会社法 条文 会社法 解説
第4編 社債

第3章 社債権者集会
第715条 【社債権者集会の構成】

 社債権者は、社債の種類ごとに社債権者集会を組織する。
社債権者は、社債の種類ごとに、社債権者集会というひとつの団体を組織する。株主総会との違いなどは以下である。

社債権者集会 株主総会
条文 第715条以下 第295条以下
招集 臨時的 定期的
構成 社債権者の集まり 株主の集まり
機関 会社の機関ではない 会社の機関である
第716条 【社債権者集会の権限】

 社債権者集会は、この法律に規定する事項及び社債権者の利害に関する事項について決議をすることができる。
社債権者集会は、会社法に規定されている事項と社債権者の利害に関する事項について決議することができる。

決議された事項は、決議後に裁判所の許可がなければ決議の効力は認められないため(第732条、第733条、第734条第1項)、決議できる事項はあまり限定的ではない。
第717条 【社債権者集会の招集】

 @ 社債権者集会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。

 A 社債権者集会は、次条第三項の規定により招集する場合を除き、社債発行会社又は社債管理者が招集する。
社債権者集会は、必要があればいつでも招集することができる(第1項)。

招集は、原則的に、社債発行会社か社債管理者が行う。ただし、第718条第3項の規定により債権者自身が招集する場合もある(第2項)。
第718条 【社債権者による招集の請求】

 @ ある種類の社債の総額(償還済みの額を除く。)の十分の一以上に当たる社債を有する社債権者は、社債発行会社又は社債管理者に対し、社債権者集会の目的である事項及び招集の理由を示して、社債権者集会の招集を請求することができる。

 A 社債発行会社が有する自己の当該種類の社債の金額の合計額は、前項に規定する社債の総額に算入しない。

 B 次に掲げる場合には、第一項の規定による請求をした社債権者は、裁判所の許可を得て、社債権者集会を招集することができる。

 1 第一項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合

 2 第一項の規定による請求があった日から八週間以内の日を社債権者集会の日とする社債権者集会の招集の通知が発せられない場合

 C 第一項の規定による請求又は前項の規定による招集をしようとする無記名社債の社債権者は、その社債券を社債発行会社又は社債管理者に提示しなければならない。
ある種類の社債の10分の1以上にあたる社債を持っている社債権者は、まず招集権限を有する社債発行会社または社債管理者に社債権者集会の招集を求めることができる(第1項)。そして、招集されないときは、裁判所の許可を条件に、自ら社債権者集会を招集することができる(第3項)。
第719条 【社債権者集会の招集の決定】

 社債権者集会を招集する者(以下この章において「招集者」という。)は、社債権者集会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 社債権者集会の日時及び場所

 2 社債権者集会の目的である事項

 3 社債権者集会に出席しない社債権者が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨

 4 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
社債権者集会の招集者は、本条各号の事項を決めなければならない。社債権者集会は定期的に開かれるのではなく必要があるときに臨時的に開かれるため、社債権者集会を招集する目的(本条第2号)が必要である。
第720条 【社債権者集会の招集の通知】

 @ 社債権者集会を招集するには、招集者は、社債権者集会の日の二週間前までに、知れている社債権者及び社債発行会社並びに社債管理者がある場合にあっては社債管理者に対して、書面をもってその通知を発しなければならない。

 A 招集者は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、同項の通知を受けるべき者の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該招集者は、同項の書面による通知を発したものとみなす。

 B 前二項の通知には、前条各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

 C 社債発行会社が無記名式の社債券を発行している場合において、社債権者集会を招集するには、招集者は、社債権者集会の日の三週間前までに、社債権者集会を招集する旨及び前条各号に掲げる事項を公告しなければならない。

 D 前項の規定による公告は、社債発行会社における公告の方法によりしなければならない。ただし、招集者が社債発行会社以外の者である場合において、その方法が電子公告であるときは、その公告は、官報に掲載する方法でしなければならない。
社債権者集会を招集するためには、招集者は社債権者集会の2週間前までに社債権者・社債発行会社・社債管理者に書面で通知をしなければならない(電磁的方法によることもできる)。この通知には第719条の事項を記載・記録しなければならない。
第721条 【社債権者集会参考書類及び議決権行使書面の交付等】

