会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第5章 計算等

第3節 資本金の額等

第2款 資本金の額の減少等
第1目 資本金の額の減少等

第447条 【資本金の額の減少】


 @ 株式会社は、資本金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 減少する資本金の額

 2 減少する資本金の額の全部又は一部を準備金とするときは、その旨及び準備金とする額

 3 資本金の額の減少がその効力を生ずる日

 A 前項第一号の額は、同項第三号の日における資本金の額を超えてはならない。

 B 株式会社が株式の発行と同時に資本金の額を減少する場合において、当該資本金の額の減少の効力が生ずる日後の資本金の額が当該日前の資本金の額を下回らないときにおける第一項の規定の適用については、同項中「株主総会の決議」とあるのは、「取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)」とする。
資本金の額を減少させることを、減資という。これは、会社債権者の担保として社内に留保されるべき会社財産の基準額を引き下げることである。

減資は、原則として、株主総会の特別決議によらなければならない(第1項、第309条第2項第9号)。ただし、欠損填補の場合は、減少する資本金額につき、株主総会の普通決議を経れば足りる(第1項、第309条第2項第9号かっこ書き)。また、新株発行と同時に減資する場合、減資後の資本金額が減資前の資本金額を下回らないときは、取締役(取締役会)の決定で足りる(第3項)。
第448条 【準備金の額の減少】

 @ 株式会社は、準備金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 減少する準備金の額

 2 減少する準備金の額の全部又は一部を資本金とするときは、その旨及び資本金とする額

 3 準備金の額の減少がその効力を生ずる日

 A 前項第一号の額は、同項第三号の日における準備金の額を超えてはならない。

 B 株式会社が株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合において、当該準備金の額の減少の効力が生ずる日後の準備金の額が当該日前の準備金の額を下回らないときにおける第一項の規定の適用については、同項中「株主総会の決議」とあるのは、「取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)」とする。
準備金の額は、資本の欠損を填補した場合と資本組入れの場合に減少する。

準備金の額を減少させるには、原則として、株主総会の決議によらなければならない(第1項)。ただし、新株発行と同時に準備金の額を減少する場合であって、減少させた後の準備金額が、減少させる前の準備金額を下回らないときは、取締役(取締役会)の決定で足りる(第3項)。
第449条 【債権者の異議】

 @ 株式会社が資本金又は準備金(以下この条において「資本金等」という。)の額を減少する場合(減少する準備金の額の全部を資本金とする場合を除く。)には、当該株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、資本金等の額の減少について異議を述べることができる。ただし、準備金の額のみを減少する場合であって、次のいずれにも該当するときは、この限りでない。

 1 定時株主総会において前条第一項各号に掲げる事項を定めること。

 2 前条第一項第一号の額が前号の定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。

 A 前項の規定により株式会社の債権者が異議を述べることができる場合には、当該株式会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第三号の期間は、一箇月を下ることができない。

 1 当該資本金等の額の減少の内容

 2 当該株式会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの

 3 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

 B 前項の規定にかかわらず、株式会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。

 C 債権者が第二項第三号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該資本金等の額の減少について承認をしたものとみなす。

 D 債権者が第二項第三号の期間内に異議を述べたときは、株式会社は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等(信託会社及び信託業務を営む金融機関(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(昭和十八年法律第四十三号)第一条第一項の認可を受けた金融機関をいう。)をいう。以下同じ。)に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該資本金等の額の減少をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。

 E 次の各号に掲げるものは、当該各号に定める日にその効力を生ずる。ただし、第二項から前項までの規定による手続が終了していないときは、この限りでない。

 1 資本金の額の減少 第四百四十七条第一項第三号の日

 2 準備金の額の減少 前条第一項第三号の日

 F 株式会社は、前項各号に定める日前は、いつでも当該日を変更することができる。
資本金・準備金の額の減少が行われた場合(第447条第1項、第448条第1項)、会社債権者(第104条)は重大な影響を受ける可能性があるため、会社に対して異議を申し立てることができる。

資本金・準備金の額を減少する会社は、会社債権者に異議申し立ての機会を与えるため、1ヶ月をくだらない一定期間内に異議を述べることができる旨等を官報に公告し、かつ、既にわかっている債権者には各別に催告しなければならない。ただし、公告を、官報のほか、定款に定めた時事に関する事項を掲載する日刊新聞または電子広告によってするときは、各別に催告をする必要はない。

会社債権者は異議申し立てをしなかった場合、資本金・準備金の額の減少を承認したものとみなされる。

一方、会社債権者が異議を述べた場合、会社はその債権者に対して、弁済、相当の担保の提供、その債権者に弁済を受けさせることを目的とする信託会社等への相当の財産の信託のいずれかをしなければならない。ただし、資本金・準備金の額の減少をしても、当該債権者を害する危険性がない場合には、これらの措置をとる必要はない。
第2目 資本金の額の増加等

第450条 【資本金の額の増加】


 @ 株式会社は、剰余金の額を減少して、資本金の額を増加することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 減少する剰余金の額

 2 資本金の額の増加がその効力を生ずる日

 A 前項各号に掲げる事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。

 B 第一項第一号の額は、同項第二号の日における剰余金の額を超えてはならない。
会社は、剰余金の額を減少させて(実際の剰余金の額を超えて減少させることはできない)、その分を資本金に組み入れ、資本金額を増加させることができる。この場合、減少する剰余金の額、資本金額増加の効力発生日を株主総会の普通決議により定めなければならない(第1項、第2項)。
第451条 【準備金の額の増加】

 @ 株式会社は、剰余金の額を減少して、準備金の額を増加することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 減少する剰余金の額

 2 準備金の額の増加がその効力を生ずる日

 A 前項各号に掲げる事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。

 B 第一項第一号の額は、同項第二号の日における剰余金の額を超えてはならない。
会社は、剰余金の額を減少して(実際の剰余金の額を超えて減少することはできない)、その分を準備金に加えることができる。この場合、減少する剰余金の額、準備金の額の増加がその効力を生ずる日を、株主総会の普通決議で決めなければならない。
第3目 剰余金についてのその他の処分

第452条 【剰余金についてのその他の処分】


 株式会社は、株主総会の決議によって、損失の処理、任意積立金の積立てその他の剰余金の処分(前目に定めるもの及び剰余金の配当その他株式会社の財産を処分するものを除く。)をすることができる。この場合においては、当該剰余金の処分の額その他の法務省令で定める事項を定めなければならない。
任意積立金(任意準備金ともいう)とは、会社が定款の定め・株主総会決議によって積み立てる積立金のことである(会社法が強制するものではない)。

会社財産に余裕があるうちに、不測の事態に備えて積み立てられるのが一般的である。

この任意積立金の処分は株主総会決議によってすることができる。