会社法 条文 会社法 解説
第3編 持分会社

第2章 社員

第3節 誤認行為の責任
第588条 【無限責任社員であると誤認させる行為等をした有限責任社員の責任】

 @ 合資会社の有限責任社員が自己を無限責任社員であると誤認させる行為をしたときは、当該有限責任社員は、その誤認に基づいて合資会社と取引をした者に対し、無限責任社員と同一の責任を負う。

 A 合資会社又は合同会社の有限責任社員がその責任の限度を誤認させる行為(前項の行為を除く。)をしたときは、当該有限責任社員は、その誤認に基づいて合資会社又は合同会社と取引をした者に対し、その誤認させた責任の範囲内で当該合資会社又は合同会社の債務を弁済する責任を負う。
合資会社は、有限責任社員と無限責任社員から構成されている(第576条第3項)。取引相手は当該社員が有限責任社員なのか無限責任社員なのかの区別をつけることは困難となる。そのため、合資会社の有限責任社員が自己を無限責任社員であると誤認させるような行為をしたときは、誤認に基づいて会社と取引をした者に対して、無限責任社員と同一の責任を負う(第1項)。取引相手を保護するための、権利外観法理の一種である。

合資会社・合同会社の有限責任社員が責任の限度を誤認させる行為をしたときは、その社員は、誤認に基づいて会社と取引をした者に対して、誤認させた責任の範囲内で債務を弁済する責任を負う(第2項)。第1項と同様の趣旨である。
第589条 【社員であると誤認させる行為をした者の責任】

 @ 合名会社又は合資会社の社員でない者が自己を無限責任社員であると誤認させる行為をしたときは、当該社員でない者は、その誤認に基づいて合名会社又は合資会社と取引をした者に対し、無限責任社員と同一の責任を負う。

 A 合資会社又は合同会社の社員でない者が自己を有限責任社員であると誤認させる行為をしたときは、当該社員でない者は、その誤認に基づいて合資会社又は合同会社と取引をした者に対し、その誤認させた責任の範囲内で当該合資会社又は合同会社の債務を弁済する責任を負う。
持分会社の社員でない者が、持分会社の社員であると誤認させるような行為をした場合、当該者は、誤認に基づいて会社と取引をした者に対して、誤認させた社員と同一の責任を負う(第1項、第2項)。

第588条と同様に、取引相手を保護するための権利外観法理の一種である。