 @ 招集者は、前条第一項の通知に際しては、法務省令で定めるところにより、知れている社債権者に対し、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(以下この条において「社債権者集会参考書類」という。)及び社債権者が議決権を行使するための書面(以下この章において「議決権行使書面」という。)を交付しなければならない。

 A 招集者は、前条第二項の承諾をした社債権者に対し同項の電磁的方法による通知を発するときは、前項の規定による社債権者集会参考書類及び議決権行使書面の交付に代えて、これらの書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、社債権者の請求があったときは、これらの書類を当該社債権者に交付しなければならない。

 B 招集者は、前条第四項の規定による公告をした場合において、社債権者集会の日の一週間前までに無記名社債の社債権者の請求があったときは、直ちに、社債権者集会参考書類及び議決権行使書面を当該社債権者に交付しなければならない。

 C 招集者は、前項の規定による社債権者集会参考書類及び議決権行使書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、社債権者の承諾を得て、これらの書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該招集者は、同項の規定によるこれらの書類の交付をしたものとみなす。
社債権者集会の招集通知には、議決権行使について社債権者が判断するのに必要な資料と議決権を行使するための書面等を付けなければならない。
第722条 【社債権者集会参考書類及び議決権行使書面の交付等 その2】

 @ 招集者は、第七百十九条第三号に掲げる事項を定めた場合には、第七百二十条第二項の承諾をした社債権者に対する電磁的方法による通知に際して、法務省令で定めるところにより、社債権者に対し、議決権行使書面に記載すべき事項を当該電磁的方法により提供しなければならない。

 A 招集者は、第七百十九条第三号に掲げる事項を定めた場合において、第七百二十条第二項の承諾をしていない社債権者から社債権者集会の日の一週間前までに議決権行使書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供の請求があったときは、法務省令で定めるところにより、直ちに、当該社債権者に対し、当該事項を電磁的方法により提供しなければならない。
議決権行使のための書面の記載事項について、電磁的方法による議決権行使が認められており、社債権者集会の招集通知も電磁的方法によることにしている場合は、同じ電磁的方法で知らせなければならない(第1項)。

招集通知について電磁的方法によることに同意していない社債権者でも、議決権行使のための書面の記載事項については電磁的方法で知らせるよう求めることができ、その場合には、招集者はそれに応じなければならない(第2項)。
第723条 【議決権の額等】

 @ 社債権者は、社債権者集会において、その有する当該種類の社債の金額の合計額(償還済みの額を除く。)に応じて、議決権を有する。

 A 前項の規定にかかわらず、社債発行会社は、その有する自己の社債については、議決権を有しない。

 B 議決権を行使しようとする無記名社債の社債権者は、社債権者集会の日の一週間前までに、その社債券を招集者に提示しなければならない。
社債権者の議決権は、償還されずに残っている残存債権額(残存元本額)を基準として決められる(第1項)。また、社債発行会社自身には議決権は認められない(第2項)。
第724条 【社債権者集会の決議】

 @ 社債権者集会において決議をする事項を可決するには、出席した議決権者(議決権を行使することができる社債権者をいう。以下この章において同じ。)の議決権の総額の二分の一を超える議決権を有する者の同意がなければならない。

 A 前項の規定にかかわらず、社債権者集会において次に掲げる事項を可決するには、議決権者の議決権の総額の五分の一以上で、かつ、出席した議決権者の議決権の総額の三分の二以上の議決権を有する者の同意がなければならない。

 1 第七百六条第一項各号に掲げる行為に関する事項

 2 第七百六条第一項、第七百三十六条第一項、第七百三十七条第一項ただし書及び第七百三十八条の規定により社債権者集会の決議を必要とする事項

 B 社債権者集会は、第七百十九条第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。
社債権者集会の通常の議決は、出席した社債権者の議決権の総数を基準として、その過半数による(第1項)。

