会社法 条文 会社法 解説
第3編 持分会社

第8章 清算

第2節 清算人
第646条 【清算人の設置】

 清算持分会社には、一人又は二人以上の清算人を置かなければならない。
清算持分会社(清算手続きを行う清算法人)は、必ず清算人を置かなければならない。
第647条 【清算人の就任】

 @ 次に掲げる者は、清算持分会社の清算人となる。

 1 業務を執行する社員(次号又は第三号に掲げる者がある場合を除く。)

 2 定款で定める者

 3 社員(業務を執行する社員を定款で定めた場合にあっては、その社員)の過半数の同意によって定める者

 A 前項の規定により清算人となる者がないときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、清算人を選任する。

 B 前二項の規定にかかわらず、第六百四十一条第四号又は第七号に掲げる事由によって解散した清算持分会社については、裁判所は、利害関係人若しくは法務大臣の申立てにより又は職権で、清算人を選任する。

 C 第一項及び第二項の規定にかかわらず、第六百四十四条第二号又は第三号に掲げる場合に該当することとなった清算持分会社については、裁判所は、利害関係人の申立てにより、清算人を選任する。
基本的に、清算持分会社の清算人は、定款で定める者か社員の過半数の同意で選ばれた者がなる。もし、これらの者がいないときは、業務執行社員がなる(第1項)。

清算人を第1項のような形で選べない場合は、裁判所が利害関係人の申し立てにより選任する(第2項)。

社員がいなくなったことによる解散、または裁判所の判決により解散させられた場合は、裁判所が清算人を選任する(第3項)。

また、裁判所の確定判決により会社設立無効が認められた場合や、会社設立が取り消された場合においては、裁判所が利害関係人の申し立てにより、清算人を選任する(第4項)。
第648条 【清算人の解任】

 @ 清算人(前条第二項から第四項までの規定により裁判所が選任したものを除く。)は、いつでも、解任することができる。

 A 前項の規定による解任は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する。

 B 重要な事由があるときは、裁判所は、社員その他利害関係人の申立てにより、清算人を解任することができる。
清算人(裁判所が選任したものは除く)は、いつでも解任することができる(第1項)。解任は、社員の過半数で決する。ただし、定款で別の定めをすることができる(第2項)。

清算人に重大な任務違背行為などがあった場合、裁判所は、利害関係人の申し立てにより清算人を解任することができる(第3項)。この解任手続きは、具体的には非訟事件手続法の規定による。
第649条 【清算人の職務】

 清算人は、次に掲げる職務を行う。

 1 現務の結了

 2 債権の取立て及び債務の弁済

 3 残余財産の分配
清算持分会社の清算人は、以下のことを行わなければならない。

・清算持分会社が解散した時点において継続して行っていた仕事(現務)を完遂すること
・債権の回収と債務の弁済
・最後に会社に残った財産を社員に分配すること
第650条 【業務の執行】

 @ 清算人は、清算持分会社の業務を執行する。

 A 清算人が二人以上ある場合には、清算持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、清算人の過半数をもって決定する。

 B 前項の規定にかかわらず、社員が二人以上ある場合には、清算持分会社の事業の全部又は一部の譲渡は、社員の過半数をもって決定する。
清算人は、清算持分会社が有する権利能力の範囲内で、会社を代表し、清算業務を行う(第1項)。

清算人が複数いる場合、清算業務に関する決定は清算人の過半数で決する。しかし、定款で別の定めをすることもできる(第2項)。

第2項の規定にはかかわらず、清算持分会社の事業の全部または一部の譲渡は、社員の過半数で決する(第3項)。事業の譲渡は重大であるため、清算人だけで決することはできない。
第651条 【清算人と清算持分会社との関係】

 @ 清算持分会社と清算人との関係は、委任に関する規定に従う。

 A 第五百九十三条第二項、第五百九十四条及び第五百九十五条の規定は、清算人について準用する。この場合において、第五百九十四条第一項及び第五百九十五条第一項中「当該社員以外の社員」とあるのは、「社員(当該清算人が社員である場合にあっては、当該清算人以外の社員)」と読み替えるものとする。
清算持分会社と清算人の法的関係は、民法上の委任契約に基づくものとされる。つまり、民法第643条以下の規定が適用される(第1項)。

持分会社の業務執行社員に関する規定のうち、法令・定款を遵守し忠実に職務を行う義務(第593条第2項)、他の社員全員の同意を受けずに行う競業行為の禁止(第594条)と利益相反取引の禁止(第595条)についての規定は、清算人に準用される(第2項)。
第652条 【清算人の清算持分会社に対する損害賠償責任】

 清算人は、その任務を怠ったときは、清算持分会社に対し、連帯して、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
本条は、清算人に善管注意義務違反があった場合の特則についての規定である。この場合、違反した清算人は、清算持分会社に対して連帯して賠償責任を負わなければならない。
第653条 【清算人の第三者に対する損害賠償責任】

