会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第9章 清算

第2節 特別清算

第8款 債権者集会
第546条 【債権者集会の招集】

 @ 債権者集会は、特別清算の実行上必要がある場合には、いつでも、招集することができる。

 A 債権者集会は、次条第三項の規定により招集する場合を除き、清算株式会社が招集する。
本条は、特別清算においての債権者集会についての規定である。債権者集会とは、清算株式会社の会社債権者の総意を決定する債権者団体の議決機関のことである。

通常、会社債権者は多数存在するため、清算株式会社が会社債権者と個別に交渉することは難しい場合が多い。そのため、会社債権者間の利害を調整し、意思統一を図る場として、債権者集会が設けられた。

この債権者集会は、特別清算の実行上必要がある場合は、いつでも、招集することができ(第1項)、原則として、清算株式会社が招集する。
第547条 【債権者による招集の請求】

 @ 債権の申出をした協定債権者その他清算株式会社に知れている協定債権者の協定債権の総額の十分の一以上に当たる協定債権を有する協定債権者は、清算株式会社に対し、債権者集会の目的である事項及び招集の理由を示して、債権者集会の招集を請求することができる。

 A 清算株式会社の財産につき第五百二十二条第二項に規定する担保権を有する協定債権者がその担保権の行使によって弁済を受けることができる協定債権の額は、前項の協定債権の額に算入しない。

 B 次に掲げる場合には、第一項の規定による請求をした協定債権者は、裁判所の許可を得て、債権者集会を招集することができる。

 1 第一項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合

 2 第一項の規定による請求があった日から六週間以内の日を債権者集会の日とする債権者集会の招集の通知が発せられない場合
債権者集会は、原則として、清算株式会社が招集する(第546条第2項)。ただし、清算株式会社が把握している協定債権の総額の10%以上にあたる協定債権を有する協定債権者は、清算株式会社に対して債権者集会の招集を請求することができる(第1項)。

この場合、清算株式会社が招集に応じないときは、請求を行った協定債権者は、裁判所の許可を得て、自ら債権者集会を招集することができる(第3項)。
第548条 【債権者集会の招集等の決定】

 @ 債権者集会を招集する者(以下この款において「招集者」という。)は、債権者集会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 債権者集会の日時及び場所

 2 債権者集会の目的である事項

 3 債権者集会に出席しない協定債権者が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨

 4 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

 A 清算株式会社が債権者集会を招集する場合には、当該清算株式会社は、各協定債権について債権者集会における議決権の行使の許否及びその額を定めなければならない。

 B 清算株式会社以外の者が債権者集会を招集する場合には、その招集者は、清算株式会社に対し、前項に規定する事項を定めることを請求しなければならない。この場合において、その請求があったときは、清算株式会社は、同項に規定する事項を定めなければならない。

 C 清算株式会社の財産につき第五百二十二条第二項に規定する担保権を有する協定債権者は、その担保権の行使によって弁済を受けることができる協定債権の額については、議決権を有しない。
債権者集会を招集する場合、招集者は次の事項を決めなければならない。

・債権者集会の日時と場所
・債権者集会の目的
・債権者集会に出席しない協定債権者が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
・その他法務省令で定める事項


この他に、清算株式会社が債権者集会を招集する場合は、清算株式会社は、各協定債権について債権者集会における議決権の行使の許否とその額を決めなければならない。他方、清算株式会社以外の者が債権者集会を招集する場合は、その招集者は、清算株式会社に対して、これらの事項を決めることを請求しなければならない。

清算株式会社の財産につき第522条第2項の担保権を有する協定債権者は、その担保権の行使によって弁済を受けることができる協定債権の額については、議決権を有しない。この協定債権者は確実に弁済を受けることが期待できるため、弁済が不確実な債権者の利害調整の場である債権者集会の議決権を与える必要はないためである。
第549条 【債権者集会の招集の通知】

 @ 債権者集会を招集するには、招集者は、債権者集会の日の二週間前までに、債権の申出をした協定債権者その他清算株式会社に知れている協定債権者及び清算株式会社に対して、書面をもってその通知を発しなければならない。

 A 招集者は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、同項の通知を受けるべき者の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該招集者は、同項の書面による通知を発したものとみなす。