社債の支払猶予や社債管理者の解任など、社債権者の利益に重大な影響を与える可能性が高い事項(第706条第1項、第736条第1項など)は、特別に、議決権がある社債権者の総額の5分の1以上で、かつ、出席した社債権者の議決権の総額の3分の2以上の賛成がなければ可決できない(第2項)。

社債権者集会で決めることができるのは、社債に関する事項のみである(第3項)。
第725条 【議決権の代理行使】

 @ 社債権者は、代理人によってその議決権を行使することができる。この場合においては、当該社債権者又は代理人は、代理権を証明する書面を招集者に提出しなければならない。

 A 前項の代理権の授与は、社債権者集会ごとにしなければならない。

 B 第一項の社債権者又は代理人は、代理権を証明する書面の提出に代えて、政令で定めるところにより、招集者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該社債権者又は代理人は、当該書面を提出したものとみなす。

 C 社債権者が第七百二十条第二項の承諾をした者である場合には、招集者は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。
社債権者は、代理人に議決権を行使させることができる。この場合、書面または電磁的方法により、代理権を証明しなければならない(第1項)。また、この代理権の証明は、社債権者集会ごとに毎回行わなければならない(第2項)。これらは、第310条から第312条の株主総会の部分と同じ趣旨である。
第726条 【書面による議決権の行使】

 @ 社債権者集会に出席しない社債権者は、書面によって議決権を行使することができる。

 A 書面による議決権の行使は、議決権行使書面に必要な事項を記載し、法務省令で定める時までに当該記載をした議決権行使書面を招集者に提出して行う。

 B 前項の規定により書面によって行使した議決権の額は、出席した議決権者の議決権の額に算入する。
社債権者集会に出席しない社債権者は、書面により議決権を行使することができる(第1項)。この場合、行使された議決権は、出席して行使された議決権の額に算入される(第3項)。
第727条 【電磁的方法による議決権の行使】

 @ 電磁的方法による議決権の行使は、政令で定めるところにより、招集者の承諾を得て、法務省令で定める時までに議決権行使書面に記載すべき事項を、電磁的方法により当該招集者に提供して行う。

 A 社債権者が第七百二十条第二項の承諾をした者である場合には、招集者は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。

 B 第一項の規定により電磁的方法によって行使した議決権の額は、出席した議決権者の議決権の額に算入する。
社債権者集会での議決権の行使は、電磁的方法により行うこともできる。この場合、招集者の承諾が必要である(第1項)。また、招集通知が電磁的方法で送られた場合は、招集者は電磁的方法による議決権の行使を必ず承諾しなければならない(第2項)。電磁的方法により行使された議決権は、出席して行使された議決権の額に算入される(第3項)。
第728条 【議決権の不統一行使】

 @ 社債権者は、その有する議決権を統一しないで行使することができる。この場合においては、社債権者集会の日の三日前までに、招集者に対してその旨及びその理由を通知しなければならない。

 A 招集者は、前項の社債権者が他人のために社債を有する者でないときは、当該社債権者が同項の規定によりその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができる。
複数の議決権を有する社債権者は、そのうちの一部を賛成、残りを反対に投票するなど、議決権を統一しないで行使(不統一行使)することができる。この場合、社債権者は社債権者集会の三日前までに、招集者に理由などを通知しなければならない(第1項)。

招集者は、社債権者が自分のためだけに社債を持っている場合は第1項の不統一行使を拒否することができる(第2項)。
第729条 【社債発行会社の代表者の出席等】

 @ 社債発行会社又は社債管理者は、その代表者若しくは代理人を社債権者集会に出席させ、又は書面により意見を述べることができる。ただし、社債管理者にあっては、その社債権者集会が第七百七条の特別代理人の選任について招集されたものであるときは、この限りでない。

 A 社債権者集会又は招集者は、必要があると認めるときは、社債発行会社に対し、その代表者又は代理人の出席を求めることができる。この場合において、社債権者集会にあっては、これをする旨の決議を経なければならない。
第1項は、社債発行会社や社債管理者による説明の機会の確保のための規定である。社債発行会社や社債管理者は、代表者や代理人を社債権者集会に出席させたり、書面により意見を述べることができる。また、社債権者集会・招集者は、社債発行会社に対して代表者・代理人の出席を求めることができる。
第730条 【延期又は続行の決議】

