会社法 条文 会社法 解説
第3編 持分会社

第8章 清算

第7節 任意清算
第668条 【財産の処分の方法】

 @ 持分会社(合名会社及び合資会社に限る。以下この節において同じ。)は、定款又は総社員の同意によって、当該持分会社が第六百四十一条第一号から第三号までに掲げる事由によって解散した場合における当該持分会社の財産の処分の方法を定めることができる。

 A 第二節から前節までの規定は、前項の財産の処分の方法を定めた持分会社については、適用しない。
清算には以下の二種類がある。

名前 条文 説明
法定清算 第646条〜第667条 第646条から第667条までの規定に従い、清算手続きを行う。
任意清算 第668条〜第671条 定款で解散事由が規定されておいた場合でその事由が生じたときや、総社員の同意により解散する場合は、会社財産の清算・処分方法を定款で定めておくことが許されている。つまり、清算手続きについて規定されている、第646条から第667条までの規定は適用されない。
※任意清算ができるのは、合名会社と合資会社に限られている。合同会社は、有限責任社員のみからなり、会社債権者保護のために法定清算しかできない。
第669条 【財産目録等の作成】

 @ 前条第一項の財産の処分の方法を定めた持分会社が第六百四十一条第一号から第三号までに掲げる事由によって解散した場合には、清算持分会社(合名会社及び合資会社に限る。以下この節において同じ。)は、解散の日から二週間以内に、法務省令で定めるところにより、解散の日における財産目録及び貸借対照表を作成しなければならない。

 A 前条第一項の財産の処分の方法を定めていない持分会社が第六百四十一条第一号から第三号までに掲げる事由によって解散した場合において、解散後に同項の財産の処分の方法を定めたときは、清算持分会社は、当該財産の処分の方法を定めた日から二週間以内に、法務省令で定めるところにより、解散の日における財産目録及び貸借対照表を作成しなければならない。
本条は、合同会社以外の持分会社が、任意清算した場合における財産状況を記録した書類の作成義務について規定した条文である。

任意清算の場合でも、二週間以内に、解散日における会社の財産状況を記録した財産目録や貸借対照表の作成が任意清算手続を行う者に義務付けられている(第1項)。

解散後に任意清算の方法が決められた場合においても、財産処分方法決められた日から二週間以内に、解散日における会社の財産状況を記録した財産目録や貸借対照表を作成しなければならない(第2項)。
第670条 【債権者の異議】

 @ 持分会社が第六百六十八条第一項の財産の処分の方法を定めた場合には、その解散後の清算持分会社の債権者は、当該清算持分会社に対し、当該財産の処分の方法について異議を述べることができる。

 A 前項に規定する場合には、清算持分会社は、解散の日(前条第二項に規定する場合にあっては、当該財産の処分の方法を定めた日)から二週間以内に、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第二号の期間は、一箇月を下ることができない。

 1 第六百六十八条第一項の財産の処分の方法に従い清算をする旨

 2 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

 B 前項の規定にかかわらず、清算持分会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。

 C 債権者が第二項第二号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該財産の処分の方法について承認をしたものとみなす。

 D 債権者が第二項第二号の期間内に異議を述べたときは、清算持分会社は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。
本条は、合同会社以外の持分会社が、定款に定められた解散事由の発生や、総社員の同意などにより解散を行う場合において、清算持分会社は任意清算を行う前に会社債権者に公告・催告といった告知をしなければならないとする規定である。

任意清算を行う場合、会社債権者に対して清算方法を通知した上で、債権者が不当だと考える場合には異議を申し立てる機会を与えなければならない(第1項、第2項)。そして、清算持分会社が定めた期間内に債権者が異議を申し立てなかった場合は、債権者は承認したものとみなされる(第4項)。逆に、債権者が異議を申し立てた場合は、その債権者に対して、会社は弁済するか担保を提供するなどの措置をとらなければならない(第5項)。
第671条 【持分の差押債権者の同意等】

 @ 持分会社が第六百六十八条第一項の財産の処分の方法を定めた場合において、社員の持分を差し押さえた債権者があるときは、その解散後の清算持分会社がその財産の処分をするには、その債権者の同意を得なければならない。

 A 前項の清算持分会社が同項の規定に違反してその財産の処分をしたときは、社員の持分を差し押さえた債権者は、当該清算持分会社に対し、その持分に相当する金額の支払を請求することができる。
本条は、合同会社以外の持分会社が任意清算を行う場合、社員の持分を差し押さえた債権者の保護を定めた規定である。

社員の持分を差し押さえた債権者は、清算持分会社の会社財産より当該社員が有する持分相当額の金額の支払いを受けられる権利を持つ。そのため、清算持分会社が、定款や総社員の同意により会社財産の処分を行う場合、差し押さえをした債権者が取得する可能性のある財産については、債権者の同意なくして処分することはできない(第1項)。

第1項の規定に反して、清算持分会社が債権者が差し押さえた財産を処分してしまった場合、差し押さえをした債権者は、清算持分会社に対して持分相当額の支払いを請求することができる(第2項)。