 B 前二項の通知には、前条第一項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

 C 前三項の規定は、債権の申出をした債権者その他清算株式会社に知れている債権者であって一般の先取特権その他一般の優先権がある債権、特別清算の手続のために清算株式会社に対して生じた債権又は特別清算の手続に関する清算株式会社に対する費用請求権を有するものについて準用する。
債権者集会を招集する場合、招集者は、債権者集会の日の2週間前までに、債権の申し出をした協定債権者・その他清算株式会社に知れている協定債権者・清算株式会社に対して、書面をもってその通知(この通知には、第548条第1項に掲げる事項を記載・記録しなければならない)を発しなければならない(第1項)。この通知は、通知を受けるべき者の承諾があれば電磁的方法により行うことができる(第2項)。

なお、これらの規定は、債権の申し出をした債権者・その他清算株式会社に知れている債権者であって一般の先取特権その他一般の優先権がある債権・特別清算の手続きのために清算株式会社に対して生じた債権・特別清算の手続きに関する清算株式会社に対する費用請求権を有する者について、準用される(第4項)。
第550条 【債権者集会参考書類及び議決権行使書面の交付等】

 @ 招集者は、前条第一項の通知に際しては、法務省令で定めるところにより、債権の申出をした協定債権者その他清算株式会社に知れている協定債権者に対し、当該協定債権者が有する協定債権について第五百四十八条第二項又は第三項の規定により定められた事項及び議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(次項において「債権者集会参考書類」という。)並びに協定債権者が議決権を行使するための書面(以下この款において「議決権行使書面」という。)を交付しなければならない。

 A 招集者は、前条第二項の承諾をした協定債権者に対し同項の電磁的方法による通知を発するときは、前項の規定による債権者集会参考書類及び議決権行使書面の交付に代えて、これらの書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、協定債権者の請求があったときは、これらの書類を当該協定債権者に交付しなければならない。
債権者集会の招集通知(第549条第1項)を発する場合、招集者は、債権の申し出をした協定債権者、その他清算株式会社に知れている協定債権者に対して、当該協定債権者が有する協定債権について、第548条第2項により定められた債権者集会における議決権の行使の許否とその額・議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(債権者集会参考書類)、協定債権者が議決権を行使するための書面(議決権行使書面)を添付しなければならない(第1項)。

なお、電磁的記録による債権者集会の招集通知を承諾した者に対しては、債権者集会参考書類、議決権行使書面を電磁的方法により提供することができる(第2項)。ただし、協定債権者の請求があったときは、書面を交付しなければならない。
第551条 【債権者集会参考書類及び議決権行使書面の交付等 その2】

 @ 招集者は、第五百四十八条第一項第三号に掲げる事項を定めた場合には、第五百四十九条第二項の承諾をした協定債権者に対する電磁的方法による通知に際して、法務省令で定めるところにより、協定債権者に対し、議決権行使書面に記載すべき事項を当該電磁的方法により提供しなければならない。

 A 招集者は、第五百四十八条第一項第三号に掲げる事項を定めた場合において、第五百四十九条第二項の承諾をしていない協定債権者から債権者集会の日の一週間前までに議決権行使書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供の請求があったときは、法務省令で定めるところにより、直ちに、当該協定債権者に対し、当該事項を電磁的方法により提供しなければならない。
債権者集会の招集について、電磁的方法による議決権行使を認めるということを決めた場合、招集者は、電磁的方法による招集通知を承諾した協定債権者に対する通知に際して、議決権行使書面に記載すべき事項を当該電磁的方法により提供しなければならない(第1項)。

一方、電磁的方法による招集通知を承諾していない協定債権者から、議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法で提供してほしい旨の請求があった場合には、招集者はすぐに電磁的方法により提供を行わなければならない(第2項)。
第552条 【債権者集会の指揮等】

 @ 債権者集会は、裁判所が指揮する。

 A 債権者集会を招集しようとするときは、招集者は、あらかじめ、第五百四十八条第一項各号に掲げる事項及び同条第二項又は第三項の規定により定められた事項を裁判所に届け出なければならない。
債権者集会は裁判所が指揮する(第1項)。

指揮をする裁判所の準備のために、債権者集会を招集する場合、招集者は、あらかじめ第548条第1項各号の事項、第548条第2項または第3項により決められた事項を裁判所に届け出なければならない(第2項)。
第553条 【異議を述べられた議決権の取扱い】

