会社法 条文 会社法 解説
第2編 株式会社

第9章 清算

第2節 特別清算

第9款 協定
第563条 【協定の申出】

 清算株式会社は、債権者集会に対し、協定の申出をすることができる。
清算株式会社は、債権者集会に対して協定の申出をすることができる。この協定とは、債権者の権利に関する特別清算中の会社と債権者との間の合意のことである。例えば、債務の減免、支払いの猶予などのことである。
第564条 【協定の条項】

 @ 協定においては、協定債権者の権利(第五百二十二条第二項に規定する担保権を除く。)の全部又は一部の変更に関する条項を定めなければならない。

 A 協定債権者の権利の全部又は一部を変更する条項においては、債務の減免、期限の猶予その他の権利の変更の一般的基準を定めなければならない。
協定においては、協定債権者の権利の全部または一部の変更に関する条項を決めなければならない(第1項)。また、この条項において、債務の減免、期限の猶予等の権利の変更の一般的基準を決めなければならない(第2項)。
第565条 【協定による権利の変更】

 協定による権利の変更の内容は、協定債権者の間では平等でなければならない。ただし、不利益を受ける協定債権者の同意がある場合又は少額の協定債権について別段の定めをしても衡平を害しない場合その他協定債権者の間に差を設けても衡平を害しない場合は、この限りでない。
協定においては、協定債権者の権利の全部または一部の変更に関する条項を決めなければならない(第564条第1項)。この権利の変更は、協定債権者の間で平等でなければならない(本条)。債権者平等の原則を維持するためである。

ただし、不利益を受ける協定債権者の同意がある場合、または、少額の協定債権について別の定めをしても衡平(こうへい)を害しない場合、その他協定債権者の間に差を設けても衡平を害しない場合には、協定債権者間で異なる取り扱いをすることができる。
第566条 【担保権を有する債権者等の参加】

 清算株式会社は、協定案の作成に当たり必要があると認めるときは、次に掲げる債権者の参加を求めることができる。

 1 第五百二十二条第二項に規定する担保権を有する債権者

 2 一般の先取特権その他一般の優先権がある債権を有する債権者
第522条第2項に規定する債権者が有する担保権には協定の効力は及ばないため(第571条第2項)、通常このような債権者は協定案の作成には関与しない。しかし、このような債権者は有力な債権者である場合が多く、清算株式会社に関する重要な情報を有している可能性がある。

清算株式会社は、協定案の作成に関して必要があると認めるときは、このような債権者に協定案の作成への参加を求めることができる。
第567条 【協定の可決の要件】

 @ 第五百五十四条第一項の規定にかかわらず、債権者集会において協定を可決するには、次に掲げる同意のいずれもがなければならない。

 1 出席した議決権者の過半数の同意

 2 議決権者の議決権の総額の三分の二以上の議決権を有する者の同意

 A 第五百五十四条第二項の規定は、前項第一号の規定の適用について準用する。
債権者集会の決議は、以下の方法により行うのが原則である(第554条第1項)。

・出席した議決権者の過半数の同意+出席した議決権者の議決権の総額の二分の一を超える議決権を有する者の同意

しかし、債権者集会において協定を可決する場合には、以下が必要となる(本条第1項)。

・出席した議決権者の過半数の同意+議決権者の議決権の総額の三分の二以上の議決権を有する者の同意

協定は債権者に重大な影響を与えるため、通常の決議と比較して議決要件が加重されている。
第568条 【協定の認可の申立て】

 協定が可決されたときは、清算株式会社は、遅滞なく、裁判所に対し、協定の認可の申立てをしなければならない。
債権者集会で協定が可決された場合、清算株式会社は、すぐに、裁判所に対して協定の認可の申し立てをしなければならない。裁判所による認可が必要とされているのは、少数派債権者にとって不当に不利なものとなっていないかを、中立な立場から判断するためである。
第569条 【協定の認可又は不認可の決定】

 @ 前条の申立てがあった場合には、裁判所は、次項の場合を除き、協定の認可の決定をする。

 A 裁判所は、次のいずれかに該当する場合には、協定の不認可の決定をする。

 1 特別清算の手続又は協定が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき。ただし、特別清算の手続が法律の規定に違反する場合において、当該違反の程度が軽微であるときは、この限りでない。

 2 協定が遂行される見込みがないとき。

 3 協定が不正の方法によって成立するに至ったとき。

 4 協定が債権者の一般の利益に反するとき。
裁判所は、清算株式会社から協定の認可の申し立てがあった場合(第568条)、不認可事由(本条第2項各号)に該当しないときには、協定の認可を決定する(本条第1項)。
第570条 【協定の効力発生の時期】

 協定は、認可の決定の確定により、その効力を生ずる。
協定は、裁判所の認可決定(第569条第1項)の確定によりその効力を生じる(本条)。ただし、この場合であっても、協定の実行上必要があるときは、協定内容を変更することができる(第572条)。
第571条 【協定の効力範囲】

 @ 協定は、清算株式会社及びすべての協定債権者のために、かつ、それらの者に対して効力を有する。

 A 協定は、第五百二十二条第二項に規定する債権者が有する同項に規定する担保権、協定債権者が清算株式会社の保証人その他清算株式会社と共に債務を負担する者に対して有する権利及び清算株式会社以外の者が協定債権者のために提供した担保に影響を及ぼさない。
協定の効力が生じれば(第570条)、それは清算株式会社と全ての協定債権者に及ぶ(第1項)。つまり、債権者集会に出席していない者や、債権者集会において協定決議に反対した者などについても、効力が及ぶということである。

ただし、第522条第2項に規定する債権者が有する担保権については、協定の効力は及ばない(第2項)。この債権には、債権者集会の議決権が認められておらず(第548条第4項)、協定の対象ではないためである。また、協定の効力は、協定債権者が清算株式会社の保証人その他清算株式会社と共に債務を負担する者に対して有する権利と清算株式会社以外の者が協定債権者のために提供した担保には及ばない(第2項)。
第572条 【協定の内容の変更】

 協定の実行上必要があるときは、協定の内容を変更することができる。この場合においては、第五百六十三条から前条までの規定を準用する。
協定の認可が確定し、効力が生じた後からでも、実行上必要があるときは、協定内容を変更することができる。これは、当初の協定内容が実行不可能なことが判明した場合などに、柔軟な対応がとれるようにするためである。

このような場合、第563条から第571条までの規定が準用される。つまり、協定の申し出から手続きをやり直すということになる。