会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第4章 機関

第10節 委員会及び執行役

第4款 委員会設置会社の取締役の権限等
第415条 【委員会設置会社の取締役の権限】

 委員会設置会社の取締役は、この法律又はこの法律に基づく命令に別段の定めがある場合を除き、委員会設置会社の業務を執行することができない。
取締役は、原則的には、会社の業務執行権を有する(第348条第1項)。しかし、委員会設置会社の取締役は、一定の例外を除いて、会社の業務を執行することができない。業務の執行と監督とを厳格に分離することにより、アメリカ型のコーポレート・ガバナンスを実現するためである。

ただし、執行役が取締役を兼任することは可能である(第402条第6項)。
第416条 【委員会設置会社の取締役会の権限】

 @ 委員会設置会社の取締役会は、第三百六十二条の規定にかかわらず、次に掲げる職務を行う。

 1 次に掲げる事項その他委員会設置会社の業務執行の決定

  イ 経営の基本方針

  ロ 監査委員会の職務の執行のため必要なものとして法務省令で定める事項

  ハ 執行役が二人以上ある場合における執行役の職務の分掌及び指揮命令の関係その他の執行役相互の関係に関する事項

  ニ 次条第二項の規定による取締役会の招集の請求を受ける取締役

  ホ 執行役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備

 2 執行役等の職務の執行の監督

 A 委員会設置会社の取締役会は、前項第一号イからホまでに掲げる事項を決定しなければならない。

 B 委員会設置会社の取締役会は、第一項各号に掲げる職務の執行を取締役に委任することができない。

 C 委員会設置会社の取締役会は、その決議によって、委員会設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することができる。ただし、次に掲げる事項については、この限りでない。

 1 第百三十六条又は第百三十七条第一項の決定及び第百四十条第四項の規定による指定

 2 第百六十五条第三項において読み替えて適用する第百五十六条第一項各号に掲げる事項の決定

 3 第二百六十二条又は第二百六十三条第一項の決定

 4 第二百九十八条第一項各号に掲げる事項の決定

 5 株主総会に提出する議案(取締役、会計参与及び会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関するものを除く。)の内容の決定

 6 第三百六十五条第一項において読み替えて適用する第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において読み替えて準用する場合を含む。)の承認

 7 第三百六十六条第一項ただし書の規定による取締役会を招集する取締役の決定

 8 第四百条第二項の規定による委員の選定及び第四百一条第一項の規定による委員の解職

 9 第四百二条第二項の規定による執行役の選任及び第四百三条第一項の規定による執行役の解任

 10 第四百八条第一項第一号の規定による委員会設置会社を代表する者の決定

 11 第四百二十条第一項前段の規定による代表執行役の選定及び同条第二項の規定による代表執行役の解職

 12 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除

 13 第四百三十六条第三項、第四百四十一条第三項及び第四百四十四条第五項の承認

 14 第四百五十四条第五項において読み替えて適用する同条第一項の規定により定めなければならないとされる事項の決定

 15 第四百六十七条第一項各号に掲げる行為に係る契約(当該委員会設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定

 16 合併契約(当該委員会設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定

 17 吸収分割契約(当該委員会設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定

 18 新設分割計画(当該委員会設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定

 19 株式交換契約(当該委員会設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定

 20 株式移転計画の内容の決定
取締役会は、原則として、取締役会設置会社の業務執行の決定権と取締役の職務執行の監督権を有する(第362条第2項)。しかし、委員会設置会社の取締役会は、執行役の職務執行の監督が中心となる(本条第1項第2号)。そして、その権限も、経営の基本方針の決定(第1項第1号、第2項)、各委員の選定・解職(第400条第2項、第401条第1項)、執行役の選任・解任(第402条第2項、第403条第1項)などに限定されている。

委員会設置会社の取締役会の権限は制限されているが、会社の基本事項については一定の決定権が認められている。

また、委員会設置会社の取締役会は、第4項各号(重要事項)の場合を除き、業務執行の決定を執行役に委任することができる(本条第4項)。これは経営の効率化のためである。
第417条 【委員会設置会社の取締役会の運営】

 @ 委員会設置会社においては、招集権者の定めがある場合であっても、委員会がその委員の中から選定する者は、取締役会を招集することができる。

 A 執行役は、前条第一項第一号ニの取締役に対し、取締役会の目的である事項を示して、取締役会の招集を請求することができる。この場合において、当該請求があった日から五日以内に、当該請求があった日から二週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられないときは、当該執行役は、取締役会を招集することができる。

 B 委員会がその委員の中から選定する者は、遅滞なく、当該委員会の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない。

 C 執行役は、三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない。この場合において、執行役は、代理人(他の執行役に限る。)により当該報告をすることができる。

 D 執行役は、取締役会の要求があったときは、取締役会に出席し、取締役会が求めた事項について説明をしなければならない。
取締役会の招集権は、原則として、各取締役と招集権者(定めがある場合)が有する(第366条第1項)。しかし、委員会設置会社では、招集権者の定めがある場合でも、委員会がその委員の中から選定する者は、取締役会を招集することができる(本条第1項)。

また、執行役は、第416条第1項第1号ニの取締役に対して、取締役会の目的である事項を示して取締役会の招集を請求することができる。請求後、取締役が招集に応じない場合は、執行役自ら取締役会を招集することができる(本条第2項)。

委員会がその委員の中から選定する者は、すぐに当該委員会の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない(本条第3項)。

執行役は、3ヶ月に1回以上、事故の職務の執行状況を取締役会に報告しなければならない(本条第4項)。そして、取締役会の要求があれば、取締役会に出席し、求められ事項について説明しなければならない(本条第5項)。