会社法 条文 | 会社法 解説 |
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第2編 株式会社 第4章 機関 第3節 役員及び会計監査人の選任及び解任 第1款 選任 |
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第329条 【選任】 @ 役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。 A 前項の決議をする場合には、法務省令で定めるところにより、役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。 |
役員(取締役、会計参与、監査役)と会計監査人は、株主総会の決議によって選任しなければならない(第1項)。取締役会において取締役を選任することはできないということである。役員や会計監査人の選任は会社の経営に重大な影響を与えるため、株主の意思によって決めるべきだからである。 第1項の株主総会の決議は、普通決議でよい(第341条)。第309条第1項の規定にあるように、普通決議は定款において定足数を完全に排除できるが、役員と会計監査人の選任に関する決議においては、定足数を3分の1未満にすることはできない(第341条)。 また、役員と会計監査人を選任する場合において、役員が書けた場合に備え、補欠役員や補欠会計監査人も同時に選任することができる(第2項)。 |
第330条 【株式会社と役員等との関係】 株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。 |
株式会社と役員・会計監査人の関係は、民法第643条以下の委任に関する規定に従う。 つまり、役員と会計監査人には善管注意義務等(善良なる管理者の注意義務の略で、自分のために何かをするよりも高度の注意義務のこと)が課されることになる。 委任については、以下も参照。 第10節 委任 第643条〜第656条 |
第331条 【取締役の資格等】 @ 次に掲げる者は、取締役となることができない。 1 法人 2 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者 3 この法律若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)の規定に違反し、又は金融商品取引法第百九十七条、第百九十七条の二第一号から第十号の三まで若しくは第十三号、第百九十八条第八号、第百九十九条、第二百条第一号から第十二号の二まで、第二十号若しくは第二十一号、第二百三条第三項若しくは第二百五条第一号から第六号まで、第十九号若しくは第二十号の罪、民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百五十五条、第二百五十六条、第二百五十八条から第二百六十条まで若しくは第二百六十二条の罪、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律(平成十二年法律第百二十九号)第六十五条、第六十六条、第六十八条若しくは第六十九条の罪、会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第二百六十六条、第二百六十七条、第二百六十九条から第二百七十一条まで若しくは第二百七十三条の罪若しくは破産法(平成十六年法律第七十五号)第二百六十五条、第二百六十六条、第二百六十八条から第二百七十二条まで若しくは第二百七十四条の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者 4 前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。) A 株式会社は、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができない。ただし、公開会社でない株式会社においては、この限りでない。 B 委員会設置会社の取締役は、当該委員会設置会社の支配人その他の使用人を兼ねることができない。 C 取締役会設置会社においては、取締役は、三人以上でなければならない。 |
取締役には一定の法定欠格事由が設けられている。具体的には以下である。 ・法人 ・成年被後見人、被保佐人、外国の法令上これらと同様に取り扱われている者 ・会社法・中間法人法・金融商品取引法・倒産法(外国倒産処理手続きの承認援助に関する法律、民事再生法、会社更正法、破産法)の一定の規定に違反して刑に処せられてから2年以上経過していない者 ・会社法・中間法人法・金融商品取引法・民事再生法・倒産法(外国倒産処理手続きの承認援助に関する法律、民事再生法、会社更正法、破産法)の一定の規定に違反して禁錮以上の刑に処せられ、かつ、執行が猶予されていない場合であって執行が終わっていない者 また、会社は定款で取締役の資格を制限することもできる。例えば、取締役は日本人に限るなどである。しかし、取締役は株主でなければならないという定款の変更をすることはできない(第2項)。会社の所有と経営の分離は株式会社の本質だからである。ただし、非公開会社においてはこの制限はない。非公開会社は旧商法下における有限会社を株式会社化した側面が強く、所有と経営が完全に分離していない場合が多いためである。 委員会設置会社の取締役は、当該委員会設置会社の支配人その他の使用人を兼ねることはできない(第3項)。会社の業務執行と監査の分離は委員会設置会社の本質だからである。 委員会設置会社の取締役は3人以上でなければならない(第4項)。取締役会は会議体であるため、多数決ができるよう、複数人いなければならない。 |
第332条 【取締役の任期】 @ 取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。 A 前項の規定は、公開会社でない株式会社(委員会設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。 B 委員会設置会社の取締役についての第一項の規定の適用については、同項中「二年」とあるのは、「一年」とする。 C 前三項の規定にかかわらず、次に掲げる定款の変更をした場合には、取締役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。 1 委員会を置く旨の定款の変更 2 委員会を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更 3 その発行する株式の全部の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更(委員会設置会社がするものを除く。) |
取締役の任期は、原則として2年である(第1項)。また、再任されることが可能で、再任の回数に制限はない。 また、取締役の任期にはいくつかの例外がある。 ・定款により任期を短縮することができる(第1項但し書き) ・非公開会社(委員会設置会社を除く)は、定款により任期を10年まで延長させることができる ・委員会設置会社においては、任期が1年となる(委員会設置会社では剰余金の配当の決定を、株主総会の承認からはずし、取締役会の決定事項とすることができるためである。そして、毎年の定時株主総会において、株主の信任を問う必要がある。) |
