会社法 条文 会社法 解説
第3編 持分会社

第2章 社員

第1節 社員の責任等
第580条 【社員の責任】

 @ 社員は、次に掲げる場合には、連帯して、持分会社の債務を弁済する責任を負う。

 1 当該持分会社の財産をもってその債務を完済することができない場合

 2 当該持分会社の財産に対する強制執行がその効を奏しなかった場合(社員が、当該持分会社に弁済をする資力があり、かつ、強制執行が容易であることを証明した場合を除く。)

 A 有限責任社員は、その出資の価額(既に持分会社に対し履行した出資の価額を除く。)を限度として、持分会社の債務を弁済する責任を負う。
直接無限責任社員は、当該持分会社の財産だけでは債務を弁済しきれない場合、連帯して持分会社の債務を弁済する責任を負う(第1項)。つまり会社が倒産した場合に社員の個人資産にまで責任が及ぶということである。

間接有限責任社員は、出資額を限度として、持分会社の債務を弁済する責任を負う(第2項)。つまり会社が倒産した場合には、出資額だけが戻ってこなくなり、それ以上の責任は負わないということである。
第581条 【社員の抗弁】

 @ 社員が持分会社の債務を弁済する責任を負う場合には、社員は、持分会社が主張することができる抗弁をもって当該持分会社の債権者に対抗することができる。

 A 前項に規定する場合において、持分会社がその債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、社員は、当該債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
持分会社の社員の責任は、会社の責任に付従する。そのため、社員が持分会社の債務を弁済する責任を負う場合には、社員は、持分会社が主張することができる抗弁をもって当該持分会社の債権者に対抗することができる(第1項)。例えば、会社が債権者に対して同時履行の抗弁権をもっていた場合、その債務を弁済する責任を負う社員は、会社同様に債権者に対して同時履行の抗弁権を主張することができる。

第1項と同様に、持分会社がその債権者に対して相殺権、取消権又は解除権をもっていた場合、社員は、当該債権者に対して債務の履行を拒むことができる(第2項)。
第582条 【社員の出資に係る責任】

 @ 社員が金銭を出資の目的とした場合において、その出資をすることを怠ったときは、当該社員は、その利息を支払うほか、損害の賠償をしなければならない。

 A 社員が債権を出資の目的とした場合において、当該債権の債務者が弁済期に弁済をしなかったときは、当該社員は、その弁済をする責任を負う。この場合においては、当該社員は、その利息を支払うほか、損害の賠償をしなければならない。
社員が出資の目的を金銭とした場合において、その出資を怠ったときは、当該社員は会社に対して利息の支払い義務と損害賠償責任を負う(第1項)。これは、会社財産の充実を担保するためである。

社員が出資の目的を債権とした場合において、当該債権の債務者が弁済期に弁済をしなかったときは、当該社員がその弁済をする責任を負う。また、利息の支払い義務と損害賠償責任を負う(第2項)。これも、第1項と同様に、会社財産の充実を担保するためである。
第583条 【社員の責任を変更した場合の特則】

 @ 有限責任社員が無限責任社員となった場合には、当該無限責任社員となった者は、その者が無限責任社員となる前に生じた持分会社の債務についても、無限責任社員としてこれを弁済する責任を負う。

 A 有限責任社員(合同会社の社員を除く。)が出資の価額を減少した場合であっても、当該有限責任社員は、その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務については、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。

 B 無限責任社員が有限責任社員となった場合であっても、当該有限責任社員となった者は、その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務については、無限責任社員として当該債務を弁済する責任を負う。

 C 前二項の責任は、前二項の登記後二年以内に請求又は請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては、当該登記後二年を経過した時に消滅する。
本条をまとめると以下になる。

本条 ケース 説明
第1項 有限責任社員→無限責任社員 無限責任社員になる前に生じた持分会社の債務も弁済する責任を負う。
第2項 合資会社の有限責任社員が出資の価額を減少 その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務は、従前の出資額の範囲内で弁済の責任を負う。
第3項 無限責任社員→有限責任社員 その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務は、無限責任社員として債務を弁済する責任を負う。
※第2項と第3項において、責任は登記後2年以内に請求・請求の予告をしない会社債権者に対しては、登記から2年経過後に消滅する(第4項)。
第584条 【無限責任社員となることを許された未成年者の行為能力】

 持分会社の無限責任社員となることを許された未成年者は、社員の資格に基づく行為に関しては、行為能力者とみなす。
未成年者(20歳未満の者)は行為能力を持たず、法律行為をする場合は親権者の同意が必要である(民法第5条第1項)。

しかし、持分会社の無限責任社員となることを許された未成年者は、社員の資格に基づく行為に関しては、行為能力者とみなされ、単独で法律行為を行うことができる。法律行為を行うことができるのは、社員の資格に基づく行為(例えば、弁済など)に関してだけである。親権者の同意を得なければならないとすると、迅速な会社運営ができなくなるためである。

未成年者と行為能力については以下を参照。
第2節 行為能力 第4条〜第21条