会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第9章 清算

第2節 特別清算

第2款 裁判所による監督及び調査
第519条 【裁判所による監督】

 @ 特別清算開始の命令があったときは、清算株式会社の清算は、裁判所の監督に属する。

 A 裁判所は、必要があると認めるときは、清算株式会社の業務を監督する官庁に対し、当該清算株式会社の特別清算の手続について意見の陳述を求め、又は調査を嘱託することができる。

 B 前項の官庁は、裁判所に対し、当該清算株式会社の特別清算の手続について意見を述べることができる。
特別清算開始命令があると、清算株式会社の清算は裁判所の監督に属する(第1項)。裁判所は、必要があると認めるときは、清算株式会社の監督官庁に特別清算の手続きについて意見陳述を求め、または、調査を嘱託することができる(第2項)。また、清算株式会社の監督官庁は、裁判所に特別清算手続きの意見を述べることができる(第3項)。

特別清算は、実質的には破産と同様の倒産処理方法の一種であるため、裁判所や監督官庁の監督の下で、手続きを遂行する必要があるためである。

しかし、裁判所の監督に属するとはいえ、清算株式会社の清算事務は清算人が行う。
第520条 【裁判所による調査】

 裁判所は、いつでも、清算株式会社に対し、清算事務及び財産の状況の報告を命じ、その他清算の監督上必要な調査をすることができる。
裁判所は、いつでも、清算株式会社に対して、清算事務と財産状況の報告を命じることができ、監督上必要な調査をすることができる。
第521条 【裁判所への財産目録等の提出】

 特別清算開始の命令があった場合には、清算株式会社は、第四百九十二条第三項の承認があった後遅滞なく、財産目録等(同項に規定する財産目録等をいう。以下この条において同じ。)を裁判所に提出しなければならない。ただし、財産目録等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を記載した書面を裁判所に提出しなければならない。
特別清算開始命令があった場合、清算株式会社は、財産目録等に対する株主総会の承認があった後、すぐに財産目録等を裁判所に提出しなければならない。
第522条 【調査命令】

 @ 裁判所は、特別清算開始後において、清算株式会社の財産の状況を考慮して必要があると認めるときは、清算人、監査役、債権の申出をした債権者その他清算株式会社に知れている債権者の債権の総額の十分の一以上に当たる債権を有する債権者若しくは総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主若しくは発行済株式(自己株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主の申立てにより又は職権で、次に掲げる事項について、調査委員による調査を命ずる処分(第五百三十三条において「調査命令」という。)をすることができる。

 1 特別清算開始に至った事情

 2 清算株式会社の業務及び財産の状況

 3 第五百四十条第一項の規定による保全処分をする必要があるかどうか。

 4 第五百四十二条第一項の規定による保全処分をする必要があるかどうか。

 5 第五百四十五条第一項に規定する役員等責任査定決定をする必要があるかどうか。

 6 その他特別清算に必要な事項で裁判所の指定するもの

 A 清算株式会社の財産につき担保権(特別の先取特権、質権、抵当権又はこの法律若しくは商法の規定による留置権に限る。)を有する債権者がその担保権の行使によって弁済を受けることができる債権の額は、前項の債権の額に算入しない。

 B 公開会社でない清算株式会社における第一項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
裁判所は、特別清算開始後、必要があると認めるときは、一定の関係者の申し立てまたは職権により、本条第1項各号の事項について、調査委員による調査を命じる処分をすることができる。これは、特別清算手続きにおける裁判所の監督権限を十分なものとするためである。