会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第4章 機関

第5節 取締役会

第2款 運営
第366条 【招集権者】

 @ 取締役会は、各取締役が招集する。ただし、取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときは、その取締役が招集する。

 A 前項ただし書に規定する場合には、同項ただし書の規定により定められた取締役(以下この章において「招集権者」という。)以外の取締役は、招集権者に対し、取締役会の目的である事項を示して、取締役会の招集を請求することができる。

 B 前項の規定による請求があった日から五日以内に、その請求があった日から二週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合には、その請求をした取締役は、取締役会を招集することができる。
取締役会は、原則として、各取締役が招集する。また、定款または取締役会において、招集権者を決めることもできる(第1項)。招集権者を決めた場合であっても、他の取締役は招集権者に対して、取締役会を招集するよう請求することができる(第2項)。この場合において、取締役会が招集されなかったときは、請求をした取締役が取締役会を招集することができる(第3項)。

監査役も一定の場合において招集権者に対して取締役会の招集を請求することができ、招集されない場合は、監査役が取締役会を招集することができる(第383条)。
第367条 【株主による招集の請求】

 @ 取締役会設置会社(監査役設置会社及び委員会設置会社を除く。)の株主は、取締役が取締役会設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがあると認めるときは、取締役会の招集を請求することができる。

 A 前項の規定による請求は、取締役(前条第一項ただし書に規定する場合にあっては、招集権者)に対し、取締役会の目的である事項を示して行わなければならない。

 B 前条第三項の規定は、第一項の規定による請求があった場合について準用する。

 C 第一項の規定による請求を行った株主は、当該請求に基づき招集され、又は前項において準用する前条第三項の規定により招集した取締役会に出席し、意見を述べることができる。
取締役会設置会社の株主は、取締役が目的外の行為や法令・定款に違反する行為をしたとき、またはするおそれがあるときは、取締役会の招集を請求することができる(第1項)。この場合、株主は取締役に対して取締役会の目的事項を示さなければならない(第2項)。もし、取締役会が招集されない場合は、株主が取締役会を招集することができる。そして、株主は、招集された取締役会において意見を述べることができる(第4項)。
第368条 【招集手続】

 @ 取締役会を招集する者は、取締役会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各取締役(監査役設置会社にあっては、各取締役及び各監査役)に対してその通知を発しなければならない。

 A 前項の規定にかかわらず、取締役会は、取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。
取締役会を招集する者は、取締役会の1週間前までに、各取締役に対して通知をしなければならない(第1項)。ただし、1週間という期間は定款において短縮することができる。また、取締役全員の同意がある場合は、通知自体を省略することができる(第2項)。
第369条 【取締役会の決議】

 @ 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。

 A 前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。

 B 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。

 C 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。

 D 取締役会の決議に参加した取締役であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。
取締役会の決議は、原則として、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行う。ただし、定足数と議決数はともに定款によって加重することができる(第1項)。なお、当該決議について特別の利害関係がある取締役は、議決に加わることができない(第2項)。

取締役会の議事については、議事録を作成しなければならない(第3項)。この議事録が書面であるときは、出席した取締役と監査役は署名または記名押印しなければならない(第3項)。また、議事録は電磁的方法により作成することも可能である。

なお、取締役会の決議に参加した取締役が議事録に異議をとどめないときは、その決議に賛成したものと推定される(第5項)。ただし、あくまで推定であるため、賛成していないということを証明すれば、推定を覆すことができる。
第370条 【取締役会の決議の省略】

 取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。
旧商法においては、取締役会の決議は現実に開催された取締役会でのみ行うことができた。

しかし、会社法においては、定款の定めがあれば、議決に加わることができる取締役全員が書面または電磁的記録により議案である提案に同意した場合には、その提案を可決する旨の取締役会決議があったものとみなすこととし、取締役会の開催を省略することが認められている(本条)。

これは取締役会設置会社においての意思決定の迅速化を図るためである。
第371条 【議事録等】

 @ 取締役会設置会社は、取締役会の日(前条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた日を含む。)から十年間、第三百六十九条第三項の議事録又は前条の意思表示を記載し、若しくは記録した書面若しくは電磁的記録(以下この条において「議事録等」という。)をその本店に備え置かなければならない。

 A 株主は、その権利を行使するため必要があるときは、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。

 1 前項の議事録等が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求

 2 前項の議事録等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

 B 監査役設置会社又は委員会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株式会社の営業時間内は、いつでも」とあるのは、「裁判所の許可を得て」とする。

 C 取締役会設置会社の債権者は、役員又は執行役の責任を追及するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該取締役会設置会社の議事録等について第二項各号に掲げる請求をすることができる。

