会社法 条文 会社法 解説
第5編 組織変更、合併、会社分割、株式交換及び株式移転

第1章 組織変更

第2節 株式会社の組織変更
第744条 【株式会社の組織変更計画】

 @ 株式会社が組織変更をする場合には、当該株式会社は、組織変更計画において、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 組織変更後の持分会社(以下この編において「組織変更後持分会社」という。)が合名会社、合資会社又は合同会社のいずれであるかの別

 2 組織変更後持分会社の目的、商号及び本店の所在地

 3 組織変更後持分会社の社員についての次に掲げる事項

  イ 当該社員の氏名又は名称及び住所

  ロ 当該社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別

  ハ 当該社員の出資の価額

 4 前二号に掲げるもののほか、組織変更後持分会社の定款で定める事項

 5 組織変更後持分会社が組織変更に際して組織変更をする株式会社の株主に対してその株式に代わる金銭等(組織変更後持分会社の持分を除く。以下この号及び次号において同じ。)を交付するときは、当該金銭等についての次に掲げる事項

  イ 当該金銭等が組織変更後持分会社の社債であるときは、当該社債の種類(第百七条第二項第二号ロに規定する社債の種類をいう。以下この編において同じ。)及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

  ロ 当該金銭等が組織変更後持分会社の社債以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法

 6 前号に規定する場合には、組織変更をする株式会社の株主(組織変更をする株式会社を除く。)に対する同号の金銭等の割当てに関する事項

 7 組織変更をする株式会社が新株予約権を発行しているときは、組織変更後持分会社が組織変更に際して当該新株予約権の新株予約権者に対して交付する当該新株予約権に代わる金銭の額又はその算定方法

 8 前号に規定する場合には、組織変更をする株式会社の新株予約権の新株予約権者に対する同号の金銭の割当てに関する事項

 9 組織変更がその効力を生ずる日(以下この章において「効力発生日」という。)

 A 組織変更後持分会社が合名会社であるときは、前項第三号ロに掲げる事項として、その社員の全部を無限責任社員とする旨を定めなければならない。

 B 組織変更後持分会社が合資会社であるときは、第一項第三号ロに掲げる事項として、その社員の一部を無限責任社員とし、その他の社員を有限責任社員とする旨を定めなければならない。

 C 組織変更後持分会社が合同会社であるときは、第一項第三号ロに掲げる事項として、その社員の全部を有限責任社員とする旨を定めなければならない。
本条は、株式会社が組織変更により持分会社になる場合において、組織変更計画で決めておかなければならない事項についての規定である。

株式会社の社員は全員有限責任しか負わず、株主の個性が問われることはない。しかし、持分会社は規模が小さく、社員の個性が会社運営や財産に大きな影響を与えるため、社員について住所や出資額などを明らかにしなければならない(第1項第3号)。

持分会社になることにより、それまでの株主に対して、株式に代わる金銭や社債などを交付しなければならないケースもある。そのようなときのために、交付する基準を決めておかなければならない(第1項第5号)。

また、組織変更が効力を発生する日も決めておかなければならない(第1項第9号)。この効力発生日において、株式会社は組織変更により持分会社となる(第745条第1項)。
第745条 【株式会社の組織変更の効力の発生等】

 @ 組織変更をする株式会社は、効力発生日に、持分会社となる。

 A 組織変更をする株式会社は、効力発生日に、前条第一項第二号から第四号までに掲げる事項についての定めに従い、当該事項に係る定款の変更をしたものとみなす。

 B 組織変更をする株式会社の株主は、効力発生日に、前条第一項第三号に掲げる事項についての定めに従い、組織変更後持分会社の社員となる。

 C 前条第一項第五号イに掲げる事項についての定めがある場合には、組織変更をする株式会社の株主は、効力発生日に、同項第六号に掲げる事項についての定めに従い、同項第五号イの社債の社債権者となる。

 D 組織変更をする株式会社の新株予約権は、効力発生日に、消滅する。

 E 前各項の規定は、第七百七十九条の規定による手続が終了していない場合又は組織変更を中止した場合には、適用しない。
本条は、株式会社が組織変更した場合の効力に関する規定である。

株式会社が組織変更をする場合、組織変更計画を作り、その中で効力発生日を決めておく必要がある(第744条第1項第9号)。そして、株式会社は、効力発生日に持分会社となる(本条第1項)。

株式会社と持分会社とでは、商号や定款で決めておかなければならない事項が異なる(第27条以下、第576条を参照)。そのため、組織変更計画で、持分会社になった場合に定款に追加・変更しなければならないものを決めておくことになる(第744条第1項第2号〜第4号)。そして、組織変更が効力を発生したときは、本来の定款変更の手続きをとるまでもなく、組織変更計画で決められたとおりに定款変更がされたものとみなされる(本条第2項)。

持分会社は新株を発行することはないため、組織変更をする株式会社の新株予約権は、組織変更の効力発生日に消滅する(本条第5項)。