 社債権者集会においてその延期又は続行について決議があった場合には、第七百十九条及び第七百二十条の規定は、適用しない。
社債権者集会で集会の延期または次回に続行することを決議した場合、延期または続行後の集会については、第719条と第720条の手続きをとる必要はない。
第731条 【議事録】

 @ 社債権者集会の議事については、招集者は、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。

 A 社債発行会社は、社債権者集会の日から十年間、前項の議事録をその本店に備え置かなければならない。

 B 社債管理者及び社債権者は、社債発行会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。

 1 第一項の議事録が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求

 2 第一項の議事録が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
社債権者集会で扱った議事については、招集者は議事録を作成し記録しなければならない(第1項)。後日、何が議事になったかがわからなくなり紛争が起きるのを防ぐためである。

また、社債発行会社は、社債権者集会の日から10年間、議事録を本店に備え置かなければならない(第2項)。社債管理者と社債権者は、社債発行会社の営業時間内ならいつでも、議事録の閲覧・謄写の請求をすることができる(第3項)。これは、社債管理者と社債権者が必要とする情報を提供するためである。

第732条 【社債権者集会の決議の認可の申立て】

 社債権者集会の決議があったときは、招集者は、当該決議があった日から一週間以内に、裁判所に対し、当該決議の認可の申立てをしなければならない。
社債権者集会の決議は、集会で決議されただけでは法律上の効果は生じない。

招集者が社債権者集会の決議について、1週間以内に裁判所に認可を求め、これを裁判所が認可してはじめて法律上の効果が生じる(本条、第734条)。
第733条 【社債権者集会の決議の不認可】

 裁判所は、次のいずれかに該当する場合には、社債権者集会の決議の認可をすることができない。

 1 社債権者集会の招集の手続又はその決議の方法が法令又は第六百七十六条の募集のための当該社債発行会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料に記載され、若しくは記録された事項に違反するとき。

 2 決議が不正の方法によって成立するに至ったとき。

 3 決議が著しく不公正であるとき。

 4 決議が社債権者の一般の利益に反するとき。
本条は、裁判所が社債権者集会の決議を不認可とする場合についての規定である。逆に、本条各号に該当しない場合は、認可されることになる。
第734条 【社債権者集会の決議の効力】

 @ 社債権者集会の決議は、裁判所の認可を受けなければ、その効力を生じない。

 A 社債権者集会の決議は、当該種類の社債を有するすべての社債権者に対してその効力を有する。
社債権者集会の決議は、決議されただけでは法律上の効果は生じない。招集者が裁判所に認可を求め(第732条)、裁判所は認可できない理由(第733条)がないかをチェックし、ない場合は認可し、ここではじめて法律上の効果が生じることとなる(本条第1項)。

また、社債権者集会の決議は、集会に出席したかどうか、議決権を行使したかどうかなどに関らず、その種類の社債を持っている社債権者全てに対して効力が生じる(本条第2項)。
第735条 【社債権者集会の決議の認可又は不認可の決定の公告】

 社債発行会社は、社債権者集会の決議の認可又は不認可の決定があった場合には、遅滞なく、その旨を公告しなければならない。
社債権者集会で決議された場合、招集者は決議の認可を裁判所に申し出なければならない(第732条)。そして、裁判所は決議について認可または不認可の決定を下すことになる。

社債権者にとっては決議が認可されても不認可となっても、どちらの場合も重大な影響がある。

そのため、社債発行会社は、認可または不認可の決定があった場合は、すぐにその旨の公告をしなければならない(本条)。
第736条 【代表社債権者の選任等】

 @ 社債権者集会においては、その決議によって、当該種類の社債の総額(償還済みの額を除く。)の千分の一以上に当たる社債を有する社債権者の中から、一人又は二人以上の代表社債権者を選任し、これに社債権者集会において決議をする事項についての決定を委任することができる。

 A 第七百十八条第二項の規定は、前項に規定する社債の総額について準用する。

 B 代表社債権者が二人以上ある場合において、社債権者集会において別段の定めを行わなかったときは、第一項に規定する事項についての決定は、その過半数をもって行う。
社債権者集会において、一人または複数の代表社債権者を選び、その代表社債権者に社債権者集会が決定しなければならない事項の決定を委任することができる。

