会社法 条文 会社法 解説
第3編 持分会社

第5章 計算等

第5節 利益の配当
第621条 【利益の配当】

 @ 社員は、持分会社に対し、利益の配当を請求することができる。

 A 持分会社は、利益の配当を請求する方法その他の利益の配当に関する事項を定款で定めることができる。

 B 社員の持分の差押えは、利益の配当を請求する権利に対しても、その効力を有する。
持分会社の社員は、会社の利益を配当するように請求することができる(第1項)。また、持分会社は運営について会社の自治が広く認められているため、配当方法などに関して持分会社の定款において規定することができる(第2項)。

また、配当される利益は社員が出資した持分財産を運用して得られるものであるから、社員の債権者が社員の持分を差し押さえた場合には、差し押さえの効力は社員の配当請求権についても及ぶ(第3項)。
第622条 【社員の損益分配の割合】

 @ 損益分配の割合について定款の定めがないときは、その割合は、各社員の出資の価額に応じて定める。

 A 利益又は損失の一方についてのみ分配の割合についての定めを定款で定めたときは、その割合は、利益及び損失の分配に共通であるものと推定する。
持分会社の運営は、幅広い自治が認められており、定款で自由に決めることができる場合が多い。

そのため、利益の配当や損失の負担についても、定款で自由に決めることができる。

しかし、定款で利益の配当や損失の負担について決めていない場合は、各社員が出資した持分割合に応じて決まる(第1項)。また、利益と損失のどちらか一方についてだけ定款において規定がある場合、その割合はもう一方についても同様のものであると推定される(第2項)。
第623条 【有限責任社員の利益の配当に関する責任】

 @ 持分会社が利益の配当により有限責任社員に対して交付した金銭等の帳簿価額(以下この項において「配当額」という。)が当該利益の配当をする日における利益額(持分会社の利益の額として法務省令で定める方法により算定される額をいう。以下この章において同じ。)を超える場合には、当該利益の配当を受けた有限責任社員は、当該持分会社に対し、連帯して、当該配当額に相当する金銭を支払う義務を負う。

 A 前項に規定する場合における同項の利益の配当を受けた有限責任社員についての第五百八十条第二項の規定の適用については、同項中「を限度として」とあるのは、「及び第六百二十三条第一項の配当額が同項の利益額を超過する額(同項の義務を履行した額を除く。)の合計額を限度として」とする。
有限責任社員とは、持分会社の債務に対して、自らの出資した持分を限度として責任を負う社員のことである。各有限責任社員が配当を受けた利益の合計が、現実に利益配当を受けた日において持分会社有していると計算される利益額を上回る場合には、各有限責任社員は持分会社に配当価額を返さなければならない連帯責任を負う(第1項)。

有限責任社員が過分の配当を受けた場合、有限責任社員は持分会社の債権者に対し、持分会社に出資した金額に加えて、過分に受けた配当金額についても責任を負わなければならない(第2項)。ただし、この規定は、合同会社の社員には適用されない(第630条第3項)。