会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第4章 機関

第3節 役員及び会計監査人の選任及び解任

第2款 解任
第339条 【解任】

 @ 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。

 A 前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。
取締役、会計参与、監査役、会計監査人を解任するには、株主総会の決議が必要である(第1項)。つまり、取締役会において取締役を解任することはできない。役員や会計監査人の解任は会社の経営に重大な影響を与えるため、株主の意思によるべきだからである。

株主総会の決議は、普通決議でよい(第341条)。ただし、普通決議は定款の定めにより定足数を撤廃できるが(第309条第1項)、解任の決議の場合は定足数を3分の1未満にすることはできない(第341条)。しかし、例外もあり、累積投票(第342条)によって選任された取締役の解任は特別決議によらなければならない(第309条第2項第7号)。累積投票によって選任された取締役を普通決議で解任できるとなると、多数派株主は容易に当該取締役を解任できることになり、累積投票制度が形骸化してしまう危険性があるためである。

また、正当な理由なく解任された役員や会計監査人は、会社に対して損害賠償請求をすることができる(第2項)。
第340条 【監査役等による会計監査人の解任】

 @ 監査役は、会計監査人が次のいずれかに該当するときは、その会計監査人を解任することができる。

 1 職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき。

 2 会計監査人としてふさわしくない非行があったとき。

 3 心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき。

 A 前項の規定による解任は、監査役が二人以上ある場合には、監査役の全員の同意によって行わなければならない。

 B 第一項の規定により会計監査人を解任したときは、監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、監査役の互選によって定めた監査役)は、その旨及び解任の理由を解任後最初に招集される株主総会に報告しなければならない。

 C 監査役会設置会社における前三項の規定の適用については、第一項中「監査役」とあるのは「監査役会」と、第二項中「監査役が二人以上ある場合には、監査役」とあるのは「監査役」と、前項中「監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、監査役の互選によって定めた監査役)」とあるのは「監査役会が選定した監査役」とする。

 D 委員会設置会社における第一項から第三項までの規定の適用については、第一項中「監査役」とあるのは「監査委員会」と、第二項中「監査役が二人以上ある場合には、監査役」とあるのは「監査委員会の委員」と、第三項中「監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、監査役の互選によって定めた監査役)」とあるのは「監査委員会が選定した監査委員会の委員」とする。
会計監査人の解任は株主総会の普通決議によってなされる。これの例外として、監査役は、会計監査人に職務義務違反、任務懈怠、非行、心身の故障による職務への支障がある場合には、会計監査人を解任することができる(第1項)。会計監査は本来的には監査役の業務であり(第381条)、会計監査人は監査役がその業務の一部を委託する形で選任されるため、監査役に会計監査人の監督権や監督義務があるためである。

第1項において、監査役が二人以上いる場合は、監査役全員の同意により行う必要がある(第2項)。これは、監査役会非設置会社においても同様である。

監査役が会計監査人を解任した場合、解任最初に開催される株主総会において、解任したということとその理由を報告しなければならない(第3項)。

なお、委員会設置会社においては、解任権は監査委員会が有している(第5項)。委員会設置会社には監査役は設置されておらず、監査委員会が監査役の役目を果たすためである(第404条)。