 債権者集会において、第五百四十八条第二項又は第三項の規定により各協定債権について定められた事項について、当該協定債権を有する者又は他の協定債権者が異議を述べたときは、裁判所がこれを定める。
債権者集会を招集する場合、清算株式会社は、各協定債権者について債権者集会における議決権の行使の許否とその額を決めなければならない(第548条第2項、第3項)。

これにより、債権者集会においての協定債権者の地位が決まるが、これは清算株式会社の一存によってすることができるため、協定債権者が不服をもつ場合もある。

そこで、本条により、当該協定債権者または他の協定債権者が異議を述べたときは、中立的立場にある裁判所が当該事項について改めて決めることができるとされている。
第554条 【債権者集会の決議】

 @ 債権者集会において決議をする事項を可決するには、次に掲げる同意のいずれもがなければならない。

 1 出席した議決権者(議決権を行使することができる協定債権者をいう。以下この款及び次款において同じ。)の過半数の同意

 2 出席した議決権者の議決権の総額の二分の一を超える議決権を有する者の同意

 A 第五百五十八条第一項の規定によりその有する議決権の一部のみを前項の事項に同意するものとして行使した議決権者(その余の議決権を行使しなかったものを除く。)があるときの同項第一号の規定の適用については、当該議決権者一人につき、出席した議決権者の数に一を、同意をした議決権者の数に二分の一を、それぞれ加算するものとする。

 B 債権者集会は、第五百四十八条第一項第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。
債権者集会の決議は、以下のように行う。

・出席した議決権者の過半数の同意+出席した議決権者の議決権の総額の二分の一を超える議決権を有する者の同意

また、債権者集会は、招集者があらかじめ定めた債権者集会の目的(第548条第1項第2号)以外の事項については決議をすることができない。
第555条 【議決権の代理行使】

 @ 協定債権者は、代理人によってその議決権を行使することができる。この場合においては、当該協定債権者又は代理人は、代理権を証明する書面を招集者に提出しなければならない。

 A 前項の代理権の授与は、債権者集会ごとにしなければならない。

 B 第一項の協定債権者又は代理人は、代理権を証明する書面の提出に代えて、政令で定めるところにより、招集者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該協定債権者又は代理人は、当該書面を提出したものとみなす。

 C 協定債権者が第五百四十九条第二項の承諾をした者である場合には、招集者は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。
債権者集会に出席することができない協定債権者は、代理人によってその議決権を行使することができる。この場合、協定債権者または代理人は、代理権を証明する書面を招集者に提出しなければならない(第1項)。この書面は、会社の承諾を得た上で、電磁的方法により提出することができる(第3項)。電磁的方法による債権者集会の招集通知を協定債権者が承諾した場合には、会社は正当な理由がなければこの承諾を拒否することはできない(第4項)。

また、代理権は永続的に与えることは認められていないため、債権者集会ごとに個別的に授与しなければならない(第2項)。
第556条 【書面による議決権の行使】

 @ 債権者集会に出席しない協定債権者は、書面によって議決権を行使することができる。

 A 書面による議決権の行使は、議決権行使書面に必要な事項を記載し、法務省令で定める時までに当該記載をした議決権行使書面を招集者に提出して行う。

 B 前項の規定により書面によって議決権を行使した議決権者は、第五百五十四条第一項及び第五百六十七条第一項の規定の適用については、債権者集会に出席したものとみなす。
債権者集会においては、協定債権者は書面により議決権を行使することができる(第1項)。この場合は、電子投票の場合と異なり、別段の定めをする必要はない。

書面により議決権を行使するには、清算株式会社から送付された議決権行使書面に必要な事項を記載し、清算株式会社に提出して行う(第2項)。また、書面により行使された議決権の数は、出席した協定債権者の議決権の数に算入される(第3項)。
第557条 【電磁的方法による議決権の行使】

 @ 電磁的方法による議決権の行使は、政令で定めるところにより、招集者の承諾を得て、法務省令で定める時までに議決権行使書面に記載すべき事項を、電磁的方法により当該招集者に提供して行う。

 A 協定債権者が第五百四十九条第二項の承諾をした者である場合には、招集者は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。

 B 第一項の規定により電磁的方法によって議決権を行使した議決権者は、第五百五十四条第一項及び第五百六十七条第一項の規定の適用については、債権者集会に出席したものとみなす。
債権者集会においては、招集者が認めた場合、協定債権者は電磁的方法により議決権を行使することができる(第548条第1項第3号)。

