会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第4章 機関

第6節 会計参与
第374条 【会計参与の権限】

 @ 会計参与は、取締役と共同して、計算書類(第四百三十五条第二項に規定する計算書類をいう。以下この章において同じ。)及びその附属明細書、臨時計算書類(第四百四十一条第一項に規定する臨時計算書類をいう。以下この章において同じ。)並びに連結計算書類(第四百四十四条第一項に規定する連結計算書類をいう。第三百九十六条第一項において同じ。)を作成する。この場合において、会計参与は、法務省令で定めるところにより、会計参与報告を作成しなければならない。

 A 会計参与は、いつでも、次に掲げるものの閲覧及び謄写をし、又は取締役及び支配人その他の使用人に対して会計に関する報告を求めることができる。

 1 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面

 2 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したもの

 B 会計参与は、その職務を行うため必要があるときは、会計参与設置会社の子会社に対して会計に関する報告を求め、又は会計参与設置会社若しくはその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。

 C 前項の子会社は、正当な理由があるときは、同項の報告又は調査を拒むことができる。

 D 会計参与は、その職務を行うに当たっては、第三百三十三条第三項第二号又は第三号に掲げる者を使用してはならない。

 E 委員会設置会社における第一項及び第二項の規定の適用については、第一項中「取締役」とあるのは「執行役」と、第二項中「取締役及び」とあるのは「執行役及び取締役並びに」とする。
会計参与とは、取締役(委員会設置会社においては執行役)と共同して、計算書類等を作成する者のことである。定款で、会計参与を設置すると定めた会社を、会計参与設置会社という。会社法において新しく創設された制度であり、会社の計算書類等の正確性を担保するのが目的である。

会計参与
設置 原則として、会社の任意で設置できる。
設置できる機関 どの機関でも設置できる。
権限 その1 計算書類等を取締役等と共同して作成すること。作成する書類は以下である。

・計算書類およびその附属明細書(第435条第2項)
・臨時計算書類(第441条第1項)
・連結計算書類(第444条第1項)

これらの計算書類等は、原則として取締役・執行役が作成するが、会計の専門家である会計参与も加わることによって、正確性が増し、取締役・執行役の負担も軽減されることになる。
その2 会計参与報告(株主や債権者に対する情報提供)を作成すること。会計参与は計算書類等を作成する場合、法務省令で定めるところにより、会計参与報告を作成しなければならない。

会計参与は、計算書類等と会計参与報告を会計参与が定めた場所に5年間備え置かなければならない(第378条第1項)。
その3 会計帳簿の閲覧、資料の閲覧・謄写権。会計参与の職務執行を十分なものとするためである。
その4 子会社調査権。会計参与設置会社の子会社に対して、会計に関する報告を求めることができる。また、業務・財産の状況の調査をすることもできる。ただし、子会社は正当な理由があるときは、報告・調査を拒否することができる。
第375条 【会計参与の報告義務】

 @ 会計参与は、その職務を行うに際して取締役の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、遅滞なく、これを株主(監査役設置会社にあっては、監査役)に報告しなければならない。

 A 監査役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株主(監査役設置会社にあっては、監査役)」とあるのは、「監査役会」とする。

 B 委員会設置会社における第一項の規定の適用については、同項中「取締役」とあるのは「執行役又は取締役」と、「株主(監査役設置会社にあっては、監査役)」とあるのは「監査委員会」とする。
会計参与は、取締役(委員会設置会社においては執行役)の不正行為または法令・定款に違反する重大な事実を発見したときは、すぐにその事実を株主に報告しなければならない(第1項)。

ただし、この報告は、監査役設置会社においては監査役、監査役会設置会社においては監査役会、委員会設置会社においては監査委員会に行わなければならない。
第376条 【取締役会への出席】

 @ 取締役会設置会社の会計参与(会計参与が監査法人又は税理士法人である場合にあっては、その職務を行うべき社員。以下この条において同じ。)は、第四百三十六条第三項、第四百四十一条第三項又は第四百四十四条第五項の承認をする取締役会に出席しなければならない。この場合において、会計参与は、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。

 A 会計参与設置会社において、前項の取締役会を招集する者は、当該取締役会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各会計参与に対してその通知を発しなければならない。

 B 会計参与設置会社において、第三百六十八条第二項の規定により第一項の取締役会を招集の手続を経ることなく開催するときは、会計参与の全員の同意を得なければならない。
取締役会設置会社の会計参与は、計算書類等・連結計算書類等を承認する取締役会に出席する義務を負う。また、必要があれば、意見を述べなければならない。

