁判所は必要があると認めるときは、利害関係人の申し立てにより、一時執行役の職務を行うべき者を選任することができる。

なお、正当な理由なく解任された執行役は、会社に対して損害賠償請求をすることができる。