 D 前項の規定は、取締役会設置会社の親会社社員がその権利を行使するため必要があるときについて準用する。

 E 裁判所は、第三項において読み替えて適用する第二項各号に掲げる請求又は第四項(前項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の請求に係る閲覧又は謄写をすることにより、当該取締役会設置会社又はその親会社若しくは子会社に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、第三項において読み替えて適用する第二項の許可又は第四項の許可をすることができない。
取締役会を開催する場合、議事録を作成しなければならない(第369条第3項)。この議事録は取締役会の日から10年間本店に備え置かなければならない(第1項)。株主は、その権利を行使するため必要があるときは、この議事録の閲覧・謄写を請求することができる(第2項)。「その権利を行使するため必要があるとき」という要件が加わっていることに注意する必要がある(株主総会議事録とは異なる)。取締役会では企業秘密等に関する内容が含まれている場合があるためである。また、監査役設置会社・委員会設置会社においては、株主は裁判所の許可を得てからでないと、閲覧・謄写の請求をすることができない(第3項)。

また、債権者は、役員・執行役の責任を追及するため必要があるときは、裁判所の許可を得た上で、議事録の閲覧・謄写の請求をすることができる(第4項)。当該会社の親会社の社員は、その権利を行使するために必要があるときは、裁判所の許可を得た上で議事録の閲覧・謄写の請求をすることができる(第4項、第5項)。
第372条 【取締役会への報告の省略】

 @ 取締役、会計参与、監査役又は会計監査人が取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員に対して取締役会に報告すべき事項を通知したときは、当該事項を取締役会へ報告することを要しない。

 A 前項の規定は、第三百六十三条第二項の規定による報告については、適用しない。

 B 委員会設置会社についての前二項の規定の適用については、第一項中「監査役又は会計監査人」とあるのは「会計監査人又は執行役」と、「取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)」とあるのは「取締役」と、前項中「第三百六十三条第二項」とあるのは「第四百十七条第四項」とする。
取締役、会計参与、監査役、会計監査人、執行役が取締役会に報告すべき事項があったとしても、取締役(監査役設置会社では取締役と監査役)の全員に対してその事項を通知したときは、取締役会へ報告する必要はない。報告事項はその内容を把握できればいいためである。

ただし、この場合であっても、代表取締役等による職務執行の状況報告(第363条第2項、第417条第4項)は省略することができない。この報告は取締役会の監督機能の実効化のために必要だからである。
第373条 【特別取締役による取締役会の決議】

 @ 第三百六十九条第一項の規定にかかわらず、取締役会設置会社(委員会設置会社を除く。)が次に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、取締役会は、第三百六十二条第四項第一号及び第二号に掲げる事項についての取締役会の決議については、あらかじめ選定した三人以上の取締役(以下この章において「特別取締役」という。)のうち、議決に加わることができるものの過半数(これを上回る割合を取締役会で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を取締役会で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行うことができる旨を定めることができる。

 1 取締役の数が六人以上であること。

 2 取締役のうち一人以上が社外取締役であること。

 A 前項の規定による特別取締役による議決の定めがある場合には、特別取締役以外の取締役は、第三百六十二条第四項第一号及び第二号に掲げる事項の決定をする取締役会に出席することを要しない。この場合における第三百六十六条第一項本文及び第三百六十八条の規定の適用については、第三百六十六条第一項本文中「各取締役」とあるのは「各特別取締役(第三百七十三条第一項に規定する特別取締役をいう。第三百六十八条において同じ。)」と、第三百六十八条第一項中「定款」とあるのは「取締役会」と、「各取締役」とあるのは「各特別取締役」と、同条第二項中「取締役(」とあるのは「特別取締役(」と、「取締役及び」とあるのは「特別取締役及び」とする。

 B 特別取締役の互選によって定められた者は、前項の取締役会の決議後、遅滞なく、当該決議の内容を特別取締役以外の取締役に報告しなければならない。

 C 第三百六十六条(第一項本文を除く。)、第三百六十七条、第三百六十九条第一項及び第三百七十条の規定は、第二項の取締役会については、適用しない。
本条は、特別取締役による取締役の決議の制度についての規定である。これは、取締役会の構成員の一部をあらかじめ特別取締役として選んでおき、取締役会で決定すべき事項のうち、迅速な意思決定が必要だと考えられる重要な財産の処分・譲受け(第362条第4項第1号)と多額の借財(第362条第4項第2号)について、3人以上の特別取締役により議決し、それを取締役会決議と認める制度のことである(本条第1項、第2項)。議決要件は、通常の取締役会と同じで、議決に加わることができる特別取締役の過半数が出席し、その過半数の議決によって行う。旧商法においての、重要財産委員会に相当するものである。

ただし、特別取締役制度は取締役会が大規模である大会社を想定しているため、取締役の総数が6人以上の会社しか導入できない。また、特別取締役の権限の濫用を防ぐため、1人以上の社外取締役がいなければならない(特別取締役が社外取締役である必要はない)。

また、特別取締役の互選によって定められた者は、決議後すぐに、決議内容を特別取締役以外の取締役に報告しなければならない(第3項)。