 清算人がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該清算人は、連帯して、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
清算人が職務を行うにあたり、第三者に対して損害を与えた場合、当該清算人に悪意(第三者に損害を与えてしまうことを知っていたこと)または重過失(善管注意義務違反)があったときは、当該清算人は連帯して損賠賠償をする責任を負う。
第654条 【法人が清算人である場合の特則】

 @ 法人が清算人である場合には、当該法人は、当該清算人の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名及び住所を社員に通知しなければならない。

 A 前三条の規定は、前項の規定により選任された清算人の職務を行うべき者について準用する。
法人が清算人の職務を行うことができる。この場合は、法人が事実行為としての清算業務を行う者を選任し、その者の氏名と住所を社員に通知しなければならない(第1項)。

また、第651条から第653条までの規定は、法人に選任された清算人の職務を行うべき者について準用される(第2項)。
第655条 【清算持分会社の代表】

 @ 清算人は、清算持分会社を代表する。ただし、他に清算持分会社を代表する清算人その他清算持分会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。

 A 前項本文の清算人が二人以上ある場合には、清算人は、各自、清算持分会社を代表する。

 B 清算持分会社は、定款又は定款の定めに基づく清算人(第六百四十七条第二項から第四項までの規定により裁判所が選任したものを除く。以下この項において同じ。)の互選によって、清算人の中から清算持分会社を代表する清算人を定めることができる。

 C 第六百四十七条第一項第一号の規定により業務を執行する社員が清算人となる場合において、持分会社を代表する社員を定めていたときは、当該持分会社を代表する社員が清算持分会社を代表する清算人となる。

 D 裁判所は、第六百四十七条第二項から第四項までの規定により清算人を選任する場合には、その清算人の中から清算持分会社を代表する清算人を定めることができる。

 E 第五百九十九条第四項及び第五項の規定は清算持分会社を代表する清算人について、第六百三条の規定は民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された清算人又は清算持分会社を代表する清算人の職務を代行する者について、それぞれ準用する。
清算人は、原則的に、清算持分会社を代表する。ただし、代表者を別に定めた場合はその者が代表する(第1項)。

清算人が複数いる場合、各自が清算持分会社を代表する(第2項)。

複数の業務執行社員であった清算人がいる場合、定款の規定または清算人の互選により清算持分会社を代表する清算人を選ぶことができる(第3項)。

業務執行社員であった者が清算人となる場合、持分会社を代表する社員が清算人となるときは、その社員が清算持分会社を代表する清算人となる(第4項)。

裁判所が清算人を選任する場合、裁判所が清算持分会社を代表する清算人を選ぶことができる(第5項)。

清算持分会社を代表する清算人は、その清算業務について一切の裁判上または裁判外の行為を行う権限を有する(第599条第4項の準用)。また、この清算人の権限に制限を加えたとしても、その制限は善意の第三者には対抗できない(第599条第5項の準用)。

民事保全手続きの仮処分命令によって裁判所に選任された清算人または代表清算人の代行業務を行う者は、清算持分会社の通常業務以外の行為を行うには裁判所の許可を要し、無許可で行った場合は無効となる(第603条の準用)。
第656条 【清算持分会社についての破産手続の開始】

 @ 清算持分会社の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算人は、直ちに破産手続開始の申立てをしなければならない。

 A 清算人は、清算持分会社が破産手続開始の決定を受けた場合において、破産管財人にその事務を引き継いだときは、その任務を終了したものとする。

 B 前項に規定する場合において、清算持分会社が既に債権者に支払い、又は社員に分配したものがあるときは、破産管財人は、これを取り戻すことができる。
会社の全財産で債務を弁済しきれないことが判明した場合、清算人は裁判所に破産手続開始の申し立てをしなければならない(第1項)。その後は、破産法の規定に従い処理されることになる。

裁判所が破産手続開始の決定を行い、破産管財人が選任された場合、清算人が破産管財人に事務の引継ぎを完了した時をもって清算手続きが終了したものとする(第2項)。

破産手続きが行われる場合、清算手続きにおいて清算持分会社が債権者に債務を弁済したり、社員に分配した財産があったときは、破産管財人は否認権(破産法第160条)を行使しこれらの財産を破産財団に取り戻すことができる(第3項)。これは、債権者への公平な配当を行うためである。
第657条 【裁判所の選任する清算人の報酬】

 裁判所は、第六百四十七条第二項から第四項までの規定により清算人を選任した場合には、清算持分会社が当該清算人に対して支払う報酬の額を定めることができる。
裁判所が清算人を選任した場合、裁判所が、清算持分会社の財産から清算人に支払われる報酬額を決めることができる。