会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第4章 機関

第9節 会計監査人
第396条 【会計監査人の権限等】

 @ 会計監査人は、次章の定めるところにより、株式会社の計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに連結計算書類を監査する。この場合において、会計監査人は、法務省令で定めるところにより、会計監査報告を作成しなければならない。

 A 会計監査人は、いつでも、次に掲げるものの閲覧及び謄写をし、又は取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対し、会計に関する報告を求めることができる。

 1 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面

 2 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したもの

 B 会計監査人は、その職務を行うため必要があるときは、会計監査人設置会社の子会社に対して会計に関する報告を求め、又は会計監査人設置会社若しくはその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。

 C 前項の子会社は、正当な理由があるときは、同項の報告又は調査を拒むことができる。

 D 会計監査人は、その職務を行うに当たっては、次のいずれかに該当する者を使用してはならない。

 1 第三百三十七条第三項第一号又は第二号に掲げる者

 2 会計監査人設置会社又はその子会社の取締役、会計参与、監査役若しくは執行役又は支配人その他の使用人である者

 3 会計監査人設置会社又はその子会社から公認会計士又は監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者

 E 委員会設置会社における第二項の規定の適用については、同項中「取締役」とあるのは、「執行役、取締役」とする。
会計監査人とは、計算書類等の監査をする者のことである。大会社、委員会設置会社には会計監査人の設置義務が課されている(第327条第5項、第328条)。それ以外の会社は、任意に設置することができる(第326条第2項)。

この会計監査人を置いている会社のことを、会計監査人設置会社という(第2条第11号)。また、委員会設置会社を除く会計監査人設置会社は監査役を置かなければならない(第327条第3項)。

会計監査人の権限は以下である。

・計算書類等の監査:会計監査人は、会社の計算書類およびその附属明細書、臨時計算書類、連結計算書類を監査する。会計監査人の中核的業務である。

・会計監査人報告の作成:会計監査人は、計算書類等の監査について、法務省令で定めるところにより、会計監査報告を作成しなければならない。

・会計帳簿の閲覧等:会計監査人は、いつでも会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧・謄写をすることができる。また、取締役、会計参与、支配人その他の使用人に対して、会計に関する報告を求めることができる。

・子会社調査権:会計監査人は、その職務を行うため必要があるときは、会計監査人設置会社の子会社に対して、会計に関する報告を求めることができる。また、当該会社もしくはその子会社の業務・財産の状況を調査することもできる。ただし、子会社は正当な理由があれば、調査を拒否することができる。
第397条 【監査役に対する報告】

 @ 会計監査人は、その職務を行うに際して取締役の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、遅滞なく、これを監査役に報告しなければならない。

 A 監査役は、その職務を行うため必要があるときは、会計監査人に対し、その監査に関する報告を求めることができる。

 B 監査役会設置会社における第一項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査役会」とする。

 C 委員会設置会社における第一項及び第二項の規定の適用については、第一項中「取締役」とあるのは「執行役又は取締役」と、「監査役」とあるのは「監査委員会」と、第二項中「監査役」とあるのは「監査委員会が選定した監査委員会の委員」とする。
会計監査人は、取締役(委員会設置会社では執行役)の不正行為または法令・定款に違反する重大な事実を発見したときは、すぐにその事実を監査役(監査役会設置会社においては監査役会)に報告しなければならない(第1項)。

また、監査役は、その職務を行うため必要があるときは、会計監査人に対してその監査に関する報告を求めることができる。
第398条 【定時株主総会における会計監査人の意見の陳述】

 @ 第三百九十六条第一項に規定する書類が法令又は定款に適合するかどうかについて会計監査人が監査役と意見を異にするときは、会計監査人(会計監査人が監査法人である場合にあっては、その職務を行うべき社員。次項において同じ。)は、定時株主総会に出席して意見を述べることができる。

 A 定時株主総会において会計監査人の出席を求める決議があったときは、会計監査人は、定時株主総会に出席して意見を述べなければならない。

 B 監査役会設置会社における第一項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査役会又は監査役」とする。

 C 委員会設置会社における第一項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査委員会又はその委員」とする。
会計監査人は、会社の計算書類およびその附属明細書、臨時計算書類、連結計算書類を監査する(第396条第1項)。しかし、監査役も会計監査権を有しているため、会計監査人との間で、意見が異なる場合もある。このような場合、会計監査人は、定時株主総会において、この件に関する意見を述べることができる(第1項)。

また、定時株主総会において、会計監査人の出席を求める決議があったときは、会計監査人は、定時株主総会に出席して意見を述べなければならない(第2項)。
第399条 【会計監査人の報酬等の決定に関する監査役の関与】

 @ 取締役は、会計監査人又は一時会計監査人の職務を行うべき者の報酬等を定める場合には、監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければならない。

 A 監査役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)」とあるのは、「監査役会」とする。

 B 委員会設置会社における第一項の規定の適用については、同項中「監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)」とあるのは、「監査委員会」とする。
取締役が、会計監査人の報酬等を決める場合、監査役の同意を得なければならない(第1項)。これは、取締役によって報酬等が不当な額にされないようにし、会計監査人の独立性を保つためである。