会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第7章 事業の譲渡等
第467条 【事業譲渡等の承認等】

 @ 株式会社は、次に掲げる行為をする場合には、当該行為がその効力を生ずる日(以下この章において「効力発生日」という。)の前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならない。

 1 事業の全部の譲渡

 2 事業の重要な一部の譲渡(当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えないものを除く。)

 3 他の会社(外国会社その他の法人を含む。次条において同じ。)の事業の全部の譲受け

 4 事業の全部の賃貸、事業の全部の経営の委任、他人と事業上の損益の全部を共通にする契約その他これらに準ずる契約の締結、変更又は解約

 5 当該株式会社(第二十五条第一項各号に掲げる方法により設立したものに限る。以下この号において同じ。)の成立後二年以内におけるその成立前から存在する財産であってその事業のために継続して使用するものの取得。ただし、イに掲げる額のロに掲げる額に対する割合が五分の一(これを下回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えない場合を除く。

  イ 当該財産の対価として交付する財産の帳簿価額の合計額

  ロ 当該株式会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額

 A 前項第三号に掲げる行為をする場合において、当該行為をする株式会社が譲り受ける資産に当該株式会社の株式が含まれるときは、取締役は、同項の株主総会において、当該株式に関する事項を説明しなければならない。
事業譲渡とは、一定の営業目的のために組織化された財産を譲渡することである。そして、譲受会社が営業主たる地位を承継し、譲渡会社が競業避止義務を負う。

会社は本条第1項各号の行為をするには、原則として株主総会の特別決議を受けなければならない。
第468条 【事業譲渡等の承認を要しない場合】

 @ 前条の規定は、同条第一項第一号から第四号までに掲げる行為(以下この章において「事業譲渡等」という。)に係る契約の相手方が当該事業譲渡等をする株式会社の特別支配会社(ある株式会社の総株主の議決権の十分の九(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)以上を他の会社及び当該他の会社が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人が有している場合における当該他の会社をいう。以下同じ。)である場合には、適用しない。

 A 前条の規定は、同条第一項第三号に掲げる行為をする場合において、第一号に掲げる額の第二号に掲げる額に対する割合が五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えないときは、適用しない。

 1 当該他の会社の事業の全部の対価として交付する財産の帳簿価額の合計額

 2 当該株式会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額

 B 前項に規定する場合において、法務省令で定める数の株式(前条第一項の株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)を有する株主が次条第三項の規定による通知又は同条第四項の公告の日から二週間以内に前条第一項第三号に掲げる行為に反対する旨を当該行為をする株式会社に対し通知したときは、当該株式会社は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならない。
事業譲渡等をする場合、まず、事業譲渡契約書を作成し、原則として株主総会の特別決議による承認を受けなければならない(第467条第1項、第309条第2項第11号)。

ただし、これには以下の例外があり、この場合には株主総会の特別決議は不要である。
・事業の重要な一部の譲渡であって、譲渡により譲渡す資産の帳簿価額が総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1を超えない場合
・譲受会社が特別支配会社である場合

なお、譲渡会社が特別支配会社である場合、譲受会社の事業の全部の対価として交付される帳簿価額が譲受会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1を超えない場合には、株主総会の特別決議は不要である。
第469条 【反対株主の株式買取請求】

 @ 事業譲渡等をする場合には、反対株主は、事業譲渡等をする株式会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。ただし、第四百六十七条第一項第一号に掲げる行為をする場合において、同項の株主総会の決議と同時に第四百七十一条第三号の株主総会の決議がされたときは、この限りでない。

 A 前項に規定する「反対株主」とは、次の各号に掲げる場合における当該各号に定める株主をいう。

 1 事業譲渡等をするために株主総会(種類株主総会を含む。)の決議を要する場合 次に掲げる株主

  イ 当該株主総会に先立って当該事業譲渡等に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該事業譲渡等に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)

  ロ 当該株主総会において議決権を行使することができない株主

 2 前号に規定する場合以外の場合 すべての株主

 B 事業譲渡等をしようとする株式会社は、効力発生日の二十日前までに、その株主に対し、事業譲渡等をする旨(第四百六十七条第二項に規定する場合にあっては、同条第一項第三号に掲げる行為をする旨及び同条第二項の株式に関する事項)を通知しなければならない。

 C 次に掲げる場合には、前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。

 1 事業譲渡等をする株式会社が公開会社である場合

 2 事業譲渡等をする株式会社が第四百六十七条第一項の株主総会の決議によって事業譲渡等に係る契約の承認を受けた場合

 D 事業譲渡等をする株式会社が第四百六十七条第一項の株主総会の決議によって事業譲渡等に係る契約の承認を受けた場合

 E 株式買取請求をした株主は、事業譲渡等をする株式会社の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる。

 F 事業譲渡等を中止したときは、株式買取請求は、その効力を失う。
本条は、事業譲渡等に関する株式買取請求権についての規定である。

事業譲渡等は会社の経営や株主の権利に重大な影響を与える可能性があるため、これに反対の株主で株主としての地位にはとどまりたくない場合は会社に対して自己保有株を買い取ってくれるよう請求することができる。

ただし、事業全部の譲渡をする場合に、その承認決議と同時に会社の解散決議(第471条第3号)がなされた場合、株式買取請求権は認められない。このような場合は、残余財産の分配により投下資本の回収を図るべきだからである。
第470条 【株式の価格の決定等】

 @ 株式買取請求があった場合において、株式の価格の決定について、株主と事業譲渡等をする株式会社との間に協議が調ったときは、当該株式会社は、効力発生日から六十日以内にその支払をしなければならない。

 A 株式の価格の決定について、効力発生日から三十日以内に協議が調わないときは、株主又は前項の株式会社は、その期間の満了の日後三十日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。

 B 前条第六項の規定にかかわらず、前項に規定する場合において、効力発生日から六十日以内に同項の申立てがないときは、その期間の満了後は、株主は、いつでも、株式買取請求を撤回することができる。

 C 第一項の株式会社は、裁判所の決定した価格に対する同項の期間の満了の日後の年六分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。

 D 株式買取請求に係る株式の買取りは、当該株式の代金の支払の時に、その効力を生ずる。

 E 株券発行会社は、株券が発行されている株式について株式買取請求があったときは、株券と引換えに、その株式買取請求に係る株式の代金を支払わなければならない。
第469条の規定により、反対株主が会社に対して株式買取請求をした場合、買い取り価格について、まず会社と反対株主との間で協議をしなければならない。

協議により価格が決まれば、会社は効力発生日から60日以内にその支払いをしなければならない(第1項)。

もし、協議で価格が決まらなければ、会社または反対株主は、裁判所に価格の決定の申し立てをすることができる(第2項)。

なお、株式買取請求は原則的に撤回することはできないが(第469条第6項)、効力発生日から60日以内に裁判所に対して申し立てが行われない場合は、期間満了後に、反対株主は株式買取請求を撤回することができる(第3項)。

株式買取の効果は、会社が代金を支払った時に、その効力が生じる(第5項)。ただし、株券発行会社においては、代金の支払いは株券と引き換えでなければならない(第6項)。