電磁的方法により議決権を行使する場合、招集者の承諾を得て、議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法によって清算株式会社に提出して行う(第1項)。また、電磁的方法による債権者集会の招集通知を協定債権者が承諾した場合(第549条第2項)には、清算株式会社は正当な理由がない限り、この承諾を拒否することはできない(第2項)。

なお、電磁的方法による議決権の数は、出席した協定債権者の議決権の数に算入されることになる(第3項)。
第558条 【議決権の不統一行使】

 @ 協定債権者は、その有する議決権を統一しないで行使することができる。この場合においては、債権者集会の日の三日前までに、招集者に対してその旨及びその理由を通知しなければならない。

 A 招集者は、前項の協定債権者が他人のために協定債権を有する者でないときは、当該協定債権者が同項の規定によりその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができる。
債権者集会において、二個以上の議決権を有している協定債権者には、議決権の不統一行使が認められている。これは、例えば、五個の議決権を有している協定債権者であれば、三個を賛成、二個を反対とすることができるということである。不統一行使をしようとする協定債権者は、債権者集会の日の三日前までに、招集者に対してその旨と理由を通知しなければならない(第1項)。

不統一行使は、他人のために協定債権を有している場合などにおいて利用される(自分の分と他人の分の議決権をを分けて行使する)。しかし、他人のために協定債権を有しているなどの理由がある場合以外においては、不統一行使を認める合理性はあまりない。そのため、招集者は、他人のために協定債権を有する者でないときは、不統一行使を拒否することができる(第2項)。
第559条 【担保権を有する債権者等の出席等】

 債権者集会又は招集者は、次に掲げる債権者の出席を求め、その意見を聴くことができる。この場合において、債権者集会にあっては、これをする旨の決議を経なければならない。

 1 第五百二十二条第二項に規定する担保権を有する債権者

 2 一般の先取特権その他一般の優先権がある債権、特別清算の手続のために清算株式会社に対して生じた債権又は特別清算の手続に関する清算株式会社に対する費用請求権を有する債権者
清算株式会社の財産につき第522条第2項の担保権を有する協定債権者は、その担保権の行使によって弁済を受けることができる協定債権の額については、議決権を有しない。

しかし、このような債権者は有力な債権者であることが多いため、清算株式会社に関する重要な情報をもっている可能性がある。そこで、債権者集会または招集者は、このような債権者の出席を求め、意見を聴くことができる。この場合、債権者集会は、これをする旨の決議を経る必要がある。
第560条 【延期又は続行の決議】

 債権者集会においてその延期又は続行について決議があった場合には、第五百四十八条(第四項を除く。)及び第五百四十九条の規定は、適用しない。
債権者集会の延期や続行が決まった場合、債権者集会の招集日時の決定などを規定した第548条(第4項は除く)と、招集通知について規定した第549条の規定は、適用されない。
第561条 【議事録】

 債権者集会の議事については、招集者は、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。
招集者は、債権者集会の議事録を作成しなければならない。債権者集会の議事内容を正確に記録するためである。
第562条 【清算人の調査結果等の債権者集会に対する報告】

 特別清算開始の命令があった場合において、第四百九十二条第一項に規定する清算人が清算株式会社の財産の現況についての調査を終了して財産目録等(同項に規定する財産目録等をいう。以下この条において同じ。)を作成したときは、清算株式会社は、遅滞なく、債権者集会を招集し、当該債権者集会に対して、清算株式会社の業務及び財産の状況の調査の結果並びに財産目録等の要旨を報告するとともに、清算の実行の方針及び見込みに関して意見を述べなければならない。ただし、債権者集会に対する報告及び意見の陳述以外の方法によりその報告すべき事項及び当該意見の内容を債権者に周知させることが適当であると認めるときは、この限りでない。
清算人は、就任後すぐに、清算株式会社の財産の現況を調査し、財産目録と貸借対照表(財産目録等)を作成しなければならない(第492条第1項)。そして、特別清算開始命令があった場合において、清算人が財産目録等を作成したとき、清算株式会社は、すぐに債権者集会を招集し、当該債権者集会に対して清算株式会社の業務と財産状況の調査結果・財産目録等の要旨を報告し、清算の実行の方針や見込みについて意見を述べなければならない。会社債権者などに対して、清算に関する情報を提供するためである。

ただし、債権者集会に対する報告と意見の陳述以外の方法で情報を提供するほうが適当であると認めるときは、その方法によりすることができる。