会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第5章 計算等

第4節 剰余金の配当
第453条 【株主に対する剰余金の配当】

 株式会社は、その株主(当該株式会社を除く。)に対し、剰余金の配当をすることができる。
株式会社は、株主に剰余金を配当することができる。株主がこの剰余金の配当を受ける権利は、株式会社の営利性と一般に散在している資本の結合という本質的要素に密接に関連する、株主の権利の中でも中核的な権利である。

ただし、会社法においては、無秩序に剰余金が配当されることのないように、一定の規制をしている(第461条)。
第454条 【剰余金の配当に関する事項の決定】

 @ 株式会社は、前条の規定による剰余金の配当をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び帳簿価額の総額

 2 株主に対する配当財産の割当てに関する事項

 3 当該剰余金の配当がその効力を生ずる日

 A 前項に規定する場合において、剰余金の配当について内容の異なる二以上の種類の株式を発行しているときは、株式会社は、当該種類の株式の内容に応じ、同項第二号に掲げる事項として、次に掲げる事項を定めることができる。

 1 ある種類の株式の株主に対して配当財産の割当てをしないこととするときは、その旨及び当該株式の種類

 2 前号に掲げる事項のほか、配当財産の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは、その旨及び当該異なる取扱いの内容

 B 第一項第二号に掲げる事項についての定めは、株主(当該株式会社及び前項第一号の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数(前項第二号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、各種類の株式の数)に応じて配当財産を割り当てることを内容とするものでなければならない。

 C 配当財産が金銭以外の財産であるときは、株式会社は、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めることができる。ただし、第一号の期間の末日は、第一項第三号の日以前の日でなければならない。

 1 株主に対して金銭分配請求権(当該配当財産に代えて金銭を交付することを株式会社に対して請求する権利をいう。以下この章において同じ。)を与えるときは、その旨及び金銭分配請求権を行使することができる期間

 2 一定の数未満の数の株式を有する株主に対して配当財産の割当てをしないこととするときは、その旨及びその数

 D 取締役会設置会社は、一事業年度の途中において一回に限り取締役会の決議によって剰余金の配当(配当財産が金銭であるものに限る。以下この項において「中間配当」という。)をすることができる旨を定款で定めることができる。この場合における中間配当についての第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。
株式会社は、株主に剰余金を配当することができる。この場合、株主総会の普通決議によって、配当財産の種類、帳簿価額の総額、株主に対する配当財産の割り当てに関する事項、配当の効力発生日を決めなければならない。株主に対する配当財産の割り当てに関する事項の決定においては、株主の有する株式数に応じた割り当てになるようにしなければならない。

配当を行う場合、商品券などの金銭以外の財産での配当、つまり、現物配当を行うことができる。ただし、この場合、当該配当財産に代えて金銭を交付することを請求する権利(金銭分配請求権)を与えない場合には、株主総会の特別決議が必要になる。株主は、通常金銭での配当を期待しているためである。

また、配当回数に制限はない。株主総会決議を得れば、一営業年度において、何回でも剰余金の配当をすることができる。取締役会設置会社においては、一営業年度において一回限り、取締役会の決議によって中間配当をすることができる旨を定款で定めることができる。ただし、中間配当の配当財産は金銭に限られている。
第455条 【金銭分配請求権の行使】

 @ 前条第四項第一号に規定する場合には、株式会社は、同号の期間の末日の二十日前までに、株主に対し、同号に掲げる事項を通知しなければならない。

 A 株式会社は、金銭分配請求権を行使した株主に対し、当該株主が割当てを受けた配当財産に代えて、当該配当財産の価額に相当する金銭を支払わなければならない。この場合においては、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額をもって当該配当財産の価額とする。

 1 当該配当財産が市場価格のある財産である場合 当該配当財産の市場価格として法務省令で定める方法により算定される額

 2 前号に掲げる場合以外の場合 株式会社の申立てにより裁判所が定める額
本条は、会社が現物配当をし、かつ、株主に金銭分配請求権を与えた場合(第454条第4項第1号)において、金銭分配請求権の行使について規定している。

株主が、金銭分配請求権を行使した場合、会社は、株主に対して当該株主が割り当てを受けた配当財産に代えて、当該配当財産の価額に相当する金銭を支払わなければならない。
第456条 【基準株式数を定めた場合の処理】

 第四百五十四条第四項第二号の数(以下この条において「基準株式数」という。)を定めた場合には、株式会社は、基準株式数に満たない数の株式(以下この条において「基準未満株式」という。)を有する株主に対し、前条第二項後段の規定の例により基準株式数の株式を有する株主が割当てを受けた配当財産の価額として定めた額に当該基準未満株式の数の基準株式数に対する割合を乗じて得た額に相当する金銭を支払わなければならない。
本条は、会社が現物配当をし、かつ、基準株式数を定めた場合(第454条第4項第2号)において、金銭分配請求権の行使について規定している。

基準株式数とは、一定数未満の数の株式を有する株主に対して配当財産の割り当てをしないこととしたときにおける、基準となる一定数のことである。

この場合、会社は、基準株式数に満たない数の株式を有する株主に対して、以下の計算式によって算出された額に相当する金銭を支払わなければならない。

・計算式=基準株式数の株式を有する株主が割り当てを受けた配当財産の価額として定めた額×当該基準未満株式の数の基準株式数に対する割合

これらは、基準株式数に満たない数の株式しか有しない株主が不当に不利益を被らないようにするためである。
第457条 【配当財産の交付の方法等】

 @ 配当財産(第四百五十五条第二項の規定により支払う金銭及び前条の規定により支払う金銭を含む。以下この条において同じ。)は、株主名簿に記載し、又は記録した株主(登録株式質権者を含む。以下この条において同じ。)の住所又は株主が株式会社に通知した場所(第三項において「住所等」という。)において、これを交付しなければならない。

 A 前項の規定による配当財産の交付に要する費用は、株式会社の負担とする。ただし、株主の責めに帰すべき事由によってその費用が増加したときは、その増加額は、株主の負担とする。

 B 前二項の規定は、日本に住所等を有しない株主に対する配当財産の交付については、適用しない。
配当は、株主名簿に記載・記録した株主の住所、または、株主が会社に通知した場所において交付しなければならない。交付に必要な費用は、会社負担となる。株主の落ち度により費用が増加した場合は、増加分は株主負担となる。ただし、これらの規定は、日本に住所等を有しない株主については、適用されない。
第458条 【適用除外】

 第四百五十三条から前条までの規定は、株式会社の純資産額が三百万円を下回る場合には、適用しない。
株式会社の純資産額が300万円未満の場合、第453条から第457条までの規定は適用されない。つまり、剰余金の配当を行うことができないということである。会社の財政基盤に余裕がなく、配当を行えばさらに脆弱となるためである。