会社法 条文 会社法 解説
第3編 持分会社

第1章 設立
第575条 【定款の作成】

 @ 合名会社、合資会社又は合同会社(以下「持分会社」と総称する。)を設立するには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。

 A 前項の定款は、電磁的記録をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
持分会社とは、以下の三種類の会社の総称である。

名前 構成 説明
合名会社 直接無限責任社員(第576条第2項) 直接無限責任とは、つまり会社が倒産した場合に社員の個人資産にまで責任が及ぶ責任のことである。
合資会社 直接無限責任社員

間接有限責任社員(第576条第3項)
直接無限責任社員と間接有限責任社員が混在している。
合同会社 間接有限責任社員(第576条第4項) 間接有限責任社員とは、つまり会社が倒産した場合に社員の個人資産にまで責任が及ばない責任のことである。

この合同会社というのは、新会社法制定(このサイトで説明している現在の会社法のこと)に伴い、新たに考案された会社形態で、アメリカのLLC(Limited Liability Company)という組織形態をモデルにしている。
※これら持分会社の設立にあたっては、社員になろうとする者が定款を作成しなければならない(本条第1項)。
※三種類の会社とも、比較的小規模な企業形態である。
※これらの会社の社員たる地位を持分という(株式会社は株式)。
※特徴として、機関などに関する規制が少なく、大幅な定款自治が認められている。
第576条 【定款の記載又は記録事項】

 @ 持分会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

 1 目的

 2 商号

 3 本店の所在地

 4 社員の氏名又は名称及び住所

 5 社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別

 6 社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)及びその価額又は評価の標準

 A 設立しようとする持分会社が合名会社である場合には、前項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を無限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。

 B 設立しようとする持分会社が合資会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の一部を無限責任社員とし、その他の社員を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。

 C 設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
持分会社を設立するには、まず定款を作成しなければならない(第575条第1項)。そして、その定款には、本条第1項各号の事項(これを絶対的記載事項という)を記載しなければならない。
第577条 【定款の記載又は記録事項 その2】

 前条に規定するもののほか、持分会社の定款には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及びその他の事項でこの法律の規定に違反しないものを記載し、又は記録することができる。
持分会社を設立するには、定款を作成し、第576条第1項各号の絶対的記載事項を記載しなければならないが、その他に相対的記載事項や任意的記載事項を記載することができる(本条)。
第578条 【合同会社の設立時の出資の履行】

 設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、当該合同会社の社員になろうとする者は、定款の作成後、合同会社の設立の登記をする時までに、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。ただし、合同会社の社員になろうとする者全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、合同会社の成立後にすることを妨げない。
合同会社を設立しようとする場合、当該合同会社の社員になろうとする者は、定款作成後、合同会社の設立登記時までに、出資金の全額払い込み・現物出資の全部給付をしなければならない(本条)。

合同会社は株式会社と同様に間接有限責任社員のみで構成されるため、会社債権者の担保になるのが会社財産だけしかないことから、会社財産の充実を確保する趣旨である。

このように、出資金の全額払い込み・現物出資の現物給付が行われれば会社財産の充実が実現されるため、合同会社の社員になろうとする者全員の同意があれば、登記・登録などの第三者対抗要件の具備は、合同会社の成立後にすることができる。
第579条 【持分会社の成立】

 持分会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。
本条は、設立登記についての規定である。この設立登記は、持分会社の成立要件である。つまり、登記をしないと、どれだけ会社の準備が整っていても、法律上会社が成立しないということである。

これとは逆に、民法上の法人(公益法人)は、設立登記が対抗要件とされており(民法第45条第2項)、成立要件とはされていない。

持分会社は営利を目的とするため、会社の基本事項を登記し、公示する必要性があるということである。