第333条 【会計参与の資格等】 @ 会計参与は、公認会計士若しくは監査法人又は税理士若しくは税理士法人でなければならない。 A 会計参与に選任された監査法人又は税理士法人は、その社員の中から会計参与の職務を行うべき者を選定し、これを株式会社に通知しなければならない。この場合においては、次項各号に掲げる者を選定することはできない。 B 次に掲げる者は、会計参与となることができない。 1 株式会社又はその子会社の取締役、監査役若しくは執行役又は支配人その他の使用人 2 業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者 3 税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)第四十三条の規定により同法第二条第二項に規定する税理士業務を行うことができない者 |
会計参与は、公認会計士か監査法人か税理士か税理士法人でなければならない(第1項)。また、会計参与には法定欠格事由があり、株式会社またはその子会社の取締役、監査役もしくは執行役、または支配人その他の使用人、業務停止の処分を受けその停止期間を経過しない者、税理士法第43条の規定により同法第2条第2項に規定する税理士業務を行うことができない者は、会計参与になることができない(第3項)。また、会社の顧問税理士は、顧問税理士のままで会計参与になることができると言われている。 |
第334条 【会計参与の任期】 @ 第三百三十二条の規定は、会計参与の任期について準用する。 A 前項において準用する第三百三十二条の規定にかかわらず、会計参与設置会社が会計参与を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、会計参与の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。 |
会計参与の任期は、第332条の取締役の任期についての規定が準用される(第1項)。つまり、会計参与の任期は原則として2年ということである。また、2年経過後に再任されることができるし、再任回数に制限はない。 また、会計参与の任期にはいくつかの例外がある。 ・定款により、任期を短縮することができる ・非公開会社(委員会設置会社を除く)は、定款により任期を10年まで延長させることができる ・委員会設置会社においては、任期が1年となる(委員会設置会社では剰余金の配当の決定を、株主総会の承認からはずし、会計参与会の決定事項とすることができるためである) なお、会社が会計参与を廃止するという定款変更を行った場合、その効力発生時に会計参与の任期は満了する。 |
第335条 【監査役の資格等】 @ 第三百三十一条第一項及び第二項の規定は、監査役について準用する。 A 監査役は、株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役を兼ねることができない。 B 監査役会設置会社においては、監査役は、三人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならない。 |
監査役は、取締役の法定欠格事由に関する規定(第331条第1項と第2項)が準用される(第1項)。 また、会社は原則として定款において監査役の資格を制限することができる。例えば、監査役は日本人に限るなどとすることもできる。しかし、第331条第1項と第2項の規定が準用されるため、監査役は株主でなければならないということを定款で定めることはできない。ただし、非公開会社においてはこのような制限はない。 監査役は、株式会社もしくはその子会社の取締役・使用人、子会社の会計参与・執行役を兼ねることはできない(第2項)。 監査役会設置会社は、監査役を3人以上設置しなければならず、半数以上を社外監査役にしなければならない(第3項)。監査役会は会議体であるため、構成員は当然複数でなければならない。社外監査役とは、株式会社の監査役であって、過去に当該株式会社またはその子会社の取締役、会計参与・執行役・支配人・その他の使用人となったことがない者のことである(第2条第16号)。 |
第336条 【監査役の任期】 @ 監査役の任期は、選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。 A 前項の規定は、公開会社でない株式会社において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。 B 第一項の規定は、定款によって、任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとすることを妨げない。 C 前三項の規定にかかわらず、次に掲げる定款の変更をした場合には、監査役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。 1 監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更 2 委員会を置く旨の定款の変更 3 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更 4 その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更 |
監査役の任期は原則として4年である(第1項)。ただし、4年経過後に再任されることは可能である(再任に回数制限はない)。 第1項の4年という任期にはいくつかの例外がある。非公開会社(委員会設置会社を除く)は、定款で任期を10年まで延長できる(第2項)。また、会社が定款変更をした場合などでも、定款変更の効力発生時に任期は満了する(第4項)。 |
第337条 【会計監査人の資格等】 @ 会計監査人は、公認会計士又は監査法人でなければならない。 A 会計監査人に選任された監査法人は、その社員の中から会計監査人の職務を行うべき者を選定し、これを株式会社に通知しなければならない。この場合においては、次項第二号に掲げる者を選定することはできない。 B 次に掲げる者は、会計監査人となることができない。 1 公認会計士法の規定により、第四百三十五条第二項に規定する計算書類について監査をすることができない者 2 株式会社の子会社若しくはその取締役、会計参与、監査役若しくは執行役から公認会計士若しくは監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者又はその配偶者 3 監査法人でその社員の半数以上が前号に掲げる者であるもの |
会計監査人は、公認会計士か監査法人でなければならない(第1項)。誰でも会計監査人になれるわけではない。 会計監査人になることができない者は以下である。 ・公認会計士法の規定により、第435条第2項に規定する計算書類について監査することができない者 ・株式会社の子会社若しくはその取締役、会計参与、監査役若しくは執行役から公認会計士若しくは監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者又はその配偶者 ・監査法人でその社員の半数以上が前号に掲げる者であるもの これらの者には公正妥当な会計監査を期待できないためである。 |
第338条 【会計監査人の任期】 @ 会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。 A 会計監査人は、前項の定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなす。 B 前二項の規定にかかわらず、会計監査人設置会社が会計監査人を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、会計監査人の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。 |
会計監査人の任期は原則として1年である(第1項)。しかし、任期満了時の定時株主総会で別段の決議がされなかったとしても、再任されたものとみなされる(第2項)。ただし、会社が会計監査人を廃止するという定款変更を行った場合には、会計監査人の任期は定款変更の効力発生時に満了する(第3項)。 |