会社法 条文 会社法 解説
第3編 持分会社

第3章 管理

第1節 総則
第590条 【業務の執行】

 @ 社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する。

 A 社員が二人以上ある場合には、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する。

 B 前項の規定にかかわらず、持分会社の常務は、各社員が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の社員が異議を述べた場合は、この限りでない。
持分会社の社員は、原則として、会社の業務執行権をもつ(第1項)。持分会社の社員には密接な人間関係があり、会社の経営に強い利害関係があるのが普通であるため、経営の参加を保障するためである。

社員が二人以上いる場合、原則として、持分会社の業務は社員の過半数で決定する(第2項)。ただし、会社の常務(会社が日常行う通常の業務)は、完了前に他の社員が異議を述べない限り、各社員が単独で行うことができる(第3項)。

これらについては、定款で別の定めをすることができる。
第591条 【業務を執行する社員を定款で定めた場合】

 @ 業務を執行する社員を定款で定めた場合において、業務を執行する社員が二人以上あるときは、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、業務を執行する社員の過半数をもって決定する。この場合における前条第三項の規定の適用については、同項中「社員」とあるのは、「業務を執行する社員」とする。

 A 前項の規定にかかわらず、同項に規定する場合には、支配人の選任及び解任は、社員の過半数をもって決定する。ただし、定款で別段の定めをすることを妨げない。

 B 業務を執行する社員を定款で定めた場合において、その業務を執行する社員の全員が退社したときは、当該定款の定めは、その効力を失う。

 C 業務を執行する社員を定款で定めた場合には、その業務を執行する社員は、正当な事由がなければ、辞任することができない。

 D 前項の業務を執行する社員は、正当な事由がある場合に限り、他の社員の一致によって解任することができる。

 E 前二項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
持分会社の社員は、全員が業務執行権をもつが、定款により業務執行権をもつ社員を限定することができる(第590条)。この場合において、業務執行権をもつ社員(業務執行社員)が二人以上いる場合、持分会社の業務は原則として、業務執行社員の過半数をもって決定する(第1項)。ただし、この場合であっても、支配人の選任・解任については、会社にとって影響が大きいため、全社員の過半数をもって決定する(第2項)。第1項と第2項の規定については、定款で別の定めをすることができる。

業務執行社員を定款で定めた場合、業務執行社員は正当な事由がなければ辞任することができない(第4項)。ただし、正当な事由があれば、他の全社員の一致により解任することができる(第5項)。第4項と第5項については、定款で別の定めをすることができる。

また、業務執行社員であっても退社することができる(第606条以下)。そして、業務執行社員全員が退社したときは、業務執行社員を定める定款の規定は効力を失う(第3項)。
第592条 【社員の持分会社の業務及び財産状況に関する調査】

 @ 業務を執行する社員を定款で定めた場合には、各社員は、持分会社の業務を執行する権利を有しないときであっても、その業務及び財産の状況を調査することができる。

 A 前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。ただし、定款によっても、社員が事業年度の終了時又は重要な事由があるときに同項の規定による調査をすることを制限する旨を定めることができない。
業務執行社員を定款で定めた場合、その他の社員は業務執行権をもたないことになる。しかし、この場合であっても、その他の社員は監視権をもち、会社の業務と財産の状況を調査することができる(第1項)。この監視権については、定款で別の定めをすることができる(第2項)。しかし、事業年度終了時または重要な事由があるときにおいては、監視権を制限することはできない。