会社法 条文 会社法 解説
第3編 持分会社

第8章 清算

第4節 債務の弁済等
第660条 【債権者に対する公告等】

 @ 清算持分会社(合同会社に限る。以下この項及び次条において同じ。)は、第六百四十四条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算持分会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、二箇月を下ることができない。

 A 前項の規定による公告には、当該債権者が当該期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記しなければならない。
合同会社が解散することにより、清算手続に入った場合、会社債権者に対して一定期間内(二ヶ月以上)に債権を申し出るよう官報に公告し、かつ、わかっている債権者には各別に催告しなければならない(第1項)。

また、第1項の一定期間内に申し出をしない債権者は、清算から除斥されるということを付記しなければならない(第2項)。
第661条 【債務の弁済の制限】

 @ 清算持分会社は、前条第一項の期間内は、債務の弁済をすることができない。この場合において、清算持分会社は、その債務の不履行によって生じた責任を免れることができない。

 A 前項の規定にかかわらず、清算持分会社は、前条第一項の期間内であっても、裁判所の許可を得て、少額の債権、清算持分会社の財産につき存する担保権によって担保される債権その他これを弁済しても他の債権者を害するおそれがない債権に係る債務について、その弁済をすることができる。この場合において、当該許可の申立ては、清算人が二人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない。
合同会社であった清算持分会社が会社債権者に対て、2ヶ月以上の期間を定めて公告・催告した場合、清算持分会社はその期間中会社債権者に弁済することはできない。この期間中に特定の債権者だけに弁済が行われると会社財産が減少し、不公平だからである。また、この弁済を禁止された期間において、弁済を行わなかったことにより責任(利息支払いなど)は免れることはできない(第1項)。

ただし、他の債権者を害することがないような小額の弁済などは、清算人全員の申し立てに基づき、裁判所の許可を得た上であれば、行うことができる(第2項)。第1項の規定は、債権者保護のための規定であり、その債権者を不当に害することがないようなものは可能ということである。
第662条 【条件付債権等に係る債務の弁済】

 @ 清算持分会社は、条件付債権、存続期間が不確定な債権その他その額が不確定な債権に係る債務を弁済することができる。この場合においては、これらの債権を評価させるため、裁判所に対し、鑑定人の選任の申立てをしなければならない。

 A 前項の場合には、清算持分会社は、同項の鑑定人の評価に従い同項の債権に係る債務を弁済しなければならない。

 B 第一項の鑑定人の選任の手続に関する費用は、清算持分会社の負担とする。当該鑑定人による鑑定のための呼出し及び質問に関する費用についても、同様とする。
条件付債権とは、例えば、仲介した不動産売買において契約が成立すれば報酬をもらう債権のように、条件の成否が確定しない間に当事者の一方が有する、内容が未確定の債権のことである。

存続期間が不確定な債権とは、例えば、被保険者が保険会社から一生涯にわたって毎月定額の保険金給付を受け続けるように、いつまでにどれだけの額がその内容かが、確定しない債権のことである。

もし、清算持分会社がこのような債務(会社債権者からみれば債権)を負っていた場合、清算手続きにおいて弁済することができる。しかし、法的にはまだ内容が不確定であるため、価値については清算持分会社の申し立てにより裁判所が選任した鑑定人が決める(第1項)。そして、その鑑定に従って弁済することになる(第2項)。また、鑑定に関する費用は、清算持分会社が負担しなければならない(第3項)。
第663条 【出資の履行の請求】

 清算持分会社に現存する財産がその債務を完済するのに足りない場合において、その出資の全部又は一部を履行していない社員があるときは、当該出資に係る定款の定めにかかわらず、当該清算持分会社は、当該社員に出資させることができる。
清算持分会社の全財産を使っても会社債権者に対して債務を弁済できない場合において、会社に対して出資すべきであるはずの社員が出資をしていないときは、定款でその社員が出資しなければならない期限が来ていない場合であってもその社員に出資させることができる。

社員の出資に関する期限の利益よりも、会社債権者保護のほうが大事だからである。
第664条 【債務の弁済前における残余財産の分配の制限】

 清算持分会社は、当該清算持分会社の債務を弁済した後でなければ、その財産を社員に分配することができない。ただし、その存否又は額について争いのある債権に係る債務についてその弁済をするために必要と認められる財産を留保した場合は、この限りでない。
清算持分会社は、債務を全て弁済した後であれば、残った財産を社員に分配することができる。

ただし、支払うべき金額について会社債権者と訴訟になっている場合など、債権自体の存在や額について争いがあるときは、弁済するに足りるだけの財産を別に留保しておけば、残った財産を社員に分配することができる。訴訟が解決するまで、社員に分配できないとなると、分配が著しく遅れる可能性があるためである。
第665条 【清算からの除斥】

 @ 清算持分会社(合同会社に限る。以下この条において同じ。)の債権者(知れている債権者を除く。)であって第六百六十条第一項の期間内にその債権の申出をしなかったものは、清算から除斥される。

 A 前項の規定により清算から除斥された債権者は、分配がされていない残余財産に対してのみ、弁済を請求することができる。

 B 清算持分会社の残余財産を社員の一部に分配した場合には、当該社員の受けた分配と同一の割合の分配を当該社員以外の社員に対してするために必要な財産は、前項の残余財産から控除する。
合同会社であった清算持分会社は、清算手続きに入る前に2ヶ月以上の期間を定めて、その期間内に会社債権者に申し出るよう公告・個別に催告をしなければならない(第660条第1項)。これは、債権者保護のためである。この期間内に債権の申し出をしなかった債権者は、債権の弁済を受けることができない(第1項)。

第1項の規定により債権の弁済を受けることができなかった債権者は、社員に対してまだ分配されていない残余財産に対してのみ、弁済の請求をすることができる(第2項)。

ただし、残余財産を社員の一部に分配した場合は、残余財産の分配を受けていない他の社員にも同一割合を分配するため残余財産から差し引いておかなければならない。例えば、残余財産が100、社員が3人だとした場合、一人の社員に20を分配したとする。残りの2人の社員にも1人につき20で、合計40を分配するために、残余財産80から40を差し引かなければならない。差し引いた40から、期間内に債権の申し出をしなかった債権者に弁済されることとなる。