会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第4章 機関

第5節 取締役会

第1款 権限等
第362条 【取締役会の権限等】

 @ 取締役会は、すべての取締役で組織する。

 A 取締役会は、次に掲げる職務を行う。

 1 取締役会設置会社の業務執行の決定

 2 取締役の職務の執行の監督

 3 代表取締役の選定及び解職

 B 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。

 C 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。

 1 重要な財産の処分及び譲受け

 2 多額の借財

 3 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任

 4 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止

 5 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項

 6 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備

 7 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除

 D 大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第六号に掲げる事項を決定しなければならない。
取締役会とは、全ての取締役で構成される(第331条第4項の規定により、取締役は3人以上でなければならないため、必然的に、取締役会は3人以上で構成されることになる)。取締役会は会社の意思決定をするとともに、取締役の職務を監督する機関である。

なお、公開会社、監査役会設置会社、委員会設置会社においては、取締役会は必要的設置機関であるため(第327条第1項)、定款により取締役会を廃止することはできない。

取締役会は会社の業務執行を決定する(第2項第1号)。しかし、全てについて取締役会で決定するとなると、会社の機動性が失われるため、業務執行の決定を取締役に委任することができる。ただし、本条第4項各号については委任することができない。これらについては、会社経営に重要な影響を与えるため、取締役会により判断されるべきだからである。

取締役会は、取締役の職務執行について監督する(第2項第2号)。つまり、取締役同士がお互いについてを監視するということである。会社法では、さらに、代表取締役等に業務執行の状況を取締役会に報告することも要求している(第363条第2項)。監督については、適法性だけではなく妥当性についても及ぶ。取締役は経営の専門家であるため、業務執行が会社のためになるのかの判断もしなければならない。

なお、取締役会の監督機能をより強化するために、監査役には取締役会への出席義務があり、必要であれば意見を述べなければならない(第383条第1項)。また、監査役は取締役が不正な行為をした場合、またはしようとしている場合は、すぐにそれを取締役会で報告しなければならない(第382条)。

取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない(第2項第3号)。選定後は、代表取締役を解職することもできる。
第363条 【取締役会設置会社の取締役の権限】

 @ 次に掲げる取締役は、取締役会設置会社の業務を執行する。

 1 代表取締役

 2 代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの

 A 前項各号に掲げる取締役は、三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない。
取締役会非設置会社においては各取締役が業務執行権限を有しているが(第348条第1項)、取締役会設置会社においては代表取締役が業務執行権限を有する(本条第1項第1号)。ただし、代表取締役以外の取締役にも業務執行権限を与えることは可能であり、この取締役を選定業務執行取締役という(本条第1項第2号)。

代表取締役と選定業務執行取締役は、3ヶ月に1回以上、自己の職務執行の状況を取締役会に報告しなければならない(本条第2項)。
第364条 【取締役会設置会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表】

 第三百五十三条に規定する場合には、取締役会は、同条の規定による株主総会の定めがある場合を除き、同条の訴えについて取締役会設置会社を代表する者を定めることができる。
取締役会設置会社が代表取締役を選定した場合、会社の裁判上の代表権は原則として、代表取締役が有することになる(第349条第4項)。しかし、会社と取締役との間で裁判があった場合に、代表取締役が会社を代表するとしたのでは、問題が起きる場合もある。取締役が代表取締役であった場合には利益相反となるし、そうでない場合であっても、馴れ合いによる訴訟追行が不十分になることもある。

このような場合もあるため、取締役会において会社を代表する者を別に選び、その者に委ねることができる。
第365条 【競業及び取締役会設置会社との取引等の制限】

 @ 取締役会設置会社における第三百五十六条の規定の適用については、同条第一項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。

 A 取締役会設置会社においては、第三百五十六条第一項各号の取引をした取締役は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。
本条は、取締役会設置会社の取締役についての競業避止義務の規定である。

取締役会設置会社の取締役が、第356条第1項各号の行為をしようとする場合は、取締役会の承認が必要である。また、これらの行為をした場合は、取引後すぐに、重要事項を取締役会に報告しなければならない。