代表に選ばれた代表社債権者には、決議事項の決定権という大きな権限が与えられる。そのため、選ぶときは、普通決議ではなく、特別決議が必要となる(第724条第2項第2号)。

代表社債権者が複数いる場合、社債権者集会が決定しなければならない事項の決定は過半数をもって行う。ただし、社債権者集会において別の定めをしている場合はそれに従う(第3項)。
第737条 【社債権者集会の決議の執行】

 @ 社債権者集会の決議は、社債管理者又は代表社債権者(社債管理者があるときを除く。)が執行する。ただし、社債権者集会の決議によって別に社債権者集会の決議を執行する者を定めたときは、この限りでない。

 A 第七百五条第一項から第三項まで、第七百八条及び第七百九条の規定は、代表社債権者又は前項ただし書の規定により定められた社債権者集会の決議を執行する者(以下この章において「決議執行者」という。)が社債権者集会の決議を執行する場合について準用する。
社債権者集会の決議が裁判所に認可されると法的な効力が認められる。そして、実際にその決議を執行する者が必要となる。

原則的には、社債管理者が執行し、社債管理者がいない場合は代表社債権者が執行する。しかし、執行する者を社債権者集会の決議で決めた場合は、その者が執行する(第1項)
第738条 【代表社債権者等の解任等】

 社債権者集会においては、その決議によって、いつでも、代表社債権者若しくは決議執行者を解任し、又はこれらの者に委任した事項を変更することができる。
社債権者集会では、代表社債権者・決議執行者を解任することができる。また、これらの者に委任した事項を変更することもできる。
第739条 【社債の利息の支払等を怠ったことによる期限の利益の喪失】

 @ 社債発行会社が社債の利息の支払を怠ったとき、又は定期に社債の一部を償還しなければならない場合においてその償還を怠ったときは、社債権者集会の決議に基づき、当該決議を執行する者は、社債発行会社に対し、一定の期間内にその弁済をしなければならない旨及び当該期間内にその弁済をしないときは当該社債の総額について期限の利益を喪失する旨を書面により通知することができる。ただし、当該期間は、二箇月を下ることができない。

 A 前項の決議を執行する者は、同項の規定による書面による通知に代えて、政令で定めるところにより、社債発行会社の承諾を得て、同項の規定により通知する事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該決議を執行する者は、当該書面による通知をしたものとみなす。

 B 社債発行会社は、第一項の期間内に同項の弁済をしなかったときは、当該社債の総額について期限の利益を喪失する。
本条は、社債発行会社が、社債の利息の支払いを怠ったときや定期に社債の一部を買い戻さなければならないのにそれを怠った場合に、社債権者集会の決議により、社債の総額について期限の利益を喪失させることができることを規定している。

社債の総額について期限の利益が喪失するというのは、例えば、当初は5年後までに社債全額を買い戻せばよかったが、すぐに全額を買い戻さなければならなくなる、ということである。

社債権者集会において決議があると、決議を執行する者(第737条第2項)が、社債発行会社に対して2ヶ月以上の期間を置いて、怠っていた利息や買戻しをするように書面か電磁的方法により通知することができる(第1項、第2項)。

そして、社債発行会社が利息の支払いや買戻しをしなかった場合は、当該社債の総額についてすぐに全額買戻しをしなければならなくなる(第3項)。
第740条 【債権者の異議手続の特則】

 @ 第四百四十九条、第六百二十七条、第六百三十五条、第六百七十条、第七百七十九条(第七百八十一条第二項において準用する場合を含む。)、第七百八十九条(第七百九十三条第二項において準用する場合を含む。)、第七百九十九条(第八百二条第二項において準用する場合を含む。)又は第八百十条(第八百十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定により社債権者が異議を述べるには、社債権者集会の決議によらなければならない。この場合においては、裁判所は、利害関係人の申立てにより、社債権者のために異議を述べることができる期間を伸長することができる。

