会社法 条文 会社法 解説
第3編 持分会社

第2章 社員

第2節 持分の譲渡等
第585条 【持分の譲渡】

 @ 社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。

 A 前項の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。

 B 第六百三十七条の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡に伴い定款の変更を生ずるときは、その持分の譲渡による定款の変更は、業務を執行する社員の全員の同意によってすることができる。

 C 前三項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
持分会社の社員は、原則として、他の社員全員の承諾がなければ、その持分の全部または一部を他人に譲渡することができない(第1項)。持分会社は、社員が密接な人的関係にあることを想定しているため、会社にとって好ましくない者が社員になることを防止するためである。

ただし、業務を執行しない有限責任社員は、会社の経営に与える影響は少ないため、業務執行社員全員の承諾があれば、持分の全部または一部を譲渡することができる(第2項)。

なお、持分会社は大幅な定款自治が認められており、本条の規定については定款で別の定めをすることができる(第4項)。
第586条 【持分の全部の譲渡をした社員の責任】

 @ 持分の全部を他人に譲渡した社員は、その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。

 A 前項の責任は、同項の登記後二年以内に請求又は請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては、当該登記後二年を経過した時に消滅する。
持分の全部を他人に譲渡した社員は、譲渡したという登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う(第1項)。会社債権者保護のためである。

ただし、この責任は、登記後2年以内に請求・請求の予告をしない会社債権者に大しては、登記後2年経過後に消滅する(第2項)。
第587条 【持分の全部の譲渡をした社員の責任 その2】

 @ 持分会社は、その持分の全部又は一部を譲り受けることができない。

 A 持分会社が当該持分会社の持分を取得した場合には、当該持分は、当該持分会社がこれを取得した時に、消滅する。
持分会社自体が、持分の全部または一部を譲り受けることはできない(第1項)。そして、持分会社自体が持分を取得した場合、その持分は取得時に消滅する(第2項)。

本条は、株式会社における自己株式の取得に似ている。資本の空洞化を防ぐための規定である。