会計参与設置会社において、取締役会の招集者は、当該取締役会の1週間前までに、各会計参与に対して、その通知を発しなければならない。この招集の手続きを省略する場合は、会計参与全員の同意が必要である。
第377条 【株主総会における意見の陳述】

 @ 第三百七十四条第一項に規定する書類の作成に関する事項について会計参与が取締役と意見を異にするときは、会計参与(会計参与が監査法人又は税理士法人である場合にあっては、その職務を行うべき社員)は、株主総会において意見を述べることができる。

 A 委員会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「取締役」とあるのは、「執行役」とする。
会計参与と取締役が共同して作成する計算書類等について意見が異なる場合、会計参与は株主総会において、この件に関する意見を述べることができる。
第378条 【会計参与による計算書類等の備置き等】

 @ 会計参与は、次の各号に掲げるものを、当該各号に定める期間、法務省令で定めるところにより、当該会計参与が定めた場所に備え置かなければならない。

 1 各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書並びに会計参与報告 定時株主総会の日の一週間(取締役会設置会社にあっては、二週間)前の日(第三百十九条第一項の場合にあっては、同項の提案があった日)から五年間

 2 臨時計算書類及び会計参与報告 臨時計算書類を作成した日から五年間

 A 会計参与設置会社の株主及び債権者は、会計参与設置会社の営業時間内(会計参与が請求に応ずることが困難な場合として法務省令で定める場合を除く。)は、いつでも、会計参与に対し、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、当該会計参与の定めた費用を支払わなければならない。

 1 前項各号に掲げるものが書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧の請求

 2 前号の書面の謄本又は抄本の交付の請求

 3 前項各号に掲げるものが電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求

 4 前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって会計参与の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求

 B 会計参与設置会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該会計参与設置会社の第一項各号に掲げるものについて前項各号に掲げる請求をすることができる。ただし、同項第二号又は第四号に掲げる請求をするには、当該会計参与の定めた費用を支払わなければならない。
会計参与は、計算書類等を会計参与が定めた場所に備え置かなければならない。これは、計算書類等の保存と利害関係人に対する情報開示のためである。備え置かなければならない期間は、計算書類とその附属明細書・会計参与報告が5年間、臨時計算書類・会計参与報告が5年間である(どちらも5年間である)。

会計参与設置会社の株主・会社債権者は、当該書類の閲覧・謄写を請求することができる。当該会社の親会社の社員は、権利行使のために必要があり、かつ、裁判所の許可を得た上で、閲覧・謄写を請求することができる。
第379条 【会計参与の報酬等】

 @ 会計参与の報酬等は、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。

 A 会計参与が二人以上ある場合において、各会計参与の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、前項の報酬等の範囲内において、会計参与の協議によって定める。

 B 会計参与(会計参与が監査法人又は税理士法人である場合にあっては、その職務を行うべき社員)は、株主総会において、会計参与の報酬等について意見を述べることができる。
会計参与の報酬等は、定款、株主総会の決議によって決める。取締役会の決議によって決めることができないのは、会計参与の独立性を保つためである。

また、会計参与は、株主総会において、会計参与の報酬等について意見を述べることができる。

会計参与が二人以上いる場合において、会計参与の報酬等の総額についての定めはあるが、各会計参与それぞれの報酬等についての定めがないときは、会計参与同士の協議によってそれぞれの報酬等を決めることになる。
第380条 【費用等の請求】

 会計参与がその職務の執行について会計参与設置会社に対して次に掲げる請求をしたときは、当該会計参与設置会社は、当該請求に係る費用又は債務が当該会計参与の職務の執行に必要でないことを証明した場合を除き、これを拒むことができない。

 1 費用の前払の請求

 2 支出した費用及び支出の日以後におけるその利息の償還の請求

 3 負担した債務の債権者に対する弁済(当該債務が弁済期にない場合にあっては、相当の担保の提供)の請求
会計参与が、職務執行について、会計参与設置会社に対して、費用の前払い、支出した費用及び支出の日以後におけるその利息の償還の請求、負担した債務の債権者に対する弁済を請求したときは、会社は、それらの請求が会計参与の職務執行に必要でないということを証明しない限り、拒むことができない。

会計参与の独立性を担保するための制度である。