 A 前項の規定にかかわらず、社債管理者は、社債権者のために、異議を述べることができる。ただし、第七百二条の規定による委託に係る契約に別段の定めがある場合は、この限りでない。

 B 社債発行会社における第四百四十九条第二項、第六百二十七条第二項、第六百三十五条第二項、第六百七十条第二項、第七百七十九条第二項(第七百八十一条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)、第七百八十九条第二項(第七百九十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)、第七百九十九条第二項(第八百二条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)及び第八百十条第二項(第八百十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定の適用については、第四百四十九条第二項、第六百二十七条第二項、第六百三十五条第二項、第六百七十条第二項、第七百七十九条第二項及び第七百九十九条第二項中「知れている債権者」とあるのは「知れている債権者(社債管理者がある場合にあっては、当該社債管理者を含む。)」と、第七百八十九条第二項及び第八百十条第二項中「知れている債権者(同項の規定により異議を述べることができるものに限る。)」とあるのは「知れている債権者(同項の規定により異議を述べることができるものに限り、社債管理者がある場合にあっては当該社債管理者を含む。)」とする。
会社法では、減資など会社の債権者に重大な影響を与える可能性がある行為がなされる場合には、債権者に異議を述べる権利が認められている(第449条、第627条、第635条など)。

社債権者も会社の債権者であるため、異議を述べることができそうにみえるが、社債権者の場合は、社債権者集会で全員の意思を決めるという方法が採用されている(第715条、第716条などを参照)。そのため、社債権者は、個々の社債権者が異議を述べることはできず、社債権者集会で異議を述べるという決議をしなければならない(本条第1項)。

社債管理者(会社の債権者ではない)は、社債権者の利益になると考えるとき、異議を述べることが認められており、この場合は社債権者集会の決議は必要ではない(第2項)。

第3項は、第2項の規定により社債管理者に異議を述べる権利が認められているため、準用する条文を読み替えるとした規定である。
第741条 【社債管理者等の報酬等】

 @ 社債管理者、代表社債権者又は決議執行者に対して与えるべき報酬、その事務処理のために要する費用及びその支出の日以後における利息並びにその事務処理のために自己の過失なくして受けた損害の賠償額は、社債発行会社との契約に定めがある場合を除き、裁判所の許可を得て、社債発行会社の負担とすることができる。

 A 前項の許可の申立ては、社債管理者、代表社債権者又は決議執行者がする。

 B 社債管理者、代表社債権者又は決議執行者は、第一項の報酬、費用及び利息並びに損害の賠償額に関し、第七百五条第一項(第七百三十七条第二項において準用する場合を含む。)の弁済を受けた額について、社債権者に先立って弁済を受ける権利を有する。
以下のような費用については、社債権者全体の利益のためになされた出費であるため、社債発行会社が負担しなければならない(第1項)。また、優先的に補填される(第3項)。ただし、負担する者を社債発行会社との契約で決めていたような場合はそれに従う。

・社債管理者・代表社債権者・決議執行者の報酬や活動費用
・社債管理者・代表社債権者・決議執行者が過失がないのに損害を受けた場合の賠償額


第742条 【社債権者集会等の費用の負担】

 @ 社債権者集会に関する費用は、社債発行会社の負担とする。

 A 第七百三十二条の申立てに関する費用は、社債発行会社の負担とする。ただし、裁判所は、社債発行会社その他利害関係人の申立てにより又は職権で、当該費用の全部又は一部について、招集者その他利害関係人の中から別に負担者を定めることができる。
社債権者集会を開く場合、社債権者に対する通知費用、開く場所の確保費用など、様々な費用が必要となる。これらの費用については、社債発行会社が負担しなければならない(第1項)。

第732条は、社債権者集会での決議を、招集者が裁判所に認可してもらう申し立てについての規定である。この時の費用も、原則として社債発行会社が負担しなければならない。しかし、社債管理者の仕事ぶりがよくないために、これを解任する決議(第738条)がなされた場合など、社債発行会社以外の者が負担するのが適当な場合もある。このような場合については、裁判所は社債発行会社その他利害関係人の申し立てまたは職権により、社債発行会社以外の者に費用を負担させることができる(第2項)。